ゴーーーーーーン… カア!…カア!… ゴーーーーーーン! 夕刻の山間に鐘の音が響く。 山の奥の奥のさらにまた奥、小さな農村の外れにポツンと建つさらに小さなお寺『大参寺(だいさんじ 』で、年老いた住職にかわり、頭に手ぬぐいを巻き、作務衣を纏った一人の年若い寺男が鐘をついていた。 体格は逞しく、焼けて浅黒い肌に見合う人懐っこそうな顔に笑みをたたえ、つく鐘の音も、遥か遠くまで響きわたる。 寺男「ふぅ…」 住職「いつもながら聞いていて気持ち良い響きじゃな」 寺男「あっ、住職様」 住職「今日は頂きものの茸と山菜で鍋でも囲みたいのう?」 寺男「はい、畏まりました!すぐにご用意いたします」 住職「ホッホッホッ!頼むぞ」 ーーー寺男(てらおとこ とは、寺院において各種雑役や、参拝客の案内等をする出家していない人の事である。 現在では修行中の若い僧侶が雑役をこなす為、その数は少ない。 だが大参寺では住職以外は僧侶がおらず、寺の雑役の全ては寺男がこなしていた。 寺男は毎日毎日年老いて身体の自由があまりきかない住職の世話を甲斐甲斐しくこなしていた。 まわりの村人達は最初こそ他所から来た寺男を怪しんでいたが、その働きぶりや、住職や周りに対する細やかな気づかいを見て「本当の親子でもあそこまでできない」と寺男に感心していた。 グツグツ…… 住職「いやぁ~若い者がいてくれてたすかるわい。 あ、ワシの檀家周り用のスクーターを使いなさい」 寺男「ありがとうございます!行って参ります!」 ダダダダダダ…… 住職「……何事もなければよいが…」 ーー病院 寺男「駐在さん!」 駐在「おう寺男さん、すまないな」 寺男「いえ、それで私の知り合いというのは…」 駐在「今、治療中だ。 それより…」 駐在はポケットから何かを取り出して寺男に渡。 寺男「こ、この写真は!」 駐在「身元確認の為に荷物を検査していた時に治療中の女性が持っていたんだが…」 写真には今より少し短めの髪や口髭こそあるが、『戸利合(とりあい 鎮守府』と書かれた看板の隣で立派な軍服を身に纏い、今と変わらぬ柔らかな笑顔を浮かべる寺男の姿があった。 駐在「これは…アンタで間違いないか?」 寺男「……はい、間違いありません。 これは…私が鎮守府着任当初に撮られたものです」 駐在「そうか…あ、心配するな、寺男さんの昔を根掘り葉掘りする気はない。 で、女性に心あたりはないか?長い黒髪に眼鏡をしていたんだが?」 寺男「眼鏡……多分…大淀、女性の名前は…大淀、艦娘です(ウチに鳥海はいなかったですしね 」 駐在「あれが艦娘さんかい?実物は初めて見た…ってこんな海のない山奥に用もないのに来るわけないか」 寺男「一体どうして…?」 駐在「そりゃアンタに用があったんだろう?しかもこんな夜にかっ飛ばさせる位重要かつ早急にしなきゃならん用が」 駐在「事故の現場はゆっくり運転さえすれば何の危険もない場所だったんだ、相当急いでいたんだろう」 寺男「どこかに連絡は?」 駐在「しようとしたんだが、スマホも何も持ってないわ、タクシーで来ていたから情報はないわで、唯一その写真だけが手がかりだったんだ」 駐在「タクシーの運ちゃんは軽い怪我ですんだんだが、その大淀って娘はシートベルトしてなかったらしくてな、けっこう重症だったぞ」 寺男(高速修復剤があれば……しかし、海軍を辞めて一民間人の私が連絡したところで信じてもらえるかどうか… ??「ふぅ…」 駐在「あっ、先生!」 医師「とりあえず一命はとりとめたよ、全くたいした身体の強さだ」 寺男「お疲れ様です、先生。 夜に申し訳ありませんでした」 医師「あれ?寺男君?どうてここに?」 寺男「実は大、いえ、重症の女性は昔の同僚でして」 駐在「俺が頼んで確認にきてもらったんだ」 医師「そうかい。 ま、詳しい話は後にして、とりあえず病室に運ぼう」 ーーーー病室 医師「まだ意識が戻ってないから安静にさせといてくれ、後は頼むよ」 寺男「わかりました、ありがとうございました」 駐在「俺も一度戻るよ、住職様には俺が帰りに伝えておくから寺男さんは看ててやれ、な」 寺男「お手数をおかけします、よろしくお願いします」 駐在「またな」 パタン 寺男(………あれから2年、忘れかけていたのに… 寺男(2年前、提督だった私はある日、もうすぐケッコン可能レベルに達するはずだった金剛や榛名、北上、天龍、扶桑、利根に『人間の女と浮気をしている!』と突然言われ、証拠として私が物置部屋兼趣味の部屋に借りていたマンションに入っていく私と人間の女性らしき二人が手を繋いでいたり、キスをしている写真を見せられた 寺男(私は人間の女にモテないし、浮気などしていない!何かの間違いだ!と説明したが、艦娘達にその部屋の事を言ってなかった事や、写真に日付が入ってなかった事、さらに写真の男が私によく似た服を着ていたが災いして、私は彼女達とその姉妹艦、その他多数に制裁という名の暴行をされた挙げ句、辞表を書かされてすぐに鎮守府を追い出された 寺男(あの時の皆の眼は忘れられない。 悲しみと憎しみに満ち充ちた眼で罵声を浴びせ、殴り、蹴るその姿は、普段見ていた姿とはまるで違った。 それだけ私に対する愛情と信頼を裏切られたと感じたのだろう 寺男(わずかな荷物と共に訳もわからず失意のうちに故郷に帰るも、鎮守府から連絡がいっていたらしく、家につくなり親から『この親不孝者!二度と帰ってくるな!』と罵られ、そこで心が壊れた私は日雇いの仕事をしながら全国をさすらうようになった 寺男(そして壊れた心が限界を越えた時に『死のう』と思って冬の雪深い時期の山奥に向かい、死に場所を探していた時に住職様に出会い、話を聞いてもらっているうちに住職様の温かさにふれて、『この方のお世話をしたい!』と思うようになって、願い出て、名もなき1人の寺男として住職様に仕え、生きてきた 寺男「どうして今さらになって…」 ーーー 寺男「ですから先ほどから…」 『そのような事はできません、失礼します』 プツン!プーッ、プーッ…… 寺男「はあ…」 寺男(事故から2日、未だに意識の戻らない大淀を何とかするために、あちこちの鎮守府に連絡して迎えにくるか、高速修復剤を送って欲しいと頼むが、いずれもまともに取り合ってくれない。 どうかご理解をお願いします」 霧島「監視といっても居場所を把握しておく位が限界で、後は放置に近い状態でしたが」 寺男「そうですか、それはわ、わかり…ました」 霧島「?提督、どうかなさいましたか?」 寺男「………なんでもありません(本当は鎮守府で制裁という名の暴行をされた時に恐ろしい顔つきで顔面にヤクザキックかまされて以来貴女は恐怖の対象なのですが…話を進める為に我慢しましょう 」 寺男「で、私に何の用ですか?今日は住職様と病院に行かなければならないので申し訳ありませんが手短にお願いします。 未払いの給料でもありましたか?」 霧島「それは……」 大淀「…提督、貴方の容疑がはれました」 寺男「は?」 霧島「提督が金剛お姉様や他の艦娘以外に人間の女と浮気をしていたという容疑がはれたのです」 霧島「エリート提督を覚えていらっしゃいますか?」 寺男「ええ、同期の中でもかなり優秀な男で何もかもが飛び抜けていました。 取り調べに対して『前の住人がいた頃から使っていた』そうです。 そしてOLさんが住んでいる部屋はかつて貴方が物置部屋兼趣味の部屋にしていたあの部屋です」 寺男「そ、そんな!どうやって!?あの部屋の鍵を!?」 霧島「……その事で…そのせいで…今、鎮守府は最悪の事態に陥っています…」 大淀「その部屋の鍵は…我が鎮守府の……比叡さんからもらったんだそうです」 寺男「………ゴメンなさい、頭が真っ白で理解が追い付かないです」 大淀「警察から大本営に、大本営から鎮守府に連絡がきた時、取り調べを受けた比叡さんは『提督にお姉様を取られたくない一心で、その当時、もうすぐケッコン可能レベルになる艦娘を姉妹に持ち、提督に姉妹を取られたくない山城さん、大井さん、龍田さん、筑摩さんと共謀して提督を追い出そうとして提督の鍵を盗み出して複製を作り、エリート提督に渡し、二人が出入りしている所をわざとわかるかわからない位の画像レベルで撮影して、提督に浮気の罪を擦り付けたんだそうです」 霧島「現在あのゴミ虫(比叡 及び共謀した連中は全員鎮守府の隔離部屋にて謹慎中ですが、裁きは避けられないでしょう」 寺男(姉をゴミ虫呼ばわり… 霧島「ですが…事情聴取の際に『私は比叡を信じていマース!』と言って同席していた金剛お姉様があまりのショックで寝込んでしまい…」 霧島「榛名はその日から破り捨てていた提督の写真をテープで直して壁に張り付けて居もしない提督に話しかけ」 霧島「扶桑さんは酒浸りになり」 霧島「北上さんは大井さんを全殺し寸前まで叩きのめして懲罰房行き」 霧島「天龍さんは、毎日出撃して大破寸前になって…皆が止めても『アイツはもっと辛く苦しかったはずだ、悲しかったはずだ、この程度じゃ足りない!』と繰り返し…」 霧島「利根さんは…普段は普通なのですが、『あやつ(筑摩 がくれたものなど要らん』と部屋にあったものを捨てて何も置かなくなってしまって布団すらありません。 今では夜は床で寝る始末…」 霧島「その他制裁に加わった娘達も様子がおかしくなって…」 寺男「かなりヤバい状態じゃないですか!?今の提督は何をしているんですか!」 大淀「育成の為に若手の提督が配属されたのが災いして、皆が言うことを聞かず収集がつかなくなっていて…」 寺男「まるでパズルゲームみたいな負の連鎖が起きていますね…」 大淀「ここまでの事態になった以上、恥知らずなのは承知の上ですが…」 霧島「…お願いします!鎮守府に戻って皆を助けていただけないでしょうか?」 寺男「………ちょっと外へ出ましょう…」 墓場 寺男「これを見て下さい」 『寺男之墓』 大淀「貴方のお名前が書かれた…」 霧島「しかもまだ新しいお墓」 寺男「………ここには私が提督だった頃のものを埋めてあります。 …私は…提督としての私は…もう死にました。 それに私でなくても大本営がどうにかして下さるでしょう?私の出番など、有りはしません」 霧島「そんな!」 大淀「お願いします!戻っていただけるならこの大淀、一生を貴方に捧げ…」 寺男「お引き取りを…これ以上は頭が破裂しそうです。 どう受け止めたら良いやら…」 寺男「お願い……します…今は…」 寺男「……そろそろ行かねばならないので、これで失礼します。 では」 大淀「ま…待って下さい!」 霧島「大淀さん、今は…」 大淀「う…ウウッ!グスッ!…」 ーーー 寺男「住職様、お待たせしました、さぁ、まいりましょう」 住職「…迷っておるな?」 寺男「……」 住職「許せぬ気持ちと助けてやりたい気持ちがせめぎ合っておる。 違うかのう?」 寺男「住職様、私は…」 住職「寺男や…我らが仕えし御本仏様はいかなる悪人をも救わんとその御手(みて を差しのべて下さる。 その御手を見つけて掴むか離すかはその者次第じゃがな」 住職「寺男よ、迷うならば救ってから迷うべしじゃ。 相手が居なくなっては何も言えぬし、全てが取り返しがつかなくなるぞ」 寺男「……住職様」 住職「今日までおぬしがいてくれた日々は楽しかった。 なれど今おぬしは多くの人に必要とされる身、ワシの事は気にするな!行って来なさい!」 寺男「住職様…はい!」 住職「さあ行け!寺男、いや、『元戸利合鎮守府提督』よ!」 元提督「行ってまいります!」 タッタッタッタッ… 住職(合掌 「御本仏様…どうか彼の者に御守護を…」 ーーー車にて移動中 元提督「やれやれ、軍服を掘り出してシワを伸ばすのに時間がかかってしまいましたね。 そちらの様子は如何ですか?」 長門『最悪以外の言葉がない!北上にボコボコにされて入院中の大井を除いた比叡、龍田、山城、筑摩の4名が部屋から脱走して執務室で提督と吹雪を人質に立て籠っている!』 「「「えーーーー!?」」」 霧島「そんな…やっとここまでという所で…」 大淀「トラブルのおかわりはもう…いっぱいです…」 元提督「何やってるんですかあの人達は…頭が痛くなってきましたよ…(ハア… 」 長門『とりあえずまだ他所には他言無用で頼む!なるべく我々だけで収束させなければならないからな!」 元提督「言われなくても言えませんよ…」 霧島「長門秘書艦、立て籠るという事は、逃亡のためのお金や車の用意など…何かあちらから要求があったはずですが、それらはありましたか?」 長門『タイムリーな事に元提督、つまり今お前達がこちらに連れてこようとしている人物の引き渡しだ!』 大淀「それはまた…」 霧島「今鎮守府に元提督を連れて行ったら…『鴨がネギ背負ってやってきた』どころの話ではありませんね…とりあえずどこかで一時停止して終わるのを待ちましょう」 元提督「いえ、時間が長引けばいずれ他所に情報が洩れますし、何より人質が危険です。 それに解体と懲役暮らしが確定していて、今さら失うものの無いあの人達は何をしでかすかわかりません、ここは急いで行きましょう!」 大淀「しかし…」 霧島「……わかりました」 大淀「霧島さん!?」 霧島「元提督……」 元提督「何ですか?」 霧島「連中の狙いは間違いなく…」 元提督「私の命でしょう。 殺したところでたかが2~3年の懲役のオマケがつく位なら彼女らにとっては安い代償ですからね」 霧島「……この霧島、万が一の時は、あれらと相討ちして黄泉路のお供をいたします、お忘れなきよう」 大淀「!わ、私も同じくです!」 元提督「ならば死ぬわけにはいきませんね。 それに最後ぐらい主砲をぶっぱなしておきたいでしょう?沖合いならば演習と言えば周りにバレませんし、鎮守府は穏便に済ませられるし、貴女達も余計な懲役くらわなくて済む、依る部を全て失い、最早どこにも居ないもの扱いな私以外には得しかない条件ですよ』 比叡「怪しいですね、何か企んでいるんじゃないですか?」 元『私にはそんな企みなどありませんよ。 何か企むにしても急拵えの付け焼き刃で役にたったものは無いと相場が決まっています。 それに…』 比叡「?」 元提督『いい加減この世にも飽き飽きしました。 天気もバッチリ、正に…」 比叡「絶好の死にびよりですね!」 龍田「お待たせしました…あら~?少し痩せました~?」 筑摩「辞世の句は読みましたか?なければ後付けで書いてあげますよ?」 山城「今日は……よい日ね…」 現提督「あ、あが……」 元提督「……現提督まで連れてきたんですか?」 ヒョイ!ドサッ! 元提督「うわっ!いきなりこちらのボートに投げないで下さい!危ないでしょう!」 比叡「私達が出るまで人質は必要でしたし、かといって吹雪ちゃんを使う訳にもいきませんしね。 貴方を巻き込んでしまって」 現提督「フゥー!フゥー!」 元提督「せめて最後ぐらいは寂しくないように一緒に逝ってあげますよ」 比叡「それではさよならです!…気合い!入れて!撃ちます!」 ドガアーーーン!! 比叡「あ、あが…な、何で」(大破! 龍田「ど、どういう事!?」 筑摩「そんな!さっきまでは何とも…」 山城「クウッ!死になさ…」 龍田「待っ…」 バギャーン! 山城「きゃあ!」(大破! 元提督「やれやれ…狙いが外れてしまいましたね」 龍田「…もしかして…」 元「本来ならば貴女達に一斉射撃してもらって全員暴発KOを狙ったんですがね。 まあ戦艦二隻ならお釣りがきますね」 筑摩「貴方という悪魔は…!」 元提督「おっと、撃たない方がいいですよ、暴発する弾がどれかなんて、私も知らないんですから(ニヤニヤ 」 龍田「あらあら~やられたわね~。 でも、忘れてなーい?私の得物、白兵戦もできるのよ~?」 元「ええ、忘れてないですよ、だから…」 バスッ! 龍田「えっ?」 ボチャン! 龍田「わ、私の武器が…海の底に…」 ザバーン! 元提督「ナイスショットですよ、イムヤ」 イムヤ(スキューバダイビング装備 「この海のスナイパー、イムヤにかかれば水中銃だってお手のものよ!」 龍田「ゴムボートの下に潜ませて…いたなんて…」 元提督「龍田…艦娘や深海悽艦に現代兵装は確かに通じません、しかし…」 元提督「こういう芸当ぐらいは、できるんですよ?(ニヤリ 」 イムヤ「ちなみにもうすぐオリョールからの武装した遠征組がここに合流するけど…まだやる?(ニヤリ 」 筑摩「……」 龍田「……」 元提督「………勝負あり、って事でいいようですね」 比叡「お……覚えて…なさ…」 元提督「何ですか?恨み言なら塀の中で言いなさい。 最も解体される際に記憶も消されるでしょうが」 比叡「ふえっ!?」 元提督「解体の際、記憶を残すか残さないかは個人の判断に委ねられるのですが…これだけの事をしでかしては強制で記憶を消去されるでしょう。 言ったはずですよ、『終わらせよう』と。 もう会う事もないでしょうが、お元気で」 比叡「……クソオ嗚呼ああアア亜亜痾痾痾!!!!!!!!」 ーーーこうして、比叡を含む4名は後から来た遠征組によって武装解除され、その後退院した大井を含めて全員が懲役の後、解体、記憶消去を受け、全ては終わった…… 元提督「………かに思えたんですがね…」 元提督(事件終結後、心を病んだ金剛達のケアをはじめ、暴行された挙げ句、関節を外されて、痛みのショックでこれまた心を病んだ現提督が吹雪を世話役として伴って長期入院になり、だが提督の数が足りないという理由で、大本営から任命され、仕方なく一時復帰という形で私が再び戸利合鎮守府に着任した 提督(始めは大変だった。 古参の皆は私と顔をあわせる度に泣き出すわ、謝罪しまくるわ、お詫びと称して寝床に忍び込むわでロクに眠れませんでした 提督(ですがその甲斐あって心を病んだ金剛をはじめ、榛名、天龍、扶桑、利根、その他おかしくなっていた艦娘達は本来の姿を取り戻しました。 これで後は現提督が戻ってきてくれれば、私はお役御免となり、再び住職様の待つ寺に帰れる…はずなのですが… 執務室 カリカリカリカリ…… 提督「大淀、この書類を大本営に送ってください」 大淀「はい、畏まりました!」 提督「フフフ…毎日元気ですね」 大淀「いつまでも落ち込んでいられませんから!(それに私はこうやって常に提督のお側に居られる!こんな幸せを1秒でも無駄にしたくありません!
次の提督「無人島生活?」 大淀「はい。 まぁでも好きな物を一つ持っていけるのはありがたい。 何持って行こうかな.... やはりナイフとか..... 」 大淀「ナイフ..... ?提督好きな者ですよ?」 提督「ああ、好きな物だろ?」 大淀「いえ、好きな「者」です」 提督「........ は?」 大淀「提督には1週間一緒に無人島で生活する艦娘を1人選んでいただきます!」 提督「............ 」 -------------------------------------------------------------------- 榛名 大淀「では1週間頑張ってくださーーい!!」 ボートで立ち去る 提督「...... すまんな榛名....... 変な事に巻き込んじまって」 榛名「いえ!榛名は大丈夫です!榛名!この1週間全力を尽くします!」 提督「ああ、頼りにしてるよ」アハハ 榛名 提督と1週間2人きり.... つまりこの1週間榛名が提督を独り占めできる.... !この機会..... 逃しはしません.............. いや、無人島に来たんだ。 やはり最初は水や寝床の確保から始めようかと思ってな」 榛名「了解しました!」 ---------------------------------------------------------------------- 無人島生活1日目 提督 けっこう森の深い所まで来たな..... 」 チョロチョロチョロチョロ 榛名「あ、提督。 いえ!榛名には勿体無いお言葉.... あとは近くに寝床を作るだけだ!榛名?」 榛名「はい!どうかなさいましたか?」 提督「俺は今から寝床を作るが、榛名には食料の確保をお願いしたい!頼めるか?」 榛名「はい!了解です!榛名全力で探して来ます!」ピュー 提督「榛名も張り切ってくれてるし、俺も気合入れていい寝床つくんないとな」 榛名 とりあえず張り切って来たものの..... 何を採ればいいのでしょうか?.... あ、あれは?」 ヤシの木 榛名「フー....... フンッ!!!」バコォン!!! ヤシの木「ゴホォォォン!?!?」 榛名「ヤシの実2つ.... 榛名やりました!」 ヤシの実「我が生涯にいっぺんの悔いなし....... 」プシュ〜〜 榛名「提督!榛名!ただ今帰還しました!」 提督「お帰り榛名。 」 妖精さん「!?ガサゴソガサゴソ...... 」 提督「........... まぁいい!榛名、飯にしよう!」 榛名「はい!」 提督「とりあえず火もおこせたしキノコを焼いていくか、あとヤシの実どうするかな..... 」 榛名「提督!お任せください!」 提督「榛名?」 榛名「フー、ホォアタァ!」人差し指ズボッ 提督「!?!?!?」 榛名「どうぞ!提督!」ニパー 提督「あ、ありがとう」ポカーン ---------------------------------------------------------------------- 提督 この後も特に困る事なく順調に無人島生活を過ごして行った。 無人島生活5日目の夜 提督「さて寝るか.... 明日で無人島生活も最後だ。 頑張ろうな」 榛名「はい!提督!」 提督「うむ。 ではおやすみ」 榛名「おやすみです.... 提督」 提督「zzz..... zzz」 榛名「............ 少しくらい触ってもいいですよね..... なんか顔に違和感がなくもないんだが..... 顔洗いに行くか」 パシャ! 提督「フー....... ごめん...... 」 榛名「...... 提督に榛名の裸見られました.......。 それに提督の物も...... 」 まさか水浴びしてるとは思ってなかった..... それにしてもエr.... 綺麗だったな 榛名「提督..... 」 提督「榛名..... さっきは..... すまん」 榛名「........ ふふっ」 提督「?」 榛名「提督?気にしないでください。 事故みたいな物ですから」ニコッ 提督「ならいいのだが」 榛名「はい!榛名、食料を調達して来ますね!」 提督「な、なぁ榛名!」 榛名「どうしました提督?」 提督「その..... 綺麗だったぞ.... 」 榛名「!.... あ、あーん」パクッ 提督「どうだ?甘くて美味しいだろ?」 榛名「はい!とても甘くて美味です!」 提督「だろ!」 初めて見る果実だったがまぁ大丈夫だろう。 甘くて美味かったし --------------------------------------------------------------------- 提督「はぁ.... 腹も膨れたし寝るか!」 榛名「........ はい」 提督「どうかしたか榛名?」 榛名「いえ.... 榛名は大丈夫です.... 」 提督「顔が赤いぞ?本当に大丈夫か?」 榛名「提督.... 身体が..... 熱いです....... 」 提督「風邪か?いや艦娘が風邪をひくなんて聞いたことが...... 」 榛名「提督!」ガバッ 提督「うわっ!どっどうしたんだ榛名!?」 榛名「提督..... ん?なんか俺も熱くなってきた.... んぁぁ... そっソレ... 気持ち... あぁあ... もっと榛名のアソコかき回して... 提督の指で... !イッ...... イクゥゥ~~ーーーーーー!!!」プシュ!ビリュ! 提督「ハァハァ..... イッたばかりですから........... あぁぁ... 榛名の中に入ってきて... んあぁ... ピクピク... はぅぅぅあぁぁ... はぁはぁ 提督「動くぞ榛名!」 榛名「ゆっくり... お願い.... 敏感になってる... からゆっくり... ゆっくり... 俺我慢できん..... はぁはぁ....... 」ビクッビクッ 提督の熱いの感じる.... すまんっ.... って榛名?」 榛名「あぁ.... 」 ムスコ元気100倍 榛名「はぁはぁ.... 」 榛名「責任っ、とってくれるんですよね?」 提督「.....
次の13 ID:jbnGtj2L0 元提督「(帰りに買った雑誌を開いたら金剛が記事に載っていて、驚いたりもしたっけ)」 元提督「(勿論戦時中とは顔が変わっている。 彼女らしいや、と感じた)」 元提督「(しかし何より、嬉しかった。 わざわざ訪ねてきてくれたことが)」 元提督「(最初は一週間に一回は訪ねてきたっけ。 彼女もまた、兵器でなく、社会の一員となったのだ」 ?「忌まわしき時代のことを想起させるような人物と交際を続けると思うか?」 元提督「誰だお前は……?俺の何を知ってるって言うんだ、金剛の何を知ってるって言うんだ」 ?「愚問だな」 提督「俺はお前だよ。 55 ID:jbnGtj2L0 元提督「鈴谷に出くわした時もあったな」 提督「ああ、そうだ。 電車の中だったな」 元提督「すぐにわかった。 あの、髪を中指と薬指でかきあげる癖……取れてなかったな」 元提督「俺だってそう艦娘と接触することばかり望んでたわけじゃないぞ」 元提督「普通の少女のように制服を着て携帯をいじる鈴谷の姿」 元提督「ちら、と見るだけで……満足だったさ」 提督「よく言う。 お前は何かを求めていた」 元提督「……は?お、おい、俺が何をしたって言うんだ」 提督「中年が鈴谷の尻に伸ばした手を掴んで、取っ組み合いになった後だよ」 元提督「…………」 提督「お前はホームで中年もろとも駅員に取り押さえられた時、鈴谷を見た」 提督「ずっとだ。 ずっと、見ていた。 93 ID:jbnGtj2L0 提督「ああ、何も反応を示してはくれなかったな。 邪念が叶わなくてよかった」 提督「明らかに中年にも気づいていたし、お前にも気づいていた」 提督「けれど気味の悪い虫を見るような目をくれて、それっきりだ」 提督「お前はその喧嘩騒ぎで一気に降格されたんだよな」 元提督「……俺は……」 提督「黙れよ。 これ以上何を求めようとしたんだ?」 提督「世間知らずの少女たちを戦場に送り出しておいて」 提督「やっと戦いが終わったのに、お前はまだ何かを求めるのか!」 元提督「…………そんな……ことは……」 元提督「…………」 提督「……お前はもう幸せを味わっただろう。 あの鎮守府での日々を思い出せ」 元提督「…………」 提督「これ以上求めるんじゃない。 83 ID:y2XSxFtZ0 提督「加賀の様子だってわかったじゃないか」 元提督「……あ、ああ。 夫になるって人が、わざわざ挨拶しに……」 提督「全く幸せ者だよお前は」 提督「途中で戦死しても、善良な艦娘たちの中で一生分の幸せは味わっていただろうに」 提督「生き残り、あまつさえちゃんと彼女が幸せになったことを確かめられるとはね」 元提督「……いい人だったな……」 提督「ああ。 加賀は幸せになれるだろうな」 提督「問題は赤城だ。 海の底から、どんな思いで見てるかなぁ、え?」 元提督「……っ……」 提督「お前は彼女を殺したんだぞ?いいか、死に追いやったんじゃなく、殺したんだ!」 提督「ケッ、睡眠不足なぞ、采配ミスの言い訳にもならない」 提督「作戦が成功したおかげで有耶無耶になって良かったな、え?」 元提督「…………」 提督「まぁ最も、加賀の夫は、最後に来たときはこう言ってたけどな」 提督「『妻にもう会わないように言われたので』」 元提督「…………」 提督「お前には恩を返すようなことはできないんだよ」 提督「だけど、彼女たちはお前への貸しは忘れてくれるだろうさ」 提督「赤城はどうだかな……フン」 提督「お前はひたすら慎ましやかに生きればいいんだ。 25 ID:y2XSxFtZ0 提督「それをお前は……まったく、大変なことをやらかしたもんだよな」 提督「今すぐ叩き切ってやりたいが……軍刀が汚れるなぁ?え?」 元提督「…………」 元提督「……教えてくれ、俺は……」 元提督「……俺は……朝潮を、本当に……殺して、しまったんだろうか……」 提督「ヘン、夢でだか現でだか知らないが……」 提督「お前、唯一忘れないでいてくれた朝潮に動物的な感情を爆発させる光景を見たんだろう?」 提督「行方不明になってるんじゃ、現での出来事じゃないのか」 提督「バラバラにでもして、捨てたんじゃないのか、え?」 元提督「…………わからない……何も……」 提督「……お前は信じがたいほどのクズ野郎だな……」 提督「じゃあ言ってやる。 やったんだ、お前は」 元提督「…………」 提督「お前は鎮守府が解体されて、幸せを取り上げられることに我慢ならなかったんだよ」 提督「で、ようやく甘やかしてくれた朝潮が遠くに転校すると知って……」 提督「絞め殺した上『とんでもないこと』をしたんだ」 提督「ようやく過ちに気がついたお前が、妥協を自分に納得させるために作り出したのが俺だ」 提督「どうだわかったか?満足か?疑うのなら、そこの押入れを見てみろ。 03 ID:y2XSxFtZ0 ゴトゴト バサッ 提督「おい何やってる?紐を編んで内職でもするつもりか?」 提督「お前が何をやったところで、何も変わらないし、何もなかったことにならない……」 ヒュルッ バサッ グルグル ギュッ 提督「…………まさかお前……」 提督「逃げるのか」 提督「全てから……」 提督「本当にお前はクズ野郎だな」 元提督「いいんだ、これで。 これでいい」グッグッ 提督「…………」 プアオ プアオ プアオ プアオ 提督「……ほら、サイレンの音が聞こえてきただろう」 提督「あれがここに来るまで待てば、多少償えるかもしれんぞ」 元提督「無理だ。 これでいいんだ、俺なんて」ギュッ ゴトリ 元提督「俺が居なくなった方が、ずっと、恩返しができる」 元提督「ほんの僅かだけどな」 提督「……妥協したか……訂正する。 やっぱりお前は、俺じゃない」 元提督「……ククククッ。 いや、お前は俺さ」 元提督「お前が妥協し、妥協し、妥協することで俺になるんだから……」 元提督「同じレールの前後でしかないんだよ、どんなに状況が違かろうと、矛盾はない」 元提督「これが……必然。 96 ID:y2XSxFtZ0 某所 女「……テレビテレビ、っと」 ピッ テレビ『横須賀少女バラバラ殺人事件に関する速報が入ってきました』 女「(これ、最近騒いでるやつじゃん)」 テレビ『警察の発表によると、警察が自宅に踏み込む直前に容疑者の男性は首吊り自殺を図り……』 テレビ『病院に搬送されましたが、その後、死亡が確認されたということです』 女「……ん?」 テロップとともに画面に映し出された、容疑者の顔写真。 女はどこかで見たことがある気がしたが、思い出せないでいるうちに、CMへと切り替わった。
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