蓄膿症(副鼻腔炎)になると黄緑色のネバネバした膿が鼻の奥にある空洞(副鼻腔)に溜まってきます。 サラサラした鼻水であれば鼻から外へ出てくれますが、粘着性の強いこの膿は自然には外へ出てくれません。 膿が増えると鼻づまりで息が苦しくなりますし、また、痛みや口臭、匂いがわからないなどの症状も酷くなっていきます。 今回はこの膿を出す方法をご紹介します。 膿を出す4つの方法 膿を出すには主に4つの方法がありますが、自宅で手軽にできて、効果が高い方法に 鼻うがいがあります。 インドではお茶を入れる急須のような用具を使って、鼻から塩水を吸いこんで口から出しているのをテレビでご覧になったことはないでしょうか。 塩水を鼻から入れると塩水と一緒に 余分な粘液が流されるため、これを繰り返していくと溜まった膿がどんどん少なくなっていき、症状も改善していきます。 また、鼻うがいは風邪の予防、花粉症やアレルギー性鼻炎の改善にも効果があります。 実際のやり方については、この後の動画をご覧いただきたいと思いますが、その前に膿を出すその他3つの方法もご紹介しておきます。 また、自分で鼻をかめない赤ちゃんには電動の 「鼻汁吸引機」というのがあります。 ちなみに、これは大人でも使えるほどの吸引力を持っています。 それでは次に鼻うがいの方法についてお伝えします。 鼻うがいのやり方 鼻うがいを始めるためには自然塩とぬるま湯とそれを入れる容器が必要です。 塩の量は水量の1%未満くらいでよいでしょう。 それでは容器の主な3つのタイプをご紹介します。 【ネティポット】 ネティポットは急須のような形ですが、先端がより長くなったもので、プラスチックの物では1000円以下から購入できます。 次の動画ではこのネティポットを使って鼻うがいをしています。 【シリンジ型】 下の図はシリンジ(注射器)ですが、実際の鼻洗浄用のものは先端は尖っておらず、軟らかいゴム状のものになっています。 このタイプでは 「ナサリンの鼻腔洗浄器」がお勧めです。 鼻うがい特有の最初のツーンとした感じがほとんどありません。 水を入れる圧力を手元で調節することができます。 ナサリンの鼻腔洗浄器はスエーデンでは医療器具として認可されているほどの優れものです。 お値段は3千円弱です。 【電動式型】 置いたままできるので楽チンです。 ただ、値段が高いので(5千円超え)、ここまで高いものでなくても前述の2つで充分ではないかなと個人的には思います。 「ハナクリーン」など。 注意すること 鼻うがいをしてもうまく水を 吸引できないことがあります。 そのような時はたいてい膿の量が多かったり鼻づまりが酷い時です。 また、鼻うがいが上手くいっている人でも、以前よりは症状が良くなっても、それ以上は改善が進まないということがあります。 以上のような状況が続く理由は膿を出しても出しても、翌日にはまた新たな膿が生じて(増えて)いるためです。 これではせっかくの鼻うがいの効果が台無しです。 新たな膿を生じさせないためには、膿や鼻水の原因である粘液を増やす食事を避けることと免疫力を回復することです。
次の副鼻腔とは? そもそも 副鼻腔とは、頬、両目の間、額の下にある骨に囲まれた空洞のことです。 篩骨洞(しこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の 計4対の副鼻腔があり、それぞれ鼻の中(鼻腔)とつながっています。 副鼻腔の表面は粘膜で覆われ、せん毛と呼ばれる細かい毛が生えており、外部から侵入してきたホコリや細菌、ウイルスなどを粘液とともに外へ運び出す役割を持っています。 副鼻腔炎の原因 一般的に副鼻腔炎は、 風邪などによってウイルスや細菌などが鼻腔に感染し、引き起こされた炎症が副鼻腔まで広がることで引き起こされる病気です。 ほとんどの場合 1〜2週間ほどで治り、 急性副鼻腔炎と呼ばれます。 いわゆる鼻かぜという状態です。 しかし放っておいたり、きちんと治療しなかったりすると、 症状が長期化・悪化してしまい、 慢性副鼻腔炎になってしまうことがあります。 いわゆる「ちくのう症」のことですね。 本来なら副鼻腔に溜まった膿は、鼻腔に流れ排出されて、症状も快方へ向かいます。 しかし、 炎症の悪化によって副鼻腔と鼻腔がつながっている部分が腫れ、副鼻腔に溜まった膿が排出されにくくなってしまいます。 その結果、細菌感染が繰り返されて症状が長期化・悪化してしまうのです。 一般的に3ヶ月を超えて症状が続く場合を慢性副鼻腔炎と呼び、長期的な治療が必要となるケースも少なくありません。 その他にも、 アレルギー性鼻炎やぜんそくの疾患を持っていたり、鼻中隔(鼻の中を左右に仕切る壁)が曲がっていたりする場合、副鼻腔炎を引き起こしやすくなります。 また、ぜんそく患者さんには難治性の副鼻腔炎 好酸球性副鼻腔炎 を認めることもあります。 また、 遺伝的な原因も強く、両親が副鼻腔炎の場合、子どももかかることが多いとの研究結果もあります。 副鼻腔炎の症状 副鼻腔炎によって引き起こされる、おもな症状を紹介しましょう。 鼻づまり 炎症によって 粘膜が腫れて鼻水が流れにくくなったり、鼻水が粘り気を帯びたりすることで、鼻がつまりやすくなってしまいます。 鼻水、後鼻漏 はじめのうちは透明なサラサラとした鼻水ですが、 副鼻腔の炎症が悪化し膿や分泌物が溜まると、粘り気のある黄色や緑の鼻水へと変化します。 よく「色のついた鼻水は細菌が混ざっているから」といわれますが、じつはそれは間違いなんです。 粘膜がはがれ落ちたものや、含まれる白血球が増え、それらに色がついているため鼻水の色も変化する、というのが正解です。 さらに、 いくらかんでもかみきれないほどの鼻水や、いやなにおいのする鼻水が出ることも多くみられます。 とくに慢性副鼻腔炎の場合、 鼻水がのどの方へ流れる「後鼻漏(こうびろう)」がみられることも多く、 咳や痰、のどの違和感を引き起こします。 頭痛や顔面痛 目の付近や頬や歯、額、頭など、 副鼻腔内のどの場所に炎症が起こっているかによって、痛みがあらわれる場所は異なります。 とくに 急性副鼻腔炎では痛みが強く感じられます。 一方、 慢性副鼻腔炎では痛みよりも、頭の重さや疲労感といった症状があらわれる場合が多くみられます。 鼻ポリープ(鼻茸) 副鼻腔の炎症により、 粘膜の一部が鼻ポリープ(鼻茸)となってしまう場合もみられます。 逆に 鼻ポリープが原因となって、副鼻腔炎を引き起こしてしまうこともあります。 慢性副鼻腔炎の1〜2割程度の患者さんにみられ、 できる数も1つとは限りません。 悪性ポリープではないものの、 鼻づまりや鼻水、臭覚障害、頭痛などを引き起こします。 内視鏡手術によって取り除く場合もありますが、薬物療法で小さくできるケースもあります。 咳や痰 副鼻腔の炎症がのどへ広がることや後鼻漏が原因で、咳や痰の症状が多くみられます。 逆に、 のどの炎症が副鼻腔へ広がり、副鼻腔炎の原因となる場合もあります。 かぜが治っても咳や痰が続く場合は副鼻腔炎が原因の場合もあります。 臭覚障害 鼻の粘膜に炎症が起こることで 匂いの分子が感知されにくくなったり、匂いを感知する神経に異常が発生したりして、臭覚障害が引き起こされることもあります。 前述したように 鼻ポリープによって、匂いが感じにくくなってしまうケースもみられます。 副鼻腔炎は合併症を引き起こすことも 副鼻腔炎は放っておくと悪化して、合併症を引き起こすことがあります。 とくに、中耳炎には注意が必要です。 耳と鼻は耳管を通じてつながっているため、 鼻の炎症が耳(中耳)に感染したり、耳管のはたらきを悪くしたりすることで、中耳炎を引き起こしてしまうことが少なくありません。 さらに、 まれではありますが炎症が目や脳に及び、目の痛みや視力障害、脳膿症や髄膜炎を引き起こしたり、脳の炎症の場合、重い後遺症や死に至るケースもみられます。 いずれにしても、 副鼻腔炎は放置せず、しっかりと治療することが重要です。 副鼻腔炎の検査 副鼻腔炎の疑いがある場合、耳鼻咽喉科を受診しましょう。 診察ではまず問診をおこなった上で、次のような検査がおこなわれます。 鼻鏡や内視鏡による検査 まず、 鼻鏡とよばれる鼻の内部をみる医療器具や内視鏡を使って、粘膜の腫れの度合いや鼻水の状態などを確認します。 レントゲンやCT、MRI検査 鼻の状態をよくみた上で、 必要があればレントゲンやCT、MRIといった画像検査をおこないます。 炎症が起きている場所や、炎症の広がりなどを正しく確認するためです。 また腫瘍性病変や真菌 カビ による副鼻腔炎などとの鑑別を行う目的もあります。 細菌検査 炎症の原因となっている細菌の種類を調べるためにおこなう検査です。 鼻腔やのどの奥に細長い綿棒を突っ込んだり、吸引装置を使ったりして鼻水を採取し、検査をおこないます。 副鼻腔炎の治療法 それでは副鼻腔炎にかかったら、どのような治療がおこなわれるのでしょうか? 薬物治療 急性副鼻腔炎の場合には、 まず症状を抑える薬が処方され、症状の程度によっては抗生剤が処方され、一般的に服用期間は2週間以内です。 一方、 慢性副鼻腔炎の場合では少量の抗生剤が処方され、1〜3ヶ月ほどの長期間に渡って服用します。 いずれの場合も、 あわせて鼻水や痰を出しやすくする薬が処方されることも多くあります。 鼻吸引や鼻洗浄 鼻水が溜まったりつまったりしている場合には、吸引して取り除きます。 また鼻腔から副鼻腔へ細い管を通し、 生理食塩水を注入して副鼻腔内を洗浄することもあります。 ネブライザー療法 抗生剤などを含んだ薬液を霧状にして、鼻から吸い込む治療法です。 鼻吸引や鼻洗浄をおこなったあとにネブライザーをおこなうと非常に効果的です。 内服する場合に比べて 使用する薬も少量ですむため、副作用が少ないという特徴もあります。 手術療法 いずれの治療法も効果があらわれない場合、炎症を起こしている粘膜部分や鼻ポリープを取り除く手術をおこなうこともあります。 以前はメスを使って切開する外科的手術が一般的でしたが、 近年では内視鏡での手術を行う施設がほとんどです。 手術後も定期的に通院し、薬物療法やネブライザー療法などを続ける必要もあります。 副鼻腔炎にならないためには? 副鼻腔炎にならないためには、日常生活の中でどのような点に気をつけるとよいのでしょうか? できるだけ風邪を引かない・鼻水や鼻づまりを長引かせない 副鼻腔炎の 原因の多くが風邪を引くことです。 普段から手洗いうがいをやバランスのよい食事、規則正しい生活を心がけましょう。 もし 風邪を引いてしまい、鼻水や鼻づまりが長引く場合には、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することも大切です。 またたばこの影響もありますので禁煙及び間接喫煙を防ぐようこころがけましょう。 鼻のかみ方に注意 鼻を勢いよくかんでしまうと、鼻の細菌が耳管を通じて耳に入り込んでしまい、中耳炎の原因となってしまうことがあります。 他にも鼻血が出たり、耳が痛くなったりすることもあるため、 鼻はゆっくりとかむようにしましょう。 片方ずつ、少しずつかむことがコツです。 とくに子どもは鼻のかみ方が下手な場合が多いので、注意してみておきましょう。 鼻を自分でかめない小さな子どもの鼻がつまっていて苦しそうな場合には、市販の鼻吸い器を使って吸い出してあげるとよいですね。 子どもの様子をチェック 子どもは自分から症状を訴えるのが苦手なので、様子を注意深くみてあげることで、身近な大人が気づいてあげるようにしましょう。 頻繁に鼻をすすっていたり、痰が絡んだような咳をしていたり、またはいびきがひどいなどの子どものサインを見逃さないことが、重症化しないためには大切です。 まとめ 身近な副鼻腔炎ですが、 悪化すると睡眠を妨げたり、集中力が落ちたりと、日常生活の質の低下も引き起こしてしまいます。 風邪が治ったのに、鼻水、 鼻づまり、咳、痰がいつまでも長引いているなら、副鼻腔炎かもしれません。 慢性副鼻腔炎の場合には 治療が長期化することもありますが、完治するまで根気強く通院することが大切です。 鼻の違和感に気づいたらできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診し、治療をはじめることをおすすめします。
次の副鼻腔炎(蓄膿症)の嫌な臭いの原因とは!? 蓄膿症(副鼻腔炎)の臭いのもとは、黄色ブドウ球菌などの細菌の増殖と、口呼吸の回数が増えて口の中が乾いている状態が続くことです。 蓄膿症になると、細菌と戦った白血球の死骸が副鼻腔のなかに膿としてたまっていきます。 鼻うがいのやり方 一番の解決法は蓄膿症や副鼻腔炎そのものを治療することですが、鼻うがいで症状が軽減することもあります。 鼻うがいは、鼻や鼻腔の中の細菌を洗い出すことで臭いの改善が期待できるといわれています。 生理食塩水を用意し下記のように行いましょう。 効果をあげるための注意点 鼻うがいは、やり方によっては、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。 鼻うがいを行う際の注意点について確認しておきましょう。 ・鼻に食塩水を入れるときは上を向きすぎない 鼻に食塩水を入れるときに、吸い込みがうまくいかずに上を向いてしまうことがあります。 しかし、大きく上を向いてしまうと、食塩水が耳に入り炎症を起こしてしまうことがあります。 前かがみの姿勢が基本です。 ・食塩水を吸いながら、唾液を飲み込まない 鼻から水を吸いながら唾液を飲み込むと、食塩水が耳に入ってしまうことがあります。 食塩水が耳に入ると中耳炎を引き起こすことがありますから、唾液を飲まないように注意しましょう。 ・鼻を強くかみすぎない 鼻うがいの後に 鼻を強くかみすぎると、中耳炎や、鼻の粘膜に炎症が起こってしまうことがあります。 軽くかむ程度にしましょう。 ・1日に1〜2回程度 鼻に不快感がある人は、鼻うがいに慣れてくると何度も行いたくなるかもしれません。 しかし、 鼻うがいのやりすぎは粘膜を傷つけてしまいます。 1日に1、2回程度にしましょう。 炎症がひどすぎるとき、のどの痛みがあるときは、鼻うがいではなく、まずは耳鼻科を受診しましょう。 ・子供は耳鼻科へ 鼻うがいは簡単にできる一方で、注意点も多い方法です。 小さな子供が、きちんと方法を理解せずに行うことは、中耳炎などを招きかねません。 耳鼻科を受診して処置をしてもらう他、子供にも適した対処法をアドバイスしてもらいましょう。 鼻うがいには、鼻うがいを目的にした洗浄液や、生理食塩水の使用がすすめられています。 鼻に真水が入ると「ツーン」という痛みが生じますが、いずれの方法も不快感なく行える方法です。 あらかじめ粉が個包装になっていたり、専用の鼻うがい器があるため、鼻うがいが苦手でも、取り組みやすいかもしれません。 ただし、市販薬を使うときは、その薬や洗浄器に合った使い方をすることが大切です。 たとえば、洗浄機の洗浄や部品の交換など、定期的なお手入れが必要になります。 また、もったいないからと残った洗浄液を使うことも止めましょう。 病院の治療と併行することが大切 臭いのもととなる蓄膿症(副鼻腔炎)は、鼻うがいだけで解消されるものではありません。 副鼻腔炎や蓄膿症の治療では、状態によって薬物治療や、ネブライザー治療などを行いながら、鼻うがいを補助療法として取り入れていきます。 また、規則正しい生活や、食生活など、基本的な生活週間も大切なポイントです。 副鼻腔炎(蓄膿症)は治りにくく、治療をあきらめてしまう人もいるかもしれませんが、根気強く続けていくことが必要です。 口臭(ドライマウス)を予防する方法 副鼻腔炎や蓄膿症で鼻が詰まると、 口呼吸が増えて口の中が乾燥(ドライマウス)して口臭が悪化します。 水分を補給する、アメやガムを口に含んで水分量を維持する、歯みがきをする、マウスウォッシュや口臭ケア用品を使うなどの方法で、口の中を潤すことが効果的とされる解決策です。 また、食事は時間をかけてしっかり噛んで食べること、梅干しなど唾液の分泌を促進するものを積極的に食べることも良いでしょう。 あまり気にしないことも大切 副鼻腔炎(蓄膿症)の臭いは人によって様々ですが、通常の鼻水と比べ物にならないほど強烈です。 主にくしゃみをしたときに臭いを自覚する人が多いといわれています。 しかし、多くの場合、蓄膿症や副鼻腔炎の臭いが他の人に気づかれることは少ないといわれています。 これは、臭いを放つ膿が鼻の奥にあるからです。 そのため、体臭と異なり周囲の人にも気づかれる心配はほとんどありませんから、あまり気にしすぎず、コミュニケーションを楽しみましょう。 おわりに:臭いを抑えるのに最も効果があるのは、蓄膿症を治すこと 副鼻腔炎(蓄膿症)の臭いの原因や対処法について見てきましたが、いかがでしたか? 鼻うがいやはすぐに取り組める方法もではありますが、 最も有効とされる対処法は副鼻腔炎(蓄膿症)そのものを治すことです。 症状が続くときは我慢せず、早めに病院で治療を受けましょう。
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