ミュージシャン同士が指名し合いながら歌わせる、という企画です。 先日はTOZYさんからバトンを受け取りましたが、今回はあのチロリンさんから。 ありがとうございます! 「コロナには負けたくないのだ。 」 な気持ちを込めて、奥田民生さんの名曲『モグラライク』をカバーしました。 俺たちは絶対に負けないよ! さて。 このバトンは・・・。 きっと油断しかしていないであろうキミしかいない。 は、たくさんありますね。 ユニコーンの人で、パフィーのPで、陽水さんと一緒にやってて、一人股旅とかもやってて。 そのたくさんある中で、俺にとっての民生さんは「レスポールを引く人 」です。 レスポール、とはジャズギタリストの名前。 1950年代後半、ギブソン社というアメリカのギターメーカーが、レスポールさんのためにシグネイチャーモデルを作りました。 それが俗に言われている「レスポールモデル」で、今やギブソン社を象徴するエレキギターです。 ギブソンのレスポールは、俺のはじめてのエレキギターでもあります。 民生さんの奏でるレスポールはパワフルでスイートで、無骨なロックサウンド。 俺も民生さんにあやかりたい!という気持ちも込めて、レスポール弾き語りをカマしたのでした。 ぜひ聴いてねー。 第三者がコンテンツおよび宣伝を提供し、訪問者から直接情報を収集し、訪問者のブラウザにCookie(クッキー)を設定したりこれを認識したりする場合があります。 このGoogleアナリティクスはトラフィックデータの収集のためにCookieを使用しています。 このトラフィックデータは匿名で収集されており、個人を特定するものではありません。 この機能はCookieを無効にすることで収集を拒否することが出来ます。 お使いのブラウザの設定をご確認ください。 これはブログの標準機能としてサポートされている機能で、スパム・荒らしへの対応以外にこのIPアドレスを使用することはありません。 全てのコメントは管理人が事前にその内容を確認し、承認てから掲載されます。 あらかじめご了承下さい。 次に掲げる内容を含むコメントは管理人の裁量によって承認せず、削除する事があります。 ・誹謗中傷するもの。 ・わいせつな内容。 ・法律によって禁止されている物品、行為の依頼や斡旋などに関するもの。 ・公序良俗に反するもの。 管理人によって承認すべきでないと認められるもの。 権利を侵害する目的ではございません。 記事の内容や掲載画像等に問題がございましたら、各権利所有者様本人が直接メールでご連絡下さい。 確認後、対応させて頂きます。 当サイトからリンクやバナーなどによって他のサイトに移動された場合、移動先サイトで提供される情報、サービス等について一切の責任を負いません。 当サイトのコンテンツ・情報につきまして、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、誤情報が入り込んだり、情報が古くなっていることもございます。 当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
次のTEXT:鈴木亮介 奥田民生が帰ってきた!そう胸を躍らせたファンも多いだろう。 「拳を天につき上げろ」(2012年1月発売)以来1年8ヶ月ぶりのシングルだ。 また、ソロ名義では約1000日ぶりとなるオリジナルアルバム『O. Come Home』がリリースされることが決定。 約1年10ヶ月ぶりの全国ツアー決定に湧く中、ファンを立て続けに喜ばせた。 久々のソロツアー。 ニューアルバム『O. Come Home』は全曲全パートを 奥田民生自ら演奏し収録したものであることから、「アルバムの曲はツアーではやらない」と宣言し始まった全国ツアー。 その最終2公演の1日目、アルバム発売日である11月27日(水)@中野サンプラザの模様をレポートしたい。 奥田民生と同じこの日に、記念すべき1stフルアルバム『ツムギウタ』をリリースした彼女。 温かい拍手の中、アコースティックギターを手に、一人ステージに立つ。 「はじめましてこんばんは、 住岡梨奈と言います。 よろしくお願いいたします」あどけないキュートな喋り声とは対照的に、 Taylor Swiftの「We Are Never Ever Getting Back Together」を力強く歌い上げる。 喋り声同様に歌声も独特の声質を持つ 住岡梨奈、1曲目が特に Taylor Swiftのカバーだったからであろうか、日本人離れしたスケール感と、木の温もり、火の温かさを感じさせる。 さらに、 斎藤有太を招き、キーボードをバックに2ndシングル「ハレノヒ」と3rdシングル「ナガレボシ」を演奏。 大舞台に緊張した様子を見せつつも、大自然を感じる伸びやかで透明感のある歌声を披露する。 住岡梨奈がオープニングアクトの大役を果たすと、いったんステージは暗転。 同時期に列島を沸かせた Paul McCartney来日にちなんでか「Come Together」、「Revolution」など The Beatlesの Lennon-McCartney作品がBGMに流れる。 4人は一礼すると、各々セッティング。 そして 湊雅史のカウントで、待ちに待った開幕!ステージセットに合ったブルージーなギターフレーズとハープが響く1曲目は、ニューアルバム収録曲であり PUFFYへ提供したのちセルフカバーした「マイカントリーロード」。 四者四様に音を届け、客席もゆったり揺れ始める。 サビ前の「海岸通り 僕のストーリー」で 小原礼とのハーモニーが決まり、サビの「OK行ってみよう」で観客が一斉に右手を挙げる。 1年10ヶ月ソロ公演を待ち続けていたことなんて一瞬でどこかへ吹き飛んでしまう。 OT、カムホームだ。 続く2曲目は2004年リリース『LION』の最終トラック「青春」。 さらに3曲目は1998年リリース『股旅』収録の「ツアーメン」と、スローテンポな曲が続き、客席も思い思いに体を揺らしている。 ここぞという所で心の琴線をも揺らすハープ、ゆりかごのようなゆったりとした重低音が心地良い。 軽快なギター、ドラムにつられて、客席からは自然とクラップが発生する。 ツアーメンと客席とが1つになる瞬間、これぞ円熟。 序盤3曲でまず大きな印象として感じたのは、音の厚み、ゴージャスさだ。 そうした歴史を振り返ってみても、改めてこれらの曲の厚みが増していることに驚かされる。 4曲目「カイモクブギー」でも音階をのぼるコーラスと温かなクラップが見事に決まる。 さて気になるのは本日一発目のMC。 中野サンプラザのステージに立つのは LOUDNESSとの共演(2009年の「 樋口宗孝追悼ライブ2009」)以来とのことで、「あと100年くらいやっていてもらわないといけないから様子を見に来ました。 こういう昔からある所は、なくなると困るので。 俺が言っても、なくなる時はなくなるんですけど…」となぜかシリアスな話からスタート。 「久々にソロアルバムを出した大御所ということでね」「(年末にアルバムを出したので)今年ものすごく活躍したという印象のまま終われます」と笑わせつつ、ほろ酔い気分?で冗舌モード、「タ~ミオ!」とすかさず 小原礼が制す。 「ものすごく頑張ったアルバムなんで…今回のツアーとアルバムは基本的に別物なんでね、それ(アルバム)は一人でやったやつなんで…そんな所ですね、言いたいことは。 言いたいことをもう言ってしまったので、あとはもう2,3曲やって帰ります」まさかの 住岡梨奈より曲目少ない宣言。 「酔ってないから!」小声で断りを入れた所で、演奏再開。 と、このモードから、まさかのセンチメンタルなナンバー「スカイウォーカー」。 「スカイウォーカー」のアウトロ、透明感あるギターが鳴りやみ、ベースが消え、最後はドラム…徐々に音の数が減っていくところから、拍手が鳴り始めるか否かのうちに、曲間を空けずに 奥田民生のレスポールがガレージサウンドを奏でる。 ギターに加えてベース、ドラムロール、キーボードと、だんだん大きくなる4人の行進のような音。 6曲目は「荒野を行く」。 映画のシーンが変わるようにガラリとステージの色が変わる。 この妙技に、われわれ観客はただただステージを見つめるしかできない! 「荒野を行く」は2000年リリース『GOLDBLEND』の冒頭に収録されたナンバー。 一曲弾き終わりました、拍手…さぁここからが本番だ! 斎藤有太の渾身のピアノソロは圧巻!ゆくたびゆくたび、手数が増えていくそのピアノソロを主役に、リズム隊もしっかりと引き立てる。 ジャズ?ロック?どちらでもあり、どちらでもない、まさにゴールドブレンドな音楽だ。 さらに続く7曲目「ちばしって」は 小原礼、 湊雅史それぞれの見せ場を作りつつも、「荒野を行く」とは対照的にスパッと簡潔に曲を締める。 フライングVに持ち替えた 奥田民生。 ここで客席から「明日いいとも!」と声がかかる。 翌日(=11月28日)にフジテレビ「笑っていいとも!」のテレフォンショッキング出演が決まったことから、「どうしようかなー(100分の1)アンケート」「今やってみたら?」MCはいいとも談議に。 MCは続き、ニューアルバムに絡めて「ラジオ聴いた?」と客席に問いかける。 この日・11月27日のアルバム発売に先立ち、アルバム収録曲が1曲ずつ様々なラジオ番組で先行初披露されていたのだ。 さらに、若手女優・川口春奈が出演したCMにもアルバム収録曲が起用された、という話に。 「あれ、アルバムの中から選ばれたんですよ。 あれを選んだのは…曲名が下に出るじゃない?それだけの楽しみかなって(笑)」「さ、そういうことで、その『チューイチューイトレイン』という曲を今からやります」 …そんな前置きで、『O. Come Home』から新曲「チューイチューイトレイン」がスタート。 メジャーコードで構成し、古き良きロックンロールサウンドを想起させるアップテンポナンバーだ。 明るいギターフレーズと快活なピアノが心地良い。 奥田民生はフライングVを華麗に操り、絶妙なギターソロを披露。 拍手が鳴りやむと、 湊雅史がドラムロール。 4カウントすると、ギターとピアノが緩やかなメロディを奏でる。 奥田民生ソロ曲の中でも屈指のスローテンポナンバー「3人はもりあがる(JとGとA)」だ。 ツアー初日の新木場コーストでは、オールスタンディングの客席に向けて「これほど盛り上がらない曲もないよね」と自嘲していた 奥田民生だが、この日は中野サンプラザという天井の高いホールに、4人のそれはそれは綺麗な音が見事に調和し、絡み合ってお香の煙のように天高くのぼっていく。 優しく叩く 湊雅史のドラム、 小原礼のコーラス、 斎藤有太のジャジーな鍵盤、そして 奥田民生の柔らかな歌声が、客席を揺らす。 そのゆったりムードのまま、10曲目はさらにスローなナンバー「いつもそう」。 夕陽が沈みゆく光景が浮かぶ。 2008年リリース『Fantastic OT9』の収録曲が2曲続いたが、比較的新しいアルバムの中でもこうした熟成感のある曲のチョイスが、今の 奥田民生の見ている方向を知る上で、ニューアルバム『O. Come Home』の魅力を堪能する上で、重要なヒントになりそうだ。 ツアーがあっという間に終わってしまう、と振り返る 奥田民生。 「もうちょっとないとさ、まだ実力の6割ぐらい。 あと7本後くらいが超うまいんだけどね」と客席を和ませる。 そして今回のライブで使用している、長年愛用してきたレスポールのレプリカギターを紹介。 その年代物のレスポール(のレプリカ)で披露するのは「あくまでドライブ」。 極上のギターフレーズはそこにいる誰もの耳を虜にする。 その音へのこだわりは国内のロックミュージシャンの中でもトップクラスたる 奥田民生だからこそ作れる、こんな贅沢な音の空間に、何もかもを忘れて浸っていたい。 奥田民生のファンは皆わかっている。 頭を振るとか手を振るとかそういうことに気を遣わないで、各々のスタイルで音の世界に没入していい、すべきである、ということを。 「はるかな道を 独特の道を…」この曲の山場は中盤に訪れる。 脳内の盛り上がりは最高潮!本当に贅沢極まりない、音の海に溺れていくような感覚だ。 それぞれがソロパートでしっかり見せ場を作れるのも、長い間奏がある「あくまでドライブ」の魅力。 湊雅史、 小原礼、 斎藤有太と来て、最後は 奥田民生の番。 のっそのっそとステージ中央に出てくる様が、クールな演奏とは対照的な仕草だったために客席を笑わせてしまう。 そういえば今回のツアーではステージ下手に 奥田民生、上手に 小原礼が陣取り、ステージ中央にはキャンプファイヤーの薪のようなセットがあるのみ。 思えばこの日、ステージ中央を堂々と使ったのはオープニングアクトの 住岡梨奈だけだ。 拍手喝采の中 奥田民生はすぐさまクールなギターリフを放り込む。 続く12曲目は「スルドクサイナラ」。 その名の通り鋭いフレーズが連発する、『Fantastic OT9』収録のナンバー、こちらはスパッと切り上げ、またも緩急使い分けが絶妙なラインナップ。 さらに、続くのはソロ初期のナンバー「悩んで学んで」。 18年前にシングルリリースされたこの曲が、これほどまでにギターを、ベースを、ドラムを深い味わえる曲だったとは、恥ずかしながらこの日まで気づけていなかった。 イントロ、3者が融合した瞬間に起きた鳥肌は今でも忘れられない。 耳の穴の中まで鳥肌が立ったのではないか、と思えるほど昇天のサウンドに、目が潤む。 そしてこの曲も例に漏れず、大人たちの円熟したボーカルがたまらない。 62歳・ 小原礼のコーラスが48歳・ 奥田民生の沸き立つ歌声に混ざり合い、極上のハーモニーを奏でる。 宇宙の果てまで広がっていきそうなエフェクト音が中野サンプラザを支配する。 高まり、高まり、高まっていったところで…パッと間髪入れずに「風は西から」を歌い出す。 原点回帰のギターロック。 ニューアルバムのリード曲ということもあり、観客は皆一丸となって拳を突き上げる。 客席の熱の高まりは、ステージにも伝播する。 「ありがとう!」 奥田民生も絶叫! 来年も休みがあまりなさそう、というファンには嬉しいMCがあったところで、いよいよライブも終盤。 15曲目は「MILLEN BOX」。 わずか6曲入りながら珠玉のラインナップでライブ登場頻度も高い、1997年発売のミニアルバム『FAILBOX』に収録されたナンバーだ。 奥田民生はステージ前方まで身を乗り出し、ギターをかき鳴らす。 この上ないグルーブの高まりを感じていると、そこにジャラーンと鳴るギター。 高音のハイハット。 奥田民生の雄叫びとベース、オルガン!待ってました!『Fantastic OT9』収録のアップテンポナンバー「イナビカリ」だ!黄色い悲鳴=イナズマが客席を走る!高速だ!倍速だ!ギターが全速力で泣き、客席も躍り出す。 ピカッと光るイナビカリを 奥田民生のギターで、後からドーンと轟く雷鳴をリズム隊が表現。 さらにその勢いそのままに、 小原礼のベースが愉快に地を這う。 17曲目は「まんをじして」。 斎藤有太の鍵盤も躍る! 中盤から終わりにかけて4人の爆音が驟雨(しゅうう)のごとくスパークする選曲が続いたが、そこにテンポの速さも加わった終盤のラインナップは、もう完全に客席をコントロールし、操り人形のように全員の体を心を揺らしまくる。 18曲目はこちらもアップテンポな「御免ライダー」。 「まんをじして」とこの曲は2002年リリースの『E』に収録されたライブ定番曲。 こうしてセットリストを振り返ると、ソロキャリア初のアルバム『29』、2005年リリースのミニアルバム『comp』の2つを除く全アルバムからピックアップされていることに気づく。 改めてそのキャリアの長さを感じる。 最後はみんなで乾杯!シングルリリースから1年を経てニューアルバム『O. Come Home』にも収録された「拳を天につき上げろ」。 ビールを飲み干した後の爽快感が漂うこの曲で大団円。 円熟無礙(えんじゅくむげ)の境地である。 メキシカンハットで揃え、特に 小原礼はポンチョを身にまとった完璧な中米スタイル。 4人の名を呼び、拍手をもらいつつ互いを称えると、すぐさま演奏スタート。 『Fantastic OT9』収録のちょっぴり切ないナンバー「なんでもっと」だ。 「あ~いとは~ ゆがみ~のつえ~」観客も皆、うっとりと聴き入る。 「ありがとう!」拍手が起こるのとほぼ同時に、そのままベースがリードし、シンバル、オルガン、バスドラム、ギター…とだんだんと加わり、ゆったりと音を奏でる。 そのペースのまま、 奥田民生がマイクに向かって歌とも喋りとも似つかない声を発する。 人力でエコーを模して、「ア、ア、ァ、ァ、…」「オウ、オゥ、オッ、ォ、…」何とも不思議なアンサンブルに。 そのうち、「ア、メ、フ、リ、デ、モ…」どこかで聴いたことのあるフレーズが。 そう、これは「マシマロ」だったのだ!ツアー初日にはこれで幕を閉じようとして観客からまさかの大ブーイング(もちろん、愛情込みである)を喰らった、「マシマロ・レゲエバージョン」だ。 初日に比べても曲としてのグルーブ感は高まっており、客席には歓びの声と笑いとが入り混じる。 それにしても、「マシマロ」がこれほどまでに幅を持つ曲になるとは、 奥田民生本人さえ作った当初は予想していなかったのではないか。 最近の 奥田民生ライブでは皆勤賞の「マシマロ」。 「オ!オ!オ~」のコール&レスポンス大合唱で会場と一つになると、最後は「ありがとう!さよなら!さよなら…」そこもエコー風に、笑顔で降板。 観客も大満足といった様子だが、それでもやはり「もう1曲、まだやっていないあれを…」と求めてしまうのがファンの性(さが)だ。 鳴り止まないアンコールに応えて、予定になかったダブルアンコール!忘れかけていたが翌昼にはテレフォンショッキング出演がある。 「僕明日早いんで、もうすぐ帰ります」と前置きし、ジャラーンと弦を弾く。 その瞬間、ここにいる全員の口元が緩む。 「さすらい」で、今宵最後の大合唱!キャンプファイヤーの薪は全て燃えきった。 そして、ステージも客席も、それぞれの表情は皆、朝日に照らされたように明るく、朗らかになった。 もう何百回、何千回と聴いて、小生の大好きな曲の一つである「さすらい」。 今回のツアーを振り返った時、なぜか大きな印象として残っていない。 それはおそらく、ここまで 奥田民生が走ってきた道を現在の立ち位置から振り返った時に、既にその姿が確認できないほど後ろになってしまった、ということを意味しているのではないか。 そして、 奥田民生が見据えている先は、世界レベルで見ても前人未到の領域ではなかろうか。 「最強のこれから」は、まだ始まったばかりだ。
次の2010年に行った、客前でレコーディングしながら1公演1曲完成させて配信し、あとでアルバム(『OTRL』)にまとめる、という前代未聞のツアー『ひとりカンタビレ』の延長線上にある「ひとり宅録全部見せます」企画、『カンタンカンタビレ』(途中からゲストミュージシャンも参加)。 寺岡呼人・斉藤和義・浜崎貴司・トータス松本・YO-KINGとのバンド=カーリングシトーンズ全員で、演奏したり大喜利をやったり、岸田繁・伊藤大地とのバンド=サンフジンズ全員で、演奏したり電車の話をしたりする、そんなさまを見せ、聴かせる、『カンタンテレタビレ』。 バーチャル背景を活用して「弾き語り映像」や「メンバー全員奥田民生バンドの映像」や「メンバー全員奥田民生のコーラスグループ映像」をアップしていく『カンタンバーチャビレ』。 機材を紹介したり、自分が持っている「家が買えるレスポール」とその再現モデル2本ではいかに音が違うのかを比較したり、ヘロスタジオでドラムを録れないものかと工夫する『謎ドラム実験』を行ったり、ギターの弦2本だけでロックンロールを弾く方法を伝授したりする、『カンタンカンタビレ番外編』。 と、企画別に並べてみたが、これでも全然拾いきれていないくらい、奥田民生のYouTube活動が、めったやたらと精力的なものになっている。 ソロもユニコーンもそれ以外のバンドも、セッションも人のプロデュースも曲提供も、もうとにかくやりまくる、マイペースっぽいキャラだけど超ワーカホリックなミュージシャンが奥田民生であることは周知のとおりだが、新型コロナウイルス禍でライブ活動を奪われたことで、そのアウトプット欲のすべてがYouTubeになだれこんでいる、と推測される。 そんな現在をどう捉え、何を考えているのか、リモートインタビューで本人に問うた。 (兵庫慎司) 『カンタンカンタビレ』から広がったYouTube活動 ーーYouTubeの投稿ペース、このコロナ禍で相当上がってますよね。 奥田:そうですね。 YouTubeの投稿自体は前からやってたけど、今は、なんならそれしかやることがなくなった、っていうのもあるし。 弾き語りだったら毎日でもできるけど、それよりも、いろいろアイデアを考えてやる方が楽しいと思って。 小賢しいことをね、やってますよ。 ーーそもそも自分のレーベル(RAMEN CURRY MUSIC RECORDS)を立ち上げたのは、配信などをスピーディーにやれるようにしたかったから、とおっしゃってましたよね。 奥田:はいはい。 ーーその時からYouTubeでの活動も念頭にはあった? 奥田:YouTubeでこういうことをしたいなとか、はっきり思ってたわけじゃないけど、なんか思いついた時にね、曲ができたら次の日には出てるぐらいのスピードがほしい時代なんだろうな、というのはありましたから。 そこでいちいちお伺いを立ててるヒマはないと。 そういう理由で、ひとりになったんですけど。 まあ、だからといって、「じゃあすぐにこれをやって、次はあれをやって……」っていうのが、あったわけじゃないので。 「これでできるようになったけど、どうしよう?」みたいな順番だったかな。 だから、最初は、自分のアルバムの曲のMVを作ったりとか、そういうとこから始まりましたけどね。 ーーそれがだんだん『カンタンカンタビレ』で、自宅録音をやってみせるのを始めたりして、積極的になっていったのは? 奥田:あのー、前にあれやったじゃない? 『ひとりカンタビレ』、ライブで。 みなさん生でライブを観るけど、実際その音を録音してる時の様子は、あんまりわからないじゃないですか。 それを、興味がある人はもちろん観たいだろうし、まったく知らないで暮らしてる人も、こんな感じで音は録れていくんだ、みたいなのがわかるっていうのは、楽しいんじゃないか、と思いまして。 それで、『ひとりカンタビレ』の時みたいに、自分で新しい曲を作って、それをやっていくのもいいんですけど、半分ぐらい知ってる曲を1から作ってる画を見せる方が、わかりやすいかなと思ったから、『カンタンカンタビレ』では、今まで人に提供した自分の曲をやることにしたんですよね。 まあ新曲を作るのがめんどくさかったのもありますけど(笑)。 そうやって始めて、できるだけ、みんなもできるような。 機材はね、アマチュアの人が買えないようなものも使ってるんで、そこは真似できないかもしれないですけど、やり方というか、録り方のアイデアとか、そういうのは参考になるところがあると思うんで。 ーー確かに、ドラムの代わりにそのへんのものを叩いてリズムを録ったりとかもしてますよね。 奥田:そう。 ドラム、家で叩くわけにはいかんから、代わりになんかないかな、とか。 今これができないけど、そこでやめるんじゃなくて、代わりのものを探す、というのは、うまくいったらモチベーションが上がることですし、「私もやってみよう」みたいな人もいると思うんで。 たまたま立ち寄って買ったハンバーガーの箱、「これ、スネアに合うな」と歩きながら思って。 で、中身はすぐ食べて、箱を叩いて録って、みたいな。 そんな感じで思いついたことを取り入れていますね。 ーー『カンタンカンタビレ番外編』で、民生さんのレスポール3本の音の違いを検証する回がありましたよね。 ああいうのも『ひとりカンタビレ』と同じ趣旨で、ギターを弾かない多くの人が疑問に思うであろうことを、解き明かしていくというか。 奥田:うん。 まあ、レスポールなんて、俺が高い楽器を持ってることは知っていても、それが実際音がどう違うのかっていうのは、わからないと思うんで。 ライブとかで観てもね。 同じ状況で聴き比べて、どれぐらい違うのかというのは、自分でもやってみたかった。 俺も最近はもう、レコーディングで、「この曲にはこれが合ってる」ってギターをとっかえひっかえするのも、どうでもよくなってきていて。 「こんなにいっぱいギターいらないよ」みたいな感じになってきてたんですけど、ああやって比べると、やっぱり違うもんだなと、自分で思いましたよ。 あの回で、自分でも言ってるけど、いちばん高いやつがいちばん好きな音だったことに、ホッとしたというか(笑)。 ーーそういうふうに、曲を作って発表するのとライブをやる以外の、音楽にまつわることをエンターテインメントにできないか、というのは、『カンタンカンタビレ』を始めた頃からずっと、民生さんのテーマのひとつになっていますよね。 奥田:なってます。 もちろんライブと作品を作るっていうのは、メインですよ? ただ、普段の生活の中で、それだけじゃないわけで。 そういうところが、見せられて、おもしろかったらいいかもね、と。 CDを作ってライブをやるっていうことも、今や誰だってできることではありますけど、それをさらに、もっと誰でもできるレベルで、おもしろいかどうか、っていうか。 たとえば、照明とかがちゃんとセッティングされたライブ会場でやるのは、もちろんかっこいいわけだけど。 それに憧れて音楽を始める人もいるけれども、もうちょっと身近なところで音楽をやってるのを観て、やりたくなる人もいるんじゃないかなと。 最初に始めたときはそんな感じで思ってましたね。 ーー簡単なんだよ、身近なんだよ、誰でもできることなんだよ、というのが、民生さん的には大事みたいですね、一貫して。 奥田:そうですね。 もともとだって、演奏がすごい上手なわけじゃないですし、そんな難しいことはやってないですからね。 教則ビデオみたいなわけではないじゃない? 俺がやってるのは。 プレイ自体も、そりゃまあ、ヘタじゃあないですけど、ものすごく高等なことでもないのよ。 ただ、組み合わせで、どういう音楽になるか、っていう話で。 だから、音をバラバラに聴かせたからわかること、っていうのは、あると思うんですよ。 できあがりをポンと聴くと、そのできあがりをいいか悪いかで判断して、好きだなとか嫌いだな、とかなるわけですけど。 それがどういう組み合わせでできてるのか、っていうところまで知りたい人もいるだろうと。 そんな感じですよね。
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