音楽の教科書にも掲載されたことから、学校で合唱曲として歌った人もいるのではないでしょうか。 今回は、この夜空ノムコウの歌詞を読み解いていきましょう。 夜空ノムコウ【歌詞】 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには 明日がもう待っている 誰かの声に気づき ぼくらは身をひそめた 公園のフェンス越しに 夜の風が吹いた 君が何か伝えようと にぎり返したその手は ぼくの心のやわらかい場所を 今でもまだしめつける あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… マドをそっと開けてみる 冬の風のにおいがした 悲しみっていつかは 消えてしまうものなのかなぁ… タメ息は少しだけ 白く残ってすぐ消えた 歩き出すことさえも いちいちためらうくせに つまらない常識など つぶせると思ってた 君に話した言葉は どれだけ残っているの? ぼくの心のいちばん奥で から回りしつづける あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ… 全てが思うほど うまくはいかないみたいだ このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ… 雲のない星空が マドのむこうにつづいてる あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには もう明日が待っている 出典元 夜空ノムコウ 作詞:スガシカオ 作曲:川村結花 夜空ノムコウ【歌詞解釈】 この歌詞は、時間軸を意識しながら読んでいくことが大切です。 大まかにまとめてしまうと、主人公は 「現在」に立ち 「過去」を回想しながら 「未来」を見つめている内容です。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには 明日がもう待っている 出典元:夜空ノムコウ サビからスタートします。 この後も歌詞の中で、 「ぼくたち」「ぼくら」といった複数形の一人称がたびたび出てきます。 そして、主人公である「ぼく」と、過去に主人公の彼女であった「君」も登場します。 つまり、「ぼくたち」とは、 「ぼく」と 「君」のことです。 「あれから」は過去のどこかの地点のことです。 まだ具体的には言っていませんが、ひとまずは印象的だった出来事があって以来、と解釈しておきましょう。 「現在」という地点から、主人公は過去のある地点から、自分たちは何かを信じてこれたかな、と 回想しているわけです。 そして、夜空を見上げて、明日がもう待っている、としています。 現在の「ぼく」は、 過去を回想し、そして未来を見据えているのです。 時間までは分かりませんが、現在は 夜です。 季節は 冬です。 誰かの声に気づき ぼくらは身をひそめた 公園のフェンス越しに 夜の風が吹いた 出典元:夜空ノムコウ これは 過去の回想です。 歌い出しにあった、「あれからぼくたちは」の「あれ」の出来事のことでしょう。 夜の公園で、ぼくと彼女は2人でいます。 そして誰かの声がして、身をひそめたとあります。 2人の世界に誰も入って来て欲しくないのでしょう。 隠れるようにして、2人は公園で話しているのです。 公園の外から、フェンスを越えて風が吹いています。 「ぼく」が、公園の中と外を明確に意識しているのがわかります。 物理的には、公園も、公園の外も、屋外なので、風は自由に吹きますが、「フェンス越しにふく」とすることで、 公園の中、公園の外という二つの世界を作り出しています。 君が何か伝えようと にぎり返したその手は ぼくの心のやわらかい場所を 今でもまだしめつける 出典元:夜空ノムコウ 今まで「ぼくら」「ぼくたち」と二コイチ扱いだったのが、初めて「君」という女性が単体ででてきます。 君が伝えようとしたことがなんなのかは、 はっきりとは書かれていません。 しかし、ぼくに何かを伝えようとして、手を握り返したようです。 その伝えたかったことは、ぼくの心が 締め付けられるような気落ちになるようなことだったようです。 歌詞はものすごく婉曲的な表現ですが、 おそらく二人は恋人同士で、別れ話をしているのだと推察できます。 こじれた別れ話と言うわけではなく、 2人の将来のために別れを選んだと言ったところでしょう。 ですから、お互いに相手のことが嫌いになったわけではありあません。 だからこそ、別れるにあたって、抱える複雑な気持ちもあるようです。 すべてを言葉にできないもどかしさを込めて、ぼくは彼女の手を握りました。 そして彼女も同じように、言葉にできない気持ちが少しでも伝わればと、手を握り返してきたわけです。 そして、いまでもまだしめつけるの「いま」は、回想している「現在」のことです。 歌詞の時系列が 「 現在」に戻ってくるわけです。 過去のあの時彼女が、伝えたかった何かは、 いまだに現在のぼくの心から離れていないようです。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… マドをそっと開けてみる 冬の風のにおいがした 出典元:夜空ノムコウ サビでまた、「現在」に戻りました。 あの別れから、自分たちは何かを信じて来れたかな、と自問自答しています。 そして、窓をあけ、冬の風を感じるのです。 自ら窓を開けて、外の風を感じていることは、過去の公園のフェンス越しに吹く風と対比になっています。 過去ではフェンス越しに吹く風、と確実に中に閉じこもり、外の空気を受け付けない雰囲気がありました。 しかし、現在のぼくは、 自分で窓を開け、外の風の匂いを感じるまでになっています。 悲しみっていつかは 消えてしまうものなのかなぁ… タメ息は少しだけ 白く残ってすぐ消えた 出典元:夜空ノムコウ 彼女との別れである、あの出来事はとても悲しかったはずなのに、現在の「ぼく」は、その悲しみは、消えてしまっているようです。 冬に窓を開けているので、ため息が白くなり、そしてすぐ消えたようです。 この「ため息」が、 目に見える悲しみ のようだと、ぼくは思っているのでしょう。 歩き出すことさえも いちいちためらうくせに つまらない常識など つぶせると思ってた 出典元:夜空ノムコウ 過去におけるぼくの性格は、 臆病で、 慎重で、それでも 根拠のない自信があり、きっと プライドも高かったのだと思います。 外の世界に対しては、順応すると言うより、疑問に思ったことには、反発してつぶしていけると思っていたようです。 君に話した言葉は どれだけ残っているの? ぼくの心のいちばん奥で から回りしつづける 出典元:夜空ノムコウ 若かったぼくは「君」に対して、たくさんの言葉を話したはずです。 どれだけ残って、とあるので、たくさんの言葉をつくしたはずです。 自分の世界の事をたくさん話したのでしょう。 しかし、空回りしつづけるとありますので、彼女には届いていなかったことが、 ぼくにはわかっていたのですね。 そしてその空回りは、 過去から、今、ぼくが回想している「現在」まで続いているようです。 あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ… 全てが思うほど うまくはいかないみたいだ 出典元:夜空ノムコウ あのころの未来とは、 「現在」のことです。 あのころに思い描いていた自分たちになれているだろうか、と自問しています。 そして、 「すべてが思うほど、うまくはいかない」と自答しています。 つまり、うまくいかず、 もがいている途中、といったところでしょう。 このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ… 雲のない星空が マドのむこうにつづいてる 出典元:夜空ノムコウ そしてそのもがいていく日々がいつまで続くのかを考えてしまいます。 しかし、窓の外には、雲のない星空が続いている、としています。 窓の向こうの世界、そして続いていく未来は明るい、と予言しているかのようです。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには もう明日が待っている 出典元:夜空ノムコウ 冒頭とほとんど同じ歌詞です。 違いは最後の一文です。 明日がもう待っている もう明日が待っている と語順を入れ替えています。 後者の方が、明日が近い印象があります。 明日は未来です。 ぼくは、過去に自分に影響を与えた「君」とのやり取りの中で、 傷ついた事や、 ダメだった自分を顧みながら、現在の自分について考えている。 過去にとって、「現在」は「未来」なわけです。 そして、前進はしているものの、過去に思い描いた 理想の未来には、なかなか近づけてはいないようです。 それでも、主人公は、ダメだった自分を認めることで、 これからの未来が明るい気がしています。 夜空ノムコウ【タイトル考察】 「夜空ノムコウ」の歌詞は、暗喩で溢れています。 タイトル自体も、 暗喩です。 歌詞の中では、過去も現在も、舞台が「夜」です。 そして、その先には、未来である「明日」が待っているという内容です。 つまり、 夜空ノムコウ=明日なのです。 ムコウとは不思議な言葉です。 線より「向こう」側などと使いますが、 これは距離の話、位置の話をしています。 しかし、夜空ノムコウでは、いつの間にか、何の違和感もなく、 「時間」の話になっているのです。 そして、「未来」であるムコウは、 外の世界でもあります。 夜空ノムコウ【データ】 歌:SMAP 作詞:スガシカオ 作曲:川村結花 1998年に発売された、SMAPの27作目のシングル。 SMAP初のミリオンセラーシングルとなった。 のちに作詞者のスガシカオや作曲者の川村結花らのセルフカバーを始め、多くの歌手によってカバーもされている。 また、教科書にも掲載され、合唱曲にもなっている。 他の曲の歌詞解釈をもっと読む.
次の音楽の教科書にも掲載されたことから、学校で合唱曲として歌った人もいるのではないでしょうか。 今回は、この夜空ノムコウの歌詞を読み解いていきましょう。 夜空ノムコウ【歌詞】 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには 明日がもう待っている 誰かの声に気づき ぼくらは身をひそめた 公園のフェンス越しに 夜の風が吹いた 君が何か伝えようと にぎり返したその手は ぼくの心のやわらかい場所を 今でもまだしめつける あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… マドをそっと開けてみる 冬の風のにおいがした 悲しみっていつかは 消えてしまうものなのかなぁ… タメ息は少しだけ 白く残ってすぐ消えた 歩き出すことさえも いちいちためらうくせに つまらない常識など つぶせると思ってた 君に話した言葉は どれだけ残っているの? ぼくの心のいちばん奥で から回りしつづける あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ… 全てが思うほど うまくはいかないみたいだ このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ… 雲のない星空が マドのむこうにつづいてる あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには もう明日が待っている 出典元 夜空ノムコウ 作詞:スガシカオ 作曲:川村結花 夜空ノムコウ【歌詞解釈】 この歌詞は、時間軸を意識しながら読んでいくことが大切です。 大まかにまとめてしまうと、主人公は 「現在」に立ち 「過去」を回想しながら 「未来」を見つめている内容です。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには 明日がもう待っている 出典元:夜空ノムコウ サビからスタートします。 この後も歌詞の中で、 「ぼくたち」「ぼくら」といった複数形の一人称がたびたび出てきます。 そして、主人公である「ぼく」と、過去に主人公の彼女であった「君」も登場します。 つまり、「ぼくたち」とは、 「ぼく」と 「君」のことです。 「あれから」は過去のどこかの地点のことです。 まだ具体的には言っていませんが、ひとまずは印象的だった出来事があって以来、と解釈しておきましょう。 「現在」という地点から、主人公は過去のある地点から、自分たちは何かを信じてこれたかな、と 回想しているわけです。 そして、夜空を見上げて、明日がもう待っている、としています。 現在の「ぼく」は、 過去を回想し、そして未来を見据えているのです。 時間までは分かりませんが、現在は 夜です。 季節は 冬です。 誰かの声に気づき ぼくらは身をひそめた 公園のフェンス越しに 夜の風が吹いた 出典元:夜空ノムコウ これは 過去の回想です。 歌い出しにあった、「あれからぼくたちは」の「あれ」の出来事のことでしょう。 夜の公園で、ぼくと彼女は2人でいます。 そして誰かの声がして、身をひそめたとあります。 2人の世界に誰も入って来て欲しくないのでしょう。 隠れるようにして、2人は公園で話しているのです。 公園の外から、フェンスを越えて風が吹いています。 「ぼく」が、公園の中と外を明確に意識しているのがわかります。 物理的には、公園も、公園の外も、屋外なので、風は自由に吹きますが、「フェンス越しにふく」とすることで、 公園の中、公園の外という二つの世界を作り出しています。 君が何か伝えようと にぎり返したその手は ぼくの心のやわらかい場所を 今でもまだしめつける 出典元:夜空ノムコウ 今まで「ぼくら」「ぼくたち」と二コイチ扱いだったのが、初めて「君」という女性が単体ででてきます。 君が伝えようとしたことがなんなのかは、 はっきりとは書かれていません。 しかし、ぼくに何かを伝えようとして、手を握り返したようです。 その伝えたかったことは、ぼくの心が 締め付けられるような気落ちになるようなことだったようです。 歌詞はものすごく婉曲的な表現ですが、 おそらく二人は恋人同士で、別れ話をしているのだと推察できます。 こじれた別れ話と言うわけではなく、 2人の将来のために別れを選んだと言ったところでしょう。 ですから、お互いに相手のことが嫌いになったわけではありあません。 だからこそ、別れるにあたって、抱える複雑な気持ちもあるようです。 すべてを言葉にできないもどかしさを込めて、ぼくは彼女の手を握りました。 そして彼女も同じように、言葉にできない気持ちが少しでも伝わればと、手を握り返してきたわけです。 そして、いまでもまだしめつけるの「いま」は、回想している「現在」のことです。 歌詞の時系列が 「 現在」に戻ってくるわけです。 過去のあの時彼女が、伝えたかった何かは、 いまだに現在のぼくの心から離れていないようです。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… マドをそっと開けてみる 冬の風のにおいがした 出典元:夜空ノムコウ サビでまた、「現在」に戻りました。 あの別れから、自分たちは何かを信じて来れたかな、と自問自答しています。 そして、窓をあけ、冬の風を感じるのです。 自ら窓を開けて、外の風を感じていることは、過去の公園のフェンス越しに吹く風と対比になっています。 過去ではフェンス越しに吹く風、と確実に中に閉じこもり、外の空気を受け付けない雰囲気がありました。 しかし、現在のぼくは、 自分で窓を開け、外の風の匂いを感じるまでになっています。 悲しみっていつかは 消えてしまうものなのかなぁ… タメ息は少しだけ 白く残ってすぐ消えた 出典元:夜空ノムコウ 彼女との別れである、あの出来事はとても悲しかったはずなのに、現在の「ぼく」は、その悲しみは、消えてしまっているようです。 冬に窓を開けているので、ため息が白くなり、そしてすぐ消えたようです。 この「ため息」が、 目に見える悲しみ のようだと、ぼくは思っているのでしょう。 歩き出すことさえも いちいちためらうくせに つまらない常識など つぶせると思ってた 出典元:夜空ノムコウ 過去におけるぼくの性格は、 臆病で、 慎重で、それでも 根拠のない自信があり、きっと プライドも高かったのだと思います。 外の世界に対しては、順応すると言うより、疑問に思ったことには、反発してつぶしていけると思っていたようです。 君に話した言葉は どれだけ残っているの? ぼくの心のいちばん奥で から回りしつづける 出典元:夜空ノムコウ 若かったぼくは「君」に対して、たくさんの言葉を話したはずです。 どれだけ残って、とあるので、たくさんの言葉をつくしたはずです。 自分の世界の事をたくさん話したのでしょう。 しかし、空回りしつづけるとありますので、彼女には届いていなかったことが、 ぼくにはわかっていたのですね。 そしてその空回りは、 過去から、今、ぼくが回想している「現在」まで続いているようです。 あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ… 全てが思うほど うまくはいかないみたいだ 出典元:夜空ノムコウ あのころの未来とは、 「現在」のことです。 あのころに思い描いていた自分たちになれているだろうか、と自問しています。 そして、 「すべてが思うほど、うまくはいかない」と自答しています。 つまり、うまくいかず、 もがいている途中、といったところでしょう。 このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ… 雲のない星空が マドのむこうにつづいてる 出典元:夜空ノムコウ そしてそのもがいていく日々がいつまで続くのかを考えてしまいます。 しかし、窓の外には、雲のない星空が続いている、としています。 窓の向こうの世界、そして続いていく未来は明るい、と予言しているかのようです。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには もう明日が待っている 出典元:夜空ノムコウ 冒頭とほとんど同じ歌詞です。 違いは最後の一文です。 明日がもう待っている もう明日が待っている と語順を入れ替えています。 後者の方が、明日が近い印象があります。 明日は未来です。 ぼくは、過去に自分に影響を与えた「君」とのやり取りの中で、 傷ついた事や、 ダメだった自分を顧みながら、現在の自分について考えている。 過去にとって、「現在」は「未来」なわけです。 そして、前進はしているものの、過去に思い描いた 理想の未来には、なかなか近づけてはいないようです。 それでも、主人公は、ダメだった自分を認めることで、 これからの未来が明るい気がしています。 夜空ノムコウ【タイトル考察】 「夜空ノムコウ」の歌詞は、暗喩で溢れています。 タイトル自体も、 暗喩です。 歌詞の中では、過去も現在も、舞台が「夜」です。 そして、その先には、未来である「明日」が待っているという内容です。 つまり、 夜空ノムコウ=明日なのです。 ムコウとは不思議な言葉です。 線より「向こう」側などと使いますが、 これは距離の話、位置の話をしています。 しかし、夜空ノムコウでは、いつの間にか、何の違和感もなく、 「時間」の話になっているのです。 そして、「未来」であるムコウは、 外の世界でもあります。 夜空ノムコウ【データ】 歌:SMAP 作詞:スガシカオ 作曲:川村結花 1998年に発売された、SMAPの27作目のシングル。 SMAP初のミリオンセラーシングルとなった。 のちに作詞者のスガシカオや作曲者の川村結花らのセルフカバーを始め、多くの歌手によってカバーもされている。 また、教科書にも掲載され、合唱曲にもなっている。 他の曲の歌詞解釈をもっと読む.
次の音楽の教科書にも掲載されたことから、学校で合唱曲として歌った人もいるのではないでしょうか。 今回は、この夜空ノムコウの歌詞を読み解いていきましょう。 夜空ノムコウ【歌詞】 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには 明日がもう待っている 誰かの声に気づき ぼくらは身をひそめた 公園のフェンス越しに 夜の風が吹いた 君が何か伝えようと にぎり返したその手は ぼくの心のやわらかい場所を 今でもまだしめつける あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… マドをそっと開けてみる 冬の風のにおいがした 悲しみっていつかは 消えてしまうものなのかなぁ… タメ息は少しだけ 白く残ってすぐ消えた 歩き出すことさえも いちいちためらうくせに つまらない常識など つぶせると思ってた 君に話した言葉は どれだけ残っているの? ぼくの心のいちばん奥で から回りしつづける あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ… 全てが思うほど うまくはいかないみたいだ このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ… 雲のない星空が マドのむこうにつづいてる あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには もう明日が待っている 出典元 夜空ノムコウ 作詞:スガシカオ 作曲:川村結花 夜空ノムコウ【歌詞解釈】 この歌詞は、時間軸を意識しながら読んでいくことが大切です。 大まかにまとめてしまうと、主人公は 「現在」に立ち 「過去」を回想しながら 「未来」を見つめている内容です。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには 明日がもう待っている 出典元:夜空ノムコウ サビからスタートします。 この後も歌詞の中で、 「ぼくたち」「ぼくら」といった複数形の一人称がたびたび出てきます。 そして、主人公である「ぼく」と、過去に主人公の彼女であった「君」も登場します。 つまり、「ぼくたち」とは、 「ぼく」と 「君」のことです。 「あれから」は過去のどこかの地点のことです。 まだ具体的には言っていませんが、ひとまずは印象的だった出来事があって以来、と解釈しておきましょう。 「現在」という地点から、主人公は過去のある地点から、自分たちは何かを信じてこれたかな、と 回想しているわけです。 そして、夜空を見上げて、明日がもう待っている、としています。 現在の「ぼく」は、 過去を回想し、そして未来を見据えているのです。 時間までは分かりませんが、現在は 夜です。 季節は 冬です。 誰かの声に気づき ぼくらは身をひそめた 公園のフェンス越しに 夜の風が吹いた 出典元:夜空ノムコウ これは 過去の回想です。 歌い出しにあった、「あれからぼくたちは」の「あれ」の出来事のことでしょう。 夜の公園で、ぼくと彼女は2人でいます。 そして誰かの声がして、身をひそめたとあります。 2人の世界に誰も入って来て欲しくないのでしょう。 隠れるようにして、2人は公園で話しているのです。 公園の外から、フェンスを越えて風が吹いています。 「ぼく」が、公園の中と外を明確に意識しているのがわかります。 物理的には、公園も、公園の外も、屋外なので、風は自由に吹きますが、「フェンス越しにふく」とすることで、 公園の中、公園の外という二つの世界を作り出しています。 君が何か伝えようと にぎり返したその手は ぼくの心のやわらかい場所を 今でもまだしめつける 出典元:夜空ノムコウ 今まで「ぼくら」「ぼくたち」と二コイチ扱いだったのが、初めて「君」という女性が単体ででてきます。 君が伝えようとしたことがなんなのかは、 はっきりとは書かれていません。 しかし、ぼくに何かを伝えようとして、手を握り返したようです。 その伝えたかったことは、ぼくの心が 締め付けられるような気落ちになるようなことだったようです。 歌詞はものすごく婉曲的な表現ですが、 おそらく二人は恋人同士で、別れ話をしているのだと推察できます。 こじれた別れ話と言うわけではなく、 2人の将来のために別れを選んだと言ったところでしょう。 ですから、お互いに相手のことが嫌いになったわけではありあません。 だからこそ、別れるにあたって、抱える複雑な気持ちもあるようです。 すべてを言葉にできないもどかしさを込めて、ぼくは彼女の手を握りました。 そして彼女も同じように、言葉にできない気持ちが少しでも伝わればと、手を握り返してきたわけです。 そして、いまでもまだしめつけるの「いま」は、回想している「現在」のことです。 歌詞の時系列が 「 現在」に戻ってくるわけです。 過去のあの時彼女が、伝えたかった何かは、 いまだに現在のぼくの心から離れていないようです。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… マドをそっと開けてみる 冬の風のにおいがした 出典元:夜空ノムコウ サビでまた、「現在」に戻りました。 あの別れから、自分たちは何かを信じて来れたかな、と自問自答しています。 そして、窓をあけ、冬の風を感じるのです。 自ら窓を開けて、外の風を感じていることは、過去の公園のフェンス越しに吹く風と対比になっています。 過去ではフェンス越しに吹く風、と確実に中に閉じこもり、外の空気を受け付けない雰囲気がありました。 しかし、現在のぼくは、 自分で窓を開け、外の風の匂いを感じるまでになっています。 悲しみっていつかは 消えてしまうものなのかなぁ… タメ息は少しだけ 白く残ってすぐ消えた 出典元:夜空ノムコウ 彼女との別れである、あの出来事はとても悲しかったはずなのに、現在の「ぼく」は、その悲しみは、消えてしまっているようです。 冬に窓を開けているので、ため息が白くなり、そしてすぐ消えたようです。 この「ため息」が、 目に見える悲しみ のようだと、ぼくは思っているのでしょう。 歩き出すことさえも いちいちためらうくせに つまらない常識など つぶせると思ってた 出典元:夜空ノムコウ 過去におけるぼくの性格は、 臆病で、 慎重で、それでも 根拠のない自信があり、きっと プライドも高かったのだと思います。 外の世界に対しては、順応すると言うより、疑問に思ったことには、反発してつぶしていけると思っていたようです。 君に話した言葉は どれだけ残っているの? ぼくの心のいちばん奥で から回りしつづける 出典元:夜空ノムコウ 若かったぼくは「君」に対して、たくさんの言葉を話したはずです。 どれだけ残って、とあるので、たくさんの言葉をつくしたはずです。 自分の世界の事をたくさん話したのでしょう。 しかし、空回りしつづけるとありますので、彼女には届いていなかったことが、 ぼくにはわかっていたのですね。 そしてその空回りは、 過去から、今、ぼくが回想している「現在」まで続いているようです。 あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ… 全てが思うほど うまくはいかないみたいだ 出典元:夜空ノムコウ あのころの未来とは、 「現在」のことです。 あのころに思い描いていた自分たちになれているだろうか、と自問しています。 そして、 「すべてが思うほど、うまくはいかない」と自答しています。 つまり、うまくいかず、 もがいている途中、といったところでしょう。 このままどこまでも 日々は続いていくのかなぁ… 雲のない星空が マドのむこうにつづいてる 出典元:夜空ノムコウ そしてそのもがいていく日々がいつまで続くのかを考えてしまいます。 しかし、窓の外には、雲のない星空が続いている、としています。 窓の向こうの世界、そして続いていく未来は明るい、と予言しているかのようです。 あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ… 夜空のむこうには もう明日が待っている 出典元:夜空ノムコウ 冒頭とほとんど同じ歌詞です。 違いは最後の一文です。 明日がもう待っている もう明日が待っている と語順を入れ替えています。 後者の方が、明日が近い印象があります。 明日は未来です。 ぼくは、過去に自分に影響を与えた「君」とのやり取りの中で、 傷ついた事や、 ダメだった自分を顧みながら、現在の自分について考えている。 過去にとって、「現在」は「未来」なわけです。 そして、前進はしているものの、過去に思い描いた 理想の未来には、なかなか近づけてはいないようです。 それでも、主人公は、ダメだった自分を認めることで、 これからの未来が明るい気がしています。 夜空ノムコウ【タイトル考察】 「夜空ノムコウ」の歌詞は、暗喩で溢れています。 タイトル自体も、 暗喩です。 歌詞の中では、過去も現在も、舞台が「夜」です。 そして、その先には、未来である「明日」が待っているという内容です。 つまり、 夜空ノムコウ=明日なのです。 ムコウとは不思議な言葉です。 線より「向こう」側などと使いますが、 これは距離の話、位置の話をしています。 しかし、夜空ノムコウでは、いつの間にか、何の違和感もなく、 「時間」の話になっているのです。 そして、「未来」であるムコウは、 外の世界でもあります。 夜空ノムコウ【データ】 歌:SMAP 作詞:スガシカオ 作曲:川村結花 1998年に発売された、SMAPの27作目のシングル。 SMAP初のミリオンセラーシングルとなった。 のちに作詞者のスガシカオや作曲者の川村結花らのセルフカバーを始め、多くの歌手によってカバーもされている。 また、教科書にも掲載され、合唱曲にもなっている。 他の曲の歌詞解釈をもっと読む.
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