画像出典元URL: ぷらすです。 『日刊オレラ』に『プリデスティネーション』の感想載せてもらいましたー。 というわけで、今回は特別編として、こちらのブログではバリバリネタバレしつつ、もうちょと深い感想を書いていこうと思います! なので、ここで注意事項。 本作は、出来るだけ内容を知らずに見たほうが楽しめます。 さて、いかがでしたか? 『プリデスティネーション』 本編で、「卵が先か鶏が先か」の質問をする、演じる「ジョン」の問いに、サラ・スヌーク演じる「ジョン」が「雄鶏」と答えるシーンと、原作版の「輪廻の蛇」という邦題と映画本編でが言う「自分の尾を追いかける蛇」というセリフが、本作のほぼ全てですよね。 本作エピソードを時系列順に並べ替えると。 でも愛想が悪く嫌われ者。 自分以外はバカだと思って育つ。 (本人には知らされず) 試験に落ちる。 両性具有であること、手術によって男性になったことを知らされ、さらにひとり娘を誘拐され絶望。 そして、1970年、偶然入った酒場で今までの人生を、()に告白。 過去の自分と恋仲になり、妊娠させた男が自分だった事を知る。 そして自分の宿命を知ったジョンは、の『後継者』として仕事に邁進し功績を挙げる。 やがて史上最悪の爆弾魔 フィルズ・ボマーが起こす爆破事件を阻止しようと1970年へ。 ジョンとジェーンを引き合わせると、自分は1970年にジャンプ。 フィルズ・ボマーを殺害しようとするもまた失敗し取り逃がす。 そこで顔と声を失った自分と出会う。 さらに1963年に戻りジョンを連れて未来へ行き、「輪廻の輪」を閉じる。 フィルズ・ボマーが最悪の事件を起こす1975年にジャンプしたジョンは、タイムマシンにパスワードを入力し機能を停止させ、その時代に留まるハズだったが、タイムマシンはエラー。 まだジャンプが可能に。 そこで出会ったのは未来からジャンプしてきた自分。 フィルズ・ボマーは自分だったのだ。 結局、ジョンは未来の自分を殺すことで最悪の事件は未然に阻止した(?)ものの、その目には異様な輝きが……。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 自分から生まれ、自分に恋をして、自分を産み、自分に恋をして、自分の後継者になって自分を追い、自分を殺す。 究極の「全部オレ」状態。 まさに、『鶏が先か卵が先か』というの物語なわけです。 でも、よくよく考えると「じゃぁ、このの『一番最初』はどこなの?」となりますよね? つまりそもそもジョンがフィルズ・ボマーにならなければ、ジョンが彼を追うために輪廻を開く必要はなく、でも、逆にジョンがフィルズ・ボマーにならなければ、そもそもジョン(ジェーン)は生まれないという矛盾。 その答えは劇中では語られませんが、多分 サラ・スヌーク演じる「ジョン」の「雄鶏」という答えがひとつのキーなのかなーって思います。 (いや、そもそも明確な答えなんかないんでしょうけども) ただ、この物語の主題のウエイトはむしろもう一本の柱である、ジェーン=ジョンというひとりの人間の数奇で残酷な運命を描くことにあったのかなーなんて思ったりもします。 女性としても男性としても『世界』に受け入れらずに最小単位で閉じてしまった、ジェーン=ジョンの世界を描くこと自体が本作のテーマだったんじゃないかなと。 そう考えて振り返ってみれば、ジョンがフィルズ・ボマーに執着するのも納得の展開なんですよね。 多分、あの爆弾魔の気持ちを一番理解しているのは、1970年に酒場に現れたジョン( サラ・スヌーク)で、それはジョン自身の望みでもあるんですよね。 (酒場でフィルズ・ボマーを支持するような言動や表情をしてるし) 「こんな(自分が受け入れられない)世界ぶっ壊れてしまえ」という望みを叶えるべく、フィルズ・ボマーが凶行を続けているとも取れます。 なんせ、ジョンはフィルズ・ボマーにとって唯一愛し愛された恋人であり、娘であり、母親であり、父親であり、自分自身であるわけですから。 ラストシーンで、フィルズ・ボマーは訳のわからない理屈を並べ立てて自分を正当化しようとする狂人のような言動をとりますが、実は自分に自分を殺させることで『後継者』にバトンタッチして、輪廻から抜け出すまでがジョンの輪廻の『パッケージ』なのかもなーなんて妄想してしまいました。 あなたは、本作をどんな風に解釈しましたか? ではではー。
次の終わってみたら、見事に納得。 まるで、ラングドン教授の象徴学による謎解きのようでした。 ところで、前半の告白です。 私が少女だった頃… 何気なく語り始めた、〝彼〟のこの台詞。 「メロスは激怒した。 必ず、かの邪智暴虐の王を…」 と同じくらい、え?なに?どういうこと? と一気に引き込まれました。 この作品はSFだけど、実はヒューマンドラマ要素が強いのだよ、とそれとなく観るものの感性を誘導する効果が、確かにありました。 そう思って振り返ってみると、生きる目的が〝自己の成長〟ではなく、〝過去の自分の修正〟にすり替えられていく過程が『自意識との格闘』というテーマにも繋がって見えてきます。 そもそもどちらが先だったのかよく分からなくなっていく描かれ方は、妄想と現実の境目がよく分からなく描かれていた『勝手にふるえてろ』と同じようにも見えるのでした。 ネタバレ! クリックして本文を読む こんなに何回もどんでん返された作品は他にはないですね。 結局、4回ぐらいひっくり返されましたかね 笑 大オチについては、エンドロール入った瞬間は「どういうこと?」って混乱したけど、エンドロール中に整理できて、このすっぽりハマる感覚は見事でした。 ジェーン、ジョン、ジェーンを捨てた男、ジェーンの娘、バーテンダー、フィズル・ボマーが全員同一人物だったというオチはなかなか衝撃的でした。 まどろっこしいタイムパラドックスなんて、クソくらえ!と言わんばかりに同じ人間が接点持ちまくりな展開は潔くて斬新です! ただこの大オチ以外の部分は意外とシンプルな作品でした。 前半のジョンの自分語りが長かったこともあって、ストーリーのボリューム的というか起伏はそこまで大きくなかったです。 まさに、このオチの一点勝負!といった印象です。 まあ、この大オチだけでも見る価値はあるんですけどね。 「デスカムトゥルー」 C IZANAGIGAMES, Inc. All rights reserved. 「ソニック・ザ・ムービー」 C 2020 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED. 「エジソンズ・ゲーム」 C 2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved. 」 C 2019 Sony Pictures Television Inc. and CBS Studios Inc. All Rights Reserved. 「ドクター・ドリトル」 C 2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.
次のロバート・A・ハインラインの短編小説『輪廻の蛇』の映画化作品である今作。 公開時はあまり話題に上がりませんでしたが、その異質な内容や構成力の高さから、映画ファンの間でジワジワと高評が広がっています。 今回は、隠れた傑作とも言えるそんな今作を、感想を交えながら考察してみたいと思います。 全ての布石がラストにつながる傑作SF『プリデスティネーション』 顔が焼けて皮膚移植をした主人公、バイオリンケースのようなものを拾い渡した人物、タイムトラベルを活用する謎の組織、正体不明の連続爆弾魔、主人公が誰かに宛てた意味深な言葉など、今作では冒頭から色々な情報が提示されますが、それら全てが布石となり、ラストに向けて徐々につながっていきます。 タイムトラベルを題材にした作品は数多くありますが、そんな中でも今作は、人物描写に焦点を当て、人間の存在意義や悲劇的な宿命を徹底的に掘り下げているという点において異質なSF作品に仕上がっています。 最初は霧がかかっていた頭の中も、物語が進むにつれどんどん明瞭になっていき、最後にはこれまで味わったことのない感情に襲われます。 タイムトラベルなどのSF的要素はあくまで作品を形成するための要素の一つであり、特記するべきはやはり、登場人物が抱える葛藤。 押さえどころを把握して鑑賞するのとしないのとでは、今作に対する印象は全く違うものになります。 タイムトラベルの矛盾から生まれた、過去とつながりを持たぬ者 「お前の人生を壊した男を差し出すと言ったら?」 この物語の約半分が、ある人物の過去の回想で構成されています。 冒頭でタイムトラベルする主人公が属する謎の組織が登場するため、これからどんな物語が始まるんだろうと身構えるのですが、実際に始まるのは予想外の展開。 過去へ飛んだエージェントがバーテンダーに扮して働いている酒場にやって来る、ジョンという男。 他の男たちとは違う雰囲気を放つ彼は、エージェントに身の上話を始めます。 「私が少女だったころ」。 ・・・ん?と、ここでまず疑問符が浮かびますが、そのまま話は続きます。 女性として生まれ、生後すぐに孤児院に捨てられたため両親を知らないこと。 他の子たちと自分は何かが違うと感じていたこと。 宇宙船のクルーになるための試験を受けたが理由も分からないまま落とされたこと。 素性を知らない男と出会い彼の子を身ごもったが、その相手が突然姿を消したこと。 出産時に体内に男性器があることが発覚し、損傷を負った女性器の代わりに男性器が再建されたこと。 以降、男として生きていること。 そして、愛するわが子が誘拐されたこと。 と、ジョンの回想が続くのですが、あまり物語が発展しないため、「これは何の物語だろう?」と不思議に感じます。 しかし、物語の構成自体が飽きさせない作りになっていて、また、このジョンの物語が最も重要であることが判明していくため目を離すことができません。 そして、バーテンダーに扮したエージェントの一言で突然物語が発展します。 「お前の人生を壊した男を差し出すと言ったら?」 前半の途中まで見てしばらく放置していたイーサン・ホークの をやっと最後まで見た。 後半の追い上げがすごい。 一気にお話が進んで伏線がバンバン氷解していく。 この種類のタイムリープものは見たことなかった。 そこにあったのは、バイオリンケースのような見た目の時標変界キット(タイムトラベルの道具)。 エージェントに連れられ、自分の人生を壊した男と出会った日に飛んだジョンは、男を探します。 しかし、そこで彼は信じがたい事実を突きつけられます。 彼が出会った男こそ、他でもない、未来から来た彼自身だったのです。 ここから物語は急激に加速します。 女性だった頃の自分と出会ったジョンは彼女と恋に落ちてしまいます。 そして、彼女が出産した子どもをエージェントが誘拐して過去へと飛び、ジェーンという名前を書き残して孤児院の前に置きます。 そう、そのジェーンが後のジョンになるのです。 つまりジョンは、自分を愛し、自分に愛され、自分を産んだということになります。 果たしてエージェントは、何のためにタイムトラベルの矛盾からこの存在を生み出したのか?それはその後分かることになりますが、彼の存在が「自分の尾を永遠に食い続けるヘビ」=「輪廻の蛇」の中で大きな役割を担っているのです。 個人的にタイムマシン映画の最高峰は「バタフライエフェクト」だと思ってるんだけど「プリデスティネーション」もすごく好きというか、ハッピーでもバッドでもメリーバッドでもなく、終わりがないのが終わりでそれが幸せっていう業の深い感じがすごく好き。
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