日本オラクルは、国内企業の管理職を対象にした働き方改革とIT活用に関する調査結果を発表した。 同調査は、従業員100人以上の国内企業で働く部長職以上の管理職412人を対象に10月に実施したもの。 働き方改革に取り組んでいる企業は80%を超えているが、残業時間の削減や有給休暇取得の促進といった労働時間の削減施策が多く、ビジネスの成長を意識した生産性向上の取り組みとIT活用については課題があることが明らかになった。 生産性向上を測定する仕組みに課題 働き方改革の目的は、「生産性向上(48. 7%)」「ワークライフバランスの実現(44. 9%)」「コンプライアンス順守(41. 3%)」が上位を占めた。 働き方改革の本来の目的が生産性向上であるという認識は十分にされているとオラクルは分析する。 次いで多かったのは、「働き方改革関連法案への対応」「社員が働く環境の改善」「健康増進や満足度向上」など。 「自社の持続的成長や競争力強化」といった生産性向上によるビジネス成長を直接的に示唆する回答は少なかったという。 効果については、「出ている」と答えたのは、45%で、46%が「出ていない」と回答。 その一方で、「生産性を測定する仕組みの有効度合い」については77%が「十分ではない」と回答し、生産性と人事評価の連動度合いについては80%が「十分ではない」と回答した。 実際に働く従業員の評価と連動していないなど、働き方改革の効果と生産性向上を測定する仕組みへの満足度は低いことが明らかになった。 うまくいっているのは「労働環境改善施策」 働き方改革の具体的な取り組みで「うまくいっている」のは、多い順に「残業時間の削減(57. 8%)」「有給休暇の消化促進(38. 7%)」「女性活躍の支援(30. 2%)」だった。 これに「オフィス環境の整備」などが続き、労働環境の改善が取り組みの中心となっていることが分かる。 「うまくいっていない」取り組みとその要因については、「人事評価指標・方法の変更(22. 5%)」「柔軟な勤務制度の導入(22. 9%)」「残業時間の削減(19. 9%)」という回答が挙がった。 労働時間の削減については、積極的に取り組む企業が多いにもかかわらず、うまくいっていない施策の上位に挙がっていることについてオラクルは、「実際の業務量を減らすための取り組みを行わずに労働時間だけを削減し、結果的として無理が生じているケースも少なくないことが理由」と見ている。 こうした課題を解決するには、労働時間の削減だけではなく、時間で管理する人事制度からの脱却や、業務負担を削減する仕組みの導入、業務の標準化や社員個人のスキル向上などが重要と指摘する。 生産性向上を意識したITの積極活用はこれから IT活用の現状としては、「活用していない」もしくは「あまり活用していない」という回答が51%となり、「積極的に活用している」と回答したのは、7%にとどまった。 活用しているITツールとしては「経理・財務システム」「グループウェア」「ビデオ会議システム」が上位に挙がり、タレントマネジメントをはじめとしたHRテクノロジーの活用度は低かった。 働き方改革以前からのIT活用と大きな変化は見られず、生産性向上のためにITを積極的に活用しようという動きはまだ鈍いと分析する。 今後のIT活用については、「ITが企業の将来的な成長に貢献する」という回答が全体の74%を占めた。 また「中期的にIoT、ビッグデータ、ロボットおよびRPA、AIなどの最新テクノロジーによって生産性を向上したい分野」としては、「販売、営業業務」と「製造、生産業務」が上位を占めた。 同調査に協力した慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は、「日本企業は労働時間で勝負するフェーズから生産性で勝負するフェーズに移行する必要性に迫られている」と指摘。 生産性向上を図るには、生産性を測った上でどのように向上させるかを考えることが重要で、それには人材、従業員の行動、企業の業績などに関するデータなどを連携させて統合的にデータマネジメントすることが有効で、それに連動して時間に代わる人事評価の指標を作る必要もあるという。 関連記事• Oracle OpenWorld San Franciscoは3日目を迎え、基調講演には製品開発を統括するプレジデントのクリアン氏と、総帥エリソン会長兼CTOが再びステージに上がった。 SCSKとサイボウズで「働き方改革」に取り組んできた担当者に、そのきっかけや道のり、苦悩などを聞いた。 働き方改革担当を務める現役大臣の訪問を受けたマイクロソフトは、あらためて働き方改革への意気込みを語った。 デジタル時代にビジネスを成功に導くにはテクノロジーの活用が欠かせない。 そのトレンドを調査した「Accenture Technology Vision 2017」の日本版が発表された。 取り上げられたのは、「ひと」のためのテクノロジーだ。 関連リンク•
次の日本社会における労働人口の慢性的な減少を受け、2016年9月に政府が「働き方改革実現推進室」を設置してから、労働環境改善のためのさまざまな取り組みが行われています。 2020年4月からは、すでに2019年から大企業で施行されている「働き方改革関連法」が、中小企業でも本格的に適用されました。 とはいえ「働き方改革の流れになかなか乗れずにいる…」と思っている経営者、企業担当者の方は少なくないのではないでしょうか。 人手不足が叫ばれる中、働き方改革は中小企業にとって今すぐ取り組まなければならない重要な施策です。 そこで本記事では、企業担当者として知らないとは言えない 働き方改革の基礎知識とともに、 関連法施行によって中小企業に課されるルールや、 企業の最新事例をまとめました。 施行を目前に、あらためて自社の人事制度や福利厚生と照らし合わせてみてください。 働き方改革とは「一億総活躍社会」実現に向けた取り組み 働き方改革とは、一言でいえば「一億総活躍社会を実現するための改革」といえます。 一億総活躍社会とは、少子高齢化が進む中でも「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」です。 首相官邸公式サイトからも「働き方改革の定義」を引用しておきましょう。 働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。 多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。 政府広報オンライン「」によると、日本における労働人口の推移は、下記のようになっています。 平成7(1995)年には8,000万人を超えていましたが、それ以降は減少の一途をたどっています。 また、(平成29年度推計)によれば、生産年齢人口は• 2013年には8,000万人• 2027年には7,000万人• 2051年には5,000万人 を割り、2060年には4,418万人となる見込みです。 これは、 2015〜2060年の40年間で、約3,200万人の労働人口が失われている計算になります。 年間あたりでは70万人、つまり、島根県や高知県の人口と代わりない数の人材が、年を追うごとに労働市場からいなくなっていることを意味するのです。 実は、この労働人口減少の傾向は、90年代からすでに始まっていました。 しかし多くの企業にとっては、バブル崩壊後の物的・人的資産の縮小期間と重なっていたため、緊急の課題と捉えられることはありませんでした。 労働人口の減少が特にクローズアップされるようになったのは、景気がある程度上向いたことの裏返しとも言えます。 「このままでは、国全体の生産力低下・国力の低下は避けられない」として、内閣が本格的に「働き方改革」に乗り出したのです。 「働き方改革の大目的=労働力不足解消」の3つの対応策 労働力不足の解消には3つの対応策が考えられます。 働き手を増やす(労働市場に参加していない女性や高齢者)• 出生率を上げて将来の働き手を増やす• 労働生産性を上げる 1つめは、今市場に参加していない層に働いてもらうこと、2つめは出生率を改善することなので分かりやすいと思います。 3つめの労働生産性について詳しく補足しておきます。 実は、日本の労働生産性は、OECD加盟国の中で21位/全36カ国となっています。 主要7カ国のうちワースト2位です。 労働生産性については別の記事で詳しくお話ししていますが、労働力が減少しても、国全体の生産を維持するためには労働生産性の向上が不可欠です。 生産性向上は、組織構造や風土改革、個人のスキルアップも関係しますが何と言っても「業務プロセス・制度・システム」といった仕事そのものの効率化が鍵を握っています。 ここまでの話をまとめると、労働力不足を解消し、一億総活躍社会を作るために• 働き手を増やす• 出生率の上昇• 労働生産性の向上 に取り組むというのが「働き方改革」の概要です。 2020年4月より中小企業にも適用開始!働き方改革の3つの課題とは 働き方改革の大目的・概要は上記お伝えしたとおりですが、これらを実現するためには3つの課題があります。 長時間労働• 非正規と正社員の格差• 高齢者の就労促進 これらが、働き方改革の最重要事項といっても良いでしょう。 特に労働時間については、2020年4月から中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されました。 ここまで出てきた、働き方改革の背景と労働力不足のための対策がややこしくなってきた方がいるかもしれませんので、関係性を図にしておきます。 では、それぞれの課題の詳しい内容を見てみましょう。 「働き方改革」で、どういった対策が検討・実施されているかもあわせてお伝えします。 課題(1)長時間労働の改善 2019年4月、先んじて大企業へ適用された時間外労働の上限規制。 2020年4月から中小企業もその対象となり、後述の36協定も時間外労働・休日労働に関する例外が厳しく規定され、違反した場合には法的な罰則を伴います。 日本における労働時間は、週60時間以上の長時間労働者の割合は減少傾向にあるものの、依然として1割を超える水準にあります。 また、年平均労働時間を国際比較すると、週49時間以上働く労働者の割合が高く、特に男性はその割合が高いことがわかっています。 これを拒否すると、有期契約社員やパートとして働くことを余儀なくされることもあります。 次の項でお話しする非正規と正社員の格差も「非正規への選択肢を選びにくくする」という点で、長時間労働・正社員の負担増加にかかわっているわけです。 また長時間労働の問題は「出生率」にも影響していると考えられています。 長時間労働を望まれる年齢と、出産・育児年齢が重なるためです。 女性がキャリアの中断や育児との両立の不安から出産に踏み切れなかったり、男性も育児・家事への協力がしにくいという現象につながります。 特にポイントになるのが「法改正による時間外労働の上限規制の導入」です。 2019年には大企業を対象に施行されており、2020年4月には中小企業もその対象となります。 時間外労働の上限は原則月45時間・年間360時間となり、繁忙期などの例外を含んでも、年間720時間・複数月平均80時間・月100時間未満に制限されます。 しかし規制導入後はこれに違反すると、事業主に6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。 時間外労働の上限規制については「」もご覧ください。 課題(2)非正規と正社員の格差是正 同じ職場で同じ仕事をする正規雇用の従業員と、非正規雇用の従業員との待遇や賃金格差をなくすことも、日本社会における課題の一つです。 育児や介護の負担を抱える女性や高齢者が、正社員のようなある意味「制限なし」の働き方を選ぶのは限界があります。 そのため、結果的に非正規としての働き方を選ぶことになり、止むを得ず非正規で働く方は労働者全体の約4割を占めるとも言われています。 働き方改革では、この待遇・働き方の格差を改善することを掲げ、具体的には下記の取り組みを行なっています。 同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備• 非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進 「同一労働同一賃金」とは、「労働によって同じ付加価値をもたらす人には、同じ賃金を支払うべきだ」という考え方のことです。 別名パートタイム労働法(2021年から「パートタイム・有期雇用労働法」となる)と呼ばれるこの法律は、2021年4月より中小企業にも適用されます。 政府はこれを働き方改革の目玉として位置づけており、福利厚生・教育なども含めた改革のため「同一労働・同一待遇」という表現もできるでしょう。 たとえば、非正規のベテラン社員の給与が、同じ仕事をする新卒正社員よりも格段に安いといった場合、是正されるべき方向で検討されています。 その目的は「将来的に非正規という枠組み自体をなくし、ライフステージにあわせた働き方を選べるようにする」ということです。 詳しい施策内容については、別記事「」をご覧ください。 「同一労働同一賃金」に取り組む本当の理由 政府が「同一労働同一賃金」に取り組むのは経済的な理由があります。 それは「デフレの解消」です。 政府は、物価上昇率2パーセントを目標に掲げていました。 しかし日本では、諸外国に比べて長い間賃金が上がっていません。 賃金が上がらず、節約志向が改善されない限りデフレからの脱却は難しくなっています。 消費を促進し、インフレに向かっていくためにも、労働力の4割を占める非正規層の待遇改善は必須ということです。 課題(3)高齢者の就労促進 今の日本では、高齢者の約7割が「65歳を超えても働きたい」と考えていることが国の調査で判明しています。 しかし、実際に働いている高齢者は一体どれくらいいるのでしょうか? ここで「生産年齢人口の減少」の際に掲載した図を再度載せますが、生産年齢人口の減少に反比例し、老年人口は上昇していく予測で、2060年には約3,500万人前後となります。 働き方改革では、主に以下の2つが大事な取り組みとなります。 継続雇用延長・定年延長の支援• 高齢者のマッチング支援 今後、これらの取り組みによって「働きたい」と考えている高齢者に就労環境を整えていく必要があります。 具体的には65歳以降の継続雇用延長や、65歳までの定年延長を行う企業等に対する支援が政府・各企業で検討されています。 また、企業における再就職受入支援や高齢者の就労マッチング支援の強化なども含まれます。 これからの人々は平均寿命が伸びるだけでなく、体力的な若さを保ったまま年を取っていきます。 今後の長寿社会では55歳以上の高齢者でさえ、キャリアの中間地点を迎えた中核戦力として位置づけられるかもしれません。 その場合企業の課題は、継続的学習によるスキルの獲得をいかにサポートするかという点にあります。 「働き方改革」の未来|各施策のポイントまとめ ここまで、働き方改革の背景や目的についてお話ししてきました。 改めて、働き方改革の背景・課題をまとめた図解を載せておきます。 働き方改革は今後、どのような動きをとっていくのでしょうか。 「生産性向上」だけでなく「従業員視点の働き方改革」へ 働き方改革には「生産性の向上」が不可欠であることはここまでお話しした通りです。 筆者の考えをお伝えすると、それに加えて「従業員満足度」のための働き方改革がより重要視されると考えています。 やりがいや成長が実感できる働き方を通じて• 従業員の充実した生活• より良い人生のサポート を実現することが、今後求められていくでしょう。 その点で「ワークライフバランス」と「働き方改革」が近年近いものとして語られるのはごく自然なことです。 特に若年層は企業への帰属意識は薄くなり、雇用の流動化がますます強まると指摘されています。 会社が従業員の心身リフレッシュを手助けする• 育児や介護などのライフサポート といった福利厚生も、活力ある組織を作る手助けになり得ると考えています。 働き方改革導入の4つの注意点 この次の章で「働き方改革の企業好事例」をご紹介していく訳ですが、自社で取り組みを行う際に気をつけなければいけない落とし穴があります。 それは「働き方改革を精神論・形だけのもので終わらせない」ためのポイントと言っても良いでしょう。 要因を解消しない残業削減は形骸化しやすい• 現場任せの改革では、中間管理職が疲弊する• 「働かないことが良いこと」の危険性• 「やらなくて良い仕事」と「自部署がやらなくて良い仕事」を混同しない の4点です。 これらは実際に、筆者の周りで働き方改革に取り組む経営者の何人かがはまっている落とし穴でもあります。 逆にこの注意点を押さえておけば、企業事例を参考に自社で取り組む際「現場に負荷だけがかかって、改善できずに終わる」というリスクを減らすことが出来ると思います。 (1)要因を解消しない残業削減は形骸化しやすい 2017年2月から、一部企業を対象に「プレミアムフライデー」が導入されたことは記憶に新しいでしょう。 これは「日本再興戦略2016年」の一環として、柔軟な働き方を推進するために官民合同で導入されたものです。 その他「ノー残業デー」「ムダ取り」など、さまざまなスローガンのもと残業抑制が行われています。 この動き自体は決して悪いことではありません。 しかし「残業要因を特定し、根本を取り除く」ことのない残業削減は、取り組み自体の形骸化を招きます。 残業要因自体を改善しないと、従業員は残業を申告しにくい雰囲気の一方、持っている仕事が減らないという状態になるからです。 結果、• 申請せずに無断・隠れて残業する• 仕事を自宅に持ち帰る といった事態が起こります。 残業削減・長時間労働抑制は「生産性の向上」と切り離しては成立しません。 (2)現場任せの改革では、中間管理職が疲弊する 残業削減に取り組む一方で、企業としては売上の維持、利益の確保というミッションは無視できません。 長時間労働が発生する根本を取り除かない限り、そのしわ寄せは中間管理職・プレイングマネージャー層が一手に引き受けることになります。 働き方改革に取り組む上でも「現場主導」というと聞こえは良いのですが、中間管理職に「任せた」と丸投げすることは避けるべき事態です。 企業の働き方改革担当者や経営層において、職場単位ごとに改善方針・最低限のルールまでを定めてからバトンタッチすることが好ましいでしょう。 (3)「働かないことが良いこと」の危険性 働き方改革について誤解されがちなことは「なるべく働かないことを良しとする改革」ではないという事です。 生産性・労働の質は変わらずに、労働時間(労働量)だけを減らしていけば、長期的な国内産業は衰退してしまうでしょう。 あくまで「多用かつ柔軟な働き方の見直しによって、労働生産性を高める」ことにフォーカスすべきだと考えます。 (4)「やらなくて良い仕事」と「自部署がやらなくて良い仕事」を混同しない これは現場において働き方改革をリードする役割の方にもぜひ知っておいていただきたいポイントです。 働き方改革の一環として「捨てる会議」「やらなくて良い仕事を探す」という取り組みがよく聞かれます。 これ自体は効果的な取り組みですが、実際「自部署・自分がやらなくて良い仕事」と捉えられることも少なくありません。 図式としては、一見部署の時間外労働や余分な仕事が整理されたように見えても「他部署にその分を押し付けただけ」という事態になります。 部署単位で働き方を見直すことは大切ですが、全社的に時間外労働の問題を解決することを忘れてはいけません。 最新版!働き方改革の実例を紹介 では最後に、筆者が厳選した「働き方改革の好事例」をご紹介します。 働き方改革のリードカンパニーが実践している主な取り組みには、以下の3つがあります。 育児休暇の改善• 短時間勤務・フレックスタイム制度の導入• 在宅勤務(テレワーク) (1)育児休暇の参考事例 サイボウズ株式会社の取り組み より 経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」にも選出されたサイボウズ。 同社ではいち早く働き方改革を行なっており、2006年より独自の育児休暇制度を導入しています。 産前休暇は妊娠が判明した時点から取得可能、育児休暇は子どもが小学校入学するまでの最長6年間も取得可能、さらには男性も育児休暇を取得しないと、年間の休暇を短縮する、といったルールも設けています。 同社社長の青野慶久氏自らも育児休暇を取得し、男性社員への積極的な育児休暇の取得を呼びかけています。 同社では離職率が28%を記録した2005年以降、ワークライフバランスに配慮した制度や、社内コミュニケーションを活性化する施策を実施。 その結果、育休を取得した社員の復帰率は100%となり、2019年の離職率は4%に減少しました。 (2)短時間勤務制度の参考事例 育児休暇と同様に、働き方改革で多くみられる取り組みが「短時間勤務制度」です。 育児や介護にたずさわる社員を対象に、勤務時間を2~3時間、または30分単位で短縮する事例が多くあります。 現在の取り組み事例では「育児休暇から復帰した女性社員」の利用が多いのですが、今後は「両親の介護を目的とした男性社員、管理職社員の利用」も視野に入れて取り組むのがおすすめです。 高島屋の取り組み より 老舗百貨店の高島屋では1991年から短時間正社員制度を導入しており、2019年には契約社員含む460人の社員が短時間勤務を利用しています。 同社では短時間勤務を「育児勤務」「介護勤務」に分け、さらに勤務体系をパターン分けすることで社員の多様なニーズに対応しています。 育児勤務の場合(8パターン)• パターンA・・・1日5時間勤務、年間休日122日• パターンB・・・1日6時間45分勤務、年間休日92日• パターンC・・・1日6時間45分勤務、年間休日122日• パターンD・・・1日6時間勤務、年間休日122日• パターンE・・・1日7時間35分勤務、年間休日122日• パターンF-a、F-c、F-d・・・上記のA・C・Dパターンに順じ事前に勤務予定日を設定することにより7時間35分勤務可能とする。 介護勤務の場合(5パターン)• パターンA・・・1日5時間勤務、年間休日122日• パターンB・・・1日6時間45分勤務、年間休日92日• パターンC・・・1日6時間45分勤務、年間休日122日• パターンD・・・1日6時間勤務、年間休日122日• 勤務場所を見直す働き方改革の好事例といえます。 日本テレワーク協会によれば「ITを利用した、場所・時間にとらわれない働き方」と定義されています。 厳密には、テレワークには• 在宅勤務• モバイルワーク• サテライトオフィス の3形態がありますが、主たるものは在宅勤務です。 企業にとって• 通勤、交通費の削減• 休業からのスムーズな復帰支援• 障がい者雇用 の点でメリットがあります。 テレワーク導入のポイントは「リスク管理」「コミュニケーションの確保」「勤怠管理」です。 在宅という環境下で、情報漏洩リスクの防止、勤怠管理を適切に行える仕組みが求められます。 企業の事例をご紹介しましょう。 キャスターの取り組み より 2019年に厚生労働省が主催する「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」において特別奨励賞を受賞した株式会社キャスター。 オンラインアシスタントをはじめとした人材事業を運営する同社では、テレワークのことを「リモートワーク」と称し、「リモートワークを当たり前にすること」をミッションに、「労働革命で人々をもっと自由に」をビジョンとして掲げています。 全国41都道府県にいる318人の従業員のうち、97%が常時リモートワークを実施しており、働き方や勤務場所で区別されない数値化された目標を評価軸に設け、その達成度で評価が決まる制度を整備しています。 通常の社内コミュニケーションはチャットを利用し、リモートワークへの不安解消のため、全国4箇所に「キャスタースクエア」というサテライトオフィスを設けることで、ほぼ全従業員のリモートワークを可能にしているそうです。 従業員の管理には労務管理用の打刻ソフトウエアを利用、勤務時間の記録とともに、チャットの時間と照合した上で、上長が承認する仕組みを取り入れています。 働き方改革の背景と目的• 働き方改革導入の注意点• 参考にしたい企業事例 のすべてをお話ししました。 補足として「働き方改革」は、決して一過性のトレンドやブームではありません。 日本の産業成長、また、企業の生存・発展のために、長い時間をかけて行う必要があるものです。 しかし経営層や企業担当者の方が「政府の取り組みだから」と働き方改革を考えると、その方針に振り回されてしまいかねません。 適切なコントロールで長時間労働や不公平を減らし、働き手・企業双方がWin-Winになれる環境を目指すことが、働き方改革の第一歩なのではないでしょうか。 ぜひ、今回の企業事例も参考に「自社の働き方改革で注力するポイント」を決めてみることをおすすめします。 この記事が、経営者・従業員が公私共に充実した生活を送るための助けになれば幸いです。
次の働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 通称・略称 働き方改革関連法、働き方改革一括法 国・地域 日本 効力 現行法 種類 主な内容 労働政策 条文リンク 働き方改革関連法(はたらきかたかいかくかんれんほう)、正式名称「 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」 (はたらきかたかいかくをすいしんするためのかんけいほうりつのせいびにかんするほう)または 働き方改革一括法(はたらきかたかいかくいっかつほう)は、における8本のの改正を行うための法律の通称である。 (、)下の(30年)にに提出され、のでなどの賛成多数で可決、成立した。 同年7月6日公布、翌(平成31年)順次施行。 内容 [ ] (平成29年)、がに諮問し、同月15日に・()から「おおむね妥当」と答申された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の要旨は、以下の通り。 第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進(改正)• 第2の柱:長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(等改正)• の上限規制の導入• 長時間労働抑制策・取得の一部義務化• 制の見直し• 企画型の対象業務の追加• の創設• 制度の普及促進(改正)• ・産業保健機能の強化(・改正)• 第3の柱:雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保• 不合理な待遇差を解消するための規定((パートタイム労働法)・改正)• 派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択((労働者派遣法)の改正)• 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化• 行政による履行確保措置と(行政ADR)の整備 時間外労働の上限規制 [ ] 第39条7項 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。 以下この項及び次項において同じ。 )の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。 以下この項において同じ。 )から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。 ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。 — 高度プロフェッショナル制度 [ ] 詳細は「」を参照 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)を創設。 年収1075万円以上、本人が同意していることなどが条件で、各企業の労使委員会による決議が必要。 高度プロフェッショナル制度対象者の健康確保のため、年104日以上かつ4週で4回以上の取得を企業に義務付ける。 働く時間の上限設定• 連続2週間の休日確保• のいずれかを実施しなければならない。 高度プロフェッショナル制度2019年4月施行。 高度プロフェッショナル制度は、おおむね3年後にが実際に高度プロフェッショナル制度で働く人の健康管理時間の実態や導入後の課題をまとめ、厚生労働委員会に報告し、高度プロフェッショナル制度適用者の合意内容を1年ごとに確認更新すると指針に規定、監督指導を徹底し、高度プロフェッショナル制度を導入した全ての職場に、が立ち入り調査するなど、法的拘束力の無いがついた。 同一労働同一賃金の推進 [ ] やといった労働者の待遇改善のため、仕事内容や配置転換の範囲がと同じである場合は賃金や休暇、など同じ待遇確保 均等待遇 を企業に義務付ける。 仕事内容などに違いがある場合も、不合理な格差禁止(均等待遇)。 格差について企業は労働者に内容や理由を説明しなければならない。 第14条2 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。 3 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない — 派遣労働者は、• 派遣先企業の正社員との不合理な格差解消• 一定水準を満たす待遇について労使協定の締結 いずれかを実施するよう、派遣会社に義務付ける。 法解釈を明確化するために、指針を策定する。 は、大企業と派遣会社は2020年4月施行。 派遣会社を除く中小企業は4月施行。 衛生管理の強化 [ ] 「」も参照 企業は労働時間を把握する義務を課され、に、労働者のなど必要な情報を提供しなければならない。 産業医から労働者の健康管理について勧告を受けた場合、企業は事業所ごとに労使で構成するで、その内容を報告しなければならない。 経緯 [ ] においてはが提唱されていたが、後のに追われたため、法案を成立させることはできなかった。 (平成27年)のでは、、の削減・の確実な取得・見直し・見直し・創設などを内容とする労働基準法等改正案が、に提出された。 (平成28年)、が発足し、翌(平成29年)、第10回同会議において「働き方改革実行計画」が決定された。 先の法案は「やを助長する」などの反対があって、一度も審議されないまま2年以上に渡りの状態が続いていた が、同年のにより審議未了、廃案となった。 2018年(平成30年)、におけるのでは、働き方改革関連法案は同国会の最重要法案の一つと位置づけられ 、閣法として同国会に提出された。 衆議院での審議中にの労働時間データを巡って質疑が紛糾し、2月28日に裁量労働制に関わる部分を法案から削除した。 、参議院本会議で自民党・公明党・日本維新の会・希望の党・の賛成多数で可決され、成立した。 、、などのが反対した。 同年7月6日に公布され、翌(平成31年)に順次施行される。 脚注 [ ] [] 出典 [ ]• 2018年2月18日. 2018年2月22日閲覧。 『ビジネス・レーバー・トレンド』2017年11月号. 38-41. 2018年2月22日閲覧。 厚生労働省. 2018年2月22日閲覧。 毎日新聞 2017年9月15日. 2018年2月22日閲覧。 2018年2月18日. 2018年2月22日閲覧。 日本経済新聞. 2018年6月29日. 2018年6月30日閲覧。 関連項目 [ ]• - 本法案がきっかけで始まった活動 外部リンク [ ]• - 公式ホームページ• - 公式ホームページ• この項目は、に関連した です。 などしてくださる()。
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