NaCl の溶融塩電解の模式図。 負電荷をもつ塩化物イオン Cl - は(右)へ移動し、されてガスとして発生する。 電気分解(でんきぶんかい)英語: Electrolysisは、(化合物溶液)に(二電極法の場合)または(三電極法の場合)をかけることで、陰極で還元反応、陽極で反応を起こして化合物をする方法。 もしくはその化学分解によって生成物を生成する方法。 略して 電解ともいう。 同じ原理に基づき、電気化学的な反応によって物質を合成する方法はと呼ばれ、特に生成物がとなる場合はという。 やなど様々なが電気分解によって生産されている。 の電気分解は初等教育の中でも取り上げられる典型的な化学実験であるとともに、源として期待されるの製造法として研究が進められている。 概要 [ ] 液体に2つの電極を接触させて電極間にをかけると、液体中の化学種と電極との間での受け渡しが起こりが進行する。 このとき、のに接続した陽極()では化学物質から電子が奪われてが起こり、反対にに接続した陰極()では化学物質に電子が与えられてが起こる。 この結果、元の化学物質がする場合を 電気分解という。 電気分解によりが生じたり、金属陽イオンが還元されて陰極上にしたりする。 未反応の化学種が移動できるような系であれば電気分解が継続する。 通常、分解したい化合物を含む電解質溶液や、高温にしてさせたイオン性物質の液体に電極を浸して電気分解を行う。 後者の場合を特にという。 のようにを用いて気体を電気分解することも行われる。 電極間の電位差が十分に大きければ、様々な物質を電気分解できる。 天然に産出するの化合物やを電気分解すれば、が大きい金属のを取り出すことができる。 この方法は電気製錬と呼ばれる。 溶錬炉で得られた粗銅の不純物は、硫酸銅水溶液中で行われるにより取り除かれる。 歴史 [ ] 18世紀末にによってが発明されると、化学反応への電気の利用の研究が開始された。 1800年には と William Nicholson が初めて水の電気分解に成功した。 水の電気分解に刺激されたは1806年に「結合の電気化学的仮説」を発表し、翌1807年にはの電気分解によって単体を得ることに成功した。 デービーは同じ手法を用いて同年のうちに・・・・を次々と発見した。 デービーの研究を引き継いだはさらに電気分解の研究を進め、をはじめ様々な発見をし、電気化学の基礎を築いた。 要素 [ ] 電気分解では、電気を流すための、電圧を印加するための、電気分解する物質を入れる(もしくは電解セル)が必要となる。 電極 [ ] 電極のうち、電源のと接続するものを 陰極()、と接続するものを 陽極()と呼ぶ。 電極の材質は電気分解の生成物やに大きな影響を与える。 工業的には安価で安定な電極が、実験用には炭素の他にされにくいやなどの電極がよく使われる。 用途によってはが使われることもある。 有意な反応速度を得るためや、選択的な反応を起こすためが必要となることもある。 直流電源 [ ] 電気分解に必要な電源電圧は、目的物質のや、などから計算される理論電解電圧に、や液体の()を加えた値となる。 反応の種類にもよるが、一般的な反応では 10 ボルト以下の電圧で十分に進行する。 理論電解電圧以下の電圧ではのに使われる電流(非ファラデー電流)がわずかに流れるだけであるが、電気分解が進行する電圧に達するとに応じた電流(ファラデー電流)が流れる。 電流値は電極形状や電解槽の構造、温度、などの影響で変化する。 電解槽 [ ] 電解液には溶液系(電気分解したい物質をに溶かした)と溶融塩系(加熱してさせた溶融塩)がある。 電解槽は、用途に合わせて様々な形状や材質のものが用いられる。 溶液系の電気分解ではやなどガラス製のものが、溶融塩電解では耐熱性の高い製のや電極を兼ねた金属製の坩堝が用いられる。 溶液系の場合、最も多く用いられる溶媒は水である。 水に不溶の物質などでは有機系溶媒が使われ、・・・・・・がよく利用される。 を低減させるため、反応性の低い()が一般に加えられる。 溶媒や支持電解質の種類によって電気分解の生成物が異なる場合がある。 溶融塩電解では化合物にとして他の物質(試薬)を混ぜる場合がある。 ではの融点を下げるためにとが加えられる。 なお、溶液系や溶融塩系による電解液による電気分解のほかに、水蒸気電解のように固体電解質を利用して気体を電気分解する方法がある。 用途 [ ] の多くは電気分解を利用して行われる。 電解液(めっき液)としてやの水溶液が用いられる場合には、毒性に注意が必要とされる。 鉱業においては鉱石を電気分解して金属を得るが行われている。 ではの溶融塩電解によってアルミニウム金属を得るが行われている。 粗銅を陽極、純銅を陰極として中で電気分解することにより、純度の高い銅(電気銅)が生産されている。 は、将来的なエネルギー源として期待されるの生産手段の1つとして研究されている。 や、などで得られた電力で水を電気分解し、得られた水素をで発電に利用することで、などからの排出を抑制することが可能となる。 脚注 [ ]• 井手本康、板垣昌幸、湯浅真 『化学系学生にわかりやすい電気化学』 コロナ社、2019年、2-3頁。 井手本康、板垣昌幸、湯浅真 『化学系学生にわかりやすい電気化学』 コロナ社、2019年、2頁。 - (2008年5月17日アーカイブ分)• 関連項目 [ ]• 外部リンク [ ]• - 文部科学省 国立教育政策研究所.
次の詳しくは高校化学で学ぶ。 1 塩酸 陽極に が集まり、塩素が発生する 陰極に が集まり、水素が発生する 2 塩化銅水溶液 陽極に が集まり、塩素が発生する 陰極に が集まり、銅が析出する 3 水の 陽極 酸素が発生する 陰極 水素が発生する。 1 図で電流が流れる向き、電子が流れる向きをそれぞれ選べ 2 陽極、陰極で生じる気体をそれぞれ化学式で答えよ。 3 この実験について述べた文中の[ ] のうち正しい語句を選べ 塩酸の濃度は電流を流し続けると[濃くなる・薄くなる]ため、電流はだんだん[流れにくくなる・流れやすくなる]。 実験2 うすい塩酸を食塩水に変えてに電流を流したところ、陽極、陰極でそれぞれ気体が生じた。 4 食塩水中の食塩の電離の様子を式で表わせ。 5 陽極、陰極で生じた気体の化学式をそれぞれ答えよ <解説> 実験1 1 電流と電子は逆向きに流れることを覚えよう。 よって、塩酸の濃度は電流を流し続けると[薄くなる]。 また、水溶液中のイオンの数が減少するため、 電流はだんだん[流れにくくなる]。 実験2 4 食塩=塩化ナトリウムの化学式は 水に溶かすと、以下のように電離する 5 陽極:電離して生じた塩化物イオンが陽極付近に移動する。 塩酸のでも塩化物イオンが陽極付近に移動している。 よって、食塩水の陽極と、塩酸の陽極で同じ気体が発生する。 よって、陽極では塩素が生じる。 陰極:水溶液中のナトリウムイオンが陰極付近に移動するが、ナトリウムイオンはに関わってこない。 このようなときは、水のと同じ気体が生じる。 水のでは、陰極で水素が生じるため、食塩水のでも水素が生じる。 例題3 食塩水のとイオン交換膜 例題3 図のように、装置の陽極と陽極を交換膜と呼ばれる膜で仕切り、陽極側に飽和食塩水、陰極側にうすい水溶液を加え、電流を流した。 交換膜はのみを通し、陰イオンを通さない。 また、この膜で仕切ることで、陽極側と陰極側の溶液は混ざることがない。 1 陽極と陰極で生じる気体を答えよ。 2 陽極側から陰極側に移動するイオンを答えよ。 3 陰極付近で増加するイオンを答えよ。 4 陰極側の水溶液の濃度は、電流を流すことで、どのように変化するか説明せよ。 塩化物イオンは電子を受け取り、 塩素が生じる。 一方、 ナトリウムイオンは膜を通って陰極側に移動する。 陰極からは、 水素が生じる。 実験2 同じ装置を用いて、電極を炭素棒から銅板に変えて、塩化銅水溶液のを行った。 陽極:塩化物イオンが移動し、電子を失って塩素が生じる。 発生する気体の総量は、塩化銅の量によって決まるため、[変化しない]。 よって、銅板が溶ける。 このようなときは、水のと同じ気体が生じる。 水のでは、陽極で酸素が生じるため、水溶液のでも酸素が生じる。 陰極: 電離して生じた銅が陰極付近に移動する。 塩化銅のでも銅イオンが陰極付近に移動している。 よって、塩化銅の陰極と、の陰極で同じ物質が発生する。 よって、陰極では銅が生じる。 よって、硫酸水溶液になる。
次の電気分解の実験 埼玉県立大宮高等学校 教諭 清水 武夫 1.はじめに 電気分解は,銅の電解精錬やアルミニウムの融解塩電解等に応用され,私たちの生活を支える非常に重要な役割を果たしている。 「化学基礎」では,第3部 物質の変化(第3章 酸化還元反応)で発展内容として扱い,「化学」では,第2部 物質の変化と平衡(第2章 化学反応と電気エネルギー)で扱う。 ここでは,電気分解の実験として,定性的な実験と定量的な実験の授業実践記録2種類を紹介する。 もともとは参考文献にある実験をベースに,自分なりに工夫を施して実践しているものであるが,諸先生方の授業の参考になれば幸いである。 2.「電気分解観察ビン」を用いた定性的な実験 1 概要 電気分解の授業において,銅,銀電極を陽極に用いない場合,両極でおこる変化を捉えるために必要な考え方のポイントは,次の3つであると考える。 このつまずきを解消するためには,できるだけ多くの水溶液を用いて,電気分解の様子を実感させることが大切である。 そこで,私は「電気分解観察ビン」を活用している。 これにより,電気分解の様子を,生徒の目の前で観察させることができる。 使用する液量を少量で済ませることができ,安全に実験することができる。 したがって,教室に持っていって使うこともできる。 2 観察ビンの作成 <用意するもの>• ・サンプルびん(内径30mm) ・千枚通し ・ペンチ ・ホットボンド• ・ステンレス線(太さ0. 5mm~2. ア サンプルびんのフタに千枚通しで3カ所穴を開ける。 イ 3カ所のうち,2カ所は,9V電池の両極の間隔にする。 ウ 2カ所にステンレス線を差し込む。 エ 長さを調節し,ホットボンドで内側と外側を固定する。 【準備】• ・水溶液 A.0. ・電気分解観察ビン(ステンレス電極付きフタ)・9V電池• ・フェノールフタレイン溶液 ・万能指示薬 ・洗浄ビン 【操作】• ア 水溶液Aを電気分解観察ビンに8分目ほど入れ,ふたをする。 イ 9V電池の両極をステンレス電極に触れさせる。 電極の周りの変化を観察する。 ウ 観察が終わったら,溶液を所定の場所に廃棄し,洗浄ビンで洗う。 エ 同様に水溶液B,C,D,Eについて行う。 ただし,次の水溶液については,追加の操作があるので,注意すること。 A) 両極におけるそれぞれの水溶液の変化を,電子e -を用いたイオン反応式で答えよ。 B) 指示薬の変化から,それぞれの電極の液性(酸性・中性・塩基性)はどうなったか。 3.電気分解による定量的な実験 1 概要 上記2の実験では,定性的な電気分解の様子を手軽に確認させることが主たる目的であった。 続いての実験では,定量的な実験によって,さらに電気分解の理解を深めることができる。 電気分解によって,陰極や陽極で変化した物質の物質量と流れた電気量は比例関係にある。 この関係を「電気分解の法則(ファラデーの法則)」という。 電流と時間を計測して,理論値通り銅が析出するか確認する。 【準備】• ・100mLビーカー ・リード線(赤・黒) ・セロテープ ・電源装置 ・電卓• ・電極固定スポンジ ・ストップウォッチ ・ティッシュペーパー ・電流計 【操作】• ア 100mLビーカーに1. イ セロテープで一部を絶縁したステンレス板と銅板を電極固定スポンジに固定する。 ウ 100mLビーカーにセットする。 エ ステンレス板を陰極(-極),銅板を陽極(+極)にするように,リード線,電源装置,電流計を接続する。 オ ストップウォッチで時間を計りながら,電源装置のスイッチを入れ,電圧調整ツマミをまわし,電流を 0. 40Aにする。 カ 10分以上経過した時点で,電源装置のスイッチを消す。 : 時間 ア 秒• キ ステンレス板をスポンジからそっと取り外し,水道水で軽く洗う。 ク ティッシュペーパーで軽く押さえつけるように極板の水滴を拭き取る。 ケ 水滴がなくなり,ある程度乾いたら,電子天秤で質量をはかる。 : 質量 イ g• コ セロテープやピンセットを使って,ステンレス極板に付着した銅をはがしとる。 もし,極板に銅が残っていたら,さらにセロテープできれいにはがしとる。 サ 銅をとった後のステンレス極板の質量をはかる。 : 質量 ウ g 電極に析出した銅を セロテープで剥がしたところ 【結果】 (数値は一例)• 8469 g - 質量 ウ 11. 129 g 析出した銅の質量(実験値)• 【考察】 A) この実験で流れた電気量について 電流 0. 00400 mol C) 析出する銅Cuの理論値について 銅が析出する陰極での反応は,次の通りである。 原子量Cu=63. 5 とすると,モル質量は63. ずれているとしたら,何が原因だったか考えてみよう。 4.おわりに 本校は65分授業を実施している。 したがって,今回紹介した電気分解の実験を1時間の授業の中で行っている。 生徒の様子としては,手にとって目の前で見ることのできる観察ビンや,思ったよりも綺麗に析出する銅箔に感激しているようである。 私は,「化学」はモノから学ぶ学問であると考えている。 座学や演習の授業にも大切な意味があると認識しているが,やはり実験や観察を通して,生徒が主体的に学ぶ場を提供することは,非常に重要なことであると思っている。 これからも,化学への興味・関心を高める授業支援の工夫について研究していきたい。 5.参考文献• 49,No. 10,p632, 2001• 50,No. 10,p702 2002•
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