ウーマンラッシュアワー・村本「今お前らを逃してやったのは俺だぞ。 じゃあな」 ウーマンラッシュアワーの村本 ステージを降りたウーマンラッシュアワーの村本は振り返る。 「お客さんがみるみるうちに、どの顔で聞いたらいいかわからない顔(になるの)が最高でした」 賞レース形式だった『THE MANZAI』でウーマンラッシュアワーが優勝したのは2013年。 当時はバイトリーダーのネタなどを披露していたが、その後の彼らの漫才は、政治問題や社会問題をふんだんに盛り込んだスタイルになっている。 原発が数多く立地する福井県の若狭湾、その大飯郡おおい町出身だという村本は、客席を見つめながら連呼する。 「原発原発原発原発原発原発原発原発原発ね。 みなさんが日頃から逃げてる言葉を浴びせてやりましたよ」 村本は続ける。 2年前にも、原発問題を盛り込んだネタを、この『THE MANZAI』の舞台で披露した。 すると、「どうせお前らの町は原発で飯を食ってるくせに」と批判を受けた。 確かに、地元には「原発で飯を食っている」人もいる。 でも、そうでない人もいる。 自分の祖母は農家をしている。 ひとくくりに「原発で飯を食っている」と言われると、ムカつきもする。 とはいうものの、と村本は切り返す。 自分の近所の人や親戚には「原発で飯を食っている」人がいるだろう。 自分の発言が誰かに迷惑をかけてしまうかもしれない。 それに地元の人からしたら、原発があったら安全面で怖いし、なくても経済面で怖い。 だが、人の利害や心情が絡み合ったそんな状況を気にせず、外野は原発の是非を二項対立で議論する。 「ウルトラマンと怪獣ばっかり応援して、その足元で家がたくさん潰されてることは無視するわけですよ」 ここから村本の弁舌はさらに円滑になる。 沖縄の基地問題、台風の避難所でのホームレスの拒否、朝鮮学校の問題、語りたい内容はたくさんある。 今日はカメラの向こうの社会としゃべりたい。 だが、こんなテーマについて誰かに語ると「みんながどういうテンションで聞いたらいいかわからない」とも言われる。 では、そこで前提にされている「みんな」とは誰か。 「みんな」の中に、果たしてホームレスや朝鮮学校の子どもたちはいるのか? センターマイクを握りしめた村本は喝破する。 「いつでもみんなの中にいない人がいて、みんなの中にいない人が透明人間にされて、透明人間の言葉は誰にも聞かれないようになるんですよ。 透明人間がいっぱい日本にはいるわけですよ」 政治問題を発信すると、そこには肯定派と否定派、友と敵の二項対立の構図が即座に描かれる。 現にウーマンがテレビでネタをすると、ネットでは賛否が巻き起こる。 絶対的な肯定派と絶対的な否定派が場外乱闘を繰り広げる。 私たちの間に鋭い境界線が走る。 分断が起きる。 しかし、村本が少なくともこのネタの中でメッセージのひとつとして発信していたのは分断とは逆のこと、「みんな」のイメージを広げませんかということではなかったか。 さて、村本は語り続ける。 こういうネタをしている自分は、全国の原発がある地域に呼ばれて話をすることがある。 それを聞きつけた小泉純一郎元総理と先日、原発をテーマに対談をしてきた。 「そこで最近気づいたんですが、いま原発で飯食ってるの私でした!」 冒頭の伏線を回収し、自分で自分をネタにする。 ひとくくりにできない現状の中に、そんな「みんな」の中に、自分自身も投げ込んでいく。 きれいなオチに笑った。 村本は最後に言い放つ。 「笑いは緊張からの解放ですから、今お前らを逃してやったのは俺だぞ。 じゃあな」 境界線が揺らぐ。 今日はカメラの向こうの社会としゃべりたいと言って彼がこっちをチラッと見た時、私はどんな顔で画面を見ていただろうか?.
次のウーマンラッシュアワーが出演した12月9日放送『THE MANZAI2018』(フジテレビ) ウーマンラッシュアワーの村本大輔が、またやってくれた。 昨晩放送された『THE MANZAI』(フジテレビ)のことだ。 村本の話題については本サイトでも何度も取り上げてきたが、自身のTwitterをはじめ、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)『AbemaPrime』(AbemaTV)などで政権への批判をおこなってはネトウヨや右派論客から一斉攻撃を受け、しかし、それでも屈することなく発言しつづけている芸人だ。 しかし、今年は昨年のネタよりも一段ハイレベルなものへと進化させており、ただ一言、すごかった。 すでにさまざまなメディアで話題となっているが、あらためて、ウーマンラッシュアワーの漫才を紹介しよう。 村本はまずいきなり、「最近ねえ、芸人がですねえ、けっこう政治とか、社会問題とかね、けっこう発言する芸人が多い」「たいして勉強もしない芸人がね、社会問題とか政治について語るやんか」と日頃自らに向けられる批判を自虐のように切り出し、「社会問題とか政治について語る芸人のこと、どう思う?」と相方の中川パラダイスに問いかける。 中川「いや、そうなんですよ。 芸人は社会問題なんて、一切触れなくていいんですよ! ほっといたらいいんですよ!」 すると、村本は「でも僕はね、社会で起きてる問題を無視したくはないなって思うんですよ」「今世界中ではいろんな問題があって、たくさんの人たちが涙を流しています。 僕はお笑い芸人という立場で、誰も邪魔できない漫才で、そういう問題に触れていけたらなって、僕は思うんです」と宣言。 「社会問題なんてほっとけばいいと言いました。 関係ないと言いました。 真っ先に、目先の笑い、目先の好感度、目先の金のためならば、平気で立場の弱い人たちを無視できる最低な芸人」と自分への批判の反論、さらには空気ばかり読んでいる多くの芸人たちを皮肉るような切り返しをみせ、漫才の中に「社会問題」をどんどん打ち込んでいったのだ。 「子どもをいっぱいつくることでしょうか。 いっぱい働いて経済を回すことでしょうか。 僕は違うと思う。 お互いがお互いの居場所を生産し合う。 居場所をつくることだと僕は思うんですね」 村本は「この社会は本当に不寛容」だと言い、ここから超高速のマシンガントークがはじまる。 「たとえばLGBTの人たちが、自分たちがゲイだとかレズだとか言うときにカミングアウトという言葉を使うんですね。 そしてまた辺野古というところに新しくつくられようとしている。 そして石垣島のほうにもですね、自衛隊の基地がつくられようとしている。 沖縄の海って誰のもんですか? 日本のものなのか、アメリカのものなのか。 僕は違うと思う。 沖縄県民のものなんですよ。 だからこそ、いまこそ沖縄県民の怒りの声に耳を傾けるべきだと僕は思うんですね」 「シリアのジャーナリストの安田さんという方が英雄だとか自己責任だとか言われてますけど、いまこそシリアの悲惨な状況に僕は目を傾けるべきだと僕は思うんですよ」 「BTSが、原爆のTシャツを着てて、いろいろありましたけど、被爆者の気持ちを考えろって言うんであれば、いまこそ被爆者の方々の声に耳を傾けるべきだと僕は思う」 「『日本は平和だから、そんな社会的なこと言わなくていい』って言う人がたまにいる。 僕は平和じゃないと思う。 平和なところしか見ない人ばっかりの話で、平和じゃないとこたくさんある。 ニュースになってないだけで、被災地はまだまだ大変で、朝鮮学校の生徒さんは無償化を求めて一生懸命、寒いときにビラ配りとかやってるわけ 「電気を当たり前に使うけども、原発の危険性については考えず、原発の危険性について考えるけど、原発がなくなった後の地域の経済については考えない」 「水道が民営化になる。 政治家は簡単に通す。 でも国民はそれに対して無関心。 みんな見たくないものを見たくないだけで、本当に見るべきものがたくさん僕はあると思うんですね」.
次のウーマンラッシュアワーより 12月8日に『THE MANZAI2019』(フジテレビ系)が放送され、平均視聴率13.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同じ)を記録。 昨年の11.7%を2.2ポイント上回り、例年以上の盛り上がりを見せたが、一部ネット上では、ウーマンラッシュアワーのネタに「漫才ではないのでは?」「炎上狙いに見える」と不満の声が上がっている。 「今回は、2010年からコンビとしての活動を休止していたアンタッチャブルが、10年ぶりに新作漫才を披露するとあって、かなり注目を集めていました。 最高瞬間視聴率の16.5%を記録したのもアンタッチャブルが漫才をしている最中でしたね。 また、『そもそも早口すぎて、何を言ってるのか聞き取れない』『相方がいる意味ない。 しゃべりたいなら1人で漫談でもやってれば?』などの声も多数見受けられます」(同) 一方で、一部のネットユーザーたちからは「ここまで切り込めるのはさすが」「万人受けはしないだろうけど、私は好き」など、好意的な意見も上がっているが……。 「ただ、そうした人たちからも『でも漫才ではないよね』と指摘されている印象があります。 同じような時事ネタや社会風刺ネタを扱う芸人であるナイツや爆笑問題の漫才と比べ、『ウーマンは問題を提起するだけ』『笑いの要素がない』などとも言われていますね」(同) さらに、漫才終了後の村本の行動も、疑問視されているようだ。 「村本は、漫才終了後にスタンドマイクを倒して舞台を去っていったのですが、自身のTwitterで、この行為を『おれはただむかついてマイクを投げただけ。 なんかムカついた』と説明したんです。 これにはネット上で『ものに八つ当たりとか最低』『結局、炎上狙いにしか見えない』などと批判が寄せられていましたね」(同) 果たして村本は、視聴者からの反応をどう受け止めているのだろうか。
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