サンパウロのセントロ(中心部)で2月下旬に行われたルア・デ・カーニバル(路上カーニバル)には今年も驚くほど多くの人々が参加した。 少なくとも数千人はいるだろう。 参加者の多くは、男は上半身裸、女は水着にうすいTシャツ姿である。 雨に濡れて風邪をひく人も多いだろう。 この中には、新型コロナウイルスに感染した、海外からの観光客や海外から帰ってきた人が交じってのではないか。 ウイルスが拡散されなければいいが……。 22階のアパートの窓から行進を見ながら不安がよぎった。 ガスマスクをつけている人も出てきた 2月末、中国の武漢で未知ウイルス感染者が爆発的に増加していた。 ブラジルでは、イタリア帰りの中年男性が感染していたことが確認されたものの、まだ、誰もこのウイルスの恐ろしさを知らなかった。 北半球の中国で発生した病気が南半球のブラジルまで拡散されるとは誰も思いもしなかったはずだ。 大多数のブラジル人にとって、それはもっとも遠い、地球の裏側のできごとであり、対岸の火事そのものであった。 3月に入ると、コロナウイルスに関する世界のニュースがテレビで毎日のように報道されはじめたが、サンパウロでは、リベルダージ(東洋人街)で黒いマスクをファッション感覚でつける若者がいるくらいで、マスク姿の人はほとんど見かけることがなかった。 しかし、薬局ではマスクの売り切れが続出していた。 日系ブラジル人の友人は、「テレビを見て心配になって購入する人が多いようだね。 ブラジル人のことだから、きっと使わずに棚の奥でホコリにまみれたままになるよ」と言って笑ったものである。 それが、今や通行人の半分ほどがマスクをしているし、中にはガスマスクをつけている人も見かけるほどになった。 スーパーのレジやロッテリア(宝くじ屋)の列も、みな1. 5mほどの間隔をあけている。 薬局などでは入店人数が制限され、入店する前には消毒用のジェルを手にシュッとひと吹きしてくれる。
次のモロ法相は3月30日付の臨時官報に、コロナウイルス対策のために国家治安部隊(フォルサ・ナシオナル)を派遣することを認める省令を掲載した。 これによると、5月28日までの期間限定で、医療関係者がコロナウイルス感染者に対応する際の補助、病院や救急医療施設などの治安の確保、医療用の資材や薬品類、食料品、衛生用品の輸送や保管に際しての安全保障、港湾、空港、高速道ならびに市街地での治安確保やその支援などの要請に対し、治安部隊を派遣するという。 これはモロ法相が、コロナ対策においても経済活動継続を主張するボウソナロ大統領ではなく、外出自粛令をはじめとした社会的隔離を進めるマンデッタ保健相の方針を優先した故の措置と見る向きが強い。 地元紙の報道でも、モロ法相は既に、ボウソナロ大統領がコロナ対策に一向に本腰を入れないことに関して強い不満を漏らしていたと報じられていた。 法相はツイッターでも「今こそ、科学の専門家の声を聞くべきだ」とする最高裁のルイス・フクス判事の発言を拡散RTしていた。 モロ法相の動きに対しては、ボウソナロ大統領が「エゴイスト」などと呼んで批判していることが、一部のメディアで報じられているが、連邦政府内では、経済優先を強く主張していたパウロ・ゲデス経済相も、「一市民としては隔離に賛成」と発言するなど、マンデッタ保健相の方針に従う動きが目立ちはじめている。 他方、3月30日夜、最高裁のアウレーリオ・メロ判事が、ボウソナロ大統領のコロナ対策に関する種々の言動に関し、「責任法違反に問うべきだ」とする訴えを、連邦検察庁に送付し、同庁の判断(意見書)を求めていたことが明らかになった。 この訴えは労働者党(PT)のレジナウド・ロペス下議が3月25日に提出したもので、書類は2日後に検察庁に送られた。 アウレーリオ判事は「今の大統領の言動を見てると悲しい」と現地紙の取材で語っている。 また、連邦検察庁のアウグスト・アラス長官も、「コロナウイルスに関する方針を決めるのはマンデッタ保健相だ」と語り、「もし、大統領が州の隔離政策に反対する大統領令を出すなら、最高裁への異議申し立ても辞さない」との見解を明らかにしている。 一方、3月29日のツイッターに続き、フェイスブック社も翌30日、同社が運営するフェイスブックとインスタグラムに掲載されていた、コロナウイルスに関連するボウソナロ大統領の投稿を、「不適切な内容で人に危害を与える恐れがある」として削除した。 こちらの記事もどうぞ• 2020年5月15日 反隔離を叫べど、加速化して増えるコロナウイルスの死者の前に支持が増えず、かつ、セルジオ・モロ前法相辞任の発端となった閣議ビデオ中の大統領発言が問題視されたことで、ボウソナロ大統領の立場はますます危うくなっている。 とりわけモロ氏の政権離脱はボウソナロ氏にとっては痛 […]• 2020年4月28日 コロナショックがキッカケで、ブラジルが激動期に入った感じがする。 1992年末、インピーチメント(罷免)直前に辞任したコーロル元大統領(現上院議員)が先週、「この映画は見たことある」とのコメントを発したという25日付ブラジル社会面記事には納得させられた。 大統 […]• 2019年8月20日 ボウソナロ大統領が15日に、セルジオ・モロ法相の管轄である連邦警察のリオ州長官の人事に介入、同州連警が騒動となった。 また、大統領は長男のフラヴィオ上議と同氏のリオ州議時代の職員、ファブリシオ・ケイロス氏の疑惑を最初に指摘し、同じくモロ氏が力を入れていた金融活動管理審議 […]• 2020年5月9日 ボウソナロ大統領は7日、国内を代表する15社の経営者たちと共に最高裁を突然訪れ、新型コロナウイルス対策で州や市が行っている隔離政策を終わらせるよう、ジアス・トフォリ長官に迫り、物議を醸した。 7、8日付現地紙、サイトが報じている。 ボウソナロ大統領は7日、プラナウト […]• 2019年7月27日 【既報関連】セルジオ・モロ法相とラヴァ・ジャット(LJ)作戦担当検事のデルタン・ダラグノル氏らのスマートフォンをハッキングした容疑で、23日に逮捕されたハッカー4人が、ボウソナロ大統領(社会自由党・PSL)、ロドリゴ・マイア、ダヴィ・アルコルンブレ両院議長(共に民主党 […].
次のトンデモ発言の連発 ブラジルのジャイール・メシアス・ボルソナーロ大統領(65)は最近、日本でも知名度が一気に増している。 新型コロナウイルスに関するトンデモ発言の連発が、衝撃を与えているからだ。 *** ボルソナーロ大統領は1991年、下院議員選挙に当選すると、「極右」とも評される政治的スタンスを積極的に表明した。 議員時代から暴言は日常茶飯事。 ついたあだ名が「ブラジルのトランプ」というのはご存知の通りだ。 「独裁者が犯した過ちは拷問にかけたことではなく、殺してしまわなかったことだ」 「ブラジルは独裁政権下で腐敗した3万人を射殺しておけば、随分、国家のプラスになっていた」 「私は息子が同性愛者なら愛することはできないだろう。 私は偽善者にはなれない。 息子が髭をはやした男と一緒になるぐらいなら、事故で死んだ方がましだ」 以上の3つは、在英国際ジャーナリストの木村正人氏が2018年10月、YAHOO! ニュース個人に掲載した「『息子が同性愛者なら事故で死んだ方がまし』『労働党は撃ち殺せ』過激発言『ブラジルのトランプ』大統領に」の記事で紹介したものだ。 ニューズウィーク日本版(電子版)が今年1月18日に掲載した「ボルソナロ(ブラジル大統領)の成績表:差別発言を連発する『問題児』、アマゾン森林火災で世界を敵に」の記事には、「女の給料は男より低くするべき。 妊娠するから」という発言も伝えている。 こんな大統領がコロナ禍に直面し、「経済を優先するため、都市封鎖などの規制は一切、行わない」という政策を採っているのだ。 ブラジルだが、一応は国民皆保険の実施を掲げている。 とはいえ、アマゾン川流域など、ブラジルには従来から医療基盤が脆弱な地域が少なくない。 都市部にも「ファヴェーラ」と呼ばれるスラム・貧民街が存在する。 新型コロナが貧困層を直撃するのは、アメリカの例を見ても明らかだ。 最新の感染状況をご紹介する前に、まずはボルソナロ大統領の信じがたい発言をメディアの報道から引用させていただこう。 「人々が自動車事故で命を落とすからといって、自動車製造工場を閉鎖することはできない」 「私たちのうち90%は、新型ウイルスに感染しても症状が現れない」 「新型コロナウイルスは、軽いインフルエンザか、ただの風邪程度だ。 マスコミは、各国の事例を最大限に言いはやし恐怖をあおっている」 「新型コロナウイルスには(国民の)70%が感染する。 どうすることもできない」 「(死者が5000人を超えたことについて)それで? 残念なことだ。 でも私にどうしろというのか」 「悲しい状況だ。 多くは高齢者だが、愛する者を失った家族に同情する。 でもこれが人生、あすはわが身だ」 (註:出典は記事文末に記載。 引用に際してデイリー新潮の表記法に合わせた。 以下同) これでは有権者だけでなく、閣内からも異論が出て当然だ。 しかし、外出禁止や商業活動の自粛など、常識的な対策を主張する保健相を2人更迭。 軍人を暫定保健相に任命した。 あわせて読みたい関連本•
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