君がもしもね 落ち込んで、どうしようもなくなって 蹲って、もうそこから一歩も動けなくなった時は 必ずその手を握り締めて 真っ暗な闇の世界から 君を、助け出してあげる。 『Eternal bonds』~永久の絆~ ヘッドフォンから聞こえる、聞きなれた音楽が耳を叩く。 聞きなれたメロディー 聞きなれた、声。 世界が、変わってしまったのは高校生の時。 つまらないだけの世界が 色をつけて 自分を取り巻く、全てが変わっていった。 真剣に悩んで、動画を撮って、声を真似て、歌を唄って。 そのうち、どんどん自分の名前が売れて 自分を好きと言ってくれる人が増えた。 嬉しくもあり そしてちょっと怖くもある。 いつ、飽きられてしまうのか。 いつ、この世界に終わりが来るのか。 アスファルトの小石を蹴飛ばして、何もない現実にさまよえば 自分の無力さを思い知らされる。 (………僕がもし、あほの坂田でも隣の坂田でもなくて、ただの、何も持ってへん一人の人間やったとして……僕を見てくれる人は、どのくらいいるんだろう?) 動画投稿サイトで知り合った友達 リスナー スタッフ その繋がりが全部無くなったとして 自分に残るものは一体何なんだろうか? ここで泣いて叫んだって 喚いて、血を吐くまで絶叫したって きっと この声は、誰にも届かないんじゃないかと。 そんな気がして怖くなる。 「…………。 」 助けてと、叫びたいのに 求める名前が出てこない。 瞼の裏に浮かぶのは、実家を出る時に少し寂しそうな顔で 『頑張って来い。 』 とだけ、珍しいほど優しい声で告げた 父親の声。 何時も迷惑ばかりかけて 自分のやりたい事を、いつだって受け入れてくれた。 こんな子供でごめんねと そう告げたら 『阿呆、お前は俺の子やろが。 』 とだけ返された。 零れた涙を知られたくなくて、必死で声を繕って 『……うん。 ………時間できたら、そっち帰るから。 』 『おうおう、東京に染まって帰って来るんやな?』 『関西の人間そればっか言うの何なん??』 『はは、まぁええよ。 いつでも帰って来いや。 元気でおれよ。 』 電話を切った途端 もう、涙が止まらなくなって 部屋の片隅で、スマホを握り締めたまま 声を出して泣いた。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 高校出て、大学に行って、就職して。 そうやって普通の道を歩くことが出来なくて 寄り道ばかりで 父さん ぼくは、あなたの思う通りの息子にはなれなかった。 [newpage] 『坂田の様子、何かおかしくない?』 スカイプ越しに聞こえて来た声に センラははぁ、とため息をついた。 仕事終わり、じゃあ今日は少し時間もあるから何か放送しようかなんて そう思っていたら うらたから通話があって、相談をされた。 どうやら志麻も一緒にいるらしい。 「そういえば、思い当たる節はあるような。 」 少し前に 坂田のツイッターのサブ垢で、何か呟いていた。 ホームシックにかかったんじゃないか?とうらたも志麻も、あの時は別に気にする様子もなかったので、センラも特に気にしてはいなかった。 気分が急に浮上したり落ち込んだり 人間である以上仕方のない事だし、いつも一定のテンションでいられる人間なんていやしない。 落ち込んだら後はもう浮いてくるだけだ。 『あんな?センラさん。 』 「はい?」 『……俺、時々思うんやけど。 坂田さ、結構俺らには……何ていうか、隠し事とかせぇへんやん。 愚痴も結構言うてるしな?でも、ほんっとうに苦しくてどうしようもない事は、俺らには話してくれへんやん……カッコつけたがりやから。 』 「そうですねぇ……。 確かに。 」 『………まぁ、心配なわけですよ。 ……年上組としては。 』 『あいつ、マジで自分の心ぶっ壊れるまで頑張るからさぁ。 一回決めたら何言っても聞かねぇし。 』 それは、センラも納得だった。 あぁ見えて、坂田は頑固だ。 普段は少し適当に見えることもあるが、その実譲れない事は絶対に譲らないし、納得するまで時間がかかる。 『どうする?一回皆で集まるか??』 『そうせぇへん?俺めっちゃ心配やわ。 』 「うん、えぇですよ。 俺も、さかたんの事心配やから……参加します。 」 そうして、浦島船による坂田救出戦線が引かれ 今週の日曜日に、4人で集まることとなったのである。 日曜日 待ち合わせの場所にやってきた坂田の表情は、何だか無理やり張り付けたみたいな笑顔だった。 パーカーにジーンズの、やる気のないコーデでやって来た坂田をハラハラしながらうらたは出迎えた。 」 「秘密!?秘密って何??」 「………あ、センラまん来た!」 待ち合わせの場所に遅れてやってきたのは レンタカーに乗ったセンラだった。 「え?車!?」 助手席の窓が開いて、姿を見せたのは志麻。 「うらたさん、さかたんお待たせ!」 「はよ乗って乗って!!」 うらたに背中を押して急かされて 坂田は、センラと志麻の乗るレンタカーに飛び込んだ。 何処に行くかも知らされぬまま、坂田は頭にクエスチョンマークを浮べて眉を寄せる。 聞きたくても、肝心のセンラは運転中だし 隣で 「あ、じゃがりこ食う?センラさん??」 とか言ってじゃがりこの蓋を開けている志麻に聞いても、まともな答えは帰って来そうにない。 隣のうらたは、何故かスマホを弄ったまま 「なぁ、坂田コレ見て!やばくね!?」 と言いながら可愛い動物の30秒動画を見せてくるものだから、何も聞く隙がなかった。 「んー、ヤバいなぁ。 これ何猫??」 「三毛じゃん?あ~、癒されるわマジ。 猫か犬飼いたい。 」 「飼ったらえぇやん。 ちっこいのやったらいけるやろ。 」 「でもさ~、色々金かかっちゃうじゃん。 辛いよな~。 」 なんて 本当にとりとめのない話をして 都内を暫く走っていると、見た事のある景色が広がり始める。 (………江の島?) 「なぁ、センラまん間に合うかな?」 「あ~、この先混んでたらヤバいかな……今何時やっけ?」 「今、17時くらいやな。 」 梅雨時期のこの季節だが、珍しくこの日は晴れ晴れとした空が広がっていて 集合時間が時間だけに 坂田は、夕ご飯を食べるのだと思っていた。 なのに、車に乗せられて向かっているのは江の島方面。 少し込み合って来た国道を、センラの車が走り抜けていく。 清々しいほどに、綺麗な青空が窓から流れるように消えていって 坂田は、しばし無言のまま その澄み渡る空を見上げた。 [newpage] 「さかたん、着いたで?」 急に声を掛けられて、坂田は飛び起きた。 どうやら寝ていたらしい。 気が付けば、外はもう日の入り。 一瞬自分がどこにいるのかわからなくなって 目をぱちぱちさせる坂田に うらたが車を出るよう促す。 「なに?ここどこ??」 「いいから、さっさと車出ろ!ほら!」 ぽん、と軽く肩を押されて坂田は渋々車の外に出た。 そうして 言葉を、失った。 広がるのは、思わず絶句するほどの絶景。 沈むオレンジ色の夕日が、江の島の海の向こう側に溶けて 辺り一面を優しく照らし出す。 「ひゅー、絶景やな~!!」 「やっぱすげーな、これ!」 「いやぁ、ほんまにこれネットでググったかいありますわぁ……。 」 耳に入って来る3つの声。 坂田はそのどれもに返答することも出来ず。 立ち尽くした。 何処までも続いていく地平線 その向こうに、眩いほどのオレンジ。 波の音は静かに囁いて 心の奥底 ずっと、その奥を、ぎゅっとさせる。 言葉には決して出来ない光景。 坂田の、見開いた瞳から一滴、オレンジ色の涙が落ちた。 そんな彼の頭を 優しく撫でる手。 「っもう、さかたんは~!!何でそんな落ち込んでんの?」 センラの、温かくて優しい手が頭を撫でて 引き寄せられる。 止まらない涙に、うらたが、そっと 坂田の背中を摩った。 「お前はさぁ、本当……手の掛かる奴だな。 」 「……っつ……!!」 「でも、そんなお前が好きだよ。 俺も、志麻くんもセンラも。 」 「……っうらさ……!!」 一番最後に 志麻が、手を伸ばして 坂田の頬を流れる涙を、拭ってくれる。 「どんな小さくてバカバカしい事やって、俺らはちゃんとお前の話聞いたるから……一人で泣くんは止めようや。 」 「……まーし……っつ……!!!」 本当はね ずっと 怖かったんだ。 だって 僕には何もなくて 歌とか、声真似だとか、そういったものを全部取っ払って 一番最後に残った本当の自分なんて きっと誰も愛してくれないって そう 思っていた。 [newpage] 「……ほんまの……っつ、あほでも何でもない僕を……好きって、言うてくれる人なんて、おらんって……思ったら、止まらんくて……!!」 「うん。 」 「……親父にもっ……いっぱい迷惑かけてばっかで……っ、何一つ返せてなくて……!!こんな……こんな息子で…ほんま、ごめんって………もっと、もっときっと色んな道あって、他の道だって、選べたのにっ……僕が選んだんが…この選択肢で、ほんまに良かったんかなって……!!!!」 「うん。 」 「歌も……っつ……うまくないしっ……他の才能なんて僕には一個もない……このままで、ほんまにえぇんかって……そしたら、苦しくて……!!」 泣きじゃくる坂田に うらたが、優しい声で告げた。 「そうか。 お前がもしさ、真剣にもう辛いって、苦しいってそう思ってるなら……無理なんてしなくていい。 何時だって辞めたっていいんだよ。 」 「……!?」 「だってそうだろ?お前の人生だ、誰に強制されるでもなく、お前がちゃんと歩んで決める道なんだから。 ……期待とかそんなもんは背負わなくていいんだって。 」 「………うらさん……。 」 プレッシャー。 1人で舞台に立つことの? それとも、このまま活動を続けていくことの?? それが重荷になるなら捨ててしまえと うらたは、そう言った。 「それに、さかたんにはとびっきりの才能があるやん。 」 「っへ?」 「………皆に、俺らに、愛されてる才能。 」 「……センラ……。 」 「こんな周りに愛されてる奴、さかたん以外におらんで?」 優しいセンラの声が ふわりと耳に残る。 「っていうかなぁ、あれや!お前、俺らの事舐めすぎちゃう??坂田が声真似してへんかっても、歌唄わんでも、………お前が、あほの坂田やなくても、俺らはお前の事大好きやで?そうさせたんは、坂田やろ……?」 「……そ、……なの??」 「そうだよ、だからお前が責任もって3人とも愛してくれないと困るんだけど?」 にやりと笑いながら、志麻とうらたがそう言って 代わる代わる、撫でまわされる頭。 容赦なくぐちゃぐちゃにされる髪に、坂田が逃げれば 追いかけて抱きしめられた。 「っひゃひゃひゃ!!もう、わかった!!!わかったって!!!」 「いや、お前はわかってない!ここで思い知らせてやるから覚悟しろ!!!」 「ちょ、今どさくさに紛れて俺の脇触ったん誰!?」 「はい、さかたん。 「っは~!!疲れた!!っていうか俺ら何やってんの??」 「いや、もうそこは突っ込んだらあかん奴やで、うらたさん。 」 「んふふふ、もう全員二十歳超えてるのにこれはヤバい……!!」 「何言うてんねん、いつだって青春やぞ。 俺らは。 」 広がったオレンジ色の空 見上げるそれは何処までも遠く 何処までも優しく 4人を照らしていた。 END.
次の君がもしもね 落ち込んで、どうしようもなくなって 蹲って、もうそこから一歩も動けなくなった時は 必ずその手を握り締めて 真っ暗な闇の世界から 君を、助け出してあげる。 『Eternal bonds』~永久の絆~ ヘッドフォンから聞こえる、聞きなれた音楽が耳を叩く。 聞きなれたメロディー 聞きなれた、声。 世界が、変わってしまったのは高校生の時。 つまらないだけの世界が 色をつけて 自分を取り巻く、全てが変わっていった。 真剣に悩んで、動画を撮って、声を真似て、歌を唄って。 そのうち、どんどん自分の名前が売れて 自分を好きと言ってくれる人が増えた。 嬉しくもあり そしてちょっと怖くもある。 いつ、飽きられてしまうのか。 いつ、この世界に終わりが来るのか。 アスファルトの小石を蹴飛ばして、何もない現実にさまよえば 自分の無力さを思い知らされる。 (………僕がもし、あほの坂田でも隣の坂田でもなくて、ただの、何も持ってへん一人の人間やったとして……僕を見てくれる人は、どのくらいいるんだろう?) 動画投稿サイトで知り合った友達 リスナー スタッフ その繋がりが全部無くなったとして 自分に残るものは一体何なんだろうか? ここで泣いて叫んだって 喚いて、血を吐くまで絶叫したって きっと この声は、誰にも届かないんじゃないかと。 そんな気がして怖くなる。 「…………。 」 助けてと、叫びたいのに 求める名前が出てこない。 瞼の裏に浮かぶのは、実家を出る時に少し寂しそうな顔で 『頑張って来い。 』 とだけ、珍しいほど優しい声で告げた 父親の声。 何時も迷惑ばかりかけて 自分のやりたい事を、いつだって受け入れてくれた。 こんな子供でごめんねと そう告げたら 『阿呆、お前は俺の子やろが。 』 とだけ返された。 零れた涙を知られたくなくて、必死で声を繕って 『……うん。 ………時間できたら、そっち帰るから。 』 『おうおう、東京に染まって帰って来るんやな?』 『関西の人間そればっか言うの何なん??』 『はは、まぁええよ。 いつでも帰って来いや。 元気でおれよ。 』 電話を切った途端 もう、涙が止まらなくなって 部屋の片隅で、スマホを握り締めたまま 声を出して泣いた。 ごめんなさい。 ごめんなさい。 高校出て、大学に行って、就職して。 そうやって普通の道を歩くことが出来なくて 寄り道ばかりで 父さん ぼくは、あなたの思う通りの息子にはなれなかった。 [newpage] 『坂田の様子、何かおかしくない?』 スカイプ越しに聞こえて来た声に センラははぁ、とため息をついた。 仕事終わり、じゃあ今日は少し時間もあるから何か放送しようかなんて そう思っていたら うらたから通話があって、相談をされた。 どうやら志麻も一緒にいるらしい。 「そういえば、思い当たる節はあるような。 」 少し前に 坂田のツイッターのサブ垢で、何か呟いていた。 ホームシックにかかったんじゃないか?とうらたも志麻も、あの時は別に気にする様子もなかったので、センラも特に気にしてはいなかった。 気分が急に浮上したり落ち込んだり 人間である以上仕方のない事だし、いつも一定のテンションでいられる人間なんていやしない。 落ち込んだら後はもう浮いてくるだけだ。 『あんな?センラさん。 』 「はい?」 『……俺、時々思うんやけど。 坂田さ、結構俺らには……何ていうか、隠し事とかせぇへんやん。 愚痴も結構言うてるしな?でも、ほんっとうに苦しくてどうしようもない事は、俺らには話してくれへんやん……カッコつけたがりやから。 』 「そうですねぇ……。 確かに。 」 『………まぁ、心配なわけですよ。 ……年上組としては。 』 『あいつ、マジで自分の心ぶっ壊れるまで頑張るからさぁ。 一回決めたら何言っても聞かねぇし。 』 それは、センラも納得だった。 あぁ見えて、坂田は頑固だ。 普段は少し適当に見えることもあるが、その実譲れない事は絶対に譲らないし、納得するまで時間がかかる。 『どうする?一回皆で集まるか??』 『そうせぇへん?俺めっちゃ心配やわ。 』 「うん、えぇですよ。 俺も、さかたんの事心配やから……参加します。 」 そうして、浦島船による坂田救出戦線が引かれ 今週の日曜日に、4人で集まることとなったのである。 日曜日 待ち合わせの場所にやってきた坂田の表情は、何だか無理やり張り付けたみたいな笑顔だった。 パーカーにジーンズの、やる気のないコーデでやって来た坂田をハラハラしながらうらたは出迎えた。 」 「秘密!?秘密って何??」 「………あ、センラまん来た!」 待ち合わせの場所に遅れてやってきたのは レンタカーに乗ったセンラだった。 「え?車!?」 助手席の窓が開いて、姿を見せたのは志麻。 「うらたさん、さかたんお待たせ!」 「はよ乗って乗って!!」 うらたに背中を押して急かされて 坂田は、センラと志麻の乗るレンタカーに飛び込んだ。 何処に行くかも知らされぬまま、坂田は頭にクエスチョンマークを浮べて眉を寄せる。 聞きたくても、肝心のセンラは運転中だし 隣で 「あ、じゃがりこ食う?センラさん??」 とか言ってじゃがりこの蓋を開けている志麻に聞いても、まともな答えは帰って来そうにない。 隣のうらたは、何故かスマホを弄ったまま 「なぁ、坂田コレ見て!やばくね!?」 と言いながら可愛い動物の30秒動画を見せてくるものだから、何も聞く隙がなかった。 「んー、ヤバいなぁ。 これ何猫??」 「三毛じゃん?あ~、癒されるわマジ。 猫か犬飼いたい。 」 「飼ったらえぇやん。 ちっこいのやったらいけるやろ。 」 「でもさ~、色々金かかっちゃうじゃん。 辛いよな~。 」 なんて 本当にとりとめのない話をして 都内を暫く走っていると、見た事のある景色が広がり始める。 (………江の島?) 「なぁ、センラまん間に合うかな?」 「あ~、この先混んでたらヤバいかな……今何時やっけ?」 「今、17時くらいやな。 」 梅雨時期のこの季節だが、珍しくこの日は晴れ晴れとした空が広がっていて 集合時間が時間だけに 坂田は、夕ご飯を食べるのだと思っていた。 なのに、車に乗せられて向かっているのは江の島方面。 少し込み合って来た国道を、センラの車が走り抜けていく。 清々しいほどに、綺麗な青空が窓から流れるように消えていって 坂田は、しばし無言のまま その澄み渡る空を見上げた。 [newpage] 「さかたん、着いたで?」 急に声を掛けられて、坂田は飛び起きた。 どうやら寝ていたらしい。 気が付けば、外はもう日の入り。 一瞬自分がどこにいるのかわからなくなって 目をぱちぱちさせる坂田に うらたが車を出るよう促す。 「なに?ここどこ??」 「いいから、さっさと車出ろ!ほら!」 ぽん、と軽く肩を押されて坂田は渋々車の外に出た。 そうして 言葉を、失った。 広がるのは、思わず絶句するほどの絶景。 沈むオレンジ色の夕日が、江の島の海の向こう側に溶けて 辺り一面を優しく照らし出す。 「ひゅー、絶景やな~!!」 「やっぱすげーな、これ!」 「いやぁ、ほんまにこれネットでググったかいありますわぁ……。 」 耳に入って来る3つの声。 坂田はそのどれもに返答することも出来ず。 立ち尽くした。 何処までも続いていく地平線 その向こうに、眩いほどのオレンジ。 波の音は静かに囁いて 心の奥底 ずっと、その奥を、ぎゅっとさせる。 言葉には決して出来ない光景。 坂田の、見開いた瞳から一滴、オレンジ色の涙が落ちた。 そんな彼の頭を 優しく撫でる手。 「っもう、さかたんは~!!何でそんな落ち込んでんの?」 センラの、温かくて優しい手が頭を撫でて 引き寄せられる。 止まらない涙に、うらたが、そっと 坂田の背中を摩った。 「お前はさぁ、本当……手の掛かる奴だな。 」 「……っつ……!!」 「でも、そんなお前が好きだよ。 俺も、志麻くんもセンラも。 」 「……っうらさ……!!」 一番最後に 志麻が、手を伸ばして 坂田の頬を流れる涙を、拭ってくれる。 「どんな小さくてバカバカしい事やって、俺らはちゃんとお前の話聞いたるから……一人で泣くんは止めようや。 」 「……まーし……っつ……!!!」 本当はね ずっと 怖かったんだ。 だって 僕には何もなくて 歌とか、声真似だとか、そういったものを全部取っ払って 一番最後に残った本当の自分なんて きっと誰も愛してくれないって そう 思っていた。 [newpage] 「……ほんまの……っつ、あほでも何でもない僕を……好きって、言うてくれる人なんて、おらんって……思ったら、止まらんくて……!!」 「うん。 」 「……親父にもっ……いっぱい迷惑かけてばっかで……っ、何一つ返せてなくて……!!こんな……こんな息子で…ほんま、ごめんって………もっと、もっときっと色んな道あって、他の道だって、選べたのにっ……僕が選んだんが…この選択肢で、ほんまに良かったんかなって……!!!!」 「うん。 」 「歌も……っつ……うまくないしっ……他の才能なんて僕には一個もない……このままで、ほんまにえぇんかって……そしたら、苦しくて……!!」 泣きじゃくる坂田に うらたが、優しい声で告げた。 「そうか。 お前がもしさ、真剣にもう辛いって、苦しいってそう思ってるなら……無理なんてしなくていい。 何時だって辞めたっていいんだよ。 」 「……!?」 「だってそうだろ?お前の人生だ、誰に強制されるでもなく、お前がちゃんと歩んで決める道なんだから。 ……期待とかそんなもんは背負わなくていいんだって。 」 「………うらさん……。 」 プレッシャー。 1人で舞台に立つことの? それとも、このまま活動を続けていくことの?? それが重荷になるなら捨ててしまえと うらたは、そう言った。 「それに、さかたんにはとびっきりの才能があるやん。 」 「っへ?」 「………皆に、俺らに、愛されてる才能。 」 「……センラ……。 」 「こんな周りに愛されてる奴、さかたん以外におらんで?」 優しいセンラの声が ふわりと耳に残る。 「っていうかなぁ、あれや!お前、俺らの事舐めすぎちゃう??坂田が声真似してへんかっても、歌唄わんでも、………お前が、あほの坂田やなくても、俺らはお前の事大好きやで?そうさせたんは、坂田やろ……?」 「……そ、……なの??」 「そうだよ、だからお前が責任もって3人とも愛してくれないと困るんだけど?」 にやりと笑いながら、志麻とうらたがそう言って 代わる代わる、撫でまわされる頭。 容赦なくぐちゃぐちゃにされる髪に、坂田が逃げれば 追いかけて抱きしめられた。 「っひゃひゃひゃ!!もう、わかった!!!わかったって!!!」 「いや、お前はわかってない!ここで思い知らせてやるから覚悟しろ!!!」 「ちょ、今どさくさに紛れて俺の脇触ったん誰!?」 「はい、さかたん。 「っは~!!疲れた!!っていうか俺ら何やってんの??」 「いや、もうそこは突っ込んだらあかん奴やで、うらたさん。 」 「んふふふ、もう全員二十歳超えてるのにこれはヤバい……!!」 「何言うてんねん、いつだって青春やぞ。 俺らは。 」 広がったオレンジ色の空 見上げるそれは何処までも遠く 何処までも優しく 4人を照らしていた。 END.
次の浦島坂田船 出身地 活動期間 2013年 9月7日 レーベル (2016年) (2017年 - ) 公式サイト メンバー 浦島坂田船(うらしまさかたせん)は、日本のである。 主にで活動している。 リーダーの、、()、の4人から構成され、それぞれの名前から2、3文字を取りグループ名にしている。 全員がニコニコ動画などで生放送を行う「生主」出身のであり歌手。 ファンの名称は「crew(クルー)」。 2013年に結成し、「歌ってみた」動画の投稿など動画サイトを中心に活動を開始。 2015年に、ミニアルバム「はじまりの合図」でCDデビュー。 2016年、よりアルバム「CRUISE TICKET」を発表し、メジャーデビュー。 グループのリーダー。 ファンの名称は「こたぬき」。 マークは緑の葉🍃。 イメージ動物はタヌキ。 「浦田わたる」名義で声優活動も行っている。 ファンの名称は「志麻リス」または「リス」。 古参の名称は「志麻ニア」。 マークは薔薇🌹、または王冠。 イメージ動物はリス。 左目の下のホクロがチャームポイント。 「月崎志麻」名義で声優活動も行っていた。 ファンの名称は「坂田家」。 マークは桜🌸。 イメージ動物はイヌ。 メンバーからは「さかた」や「さかたん」と呼ばれている。 「坂田 明」名義で声優活動も行っている。 ファンの名称は「センラー」または「ラ」。 イメージ動物はキツネ。 メンバーから「センラ」や「ラマン」と呼ばれている。 普段はとして働いている。 胸毛がチャームポイント。 ディスコグラフィ [編集 ] 最高位は、ウィークリーチャートに基づく。 シングル [編集 ] 枚 発売日 タイトル レーベル 規格 規格品番 収録曲 最高位 1 2017年4月26日 SHOW MUST GO ON!! 初回限定盤(特典付) GNCA-0493 CD• Pathfinders• アイドルっぽい曲を作った。 虎視眈々• バレリーコ• おこちゃま戦争• シアワセは台本の外から• notebook love• スーパーヒーロー• Dreamer• Mermaid• 出会いがない!• 男子高校生の非日常:序 浦島坂田船はシンクロニシティの夢を見るか• 男子高校生の非日常:破 御影は無慈悲な放課後の王• 男子高校生の非日常:急 浦島坂田船はかく語りき• 浦島坂田船の航海日誌:壱 浦島坂田温船卓球• 浦島坂田船の航海日誌:弐 イケメンの掟 特典DVD• 「Shouter」Music Video• 「Dreamer」Music Video• 『CRUISE TICKET』Making Movie 5位 通常盤 VICL-64538 2 2017年7月5日 Four the C 初回限定盤A(特典付) GNCL-1265 CD• Sailor's High• 神のまにまに• 金曜日のおはよう• ゴーストルール• Reach• recoup• NO DRIVE, NO LIFE• slumber number• プリンセスに口づけを• 嘲笑ポラロイド• SHOW MUST GO ON!! サマータイムレコード• Carry Forward 特典DVD-A• 「浦島坂田船 No. 1の運動王は俺だ!! 決定戦」 特典CD-B• ボイスドラマ「続・男子校生の非日常」 4位 初回限定盤B(特典付) GNCL-1266 通常盤 GNCL-1267 3 2018年7月4日 V-enus 初回限定盤A(特典付) GNCL-1300 CD• Starry Cruise• 年に一夜の恋模様• Peacock Epoch• ブリキノダンス• Life goes on• spill• スクールボーイ• Make a pass• ユメミドリ• ギャラクシー• ロメオ• わいふぁい暴想ボーイ• secret base ~君がくれたもの~• そらに、ひらり 特典DVD-A• 「浦島坂田船ファンスポーツをやってみた」 特典DVD-B• ポーカーフェイク• Fortune!! Game Changer• Beetle Battle• 1 Girl• CRAZY BUNNY!!• 未完成ユートピア• Freja• Trip-Trap, Love Trap!! 決戦前夜• 東京サマーセッション• ROULETTE• ARK• 誠-Live for Justice-• 花吹雪 特典DVD-A• 「浦島坂田船のキャンプ日和」 特典DVD-B• 「浦島坂田船を格付けてみた」 2位 初回限定盤B(特典付) GNCL-1312 通常盤 GNCL-1313 同人アルバム [編集 ] 枚 発売日 タイトル レーベル 規格 規格品番 収録曲 1 2015年12月31日 はじまりの合図 浦島坂田船 CD CD• 海賊船 ~心の奪い手~• 天樂 -guitar rock arrangement ver-• 厨病激発ボーイ• 君に恋したセカイで僕は• 手のひら• 君と僕との1ページ• さようなら• 君まであと何メーター• I'm Home Again• Connecting• Music• フレンドシップ• 恋色花火• ぼくらの歌 アニメイト特典• わたしたち!うりゃしましゃかたせん「すうぃ〜ちゅ ふる〜CHU」 ソロアルバム [編集 ] うらたと坂田のソロ作品については各項を参照(、)。 First Order(2018年4月28日)• noise 2020年4月25日 センラ• non defective(2016年4月30日)• テレビアニメ『』第2期OPテーマ 2017年 明日へのBye Bye テレビアニメ『』EDテーマ 2019年 カレンダーリマインダー テレビアニメ『浦島坂田船の日常』OPテーマ 2019年 Gotcha!! テレビアニメ『』OPテーマ 2019年 共鳴コントラスト スマホゲーム『』主題歌 2019年 グッド・バイ テレビアニメ『』OPテーマ 2020年 ライブ [編集 ] 単独公演 [編集 ] ライブタイトル 開催期間 備考 浦島坂田船ライブ 2013年9月7日 - 9月28日 浦島坂田船初の単独公演。 大阪と東京の2箇所で開催。 浦島坂田船ライブ 2014年7月21日 東京・にて行われた2度目の単独公演。 浦島坂田船ライブ in名古屋 Produced by Studio DEEN 2014年8月10日 の提供により行われた東名阪の単独公演。 浦島坂田船ライブ in大阪 Produced by StudioDEEN 2014年8月23日 浦島坂田船ライブ in新宿 Produced by Studio DEEN 2014年9月14日 URASHIMASAKATASEN・LIVE 2015. 5 2015年5月2日 東京・渋谷TSUTAYA O-WESTにて行われた単独公演。 浦島坂田船2015夏ツアーライブ ~listen to my voice~ 2015年8月1日 - 9月21日 初の東名阪ツアー。 3都市8公演。 SUMMER TOUR 2016 -CRUISE PARTY- 2016年7月3日 - 9月17日 2形態のツアー。 9都市15公演。 SUMMER TOUR 2016 -CRUISE LIVE- 2016年7月31日 - 9月3日 浦島坂田船 台湾公演 2016年11月19日 台湾・花漾Hana展演空間にて行われた初の海外単独公演。 アニメイト長野リニューアル記念 浦島坂田船スペシャルライブ 2016年11月26日 長野・CLUB JUNK BOXにて行われたスペシャルライブ。 Spring Tour 2017〜春の宴〜 2017年3月4日 - 3月18日 初の春ツアー。 東名阪ツアー。 3都市6公演。 SUMMER TOUR 2017 ~Beyond The Compass~ -DJ Edition- 2017年7月22日 - 9月17日 2形態のツアー。 12都市18公演。 SUMMER TOUR 2017 ~Beyond The Compass~ -BAND Edition- 2017年7月30日 - 8月20日 SUMMER TOUR 2017 ~THE FINAL~ 2017年10月28日 東京・にて行われた夏ツアーのファイナル公演。 初のアリーナ規模での単独公演。 Spring Tour 2018 〜桜吹雪で乱de舞! 〜 2018年3月4日 - 4月5日 6都市9公演。 7都市8公演。 SUMMER TOUR 2018 ~THE FINAL~ 2018年10月27日 千葉・にて行われた夏ツアーのファイナル公演。 Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船~吸魂(求婚)パーティ!? Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船~ようこそ令和元年 やっぱり霊はあかんねん 憑依GO!~ 2019年10月22日 - 10月24日 3回目のハロウィンパーティー。 初の2会場での開催。 参加公演 [編集 ] 2016年• 11月03日 ニコニコ超パーティー2016 埼玉・ 2017年• 05月07日 ひきこもりたちでもフェスがしたい! 埼玉・さいたまスーパーアリーナ 2018年• 11月04日 ひきこもりたちでもフェスがしたい!~世界征服前夜@幕張メッセ~ 千葉・幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール 2019年• 高校に編入した浦島坂田船の青春を描いたオリジナルストーリーで、各メンバーが自身のキャラクターの声を担当する。 スタッフ [編集 ]• 原作 - 浦島坂田船• 監督・絵コンテ・美術監督・美術設計 - 池内翔• シリーズ構成・脚本 -• キャラクター原案 - 月森フユカ• アニメキャラクターデザイン・作画監督 - 横山紗弓• 色彩設計 - 赤津豊• 編集・撮影監督 - 佐藤貴雄• 音響監督 -• 音楽 -• 統括プロデューサー - 川口真司• 企画プロデューサー - 福良啓• 制作プロデューサー - 清原良太• プロデュース -• アニメーションプロデューサー -• アニメーション制作 - GAINAX京都• 製作 - 登場人物 [編集 ] うらた(うらた) 声 - 転校生部の部長。 転校生4人をまとめるしっかり者。 志麻(しま) 声 - ゲームとサプライズが大好きな自由人。 坂田(さかた) 声 - 転校生部の名付け親。 元気全開、パワフル天然ボーイ。 センラ(せんら) 声 - 大人っぽい雰囲気が魅力の関西弁男子。 やまだぬき 声 - いつもうらたの肩に乗っている。 校長 声 - ちょっと変わった校長先生。 古文の先生 声 - 一見優しそうな先生に見えるが… 番長 声 - その名は岩鉄剛三郎。 爆弾音声 声 - 10連勤中らしい。 主題歌 [編集 ] 「カレンダーリマインダー」 浦島坂田船によるオープニングテーマ。 作詞・作曲・編曲は、ラップ作詞は。 オリコン 2018年7月11日. 2018年7月14日閲覧。 音楽ナタリー 2016年1月4日. 2018年7月14日閲覧。 オリコン 2018年7月10日. 2018年7月14日閲覧。 Billboard Japan 2018年7月9日. 2018年7月14日閲覧。 2016年5月2日• アメブロ• Fourpe cv. 浦島坂田船 名義• 音楽ナタリー. 2016年3月23日閲覧。 アニメ「文豪とアルケミスト〜審判ノ歯車〜」公式サイト 2020年3月17日. 2020年3月17日閲覧。 音楽ナタリー 2016年4月1日. 2018年7月15日閲覧。 音楽ナタリー 2016年7月15日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2016年9月21日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2016年12月19日. 2018年7月15日閲覧。 音楽ナタリー 2017年4月17日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2017年10月30日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2017年11月3日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2017年12月25日. 2018年7月15日閲覧。 spice 2018年4月13日. 2018年7月15日閲覧。 音楽ナタリー 2018年4月9日. 2018年7月15日閲覧。 音楽ナタリー 2018年8月6日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2018年11月2日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2018年11月3日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2018年12月24日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2019年4月22日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2019年6月17日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2019年10月31日. 2020年1月6日閲覧。 音楽ナタリー 2019年12月9日. 2020年1月6日閲覧。 浦島坂田船公式 2020年3月11日. 2020年3月11日閲覧。 浦島坂田船公式 2020年3月30日. 2020年3月31日閲覧。 音楽ナタリー 2019年8月1日. 2019年10月2日閲覧。 テレビ放送対象地域の出典:• 2009年10月9日. 2018年10月24日閲覧。 告示第六百六十号. 1988年10月1日. 2018年10月24日閲覧。 2018年10月24日閲覧。 外部リンク [編集 ]• - NBCユニバーサルエンタテインメントジャパン• uratasama -• sakatandao -• sakatansab -• kisenra421d -.
次の