建築施工図の中で「杭伏図」を作図するにあたり、必要な情報をどのように表現するか。 今回はそのあたりについて、とりあえず例を出しながら書いてみたいと思います。 前回も書きましたが、こうした表現については会社によって異なってくるのが普通です。 本当は全世界統一みたいなルールがあると良いんですけど、そういうのはなかなか難しいんでしょうね。 そんな訳で、今回私が挙げる例をそのまま鵜呑みにすることは、あまりお勧めすることが出来ません。 自分で書いておいて無責任な…と思われるかも知れませんが、まあこれが現実ということです。 もちろんそうは言っても、実際に仕事で使っている表現ではありますので、全然的はずれということはないはず。 もし表現方法についてまだなにも知識がないのであれば、参考程度にはなると思いますよ。 もちろん1つの杭につき1本の杭がある場合もありますし、そもそも杭がないパターンもあります。 が、今回お伝えしたいのは数ある杭の配置パターンではなく杭伏図の表現なので、そのあたりは多めに見てくださいね。 さらに前回説明した、杭伏図の作図に必要な情報は何か?をおさらいしつつ、それぞれの項目について軽く説明をしてみます。 ・杭符号(杭の経等の仕様) 今回の例ではP1とP2という杭符号を付けてみました。 これらの符号は設計図の中の構造図に記載されているので、構造図を見ながら間違いなく記入していきます。 杭の細かい仕様までは建築施工図に記載しませんので、この杭符号が構造図と合っているかは非常に重要になります。 ・通り芯からの杭位置(柱位置により決定) 通り芯から杭芯までの寸法を記入します。 今回は1ヶ所だけ少し違う寸法になっていますが、通常は通り芯に対してシンメトリーである場合が多いです。 ・想定の杭下端レベル(N値に注意) 基準FL-10mと-14mが想定支持層になっています。 こんなに近い杭で4mも想定支持層に差があることは希で、全部同じ想定支持層の場合が多いですが、一例ということで数値を変えました。 ・杭の天端レベル(基礎・地中梁レベルにより決定) 基礎下端レベルによって決まるので、当然のように全て同じレベルになっています。 いくら例とは言っても、これを色々なレベルにするのは気が引けます。 ・上下レベルによる想定杭長さ 杭天端と杭下端が分かったので、計算すれば杭の長さは出すことが出来ますが、一応表示をしておきます。 杭の種類は様々ですが、工場で造った杭を現場に運ぶ場合、この杭長さが非常に重要になります。 これを間違えると、支持層まで杭が届かないとか、逆に支持層を10m以上掘って杭を打ち込むなどの不具合になるので要注意。 ・杭番号(区分の為任意でつける) 今回はNo.1~No.4までの通し番号を付けました。 もちろんエリアごとに頭文字を付けたりするのもアリだと思いますし、実際にそうしたこともあります。 割と自由につけて差し支えない番号ですが、同じ番号を違う杭につけるのだけは避けましょう。 CADだとNo.1をコピーして作図していくことが多いので、コピーしてそのままになる可能性は結構あります。
次の既製杭は、「既製した杭」のことで、あらかじめ工場で製作されたものを現場で打設する方法です。 今回は、既製杭の種類、長さ、へり空き、間隔などについて説明します。 既製杭とは? 既製杭は、あらかじめ工場製作された杭を現場で打設する工法です。 既に出来上がっている杭を打ち込むだけなので施工が簡単で、現在、最も多く利用される杭です。 場所打ち杭は、現場で杭を築造します。 施工に時間は掛かりますが、大きな支持力が取れます。 既製杭は、工場で製作しますが製作長さや運搬長さなどによって、杭の長さに限界があります。 そこで杭には継手が生じます。 これは後述します。 また、単に既製杭と言っても施工方法を細かく分類すると沢山あります。 1つは材料により分類します。 コンクリート杭 です。 鋼杭は高い強度と靭性があります。 また鋼の加工性を活かして、先端形状を軸部よりも大きくすることで先端支持力を増加させた杭もあります。 下記が参考になります。 鋼杭の長所は、曲げや引張力に対する強度と変形性能に優れていることです。 コンクリートのように曲げひび割れが起きない分、信頼性も高いでしょう。 一方で、鋼は腐食の心配があります。 土は水分を含みますが、鋼は錆びる恐れがあるため腐食代を見込んだ厚みとすることが一般的です。 さらに鋼管は継手部に溶接や、機械的な補強を要します。 杭軸部から断面が変わるので、応力集中に注意します。 コンクリート杭は一般的に、PHC杭を用います。 コンクリート杭は、柱や梁に比べて圧縮強度の高いコンクリートを用います。 さらに、ひび割れを抑制するため、プレストレストを導入します。 下記が参考になります。 鋼杭に比べて強度、変形性能共に劣りますが、コンクリート外周部に鋼管を巻いたSC杭や、高強度鉄筋を導入したPRC杭などの種類があります。 以上のように、既製杭の種類は色々ありますが、既製杭を利用する共通のポイントがあります。 ・大きな支持力を必要としない。 ・杭長が大きすぎない。 ことです。 20m程度なら既製杭で良いですが、30mを超えると場所打ち杭の可能性もあります。 どちらが良いか一概に言い切れないので、比較検討が必要です。 既製杭の種類 既製杭を分類しました(建築基礎構造設計指針p. 194より)。 現在は、打ち込み杭はほとんど使いません。 理由は、騒音と振動の問題です。 但し、周囲に振動や騒音の影響が無い場合、打ち込み杭の利用も考えられます。 5倍も高い支持力のため、杭径が小さくできるメリットがあります。 下記が参考になります。 最も利用されている杭が、埋め込み工法です。 中でもプレボーリング工法は騒音や振動の問題がありません。 プレボーリング工法は、杭を打設する箇所をあらかじめ掘ります。 このとき孔が崩れないよう(孔壁)、貧配合のセメントを孔壁に噴出します。 中堀工法は杭を打設しながら、杭から土を排出する工法です。 そのため、支持層まではN値が低くないと掘れません。 下記が参考になります。 既製杭の長さ 杭の長さは支持層の位置によって決まります。 支持層が20m以深にあるなら、杭長さも20m以上です。 但し既製杭の限界長さは、工場製作することや、運搬できる最大長さの関係、製作上の限界長さなどから決定します。 よって既製杭は、長尺になると継手を設けることが普通です。 あるメーカーでは既製杭の杭長を下記のように設定しています。 ・5m〜13m又は5m〜15m 杭長さは1m単位で設定します。 JIS規格によれば、既製杭の長さの最小は4mです。 4mよりも短い杭になる場合、そういった認定が取得できているのか確認しましょう。 既製杭の外径 例えばPHC杭の外径は、一般に下記の値です。 ・300〜1200mm 50mm単位で設定されています。 300の次は、350mmの外径です。 既製杭のへり空き 既製杭のへり空きは、建築基礎構造設計指針で下記の値です。 ・打ち込み杭 杭径の1. 25倍• ・埋め込み杭 杭径の1. 00倍 ただ、他文献や設計の実情として概ね 杭径の1. 25倍 が一般的です。 既製杭の間隔 既製杭の間隔は、建築基礎構造設計指針で下記の値です。 ・打ち込み杭 杭径の2. 5倍かつ75cm以上• ・埋め込み杭 杭径の2. 00倍 こちらも、他文献や設計の実情として概ね 杭径の2. 5倍 が一般的です。 まとめ 今回は既製杭について説明しました。 既製杭の意味や種類などが分かって頂けたと思います。 既製杭は、杭基礎の基本ですから覚えておきましょう。 また場所打ち杭との違いも理解したいですね。 下記も併せて学習しましょう。
次の1.杭基礎の種類 構造物を建設する際、地盤をしっかり固定しておかなければなりません。 しかし、場所によっては軟弱な地盤になっているケースがあります。 それでは、杭基礎とは何なのか、種類について詳しく説明していきましょう。 杭基礎とは、軟弱な地盤を固定するための基礎です。 軟弱な地盤の場合、深いところに杭を打ち込んで建造物を支えます。 深く杭を打ち込むからこそ、軟弱な地盤のうえでも建造物が建設できるのです。 使用する杭の種類は、主に「木杭(ぼっくい)」「コンクリート杭」「鋼杭(こうくい)」の3つになります。 古くから利用してきた「木杭(ぼっくい)」は木材でできている杭です。 金属や石材に比べると弱いイメージはあります。 しかし、江戸時代の木杭(ぼっくい)が残っているほど高い耐久性を持っているのです。 集合住宅などに使用する「コンクリート杭」は、さらに無筋コンクリートや鉄筋コンクリートなどさまざまな種類があるでしょう。 基本、地盤や周辺環境に合った杭を使うことになります。 支持層がしっかり安定しているかどうかによって、建物全体の影響も変わります。 軟弱な地盤でもある程度支持層がしっかり安定している場合は、「支持杭」と言う方法で工事を進めるのが一般ん的です。 支持杭は、先端を安定している支持層まで持っていきます。 そして、杭の先端に先端支持力が働くのです。 働いた先端支持力によって、建築物全体の荷重を支えることができます。 支持層が安定していなければ支持杭を利用することはできません。 以上の点をしっかり頭の中に入れておきましょう。 摩擦杭は、支持杭と違って先端を支持層にまで持っていきません。 杭の側面と地盤の間にある周面摩擦力によって、荷重を支える仕組みになります。 地耐力と荷重がお互いに働き、バランスを保っている状態です。 基本、摩擦杭は支持層が深いところにないと使用できません。 つまり、支持層の深さによって、使用する杭の種類が変わってくるのです。 そして、「支持杭」や「摩擦杭」のほかにも、もう1つ「直接基礎」があります。 直接基礎とは、地耐力が荷重よりも上まわっている場合に利用するものです。 支持杭や摩擦杭とは違って杭基礎を使いません。 まずは、場所打ち杭工法について詳しく説明しましょう。 場所打ち杭工法は、基本的に現場で穴を掘った後に鉄筋を挿入します。 そして、コンクリートを流し込んて杭をつくる方法です。 地面を掘るときに採用する方法によって、さらにさまざまな工法にわけることができます。 施工可能な杭の長さによって変わると考えてください。 主にやわらかい地盤に採用することが多く、ドリリングバケットを回転して穴を掘り土を排出します。 杭の全長にケーシングチューブを圧入・揺動してハンマグラブで穴を掘っていきます。 ほかにも、リバースサーキュレーションドリル工法やリバース工法、BH工法など、種類はさまざまです。 既製杭工法はもともと工場で製造したコンクリート杭や鋼杭(こうくい)を使用し、現場で穴を掘って挿入します。 場所打ち杭工法は現場で杭を製作しますが、既製杭工法はすでに杭を製造されている状態です。 既製杭工法もさまざまな方法があるのでチェックしてください。 たとえば、所定の深度まで地盤に穴を掘った後、既製杭を挿入する工法が「埋め込み工法」です。 既製杭の頭部をハンマーなどで打撃した後、所定の深さまで貫入する工法が「打ち込み杭工法」になります。 ほかにも、プレボーリング工法や中堀工法、回転工法などさまざまです。 いろいろな工法を把握しておくと、地盤にぴったりな工法で杭基礎ができます。 設計を誤ってしまえば、建造物の建築ができなくなるでしょう。 杭基礎の設計をする際、必ずふまえておきたい内容が以下の点になります。 地盤の極限支持力と杭体(くいたい)の許容応力度によって「杭の許容支持力」が決まる• 基礎スラブ底面の地盤の支持力は考えない• 地盤沈下地帯では「負の摩擦力」に注意する• 液状化の恐れがある地域では摩擦力の低下を考える 以上の4点をしっかり確認しておきましょう。 特に、「負の摩擦力」には注意が必要です。 正しい摩擦力が働いているとしても、地盤賃かが起きると意味がありません。 上向きだった摩擦力が下向きになってしまい、杭の軸力が荷重以上になるのです。 負の摩擦力に対する策は、支持力の大きい杭にするか、杭の本数自体を多くするやり方がベストになるでしょう。 地盤調査では、地盤だけでなく地質も調べることになります。 地盤の状態によって工法や杭の種類・本数が異なるでしょう。 もし、地盤に問題がある場合は杭基礎の施工前段階として「地盤改良」を行います。 地盤改良では軟弱地盤対策や液状化対策など、さまざまな対策を施します。 地盤の固さ・締まりの程度・土や岩を採取して調査するのです。 以上のように、まずは地盤調査をしてから工法の検討や杭基礎の設計に入ってください。 関連記事 まとめ 杭基礎の種類や工法、設計や注意点について説明しました。 主に、杭基礎は軟弱な地盤に対応する基礎です。 軟弱な地盤のままでは安心して建造物が建設できません。 地盤をしっかり固定するからこそ、建造物が建設できます。 また、地盤の状態によっては杭の種類や工法が変わってきます。 工法の種類は主に「場所打ち杭工法」と「既製杭工法」の2つです。 適切な方法で杭基礎ができるよう、事前に地盤調査をすることが大切になります。 さらに、杭基礎をする前に地盤調査をしなければなりません。 地盤の固さから締まりの程度、土や岩の採取など徹底的に調べることも大切な要素になります。 調査結果をふまえながら杭基礎の設計を始めてください。
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