K殻、L殻、M殻を卒業した次は、いよいよ希土類元素の電子配置について説明していきます。 第2回:希土類元素の電子配置 2. 1.典型元素・遷移元素の電子配置 希土類元素の電子配置の説明に入る前に、遷移金属の電子配置を説明しておきましょう。 えっ?なぜ?まあ、とにかく聞いてください。 1 典型元素・遷移元素の電子配置 電子が軌道に入る法則には次のような決まりがあります。 典型元素:一番外側の電子軌道に電子が一つずつ入る。 遷移元素:原子番号が増えても、一番外側の電子軌道ではなく、内側の電子軌道に電子が一つずつ入る。 私は、高校生の時、遷移元素とはなんとひねくれた元素だろうと、妙に親近感を持っていました。 典型元素と遷移元素の電子の入り方の違いは、原子の化学的な特徴に非常に大きな影響を与えます。 典型元素は原子番号が一つでも違うと化学的な性質が大きく変わります。 鈴木さんの本でも述べていますが、炭素と窒素は周期律表の隣同士ですが、自然界では、片や固体片や気体です。 これに対して、遷移元素は鉄もコバルトもニッケルも銅もみんな金属になりますし、化学的な性質も典型元素ほど変わりません。 なぜか?それは、原子の性質は一番外側の電子軌道に入っている電子の数が決めているからです。 では次に、典型元素と遷移元素の電子配置の例を見てみましょう。 典型元素の電子配置例 典型元素では、原子番号が増えるに従って一番外側 最外殻 の電子軌道に電子が入っていきます。 しかし、所々で例外が見られます。 例えば、Ar(アルゴン)の次のK(カリウム)では、3p電子軌道の次である3d電子軌道ではなく、4s電子軌道に電子が入ります 元素 原子番号 1s 2s 2p 3s 3p 3d 4s Na 11 2 2 6 1 Mg 12 2 2 6 2 Al 13 2 2 6 2 1 Si 14 2 2 6 2 2 P 15 2 2 6 2 3 S 16 2 2 6 2 4 Cl 17 2 2 6 2 5 Ar 18 2 2 6 2 6 次のK カリウム では3pの次の3d電子軌道ではなく、4s電子軌道に電子が入ります K 19 2 2 6 2 6 1 Ca 20 2 2 6 2 6 2 第一遷移元素の電子配置 最外殻電子軌道(4s)にはすでに2つずつ電子が入っていて、その内側の3d電子軌道に原子番号が増えるに従って電子が一つずつ入っていきます。 共通した最外殻電子数を持つことから、これらの元素はいくつかの共通した性質(金属である、合金を作る、堅い、電気を通すなど)を持つのです。 いかがでしょう。 だいたいイメージがつかめたかと思いますが、いくつか疑問点が出てきます。 Ar(アルゴン)の次の元素であるK(カリウム)の電子は、どうして3p電子軌道の次の3d電子軌道に入らず、いきなり4s電子軌道に入るのでしょうか?• Cr(クロム)とCu(銅)の電子配置が規則からずれています。 Cr(クロム)はV(バナジウム)の次ですから、3d電子軌道には電子が4個入って欲しいところですが、その代わり最外殻電子から電子を一つ奪って5個入っています。 同じようにCu(銅)は3d電子軌道には電子が9個入って欲しいところですが、その代わり最外殻電子から電子を一つ奪って10個入っています。 2 3d電子軌道を抜かして4s電子軌道に電子が入る理由は? ではまず下の図を見てみましょう。 これらの図は多電子原子(水素原子以外)の1sから4sまでの各軌道について、原子核からの距離と電子軌道のエネルギーを表しています。 この図から分かる事は、原子核からの距離の順番と、エネルギーの順番が3d電子軌道と4s電子軌道で逆転しているということです。 これは、詳しくは量子力学をきちんと勉強する必要があります(交換積分:電子間の相互作用エネルギーを考慮しなければならない)。 簡単に述べるなら、電子がどの電子軌道へ入るかは、個々の電子軌道のエネルギーの高い低いだけで決まる訳でなく、 原子全体としていかにバランスよく電子配置するかという観点で最終的に配置されるからです。 そのため、K(カリウム)の最外殻電子は距離的に近い3d電子軌道ではなくエネルギーの低い4s電子軌道に入ります。 4s電子軌道が埋まったCa(カルシウム)より後の元素で、ようやく3d電子軌道に電子が入るのです。 多少駅からの距離は遠くとも、賃貸物件の家賃(エネルギー)が安ければ、そちらの方を選ぶのが人情ならぬ電子情というところでしょうか? 2. 3 なぜ4s電子軌道から3d電子軌道へ電子が移るのか? 次に、3d電子軌道の増える数が途中でおかしくなることについて見ていきましょう。 下の図は、問題となっているCr(クロム)とCu(銅)の電子配置を示したものです。 3d電子軌道には全部で5つの電子軌道があります。 電子はわがままで、同じスピンを持つ電子が同じ軌道に入ることを非常に嫌がります。 そのため、スピンの向きを揃えて別々の軌道に入っていきます(フントの規則といいます)。 しかし、Cr(クロム)のように、3d電子軌道中の電子の数が4つまで増えてきますと、中途半端に電子を4つ埋めるよりも、5つの3d電子軌道をみんな埋めてしまった方が 全体のエネルギーとしては安定するのです。 ということで、無理矢理4s電子軌道から電子を奪ってしまうのです。 同じ事がCu(銅)でも起きています。 3d電子軌道に電子に電子を9個のままにしておくよりは、全部埋めた方が良い!ということで、4s電子軌道から電子を奪ってしまうのです。 また、興味深いことに、Cr(クロム)とCu(銅)の最外殻電子が1つしかなくても、他の遷移金属元素と全く違う挙相をする訳ではありません。 これは、遷移元素は最外殻電子(ここでは4s電子軌道)だけでなく、 内側の電子軌道(ここでは3d電子軌道)に存在する電子も化学結合などに積極的に関わるためです。 これが、典型元素とは大きく異なる点です。 4 電子軌道の略式表現 これまで、各原子の電子配置を表にまとめてきましたが、電子配置を説明するのにいちいち表を持ち出していたら大変です。 通常、文章表現では電子配置を「 電子軌道名 電子の数」と言う形で表します。 例えば、 Sc(スカンジウム)の電子配置 1s 22s 22p 63s 23p 63d 14s 2 と表します。 しかし、原子番号が小さい元素はこれでよろしいのですが、原子番号が増えてくると、電子軌道も増えて表現式は長くややこしくなります。 何とかならないでしょうか?そこで用いられるのが、自身よりも原子番号が小さい希ガスの電子配置を用いて略式で表す方法です。 希ガスは、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)があり、全ての電子軌道が埋まっていることから大変安定で、化学的にも安定です(つまり、化学反応をほとんど起こさない)。 Sc(スカンジウム)を例に見てみましょう。 Ar(アルゴン)の電子配置: 1s 22s 22p 63s 23p 6 Sc(スカンジウム)の電子配置: 1s 22s 22p 63s 23p 63d 14s 2 どうでしょう。 ここでは、 1s 22s 22p 63s 23p 6 が共通式として現れていることが分かります。 そこで、共通項を取り除いて、 Sc(スカンジウム)の電子配置: [Ar core] 3d 1 4s 2 と簡単に電子配置を表すことができます。 では、いよいよ希土類元素の電子配置を見ていきましょう。 元素 原子 番号 1s 2s 2p 3s 3p 3d 4s 4p 4d 4f 5s 5p 5d 6s Ar 18 2 2 6 2 6 Sc 21 Ar core 1 2 Kr 36 2 2 6 2 6 10 2 6 Y 39 Kr core 1 2 Xe 54 2 2 6 2 6 10 2 6 10 2 6 La 57 Xe core Xe core 1 2 Ce 58 Xe core 1 Xe core 1 2 Pr 59 Xe core 3 Xe core 2 Nd 60 Xe core 4 Xe core 2 Pm 61 Xe core 5 Xe core 2 Sm 62 Xe core 6 Xe core 2 Eu 63 Xe core 7 Xe core 2 Gd 64 Xe core 7 Xe core 1 2 Tb 65 Xe core 9 Xe core 2 Dy 66 Xe core 10 Xe core 2 Ho 67 Xe core 11 Xe core 2 Er 68 Xe core 12 Xe core 2 Tm 69 Xe core 13 Xe core 2 Yb 70 Xe core 14 Xe core 2 Lu 71 Xe core 14 Xe core 1 2 Sc(スカンジウム)は2. 1章で述べたとおりです。 Y(イットリウム)もSc(スカンジウム)同様の理由で、最外殻電子である5s軌道に電子が2個入った後で4d電子軌道に電子が入ります。 ただし、4d軌道と5s軌道の間にある4f電子軌道には電子は入りません。 ここに電子が入るためにはさらに、原子番号で16もの後、すなわちランタノイド系列まで待つ必要があります。 ランタノイドの電子配置を見てみると、非常に面白い特徴が挙げられます。 4f電子軌道の外側にある、5s, 5p, 6s軌道に先に電子が埋まり、その後に4f電子軌道に電子が入る• 第一遷移金属元素のように、4f電子軌道に電子が1個から14個と順序よく入らない• La(ランタン)、Ce(セリウム)、Gd(ガドリニウム)、Lu(ルテチウム)のみ5d電子軌道に電子が入る Sc(スカンジウム)やY(イットリウム)に比べ、明らかに挙動不審です。 まず1と2については、すでに遷移金属元素の特徴として述べたとおり、つまり下の図のように、原子核からの距離とエネルギーの高低に大きな違いが見られることが原因です(分かり易いように主量子数4以上、つまりN殻以上を見てみました)。 この図からも分かるように、第一遷移金属元素に比べ、エネルギーの順序が遙かにぐちゃぐちゃになっていることが分かります。 ここで注目したいのが、 4f, 5d, 6s電子軌道は、原子核からの距離はずいぶん違うのに、そのエネルギーは比較的似通っていることです。 ランタノイドに拘わらず、電子の数が増えてくると、原子核からの距離とエネルギーの高低の順序に大きな食い違いが見られます。 また、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Gd(ガドリニウム)、Lu(ルテチウム)のみ5d電子軌道に電子が入るという問題については、2. 2-2. 3章で述べた事と同じ事です。 つまり、 電子はスピンの向きを揃えたがる性質と、できるだけ離れた電子軌道に入ろうとする二つの重要な性質があり、最終的に 原子全体としていかにバランスよく電子配置するかという観点で電子を配置します。 この性質のため、La(ランタン)の場合でしたら、4f電子軌道に中途半端に電子を一つ入れるよりも5d電子軌道に電子を入れた方が安定するのです。 また、Ce(セリウム)では、4f電子軌道に電子が2個あるいは5d電子軌道に電子が2個入った方が良さそうですが、電子の事情からすると4f電子軌道と5d電子軌道に電子が一つずつ入った方が結果として安定なのです。 Gd(ガドリニウム)やLu(ルテチウム)も同様です。 4f電子軌道は全部で7つ軌道があるので、それぞれの電子軌道に電子がスピンの向きを揃えて一つずつ(7個)、またはペアをつくって二つずつ(14個)入っている状態は大変安定な状態なのです。 そのため、余分な電子は4f電子軌道ではなく、エネルギーが比較的近い5d電子軌道に入っていきます。 Sc(スカンジウム)やY(イットリウム)では、最外殻電子軌道(4sまたは5s)とその次に外側にある電子軌道(3dまたは4d)に電子が入り、この電子が元素の性質を決めています。 つまり、これら二つの外殻電子軌道に入っている3つの電子は積極的に化学結合に参加するのです。 一方、ランタノイドシリーズでは、4f電子軌道はSc(スカンジウム)やY(イットリウム)とは全く異なり、遙かに内側に存在する 内殻電子軌道です。 4f電子軌道の外側には、5s, 5p, 6s電子軌道がしっかり電子を抱え込んでいることから、 4f電子軌道に入っている電子が、化学結合などに寄与する割合は、Sc(スカンジウム)やY(イットリウム)に比べ遙かに小さくなります。 海水・石灰岩・マンガン団塊などの希土類元素存在度パターンを見たときに、Y(イットリウム)がランタノイドシリーズとは異なる挙動を示す理由は、まさにこの点にあるといえます()。
次の今回は電子殻と電子配置の解説です。 電子配置はそれ自体が入試で問われることは少ないです。 しかし電子配置は、 少しハイレベルなところまで覚えておくことをおすすめします。 なぜなら、少し電子配置で苦労しておくことで、 その後の無機・有機化学の不思議な反応を説明でき、 「丸暗記地獄」から抜け出せるからです。 そこでこの記事では、 電子配置について少し踏み込んで解説します。 ここで説明する内容を理解することで、 今まで丸暗記だと思っていた無機化学と有機化学が、 「理解」できるようになるでしょう。 ただし多少大学レベルに踏み込むため、 一度読んだだけではなかなか受け入れづらいかもしれません。 何度も繰り返し復習して身につけましょう。 必ずその価値はあります。 電子殻と軌道 まずは「 電子殻」と「 軌道」の説明です。 「軌道なんて聞いたことない!」 と言う人もいるかもしれませんが、 わかりやすく説明していくので安心してください。 それでは順番に見ていきましょう。 電子殻とは その昔、 原子は陽子や電子からできているのはわかったものの、 具体的にどんな形になっているかわかりませんでした。 そんな中、「 ボーア」が以下のような構造を提案します。 原子中で電子は「 電子殻」の上を運動するとし、 電子殻を内側からK殻、L殻、M殻、N殻、…と呼ぶことにしました。 そしてこの電子殻には、 K殻には2個、L殻には8個、M殻には18個、… の電子が収容されると考えたのです。 このように電子殻が定義されました。 ボーアが電子殻を発見したとき、K殻よりも内側に電子殻が発見されることを予想して「A殻」ではなく「K殻」としましたが、結局それより内側の電子殻は見つかりませんでした。 軌道とは 電子殻が定義された後も研究が進み、 同じ電子殻の中の電子にも種類があることがわかりました。 その種類というのが「 軌道」。 今までK、L、M、…という電子殻で考えていたけど、 実はもっと細かく分類できたのです。 軌道の分け方は以下の通り。 軌道はエネルギーの低い順に、 s軌道、p軌道、d軌道、f軌道、(以下g軌道からアルファベット順)と続きます。 とても難しそうに感じるかもしれませんが、 ただ新しい名前が出てきただけです。 「K殻っていうのがあるんだよー」 と初めて教えられたときと同じです。 それでは話を続けましょう。 例えばs軌道は全ての電子殻に存在し、 p軌道はK殻以外の全ての電子殻に存在します。 これらの軌道は以下のように数字をつけて区別します。 K殻から順に1、2、3、…と番号をつけ、 それぞれの軌道の前につけて「1s軌道」や「2p軌道」と呼びます。 さて、ここまでで軌道とはなにかと、 軌道の名前を説明しました。 では次にそれぞれの軌道に電子がいくつ入るかを見てみましょう。 各軌道の収容電子数 s軌道、p軌道、d軌道、…にはそれぞれ、 1個、3個、5個、…と「 奇数個」の軌道があります。 そしてそれぞれの軌道に 2つずつ電子が詰まっていきます。 このように結果として、 順に2個、6個、10個、…の電子が詰まっていくことになります。 なぜ1つの軌道に2つの電子? 実は電子には「 アップスピン」と「 ダウンスピン」という2つの種類があります。 1つの部屋にはアップスピンとダウンスピンが1つずつしか入れないのです。 電子配置の決まり方 それでは実際に電子配置を見ていきましょう。 おそらく今までは、 「エネルギーの低いK殻から順に詰まる」 と覚えてきたと思います。 しかし軌道を理解した今、 「エネルギーの低い軌道から順に詰まる」 となりそうだと想像できますね。 それでは軌道のエネルギーの順を確認し、 電子の詰まり方を見ていきます。 電子の収容順 先ほどまでの図を少し簡略化します。 それぞれの軌道のエネルギー、 つまりは電子の詰まっていく順番は以下のとおりです。 このように見ると、 M殻の3d軌道の前にN殻の4s軌道が詰まるなど、 「K殻から順に」のルールが崩れています。 実はこれこそが「 遷移元素」が存在する理由です。 それでは具体例を見ながら確認してみましょう。 例1:炭素原子 炭素の原子番号は6だから、電子を6つ持っています。 まずは最もエネルギーの低い1s軌道に電子が2つ入ります。 今回は電子を矢印で書いていますが、 これは先ほど簡単に説明した「 スピン」を意識したものです。 こうして6つ全ての電子が詰まりました。 電子殻で見るとK殻に2つ、L殻に4つで、 おなじみの電子配置になりました。 また、軌道で見た場合には、 6C:1s 22s 22p 2 と軌道ごとに書いたりします。 1つの軌道には電子は上下逆さのスピンで入ります。 しかし2p軌道に電子が2つ入るとき、1つのp軌道に一気に2つ入るのではなく、2つのp軌道にバラバラに入っていますね。 このように、「 同じエネルギーの軌道にはバラバラに、スピンを揃えて入る」という規則があります。 これを「 フントの規則」と呼びます。 例2:カルシウム原子 カルシウムは原子番号20だから、電子は20個詰まります。 これで残り2個です。 電子殻的にはまだM殻が残っていますが、 軌道のエネルギーの順としては次は4sになりますね。 よって3d軌道をほったらかして、 4s軌道に入っていきます。 こうしてカルシウムの電子配置は、 20Ca:1s 22s 22p 63s 23p 64s 2 となります。 電子配置を表すとき、希ガスの電子配置を利用して表記を簡略化することがあります。 例) 20Ca:[Ar]4s 2 例3:スカンジウム原子 最後に原子番号21、電子数21のスカンジウムを見ていきます。 先ほどのカルシウムは電子数20でしたから、 電子1個を残して全てカルシウムと同じように詰まります。 そして最後の1個は、 4s軌道の次にエネルギーの低い3d軌道に詰まります。 このようにして、 21Sc:1s 22s 22p 63s 23p 64s 23d 1 もしくは、 21Sc:[Ar]4s 23d 1 と詰まっていきます。 この先最外殻電子は4s軌道の2個のまま、 3d軌道に入っていくことになり、 これが「 遷移元素」が生じる原因です。 今までの疑問も少し晴れたのではないでしょうか。 遷移元素が生じるのはd軌道のせいで起こる現象でしたが、「 ランタノイド」や「 アクチノイド」はf軌道のせいで生じてきます。 応用:軌道の形 いままで軌道という言葉は、 「電子殻と同じで電子が入る場所のこと」 と説明してきました。 しかし実際には「軌道」と言う名前からわかるように、 軌道にも形があるのです。 例えばs軌道はこんな形。 電子殻を想像させる形ですね。 実際、水素分子はこのs軌道どうしの共有結合でできています。 次にp軌道はこんな形になっています。 p軌道は3つあって、それぞれ異なる形です。 3つそれぞれがx軸、y軸、z軸方向に、 両手を伸ばしているような軌道になっています。 つまりp軌道を3つ合わせると、 3方向、6つの向きに手を伸ばしているということになります。 化学を一通り学んだことがある人なら、 これを見て「 錯イオン」や「 有機化学」を思い浮かべるのではないでしょうか。 ここでは詳しい説明はしませんが、 軌道を学ぶことでその先の化学がどんどん楽しくなっていくんです。 ———————————————— こんにちは、受験メモ管理人、 東大卒塾講師の山本です。 僕は地方公立高校から東大に合格した経験から 勉強に関する記事を作っています。 そして 勉強法などのより深い内容を発信するために、 メルマガを開設しました。 ブログでは伝えきれない、 勉強の成果をきっちりと挙げる方法や、 受験勉強の考え方などをお伝えしようと思っています。 気になった方はぜひ 下のリンクをチェックしてみてくださいね。 関連する記事• 2018. 15 酸化還元反応の半反応式は、 作り方を理解していればその場で作ることができます。 ただし酸化剤がどんな生成物になるか、 還元剤がどんな生成物になるか、 […]• 2018. 27 高校化学第一の難関、「モル計算」。 多くの高校生がここでつまずき、 化学が苦手になってしまいます。 あなたもモル計算に苦手意識はありませんか? モル計[…]• 2018. 05 「理論化学って計算が大変だなあ…」 あなたもこんな印象を持っていませんか? 理論化学で計算が大変に思える理由の一つに、 「濃度の計算の複雑[…].
次の電子殻 原子核を取り巻く電子の数は,原子番号が大きくなるにつれて増えていきます。 しかし,すべての電子が同じように存在しているわけではありません。 実際には,数個の電子がグループをつくり,それぞれのグループに特有の軌道に分かれて運動しています。 高校で学ぶ化学では,この軌道を層として考え,この層を 電子殻とよんでいます。 原子核に最も近い電子殻を「K殻」,その次の電子殻を「L殻」(以下アルファベット順)とよんでいます。 それぞれの電子殻は,収容できる電子の最大数が決まっています。 その数は「 2n 2」で求めることができます。 M殻には18個,N殻には32個の電子が入ります。 最大数まで電子が収容されている電子殻を,「 閉殻」といいます。 閉殻は非常に安定なので,化学反応に関わることはほとんどありません。 スポンサーリンク 電子配置 原子がもっている電子は,エネルギーが低くて安定な電子殻から順に配置されます。 基本的には,内側のK殻から順に配置されると考えて構いません。 例えば,リチウム原子 3Liは 原子番号3なので陽子数3です。 原子の状態では電気的に中性なので, 「陽子数=電子数」より,電子数3です。 電子はK殻から順に配置されますが, K殻には2個までしか電子が入りません。 残り1個の電子は,その次にエネルギーが低くて安定なL殻に入ります。 よって,K〔2〕L〔1〕という電子配置となります。 ナトリウム原子 11Naならどうでしょうか。 先ほどと同様に考えると,電子数は11個です。 そのうち2個はK殻に入ります。 残りの9個のうち8個はL殻に入ります。 残った1個がM殻に入ります。 よって,K〔2〕L〔8〕M〔1〕という電子配置となります。 オクテット則 電子配置を考えるとき,原子番号19のカリウムK以降は注意が必要です。 同様に,N殻以降の電子もいくつかのグループに分かれているのです。 先ほど,「電子はエネルギーが低くて安定な電子殻から順に配置される」と書きましたが,M殻以降は単純に内側から電子が配置されるわけではないのです。 基本的には,8個の電子を配置した後は,1つ外側の電子殻に電子が収容されます。 例えば,カリウム原子 19Kの電子配置を考えます。 19個の電子のうち,2個はK殻,8個はL殻に入ります。 残った9個のうち8個がM殻に入ります。 M殻にはまだ空きスペースがありますが,次のN殻中の1グループの方がエネルギーが低くて安定なので,N殻に電子が1個入るのです。 よって,K〔2〕L〔8〕M〔8〕N〔1〕という電子配置になります。 このように,電子を収容するスペースがあるにもかかわらず,8個の電子が配置されることによって安定になり,次の電子が外側の電子殻に配置されることを「オクテット則」といいます。 8個の電子が配置されている状態は非常に安定なのですが,最大数まで配置されているわけではありませんので 閉殻ではありません。 ちなみに,原子番号21のスカンジウムSc以降は 遷移元素という分類の元素が続きます。 遷移元素の電子配置は非常に複雑なので,出題されることはないと考えていいでしょう。 スポンサーリンク.
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