『看護のための病気のなぜ?ガイドブック』より転載。 昭和伊南総合病院健診センター長 〈目次〉• 10.• 11.• 12.• 13. 白血病ってどんな病気? は、多能性が骨髄で分化する過程において腫瘍化(白血病細胞)し、増殖した状態です。 の癌とも呼ばれています。 骨髄で白血病細胞が増殖すると、正常な血液細胞が作られる場所がなくなり、正常な、、が減少し、さまざまな症状が出現します() 図1白血病の骨髄 (勅使河原薫:白血病。 看護過程セミナー、統合改訂版、p. 602、医学芸術社、2006より改変) 白血病はどのように分類されているの? 白血病は細胞の種類による分類があり、腫瘍化した細胞がの場合は骨髄性白血病、の場合はリンパ性白血病、単球の場合は単球性白血病といいます()。 表1白血病の分類 骨髄性白血病とリンパ性白血病の発生率は、成人では4:1、小児では1:4です。 また、細胞の分化・成熟段階による分類があり、分化していない未熟な段階である芽球(がきゅう)が腫瘍化したものを急性白血病、分化した成熟細胞が腫瘍化したものを慢性白血病といいます。 芽球は細胞分裂が盛んなため、急性白血病は一般的に進行が早く、成熟細胞は細胞分裂をほとんどしないため、慢性白血病は一般的に進行が遅いのが特徴です。 急性白血病と慢性白血病の発生率は、約4:1です。 上記2つの分類を組み合わせ、、慢性リンパ性白血病などといいます。 メモ2成人T細胞白血病(ATL) レトロである成人T細胞白血病ウイルスの感染によって、リンパ球のT細胞が異常を起こす白血病。 日本人に多く、40歳以上の成人に発症。 母親がATLウイルスに感染している場合には、母子感染を防止するためは与えないようにしましょう。 白血病ってなにが原因なの? 白血病は、他の悪性腫瘍と同様に、細胞分裂の際の突然変異が原因です。 突然変異には、遺伝的素因、や化学物質などの外的因子、ウイルス感染などが複雑に関与しています。 白血病ってどんな症状が出現するの? 白血病の症状としては、白血球減少による状(発熱など)、赤血球減少による症状(全身倦怠感、、、など)、血小板減少による傾向(点状出血など)が認められます。 また、白血病細胞が臓器に浸潤し、脾臓やが腫大したり、機能障害が起こります。 メモ3出血傾向 出血傾向とは、出血しやすい状態のことをいう。 白血球が減少するとなぜ感染症状が出現するの? 白血球が減少すると感染症状が出現するのは、白血球が、免疫のおもな担い手だからです。 免疫とは、体内に侵入(出現)した異物を認識し、それを排除して生体を守ろうとする働きです。 免疫の働きを復習してみましょう。 生体は何重もの免疫で病原微生物から身を守っています。 第1のバリアは、や粘膜です。 全身をおおう皮膚は厚い細胞層で病原微生物の侵入を防いでいます。 また、たとえば気道粘膜は線毛によって病原微生物を体外に排出し、は胃酸を分泌して殺菌します。 病原微生物が皮膚や粘膜のバリアを通過して体内に侵入し、細胞を傷害すると、毛細血管内からが真っ先に局所に移動します。 好中球が病原微生物を殺菌できなければ、単球が組織内でになり、病原微生物を貪食します。 同時に、マクロファージは病原微生物のかけらを細胞表面に揚げて(抗原提示)、リンパ球に応援を求めます。 リンパ球のおもな働きは、ウイルス感染細胞を傷害し、また、抗体を産生することです。 抗体とは、抗原に特異的に結合するで、血清タンパク質中のガンマグロブリン分画にあることから、免疫グロブリン(immunoglobulin:Ig)とも呼ばれています。 抗体は、抗原に結合して病原微生物の毒素を中和するなどの働きをします。 このように、白血球は免疫になくてはならない細胞です。 白血球が減少すると感染しやすい状態になり、その状態を易感染性といいます。 易感染性になると、容易に病原微生物に感染し、発熱などの症状が出現します。 赤血球が減少するとなぜ貧血症状が出現するの? 赤血球の減少にともない、貧血が出現するのは、赤血球の減少によって、と二酸化炭素の運搬が障害されるためです。 酸素と二酸化炭素を運搬しているのは、赤血球のおもな構成成分であるです。 ヘモグロビンは、肺で酸素を受け取って全身の組織に酸素を運搬し、組織で生じた二酸化炭素を肺に運ぶ働きをしています。 この働きが障害されると、組織に二酸化炭素が蓄積して酸素不足になります。 その結果、易疲労感、全身倦怠感、めまい、顔面などの蒼白、という症状が出現します。 また、組織が酸素不足になると、はを増やし、組織への酸素供給量を維持しようとします。 その結果、、息切れ、動悸などの症状が現れるのです。 血小板が減少するとなぜ出血傾向になるの? 血小板の減少に伴い出血傾向になるのは、血小板が、中の因子とともに、止血に重要な役割を果たしているからです。 止血は、との2段階で行われ、血小板は一次止血にかかわっています()。 その後、血小板からという物質が放出されて、血管収縮が起こります。 また、血小板が傷害組織に凝集してゼリー状に固まり(一次止血、血小板血栓)、傷口を塞ぎます。 内因系は血液が異物面に接触することによって、外因系は血液と組織液が混じることによって、血液凝固因子が活性化します。 最後は、プロトロンビンがを活性化します。 それによってフィブリノゲンが糸状の線維素()に変化して凝固し、止血が完了します(二次止血、フィブリン血栓)。 白血病に特徴的な検査所見は? は、末梢血中にさまざまな成熟段階にある細胞が出現しています。 また、多くのケースに、白血病細胞の増殖を促すフィラデルフィア染色体が認められます。 急性骨髄性白血病は、末梢血に芽球と成熟好中球のみが発現し、中間の成熟段階にある細胞が見られません。 このような中間の成熟段階にある細胞の減少を白血病裂孔(れっこう)といいます()。 は、末梢血中と骨髄でリンパ芽球が優位を占めます。 メモ4フィラデルフィア染色体 22番染色体と9番染色体の長腕の一部同士が、相互に転座して形成される異常な染色体。 急性リンパ性白血病でも見られることがある。 白血病にはどんな治療が行われるの? 白血病に対する治療には、化学療法、放射線治療、造血幹細胞法などがあります。 治療の目的は、白血病細胞の根絶です。 分子標的治療ってどんな治療? 慢性骨髄性白血病の細胞は、フィラデルフィア染色体という異常があります。 この染色体に対して特異的に効果を発揮する薬剤が開発され、現在では慢性骨髄性白血病の治療薬として第1選択薬となっています。 このような、ある特定の分子を標的として、その機能を制御することによる治療を分子標的治療といいます。 化学療法ってどうするの? 急性白血病には、何種類かの抗薬を組み合わせて使用する多剤併用療法がおもに行われます。 慢性白血病には、単剤での与薬やインターフェロンなども使用されることがあります。 いずれの薬物にも副作用があり、また抗がん薬によって骨髄抑制がおこるため、成分輸血などを行います。 このような副作用に対する治療を支持療法といいます。 化学療法には寛解(かんかい)導入療法と寛解後導入療法の2段階に分けて実施されます。 寛解導入療法は、完全寛解をめざして行われる療法です。 完全寛解とは、骨髄の中の白血病細胞が骨髄総細胞数の5%未満に減少し、末梢血・骨髄が正常化し、白血病の症状がなくなった状態のことです。 しかし、完全寛解が得られても、体内には白血病細胞が残っています。 残っている白血病細胞を根絶するために、繰り返し行われるのが寛解後導入療法です()。 図4化学療法の仕組み・造血幹細胞移植法 (勅使河原薫:白血病。 看護過程セミナー、統合改訂版、p. 605、医学芸術社、2006より改変) メモ6造血幹細胞移植 ・ 同種移植:ヒト白血球抗原(HLA)の一致した血縁者または他人の細胞を移植する。 適合したが見つかるとは限らず、またGVHD()が起こることがある。 ・ 同系移植:一卵性双生児の細胞を移植する。 HLAは完全に一致。 ・ 自家移植:自己の細胞を移植する。 化学療法後、正常と思われる造血幹細胞を採取し、薬剤で処置した後に冷蔵保存して用いる。 移植細胞に白血病細胞が残っていることがある。 白血病の看護のポイントは? 患者が病気のことが理解でき、自分の意思で治療法が選択できるように支援しましょう。 化学療法や造血幹細胞移植法では、骨髄抑制のために易感染性、出血傾向になりやすく、感染や出血の予防が重要です。 また、抗癌薬の副作用である脱毛、悪心・などへの援助も必要です。 [出典] (監修)山田 幸宏/2016年2月刊行/.
次のはじめまして。 私も血液内科に勤務している看護師です。 急性骨髄性白血病の寛解導入療法後の出血傾向についてご質問ありがとうございます。 患者さんも初めての事で動揺してしまっているのですね。 しっかりと状況を把握し、出血傾向時の看護について一緒に学んでいき、患者さんを支えていけるようになりましょう。 まずは、急性骨髄性白血病の寛解導入療法後になぜ出血傾向が起こるのかについてお話します。 急性骨髄性白血病の寛解導入療法とは 急性骨髄性白血病の寛解導入療法は、白血病細胞でいっぱいになった骨髄を抗がん剤を投与することによって、正常細胞も含めて徹底的に白血病細胞を失くす事を目標にして行われます。 寛解導入療法を開始してから約14日後には、抗がん剤の効果で造血機能が低下し赤血球、白血球、血小板が減少します。 その時期に、出血傾向が起こります。 他にも、感染や貧血などの合併症が発生しやすいために注意が必要です。 寛解導入療法後の血小板数検査値とリスク 次に検査値についてです。 検査値を把握できると看護ケアが見えてきますね。 出血傾向時の看護 次に急性骨髄性白血病の寛解導入療法後の出血傾向時の看護についてお話します。 看護目標としては、出血の兆候を早期に発見し対処する事、新たな出血を起こさない事、患者さんが出血の予防行動の必要性を理解し実行できる事、が大事になってきます。 出血の兆候を早期に発見し対処できるためには、アセスメントが重要になります。 観察点と症状について以下に記します。 看護ケア 1)転倒、打撲、外傷予防 患者さんの行動範囲の整理整頓、ベッド柵の取り付けを行います。 深爪をしないようまた、髭剃り時に傷を作らないように髭剃りはシェーバーを使用してもらう等を説明します。 2)摩擦や機械的刺激の予防 清潔ケア時には強く摩擦しません。 ハブラシは柔らかい物を使用し、静かにゆっくりと磨きましょう。 また、歯肉出血が見られるときにハブラシは使用せず、含漱のみにする等を説明しましょう。 3)うっ血の予防 長時間の起立や同一体位を避けます。 衣服類は締め付けの緩いものを着用するように伝えます。 血圧測定時や採血時の駆血は短時間にしましょう。 4)怒責や咳嗽の防止 便通を整えて、便秘を予防します(食事の工夫、起床時の冷水飲用、緩下剤の使用、腹部の温罨法、メンタ湿布の使用等)。 室内の温度・湿度の調整や鎮咳薬を使用します。 医療処置後(採血等)のケア 注射や採血時にはなるべく細い注射針を使用します。 抜針時には確実に止血をし、止血後の強い圧迫は避けます。 出血が見られている時には、ボスミン綿球で圧迫し止血を図ってください。 1)出血時のケア 出血部位に氷嚢、氷枕をあてます。 四肢に出血症状が見られた場合は、出血部位を高くしましょう。 喀血が見られたときには、病巣部を下にして半側臥位にします。 鼻出血が見られたときには、頭部を高く保ちながら尾翼を圧迫します。 綿球等での圧迫でも止血が難しいときには、ボスミン綿球を使用します。 吐血や喀血が見られたときには、安静臥床とし会話を制限します。 また、どの状況であっても医師への報告を忘れずに行いましょう。 2)患者さんへの精神的ケア 特に目に見える出血は患者さんの不安が大きくなりやすいです。 血液が身体や衣服についた時には、速やかに取り除くようにしましょう。 また、状況をわかり易く説明し、患者さんが落ち着くまで寄り添って支えましょう。 また、出血症状が見られたときには、すぐに看護師へ連絡をするように伝えましょう。 ご家族へも、出血時の対処方法を伝えていきます。 おわりに.
次の成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL) ここでは免疫不全を引き起こすといわれる成人T細胞白血病についてまとめました。 原因や発症過程、免疫力を上げるも紹介しています。 成人T細胞白血病(ATL)とは? 成人T細胞白血病/リンパ腫とは、HTLV-1ウイルスが白血球の1つであるT細胞に感染し、がん化することで発症する病気です。 免疫機能で重要な役割を持つT細胞が働かなくなるため、発症して早い段階で免疫不全が起こるのが特徴。 ウイルスに感染したT細胞は他の白血病と異なり、核部分が花びらのような形をしています。 HTLV-1ウイルスに感染しても必ず成人T細胞白血病/リンパ腫になるわけではありません。 しかし、発症してしまうと他の白血病やリンパ腫に比べて症状が幅広いため、完全に治療するのは難しい場合もあります。 成人T細胞白血病/リンパ腫の発症過程 骨髄で造血幹細胞から分化したリンパ系幹細胞は、B細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ球)、NK細胞3種類の細胞に分かれます。 このうち、免疫機能をつかさどるT細胞が外から入ってきたHTLV-1ウイルスに感染。 ウイルスに感染したT細胞であるATL細胞は増殖し、成人T細胞白血病/リンパ腫となります。 成人T細胞白血病(ATL)の病型と症状 成人T細胞白血病は症状が多岐にわたることから区別が難しく、大きく「急性型」「リンパ腫型」「慢性型」「くすぶり型」の4つに分けられます。 病型 急性型 症状 血液中でATL細胞の増殖が見られる病型。 皮膚の発疹やリンパ節の腫れ、高カルシウム血症を引き起こします。 臓器が腫れて全身症状が現れるため、早期の治療が必要です。 成人T細胞白血病(ATL)では、どの病型であっても血液中のカルシウムが上昇することが初期症状として挙げられます。 急性型の場合はこの症状が急速に起こるほか、血液中のATL細胞が急激に増えるという症状もあります。 高カルシウム血症が急激に起こることで、肝臓や肥大が腫れた状態となってしまうと共に、免疫を司る白血球「T細胞」ががんとなってしまっているため、感染症を引き起こしやすくなります。 この感染症は日和見感染症と呼ばれます。 成人T細胞白血病の早急な治療が必要となり、また治療にはかなり長い時間がかかります。 特に急性型の場合は、予後が悪いと1年以内に死亡する可能性が高い、危険な病型です。 急性型と同様に重症化していることがほとんどです。 リンパ腫型は急性型のようにATL細胞が血中に増加しているということはないのですが、症状が重症化しているという点では急性型と同じです。 このため、早期の治療が重要となります。 またリンパ腫型でなくても、リンパ節でATL細胞が増殖することがあるので、リンパ節の腫れが見られたり、肝臓や肺、消化器官などに異常をきたすことも少なくありません。 またいずれの病型でも皮膚に病変が見られるのも特徴です。 そのほか、骨髄に症状が及ぶと、正常な赤血球や血小板が作られる機能が低下してしまい、全身の倦怠感や貧血症状などが起こるほか、鼻血や歯茎からの出血症状が起こることもあります。 さらに腫瘍細胞が中枢神経にも及んでしまうと、頭痛や吐き気などの症状を引き起こします。 参考: 多彩な骨病変をきたしたリンパ腫型成人T細胞白血病の1症例[PDF] 病型 慢性型 症状 慢性的に病状が経過していて、皮膚が赤くはがれやすくなる剝脱性皮疹(はくだつせいひしん)が見られます。 慢性型は、名前の通り慢性的に病状が進行していく病型で、皮膚が赤くなり、剥がれやすくなる症状が見られることが多いです。 皮膚に異常が出るほかには、自覚症状はほとんどなく、急性型やリンパ腫型のような危険性は低いとされています。 体の中では、血液中の白血球が増え有り、多数の異常リンパ球が現れるなどの症状が起こりますが、増殖のスピードも遅く、これらが直接体に悪影響を及ぼすことはなく、治療せずに経過観察することがほとんどです。 参考: 10年におよぶ経過を観察しえた慢性型成人T細胞白血病の1例[PDF] 病型 くすぶり型 症状 皮膚や肺に病変が見られますが、ほとんど症状がないのが特徴です。 白血病は白血球数に異常が起こるケースが多いですが、くすぶり型では血液中に異常リンパ球が出現します。 大きな自覚症状はりませんが、皮膚に病変を伴ったり、肺に異常が見られることがあります。 こちらも慢性型同様早急に治療が必要な病型ではないため、基本的には無治療で、経過観察をしながら様子を見るというケースが一般的です。 自覚症状がない病型もあれば早期治療が必要な病型もあるため、治療を行う前により正確な診断をする必要があります。 成人T細胞白血病(ATL)治療の流れ 診察 自覚症状や困っていることなどを医師に相談し、検査の内容を決めます。 慢性型やくすぶり型の場合は、自覚症状がほとんどないので初期で発見されることは少ないですが、リンパ腫型や急性型に移行する確率が25%だといわれているため、移行したことで発覚するケースは多いと思われます。 そのほか、健診で発見されることもあれば、皮膚の異常で診察を受けたときに発見されることもあるようです。 リンパ腫型や急性型の場合は、自覚症状を感じて診察を受けるケースが多いですが、さほど症状がひどくなかったとしても、体調に異変を感じたときは速やかに医師の診察を受けてください。 検査 血液検査や骨髄検査などを行い、白血病細胞の数や臓器の機能チェック、成人T細胞白血病特有の「花細胞」が見られるかどうかを検査。 様々な症状がある場合、検査の種類が増える可能性があります。 成人T細胞白血病であるという診断を行うためにもさまざまな検査が必要になりますが、治療法を選択するためにもこうした検査はとても重要です。 成人T細胞白血病において用いられる代表的な検査は、「血液検査」と「骨髄検査」ですが、ほかにも必要に応じていろいろな検査を行います。 「血液検査」では、血液中の血清を使用し、PA法と呼ばれる方法でHTLV-1ウイルスに感染しているかどうかを調べます。 そのほか、血液中で増えたり、減少している細胞を調べて、増加している異常細胞が白血球のT細胞であった場合には、成人T細胞白血病と診断されます。 「骨髄検査」では、骨髄液に含まれている細胞を調べるために、骨髄液を採取します。 骨髄液の採取は局所麻酔を使用して行うのですが、骨髄液を注射器で吸い取るときにどうしても痛みが生じ、これは麻酔の効果で抑えることができません。 ただし、痛みは一時的なので、しばらくすると治まります。 「病理検査」は、リンパ腫型であるかどうかを診断するためにもっとも重要な検査です。 リンパ節生検や腫瘍、皮膚生検などを行い、白血球の中の腫瘍細胞を調べ、T細胞の影響で異常をきたしている細胞が存在することが確認された場合、成人T細胞白血病と診断されます。 ほかにも、病理検査で採取した組織を使用して行う「染色体検査」や「遺伝子検査」、CCR4抗原がある場合に行われる「CCR4抗原検査」、「超音波検査」や「CT検査」も必要時応じて行います。 治療 病型分類をした後、病状の重さ判定が行われ進行具合や全身の状態を診断したうえで治療を決めます。 主な治療法は化学療法や分子標的治療、支持療法などです。 急性型やリンパ型の場合、年齢が70歳未満で協力な化学療法に耐えられると判断された場合は、抗がん剤などを使用した強力な化学療法を中心に治療を行います。 化学療法で顕著な回復が見られなかった場合には、造血幹細胞移植を行うこともあります。 造血幹細胞移植は、65歳から70歳の人は「骨髄非破壊的移植」という治療法を用います。 年齢が70歳以上、もしくは強力な化学療法に耐えられないと判断された場合には、単剤化学療法を用いた治療を行います。 慢性型やくすぶり型は、先にご紹介したように自覚症状がないことが多いため、主に経過観察となりますが、慢性型で予後不良因子があると判断された場合には、内服による化学療法や、場合によっては効力な化学療法を行うこともあります。 また、いずれの場合も皮膚症状が出ている歳には皮膚科的治療で皮膚の病変を改善します。 参考: 成人T細胞白血病リンパ腫に対する抗体療法(抗CCR4抗体)[PDF] 成人T細胞白血病(ATL)の原因 成人T細胞白血病の原因は、リンパ球であるT細胞にHTLV-1ウイルスが感染してがん化することです。 幼少時に母乳を与えられたり出産時に体液に触れたりすることでHTLV-1ウイルスに感染するため、幼少時に感染していない方はほぼ発症しないといわれています。 ただし、ウイルスを保有している方が全て成人T細胞白血病になるわけではなく、一生がん化しない人も。 しかしATLになるまでの仕組みは分かっておらず、予防方法は今のところ感染を防ぐことだけといわれています。 成人T細胞白血病の発症は、乳児期に母乳を通じてHTLV-1ウィルスがT細胞に感染することが原因と考えられています。 そのため、成人T細胞白血病を克服するには、遺伝子の異常やその分子の仕組みを解明し、発症の予測や直接的に有効な治療薬の開発が必要です。 現在はまだ有効な治療薬はないため、根治的治療としては造血幹細胞移植のみが有効だと考えられていますが、これまでもさまざまな研究によって解明されてきた事実も多く、また現在も研究が続けられているため、より早急な治療薬の誕生を期待したいところです。 参考: 成人T細胞白血病リンパ腫における遺伝子異常の解明[PDF] 成人T細胞白血病(ATL)の症状 成人T細胞白血病で起こる症状は病型によって異なっており、中にはすぐに治療しないと命にかかわる症状も。 検査の際は症状の種類で4つの病型を決定します。 急性型 皮膚の発疹やリンパ節の腫れといった代表的な症状のほかに、高カルシウム血症や臓器の腫れなど重い症状を引き起こします。 リンパ腫型 1cm以上の大きなリンパ節腫脹や皮ふ病変が特徴です。 慢性型 皮ふが赤くはがれやすくなる剝脱性皮疹(はくだつせいひしん)が出ます。 くすぶり型 重篤な症状はなく、皮膚や肺の病変だけが起こります。 成人T細胞白血病(ATL)の治療法 成人T細胞白血病の治療法は急性白血病とほとんど同じで、化学療法(抗がん剤治療)や分子標的治療などをメインに行います。 化学療法(抗がん剤治療) 急性型やリンパ腫型といった進行が早い病型では複数の細胞障害性抗がん剤を使った多剤併用療法が行われます。 大量の抗がん剤を投与するため、治療当日から治療後の数ヵ月は様々な副作用に悩まされることも。 しかし、予測される副作用に合わせてできるだけ対策を立てたうえで治療を行ってくれます。 分子標的治療 成人T細胞白血病で見られるがん増殖分子「CCR4抗原」を標的として薬剤で排除します。 初めての治療では化学療法と併用して2週間おきに点滴を8回実施。 ただし、副作用があるため、症状が悪化しないように注意しながら治療が行われます。 造血幹細胞移植 造血幹細胞移植は、大量の化学療法や放射線治療を行った後に骨髄機能を回復させる治療です。 事前に採取した造血幹細胞を投与し、機能が落ちた骨髄を元に戻します。 支持療法 支持療法は症状や治療に伴う副作用を軽くするための治療で、感染症が起こりやすい場所のケアを行います。 治療内容は抗生物質や抗ウイルス薬の投与、高濃度赤血球の輸血など。 症状の緩和だけでなくメンタルケアも含めた多種多様な治療が行われます。 成人T細胞白血病(ATL)の合併症 成人T細胞白血病になると免疫をつかさどるT細胞が働かなくなり、大幅な免疫力低下が起こります。 抗がん剤や分子標的薬による治療でさらに免疫が抑制されるため、通常は影響がない弱いウイルスでも合併症を引き起こすことも。 免疫機能が弱っている状態で合併症を起こすと最悪死亡する可能性があるので、手洗いうがいや部屋の掃除などをしっかり行ってください。 成人T細胞白血病(ATL)の再発 治療でがん細胞の割合が基準を下回った際、治療効果があったと判断される場合があります。 ただし、治ったと判断された場合でも再度症状が出ることも。 その場合、患者一人ひとりに合った治療が再検討されます。 初めは救援療法として化学療法や分子標的治療を行い、効果があれば造血幹細胞移植を行います。 成人T細胞白血病(ATL)だと診断されたときにできること 成人T細胞白血病は免疫細胞の中でも重要なT細胞がウイルスに感染することで発症する病気です。 そのため、発症した時点で免疫力が大幅に低下。 そのうえ白血病治療で免疫を抑制するため、感染症になりやすくなります。 T細胞は免疫として働かないため、成人T細胞白血病だと診断された場合はリンパ以外の免疫細胞を強化することが大切です。 また、免疫細胞を強化する効果があるといわれている成分を試すのもいいでしょう。 近年注目されている「米ぬか多糖体」はNK細胞を活性化し、免疫機能を調整してくれる効果が分かっています。
次の