最近るっの年齢ネタ多すぎて単純に不快。 もうマジでいい加減にしてほしい。 年齢いじりがネタになると思ってるあたり不快過ぎる。 その流れで言うが、ロゼッタのBBAネタもただただ不快。 人間と時の流れが遥かに違うんだからそもそもネタとして成立してないだろ。 天丼狙ってんなら滑ってるから素直にやめて。 昨今の男尊女卑とかLGBT尊重の流れ軽視して笑い取ろうとしてんのこれぐらいだろって感じ。 まぁこのゲームが衆目に晒されてないからこういうこじんまりとしたコミュニティで完結しているだけだから一目に付かないだけであるわけでさ、その気になれば拡散させることだって不可能じゃないんだよね。 ただでさえ出る杭は打たれる超高度クレーム社会なんだから(それが日本だけでなく世界のメインストリームなわけだから猶更)、もうちょい配慮してほしい。 もし運営の指示でやってんなら運営サイドがどうとでもなるわけで、イチイチいらん指示出すなと。 もう腹立つ。
次の摂津 は畿内、播磨が山陽道、丹波・但馬が山陰道、淡路が南海道に属し、それぞれに風土慣習が違い、仏像も一括りにしては語りにくい。 それぞれ、主だった古佛を観てみると、 摂津では、大龍寺・乾漆菩薩立像、栄根寺・薬師像、中山寺・十一面観音など、 播磨では、鶴林寺・金銅聖観音像、楊柳寺・十一面観音・聖観音像、浄土寺・快慶阿弥陀三尊像など、 丹波、但馬では、達身寺・古佛 群、温泉寺・十一面観音像、相応峯寺・十一面観音像、西谷観音堂・十一面観音像、普門寺・千手観音坐像など 淡路では、成相寺・薬師 如来像、東山寺・薬師十二神将像など、 あたりになるのだろう。 兵庫 の仏像を総覧できるのは、次の本。 「ふるさとの文化遺産〈兵庫 県の文化財図鑑・彫刻編〉」日本青年会議所近畿地区ブロック協議会編集発行 S53 【213P】 兵庫県の国指定文化財 国宝1・重文95 を、すべて網羅した大判の立派な写真集で、なかなか重宝。 解説は、図版ごとの簡潔なもの だが、毛利久ほか一流の研究者の執筆。 「兵庫文化財散歩」神戸新聞 社編 S56 神戸新聞出版センター刊 【170P】 S53〜54に神戸新聞 文化欄に連載された「文化財散歩」をまとめた本。 文化財散歩と題されているが、内容は仏像中心で、兵庫の国指定の彫刻96件と県指 定の彫刻60件が全て採り上げられている。 写真は同社写真部長・福本一文、文は学芸部記者・古山桂子。 「兵庫のみほとけ〜国・県指 定重要文化財仏像彫刻編」矢野明弘写真 S52 私家版 【246P】 「兵庫のみほとけ〜但馬編」 矢野明弘写真 S51 私家版 【209P】 矢野明弘撮影の仏像写真集。 矢野明弘という人の経歴などは良くわからないが、「あとがき」に、 「わたくしの十余年にわたる仕事の結晶でもあります写真集〈兵庫 のみほとけ〜重要文化財仏像彫刻編〉を前作〈但馬編〉に続けてご覧いただけますのは・・・・・・・」 とあることから、長らく仏像写 真を撮り続けている仁と思われる。 ここからは、地域別に仏像を取り上げた本を紹介。 〈播磨〉 「ふるさとのみほとけ〜播磨 の仏像」兵庫県立歴史博物館編集発行 (H3) 【147P】 同名の、特別展の図 録。 播磨の仏像、約40躯の図版・解説が収録されている。 神戸佳文の解説文「播磨の仏像について」も掲載。 H10 に横浜・金沢区の龍華寺から発見されて話題を呼んだ、脱活乾漆の菩薩半跏像の中尊といわれる、金蔵寺阿弥陀如来像(頭部のみ脱乾漆・当初)など、播磨の余 り知られていない仏像が出展された。 「泉生山 酒見寺」 H8 泉生山酒見寺刊 【211P】 播磨、加西市北条町にある酒見寺 さがみじ に は、61年に一度の開扉が厳重に守られている秘仏・十一面観音立像がある。 無指定であるが、シャープで凌ぎ立った彫り口のカヤの一 木の素木像、いわゆる平安初期彫刻の典型とでもいえる、優品である。 この像の存在が、それほど知られていないのは、厳重なる秘仏 で、それ故に文化財指定もされていないことによるのだろう。 この「幻の名品仏像」とでもいえる十一面観音像が、直近開扉されたのは 平成8年。 同時に、本堂の屋根の立替が行われることとなり、工事期間中、本像が「京都国立博物館」に保管委託され、調査も行われ た。 後で知ったことだが、この時、ごく短期間であったが、京都国立博物館にこの秘仏が展示され、初めて一般に公開されたそうだ。 「わかっておれば、無理をしてでも、観に行ったのに」と、悔しき思いもするが後の祭り。 西谷観音堂・十一面観音観音立像 ついでに言えば、井上は、同じく播磨の古像、楊柳寺・楊柳観音像も、法道上人開基伝承 と絡めて、白鳳期の制作と主張している。 いずれの制作年代にせよ、極めて魅力的で、神秘的な古式の仏像。 一度は何としても拝したい像。 本書は、まだ余部があるようで、酒見寺に連絡すれば、8000円の頒価で入手可 能。 〈丹波・但馬〉 「文化財 但馬の錦」神山登 監修・谷本政春撮影編集 S54) 岡書店刊 【305P】 「文化財 丹波の錦」神山登 監修・谷本政春撮影編集 S56 谷本紙業発行 【282P】 「文化財 丹後の錦」若杉準 治監修解説・神山登編集・谷本政春撮影 (S56) 谷本紙業発行 【308P】 「文化財 丹後の錦 拾遺」 若杉準治監修解説・谷本政春撮影編集 (S58) 谷本紙業発行 但馬、丹波、丹後 地方の、仏教美術を中心とするカラー写真図版と解説を収録した、超大判の豪華本シリーズ。 指定文化財・無指定を問わず、仏像につい てはすべて網羅されているといっても過言ではない。 解説は、大阪市立博物館・神山登と京都国立博物館・若杉準治。 撮影編集者の谷本政春は、略歴によると、T9・兵庫県城崎郡生まれで、S21に活版印刷業開業、S39美術印刷に着手したとある。 この図録シリーズの刊行は、谷本が、まさに郷土の文化財を世に伝えようと、ライフワークとして取り組んだ結晶だったのではなかったかと察せられる。 あとがきで、谷本は、 「この内外に誇るべき貴重な文化財を図録にすることは、美術印刷に携わる私には長年の願望で御座いました」と 記している。 末尾に添えられた自作の歌、 「但馬の文化財 彫刻編」 (S54) 但馬文化協会刊 【162P】 但馬1市18町の、指定文化財を集大成 して発刊された、但馬の文化財全6巻の彫刻編。 国指定・重要文化財、県市町指定文化財の仏像に一部無指定の仏像をくわえて、70躯 余の仏像が収録されている。 大判の立派なカラー写真集。 解説は県市町の各教育委員会が担当している。 「但馬の仏像」平位誠治著 S58 船田企画刊 【211P】 前述の「但馬の文化財」の編集に参画した、平位誠治が但馬の仏像 について解説した本。 ブックス但馬シリーズの1冊として出版された本で、ハンディで便利。 「丹波・達身寺〜木彫仏像の原 卿」船越昌文・細見克郎写真 (S59) 【97P】 達身寺 多くの平安佛が遺されていることや、兜跋毘沙門天像が16躰も あること、達身寺様式と名付けられる下腹部を大きくせり出した独特の姿をもつことなど、特異な仏像群である。 達身寺は、平安時代山 岳寺院として隆盛を誇ったというが、往時の仏像が今まで遺されてきたのだろうか?あるいは近隣の古佛がこの達身寺に寄せ集められてきたのだろうか? それにしても、これだけの古佛たちが、兵火や災害などを乗り越えて、満身創痍の姿になりながらも、よく里人に守られてきたものだ。 その昔、達身寺を訪れたときには、国鉄福知山線石生駅からバスに揺られてやっとのことでたどり着いた。 大勢で訪れて、お寺に泊めてもらったこともあった。 最近訪れたところ、立派な宝物殿ができており、門前には大型バスの駐車場や休憩所、訪れる人の滅多になかった山村の達身寺も、随分と有名になったんだな と、懐かしくもあり、寂しくもありという気持ちで、古佛たちと再会した。
次の王都に帰還したジークフリートが騎士団の宿舎に足を踏み入れると、近くにいた団員が慌てた様子で「団長だ!」と大声を上げた。 その叫び声に、あちこちの廊を歩いていた団員達が一斉にジークフリートを振り返る。 「団長が帰ってきたぞ!」「副団長達に連絡を」「まだ間に合うんじゃないか?」と叫び出す団員達で、にわかに宿舎内は騒がしくなった。 駆け寄ってきた団員達が「こちらへ」と有無を言わさずにジークフリートを上階の団長の執務室に連行する。 一応、自分の部屋の一つとも呼べる場所の前に追い込まれ、ジークフリートは首をかしげた。 「……何事だ?」 「はっ。 副団長達に、万が一団長をお見かけした場合、絶対に逃がすなと言われております!」 複数の団員が退路を断つように囲んでくるので尋ねてみたものの、いまいち事態が把握できずにジークフリートはますます首をかしげるはめになった。 ひとまず何か緊急の魔物討伐が発生しているだとか、そういうことではないらしい。 「副団長達は何をしているんだ」 「間もなくこちらにいらっしゃるかと」 うまく会話が噛み合わずに、ジークフリートは困惑した。 とりあえず団員達に囲まれているのも妙な気分なので、執務室に逃げ込むことにして、懐から鍵束を探す。 篭手を外して細い鍵を鍵穴に挿し込む間に、「ジークフリートさん!」と廊下の向こう側から聞き慣れた声がした。 ジークフリートを囲っていた団員達がさっと壁側に避けて場所を空ける。 と、こちらに向かって駆けてくる副官二人の姿が視界に飛び込んできた。 ランスロットもパーシヴァルも、今日はいつもの鎧姿ではなく、隙なく整えられた礼服姿だ。 そのことに気がついて、ジークフリートは目を見張った。 よくよく気をつけて見れば他の団員達もぴかぴかに磨き上げた鎧を着ており、この場で一番薄汚れている格好なのは、旅の土埃にまみれたジークフリートだ。 執務室の前まで駆けてくるなり、パーシヴァルが「こんなギリギリで帰ってくるとはどういうつもりだ」と眉を吊り上げる。 その間にランスロットが団員達に「水と手ぬぐいを用意してきてくれ。 すぐに仕上げるぞ」と指示を出した。 団員達も「了解しました」と勇ましく駆け出して行き、実に手際が良い。 まるで大急ぎで討伐支度をしている時のようだ、とジークフリートが感心している間に、副官二人は目配せ一つで役割分担を終えたようだった。 「ジークフリートさんの礼服をとってくる」 「任せた」 すばやく身を翻したランスロットは廊下を駆ける勢いそのままに吹き抜けの手すりを掴み、二階下の廊下までためらいなく飛び下りた。 階下にいた団員が驚いて悲鳴を上げるのが聞こえてくる。 ジークフリートがそちらに気を取られていると、パーシヴァルがジークフリートを逃がさないようがっちりと腕を捕まえた。 これはもしや、と嫌な予感を覚えながら、ジークフリートは頭の中で騎士団のスケジュールを思い返した。 遠征や部隊の行動予定はきちんと頭に入れておいたはずなのだが、そういえば、王に侍る式典や晩餐会の予定を頭に叩き込んでおくのを忘れていた。 できれば、そういう時の王の随伴こそ、副官達に押し付けてしまいたかったのだが。 「……今日は何があるんだったかな、パーシヴァル」 「他国の文化交流使節の歓迎式と昼食会、夜は晩餐会だ。 二ヶ月前には連絡してあった筈だが、忘れたか」 「なるほど。 それで鎧を着ていないのか」 「ああ。 貴様にもさっさと身なりを改めてもらおうか」 言葉を交わす合間に、パーシヴァルは開きかけていた執務室の扉の向こうにジークフリートを押し込んだ。 自身の礼服のマントと上着を脱いで動きやすいよう袖のボタンを外すと、シャツの袖を丁寧に折って捲る。 「真っ直ぐに立て。 腕を広げて、そのまま動くな」と己の上司に命じると、他の団員にも手伝わせて、ジークフリートから外套を引っぺがし、鎧のパーツを一つずつ外していく。 「そんなに世話を焼かれなくても、着替えくらい一人でできるぞ」 「時間がないんだ。 いいから顔でも洗っていろ」 椅子、水、とてきぱきと命じるパーシヴァルの声に応じて、別の団員が水桶だの手ぬぐいだの座るための椅子だのを運んでくる。 数人がかりであっという間に鎧を剥ぎ取られたジークフリートは、椅子に座り、言われるがままに水桶の水で顔と手足を洗った。 「爪の間もきちんと洗え」と細かく指摘してくるパーシヴァルに睨まれながら手を洗い直していると、ランスロットがジークフリートの私室から発掘した礼服一式を抱え、息一つ乱すことなく駆け戻ってきた。 「おいランスロット、櫛はどうした」 「こっちに無いか?」 「この男が執務室に置いているわけないだろう」 「まあいいんじゃないか。 ジークフリートさんはそのままでも充分かっこいいから」 「お前達は揃いも揃って…! わかった。 着替えは任せるぞ」 「ああ、任せてくれ!」 パーシヴァルが舌打ち一つを残して部屋を出て行く。 今度はランスロットが、「さあジークフリートさん。 さっさと着替えましょう」と促してくる。 息の合った副官二人のやりとりは実に頼もしいのだが、扱われている内容が自分の着替えというのはどうにもむずがゆかった。 鎧を片付けた団員達が出ていくのを見送って、ジークフリートは大人しく鎖帷子を脱ぎ始めた。 下の服に手をかけたところで、執務机の上に礼服を広げていたランスロットがすかさず振り返ってくる。 「ジークフリートさん! 礼服を着る前に身体も拭いて下さいね」 「……わかった」 手際よく濡らして絞った手拭いを差し出され、ジークフリートが言われるがままに身体を拭くと、息つく暇もなくランスロットが礼服を差し出してくる。 新しい下着にきちんと折り畳まれたシャツ、折り目の付いたズボン、靴下、よく磨かれた革靴に、ベスト、飾り帯、上着、と渡される順番に身に着けた。 ジークフリートが袖口の飾りボタンと戦っている間に、ランスロットが肩に付ける黒竜騎士団の意匠を施したプレートを細い鎖で結びつけていく。 と、そこまで仕上げて、ランスロットが「あっ」と声を上げた。 まだ飾りボタンと戦っていたジークフリートが首をかしげると、ランスロットはジークフリートの襟元を凝視して頭を抱えている。 「どうした、ランスロット」 「タイを持ってくるのを忘れました…!」 「おいランスロット! タイを忘れて行っただろう!」 ランスロットが呻き声を上げたまさにそのタイミングで、ノックと同時に執務室の扉が開き、パーシヴァルが飛び込んできた。 一応ノックはしていたが、中の応答を待たずに開けるのはどうなんだ、とジークフリートがぼんやり考えている合間にも、腕に細々としたものを抱えてきたパーシヴァルがつかつかと歩み寄ってくる。 そちらを振り返ってランスロットがぱっと顔を輝かせた。 「さすがだなあ、パーシヴァル。 確認してきてくれたのか」 「扉が開け放したままだったので見ざるを得なかったんだ。 クローゼットの中身を全部出したのか? 泥棒にでも遭ったかのようだったぞ。 あと一応騎士団長の私室なんだから扉ぐらい閉めてこい」 「待て。 俺の部屋はいったいどんな有様になっているんだ」 思わずジークフリートが口を挟んだが、副官二人はそれどころではないらしい。 パーシヴァルが持ってきたタイ、櫛、整髪剤を手に「全部後ろに流すか?」「前髪は垂らしたほうがいいんじゃないか」「しかし今回は食事会もあるのだから」「晩餐会はまた変えればいい」と真剣な顔で話し始めている。 ジークフリートが声をかけようとそっと手を挙げると、「タイくらいは自分でできるな?」と渡された。 さらさらと指を滑らせる上質な布をどうにか首元に巻き付けて結ぶ。 すると再び椅子の上に座るよう指示される。 「絶対に頭を動かすなよ」 低い声で命じてくる部下の威圧感に頭を押さえつけられ、ジークフリートは黙って袖口の飾りボタンとの戦いを再開した。 繊細な細工で飾られたボタンは下手に力を入れたら潰してしまいそうで、なかなかうまく留められない。 自然とジークフリートの頭が袖口を覗きこむように俯く。 「頭を動かすなと言っただろう!」 「ジークフリートさん、ボタンなら俺がやりますよ」 「……すまん」 背後に立ったパーシヴァルにぐいっと首の角度を直されて、ジークフリートは短く呻いた。 パーシヴァルはジークフリートの肩に手ぬぐいをかけると、絡まった髪に櫛を入れ始めた。 普段から櫛を通さずにあちらこちら跳ねている髪をていねいに何度も何度も梳いていく。 その間にランスロットは手際よく袖口の飾りボタンを留め終え、上着のあちこちに装飾を付け足していった。 肩に付ける飾り、胸に下げる飾りなど、ジークフリートにはちっとも違いがわからないのだが、「先日陛下から下賜された何某を忘れるなよ」「わかっているって」と副官二人が言い交している以上、全て違う意味のあるものなのだろう。 さらに髪をいじりながらパーシヴァルが「ランスロット」と声をかけると、ランスロットがジークフリートの正面に回り込んで、真剣な表情でジークフリートをじっと見つめた。 「前髪半分」「全部」「両側を少しだけ落としたらどうだ?」などとこまめに提案し、パーシヴァルがその都度ジークフリートの前髪の分け目を直しながら櫛を挿し込んだ。 梳かれてすっかり指どおりの良くなった髪に、パーシヴァルの手が整髪剤を塗り込んでいく。 あちらこちらに跳ねていた毛先が大人しくおさまり、長い前髪を左右に分けられると、ジークフリートの視界が広くなった。 「団長! ランスロットさん、パーシヴァルさん。 お時間です!」 「すぐに終わる」 扉の向こう側から声をかけてくる団員に鋭い声を返し、パーシヴァルがジークフリートの襟足を整える。 「どうだ」 「ああ、ジークフリートさんはやっぱり礼服姿でもかっこいいな…!」 「見苦しくないなら問題ない。 おい、まだ剣帯をつけていないじゃないか」 「ジークフリートさん、立ってください」 肩にかけられていた手ぬぐいをとってジークフリートが立ち上がると、ランスロットが剣帯を運んでくる。 華やかに飾られた帯を腰に巻き、式典用の装飾剣を挿し込む。 ジークフリートは具合を確かめるように少し身を捻り、腰の軽さの心もとなさに嘆息した。 「思うに、もう少しまともな得物にしたほうがいいんじゃないか」 「式典にあの大剣を持ちこんで、来賓を脅す気か?」 「国内向けの式典ではむしろあれを持ってこいと言われるのに、違いがわからん」 あれ、とジークフリートが示すのは、団員が二人がかりで運んで壁に立てかけたジークフリートの愛剣だ。 パーシヴァルはちらりとそちらを見遣って「国内向けならば問題ない」と呟いた。 「あれは竜殺しの大剣だから、民が喜ぶ。 だが、今日は他国の使節相手の文化交流式典だ。 それに、何のために警護の騎士達がいると思っている。 こういう時くらい、お前の騎士団を信じて任せろ」 「だがなあ……ああ、ランスロット。 引き出しにナイフがあるだろう。 とってくれ」 「隠し武器を仕込むな。 礼服のかたちが崩れるだろう」 「まあまあ。 上着やマントで隠れるから、いいんじゃないか?」 「甘やかすな!」 執務机の引き出しに収められていたナイフ数本と細いベルトをランスロットが持ってくると、ジークフリートが受け取る前にパーシヴァルが取り上げる。 しかしジークフリートとランスロットが揃ってじっと見つめると、「……一本だけだぞ」と苦々しげな表情で戻してきた。 先端を鋭く磨き上げた、柄の無いシンプルなナイフを、ジークフリートは鞘ごと腰のベルトに付ける。 上着の裾を下ろせば隠れる位置だ。 ランスロットが肩まわりや袖口などを細かく整えてくれる間に、パーシヴァルが取り上げたナイフを机の引き出しに戻した。 仕上げに、ランスロットからマントと手袋を受け取る。 「ランスロットさん、パーシヴァルさん!」 扉の外から団員が声をかけてくる。 少し焦った声なのは、もう時間切れということだろう。 ジークフリートが見遣ると、パーシヴァルはさっさと自分のシャツの袖を整え直して上着を羽織っていた。 ジークフリートがあれだけ苦労した袖の飾りボタンも何なく留め終えて、颯爽と肩にマントを掛けている。 ランスロットが執務室の扉を開けて、外に待機していた団員達に「待たせたな!」と明るい声をかける。 その後ろからジークフリートが姿を見せると、おおっと歓声が上がった。 「さすが団長! 見事な変身っぷりです」 「ランスロットさん、パーシヴァルさん、お疲れさまでした!」 「とてもいつもの団長と同じ人物には見えませんよ」 「……褒められている気がせんぞ」 口ぐちにかけられる言葉に、ジークフリートが苦笑しつつ首のあたりに手をやる。 と、即座に「髪を触るな」と背後から叱られた。 散らかったままの執務室から水桶を抱えた団員が退出するのを確認して、パーシヴァルが扉に鍵をかける。 「すぐに王城へ向かう。 誰か、先に走って陛下にご連絡を。 今日は騎士団長もいると…」 「無用だ。 陛下は俺が王都に戻っていることはご存知だぞ」 「どういうことですか、ジークフリートさん」 「ここに来る前、一度陛下のところに参上して、帰還の挨拶だけはしてきたからな」 途端に、副官二人が目を見開いて動きを止めた。 何か問題のあることを言っただろうか、とジークフリートが目をまたたかせると、赤毛の副官の気配がみるみる怒気をはらんでふくらんだ。 「あの埃だらけの格好で陛下の前に参上したのか…!? 」 「王都に入る前に、山の川で身は洗っておいたんだが。 まだ少し埃っぽかったか?」 ジークフリートはそっと顎を撫でて自分の身体を見下ろす。 燃え上がる炎の気配を察知した団員達がさっとすばやく距離をとる。 そのうちの一人を捕まえてランスロットは「陛下に少し遅参すると連絡してきてくれ」と走らせた。 そうして同僚が爆発する前に腕を掴んで囁く。 「パーシヴァル、陛下の御前に遅れちまうぞ」 「わかっている! ……もはや呆れ果てて怒る気にもなれん」 掴まれた腕を振り払い、パーシヴァルがさっさと身を翻す。 振り撒かれる怒気に押しのけられ、ざっと廊下の道を空けて左右に分かれる団員達の真ん中を歩く背中を見送って、ジークフリートはランスロットを顔を見合わせた。 「待てよ」と先に駆け出したランスロットがパーシヴァルに追いついて引き留めている間に、ジークフリートも歩き出す。 歩きながら、手にしたマントを肩にかけ、細く編み込まれた飾り房の付いた留金を嵌めた。 金糸で縁取りが施され、背面に向かい合う一対の竜が刺繍された黒竜騎士団のマントは、本来、日々纏う品として王から下賜されたものだ。 だが、あんまり上等な品なので、ジークフリートは式典の時しか纏わなかった。 おかげでほころび一つなく、すべすべとした手触りの布地も艶を保って美しい。 数歩先で待っている副官達も同じマントを羽織っている。 黒と赤と金を配色した礼服はどちらもよく似合っているし、ジークフリートよりよほど着こなしているように見えた。 (だが、やはりいつもの鎧姿のほうが似合っているな) ふふ、と思わず口の端から笑みをこぼして、ジークフリートは副官達に声をかけた。 「では行こうか、お前達」.
次の