うつ病 眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといったことが続いている場合、うつ病の可能性があります。 うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。 脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまいます。 そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという、悪循環が起きてきます。 薬による治療とあわせて、認知行動療法も、うつ病に効果が高いことがわかってきています。 早めに治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、無理せず早めに専門機関に相談すること、そしてゆっくり休養をとることが大切です。 「うつ病」とは うつ病は増えている? 日本では、100人に3~7人という割合でこれまでにうつ病を経験した人がいるという調査結果があります。 さらに、厚生労働省が3年ごとに行っている患者調査では、うつ病を含む気分障害の患者さんが近年急速に増えていることが指摘されています。 「うつ病が増えている」の背景には、• うつ病についての認識が広がって受診する機会が増えている• 社会・経済的など環境の影響で抑うつ状態になる人が増えている• うつ病の診断基準の解釈が広がっている など、様々な理由が考えられます。 「うつ病」にはいろいろある 「憂うつな気分」や「気持ちが重い」といった抑うつ状態がほぼ一日中あってそれが長い期間続く、というのはうつ病の代表的な症状です。 こうした症状が見られた場合、うつ病と診断されることが多いのですが、本当は、これだけで診断がついたことにはなりません。 大うつ病と呼ばれるタイプのうつ病には一定の診断基準があり、参考になります。 他に性格や環境、あるいはほかの病気やこれまで服用していた薬が関係していることもあります。 また、これまでに躁状態や軽躁状態を経験したことがある場合はうつ病でなく双極性障害(躁うつ病)であると考えられますのでそういう経験がなかったかの確認も必要です。 統合失調症などほかの精神疾患が背景にあって、抑うつ状態はその症状のひとつであった、という場合もあります。 このような症状を万が一うつ病と診断されたら、本当の疾患が見逃されせっかくの早期発見・早期治療のチャンスをのがしてしまうことになってしまいます。 正しいうつ病の診断は、うつ病のどのタイプなのか、ほかの精神疾患である可能性はないか、などを確認することまで含まれるのです。 治療法にもいろいろある うつ病の治療法は、一人ひとり違います。 典型的なうつ病ならば薬物療法の効果が期待できます。 性格や環境の影響が強い場合は精神療法的アプローチや時には環境の整備が必要になります。 ほかの病気や薬が原因の場合は病気の治療や薬を変えることを考えなくてはなりません。 休職についても、休養が必要な場合とむしろ仕事を続けた方がいい場合もあってこの点でも方針はひとつではありません。 うつ病とひとくくりに考えて治療をうけるのではなく、うつ病にはいろいろあって、治療法もひとつではないことを知っておくことが大切です。 自分のうつ病と、ほかの人のうつ病は違うものであり、治療法も一人ひとり違っていて当たり前なのです。 それは、どのくらい続いていますか? うつ病と診断するめやすとして、次のような症状のうちいくつかが2週間以上ずっと続く、というものがあります。 ひとつひとつの症状は誰もが感じるような気分ですが、それが一日中ほぼ絶え間なく感じられ、長い期間続くようであれば、もしかしたらうつ病のサインかもしれません。 抑うつ気分(憂うつ、気分が重い)• 何をしても楽しくない、何にも興味がわかない• 疲れているのに眠れない、一日中ねむい、いつもよりかなり早く目覚める• イライラして、何かにせき立てられているようで落ち着かない• 悪いことをしたように感じて自分を責める、自分には価値がないと感じる• 思考力が落ちる• 死にたくなる 周りからみてわかるサインもあります うつ病では、自分が感じる気分の変化だけでなく、周囲からみてわかる変化もあります。 周りの人が「いつもと違う」こんな変化に気づいたら、もしかしたら本人はうつ状態で苦しんでいるのかもしれません。 表情が暗い• 涙もろくなった• 反応が遅い• 落ち着かない• 飲酒量が増える 体に出るサインもあります 抑うつ状態に気づく前に、体に変化が現れることもあります。 食欲がない• 体がだるい• 疲れやすい• 性欲がない• 頭痛や肩こり• 胃の不快感• 便秘がち• めまい• 口が渇く これはあくまでも目安です。 おかしいかな?あてはまるかな?と思ったらまずは専門家に相談しましょう。 専門家のいるところは総合病院の精神科や心療内科、もしくは精神科専門のクリニックなどですが、どこに行けばいいかわからない時は自分のことをよく知っているかかりつけの医師に相談したり、地元の保健所や精神保健福祉センターの相談窓口を利用するなどしましょう。 インターネットや本などで一方的な情報を集めて自己診断することは正しい診療をうける機会を遅らせるだけでお勧めできない方法です。 最近使われているうつ病の診断基準はとてもわかりやすく、うつ病かどうかの診断は簡単にやろうと思えばできるようにみえます。 しかし、本当にうつ病なのか、うつ病のどのタイプなのか、などの正確な診断は専門医がきちんと判断しないとなかなかわかりにくいのです。 うつ病の治療法 多彩な治療法 うつ状態をおこす原因がはっきりしているときは、その原因を取り除くことが検討されます。 たとえば体の病気が原因である場合はその治療を行い、薬の影響が考えられる場合は可能であれば薬の中止、それができない場合は別の薬への変更がはかられます。 性格的にストレスなどの影響を受けやすい人は精神療法的なアプローチが効果的です。 こうしたうつ病でも、うつ状態が重症であれば抗うつ薬による治療も平行して行われます。 うつ病と判断された場合には一般に抗うつ薬による治療が行なわれます。 ただし、典型的なうつ病でも軽症の場合は薬の効果がそれほど期待できないこともあるので、薬物療法が絶対であるというわけではありません。 自分には本当に薬が必要かどうかを主治医に確認しながら治療を受けるようにしましょう。 薬もいろいろある 抗うつ薬といわれるものだけでもSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)といったものから三環系抗うつ薬などいくつかのグループがあり、抗うつ薬の他にも、症状に合わせて抗不安薬や睡眠導入剤なども使われます。 また、躁状態や軽躁状態を経験したことがある人の場合はうつ病でなく躁うつ病(双極性障害)と診断され、気分安定薬が使われます。 どの薬が効くかは治療を受ける人一人ひとりで異なり、また同じ人でも病気がどの段階かによって違ってきます。 薬の飲み方 薬物治療では、まず主治医に処方された薬の効果と副作用についてきちんと説明してもらいます。 また、処方された量と回数をきちんと守ることが大切です。 症状がそれほど重くないと感じる、副作用が心配、などの理由から自分で量や回数を勝手に減らすと、主治医は十分な効果が得られないと判断して薬の量を増す、もしくは別の薬に変えるなどの対応を考えることになってしまいます。 副作用など気になることがあれば、一人で判断しないで主治医に相談して解決方法を考えましょう。 こうした主治医への働きかけは信頼関係をはぐくむことにもつながります。 治療の不安や疑問は主治医に相談しましょう 治療を進めるうえで不安や悩みを持ったら、主治医に相談しましょう。 何でも相談できる関係を主治医ともつことはうつ病治療の第一歩です。 主治医が治療上の不安や疑問にこたえてくれない、話をするのが面倒な様子をみせる、というような場合は、ほかの専門家の意見を聞くことも考えます。 これをセカンドオピニオンといいます。 複数の専門家の意見を聞くことが納得のいく医療を受ける手だてになることもあるのです。
次のうつ病にはさまざまな種類があり、そのなかのひとつに「大うつ病性障害」があります。 一般的に「うつ病」という言葉からイメージされるのが、この大うつ病性障害です。 大うつ病と聞くと何か特別な症状があるのかと考える人もいるかと思いますが、うつ病のなかでは最も基本的な症状です。 ここでは、大うつ病性障害の特徴やその症状などについてご紹介します。 大うつ病性障害の特徴 大うつ病性障害はうつ病性障害のひとつで、最もよくみられるタイプのうつ病です。 大うつ病性障害だと診断される基準には、「大うつ病エピソードを満たしていること」が挙げられます。 アメリカ精神医学会が発行しているDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)では、大うつ病エピソードの診断基準として9つの症状が定められています。 抑うつ気分と興味・喜びの喪失は必須症状で、最低どちらか1つが認められる必要があります。 これを満たした上で、残りの7つの症状のうち5つ以上が認められると、大うつ病性障害だと診断されます。 ただし、気分が病的に高まる躁病エピソードや程度がやや軽い軽躁病エピソード、あるいは躁とうつが混在している混合性エピソードがみられた場合には、大うつ病性障害とはみなされません。 また、大うつ病性障害のなかにも単一エピソードと反復性の2種類が存在していて、それぞれ大うつ病エピソードが存在している数によって分類されます。 大うつ病性障害の症状 大うつ病性障害の症状では、以下のようなものが代表的です。 抑うつ状態、興味・喜びの喪失 抑うつ状態や興味・喜びの喪失は大うつ病エピソードの最たるもので、基本的な症状です。 抑うつ状態は、憂うつや空虚な気分、不快感など、マイナスな感情が表れている状態です。 興味・喜びの喪失は、今まで楽しんでいたものに興味がもてなくなる、好奇心がなくなる、性的関心が希薄になるなどの症状があげられます。 これらの症状は朝から日中にかけて表れることが多く、また2週間以上続きます。 焦り・思考制止 焦りと感情の抑制は一見正反対の反応にみえますが、大うつ病性障害ではこのどちらもみられます。 一方だけが表れたり交互に表れたり、同時に表れたりとそのパターンはさまざまですが、ほとんど毎日こういった症状があります。 焦りでは足踏みをしたりじっと座っていられなかったり、髪をかきむしったりといった行動がみられます。 思考制止では、考えが浮かんでこなかったりまとまらなかったり、無口になったりといったことが考えられます。 平常時では考えられない極端な思考 自分に対する無価値観や悲観的な思考、罪責感などは、健康な人でも少なからず感じることはあると思います。 しかし、大うつ病性障害にかかった場合には、こういった思考が病的なほどに激しくなります。 毎日無価値感を覚えたり必要のない罪責感、強い劣等感に苛まれます。 「死にたい」と思う気持ち 自殺願望や希死念慮といった、死にたいと思う気持ちが強くなるのも大うつ病性障害の特徴です。 自分が周りに迷惑をかけている、生きていても意味が無いといった思考からこういった考えが生まれることが多く、実際に自殺の計画を練って具体的な準備を進めるなど、自殺企図にまで発展することもあります。 睡眠障害や体の痛み 大うつ病性障害は心の病気ですが、睡眠障害や体の痛みのように体的な症状も表れます。 睡眠障害では、寝入りが悪くなる入眠障害、ちょっとした物音でも目が覚めてしまう中途覚醒、ごく短時間で目が覚めてしまう早朝覚醒、十分な睡眠を取ったはずなのに日中に眠くなってしまう過眠障害などがあります。 体の痛みは頭や肩、腰、背中、手足など全身に表れます。 また、痛みとまではいかないまでも、倦怠感やしびれ、食欲不振といった症状も表れます。 まとめ 一般的に、「うつ」という言葉からイメージされる症状や病態は、この大うつ病性障害に基づくものです。 これまでに経験したことがない人はどこか他人事のように思うかもしれませんが、若年層から中高年まで幅広くかかることのある病気であるため、油断することはできません。 気分が落ち込んだり何も考えたくなくなったり、死にたいと思うことは誰にでもあります。 しかし、もしこういった状態が長期にわたって続いているのであれば、大うつ病性障害の可能性も視野に入れ、精神科や心療内科、カウンセリングなどを利用してみましょう。 キーワードで記事を探す うつ病ライブラリー• 前向 進先生の おすすめ講義.
次のうつ病の代表的な種類と原因・特徴・症状を紹介します。 うつ病とはいっても、その原因や症状によって多様に分類されます。 一般的なうつ病のイメージは大うつ病性障害に基づくものです。 うつ病の中でも、もっとも基本的な症状になります。 若年層から中高年の方まで幅広くかかる可能性のある病気であり、油断することはできません。 ここでは、大うつ病性障害をはじめとした、うつ病の種類と特徴を紹介していきます。 photo-ac. 一般的には「大うつ病性障害」=「うつ病」という認識でよいと思います。 気分障害の一種であり、気分が憂うつになって落ち込んだり何事に対しても悲観的な思考になる病気です。 約15%の人が一生に一度はかかるとまで言われており、日本では中高年層に多く見られるようになった病気です。 大うつ病性障害は生活の中でストレスの高い事柄が引き金となって、発症することがあります。 ・双極性障害 気分が異常に高揚し普段では考えられない行動をしてしまう躁状態と、抑うつ・意欲の低下などのうつ状態を繰り返す精神障害です。 期間は数カ月から数年と差があって、どちらでもない状態の期間もあるため診断の難しい病気です。 双極性障害で怖いのは 精神障害の中で最も自殺企図が多い病気であることです。 また、ひどい躁状態のときに本人が自覚がないまま周囲に迷惑をかけることで、社会生活で支障が生じる可能性が高い病気なのです。 その他の、うつ病の種類と特徴 ・気分変調性障害 一日中気分が冴えないといった、軽度の抑うつ症状が2年以上に続くことが特徴になります。 気分変調性障害は長い間性格の問題と思われて治療をされないこともありましたが、現在では他の精神疾患と同じように治療されています。 思春期に発症すると、「難しい年ごろ」「思春期の悩み」ですまされてしまうことが圧倒的に多いです。 そのために自分が 気分変調性障害という病気にかかっているなどとは自覚していません。 長期間の症状のため、ストレスへの耐性が低下しているので不安を感じやすくなり、パニック障害などの不安障害を合併することあります。 症状を悪化させた場合には、パーソナリティ障害を合併することもあります。 このように気分変調性障害は不安定な精神状態が長く持続するという症状のために、ほかの精神障害を合併しやすく「二重うつ病」となりやすいのです。 ・非定型うつ病 うつ病で最も患者数の多いものが大うつ病性障害で、気分変調性障害を合わせてうつ病性障害と呼びます。 しかし、最近ではこの枠に収まらない、新たなうつ病が目立ってきています。 その一つが、非定型うつ病、または新型うつ病と呼ばれています。 近年都市部を中心として患者の数は増えていて、20~30代くらいの若い女性に多くみられます。 非定型うつ病は、 その症状から周りからみて「甘え」ているように見られます。 ・仮面うつ病 仮面うつ病は、うつ病の典型的な症状が乏しく、一見するとうつ病ではない印象があります。 気分の落ち込みや興味・喜びの喪失などといったうつ病でよくある精神的な症状はあまり表れず、逆に身体的症状が強く表れます。 このことから、患者さんは初めは内科などを受診することが多いのです。 そこで身体的な症状に合わせた治療が行われますが、 本質はうつ病なので身体的症状が多少軽くなってもあるため仮面うつ病事態は改善されません。 仮面うつ病は、最初に診断した 医師がうつ病に関する知識をきちんと持っているかが重要となります。 というのも身体的な症状が強いとはいえ、うつ病の典型的な気分の落ち込みや興味・喜びの喪失などの精神的な症状も多少は見られるため、最初の時点でうつ病を疑えるか?ということが大事となります。 ・退行期うつ病 60~65歳くらいの老齢期に差し掛かる頃にかかりやすいうつ病で、初老期うつ病や更年期うつ病とも呼ばれます。 特徴は、身体的な症状が強く精神的な症状が身体的な症状に置き換えられやすいため、より顕著に表れます。 更に退 行期うつ病の厄介なのは、患者が精神疾患であることを容易に認めないことが多いという点です。 ・微笑みうつ病 心に抑うつ症状を抱えていながら、人前では微笑みを絶やさないうつ病のことです。 心配させまいという一心で必死に笑顔を作る方が多く、一人になると抑うつ症状に襲われ、極端に落ち込んでしまう結果となります。 抑うつ症状や身体の不調が軽い内は気づかれにくいので、うつ病としての潜伏期間が長くなるケースも珍しくありません。 患者は壮年期の大人が多く「自分がしっかりしなくては」という思いから、病気を隠しがちです。 自分だけで解決しなくてはと思うあまり、医師の診察を受けずに悪化させてしまったり、自殺に至る事態もみられる、危険な病気です。 ・季節性情動障害 ある決まった季節になると、理由なく落ち込む抑うつ症状が毎年起こる脳機能障害の一種です。 気分が落ち込んでイライラや不安を感じたり、倦怠感を感じたり、睡眠や食欲に異常をきたしたりします。 決まった季節が過ぎれば症状が消えてしまうので、寒い(暑い)のが苦手なだけと考え、気づくのが非常に難しい病気なのです。 ・婚前うつ病(マリッジブルー) マリッジブルーとは、結婚することで起きる変化に対する不安や恐怖などの精神的ストレスから、不眠症・食欲不振や不安感・恐怖感など、身体的症状や精神的症状が表れることを言います。 マリッジブルーになる時期は、プロポーズを受けて1ヶ月後ぐらいから挙式の1・2ヶ月前ぐらいが比較的多いそうです。 マリッジブルーにかかるのは圧倒的に女性が多く、一般的に女性特有のものであるというイメージが強いと思います。 これは、結婚で生活環境が変わる女性が多いためです。 ・マタニティーブルー(産後うつ病) 出産後すぐから2週間後にかけて発症するものをマタニティーブルーと呼んでいます。 ホルモンバランスが乱れることによって起こりますが、10日から2週間もすれば少しずつ体の状態と気持ちが安定してきます。 とにかく、ゆっくり体を休めることが先決です。 産後うつ病とは産後2~3週間後から3カ月の間に育児ストレスから発症するケースが多い症状です。 マタニティーブルーのように時間が経っても症状が和らぐといったことはありません。 抑うつ症状がみられるため、治療が必要な病気になります。 うつ病の種類まとめ うつ病には、様々な種類があります。 この中でも季節性のものや、精神症状があまりでないものは自覚するのが難しいと思いますね。 精神症状が出ている人でも、追い詰められているから中々自分がうつ病になっていると思わないでしょうね。 おかしいな?と思ったら、早めに医師に相談しましょう!としか言えないですが・・・。 とにかく、うつ病に似ている病気はたくさんあります。 それを見分けるのには結構な経験とノウハウが必要なんで医者に行って安心しましょう!.
次の