電子機器には多数のコンデンサが使われています。 大きな静電容量が求められる用途では、アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサなどが使われてきましたが、これらは小型・低背化が困難で、リップル電流による自己発熱が大きいといった問題を抱えています。 しかし、近年、MLCCの大容量化が進んだことで、電源回路などに使用される各種電解コンデンサをMLCCで置き換えることが可能になっています。 MLCCへの置き換えは、小型・低背形状による省スペース、リップル抑制、信頼性の向上、長寿命化など、さまざまなメリットをもたらします。 ただし、ESR 等価直列抵抗 が小さいというMLCCの特長が逆効果となって、異常発振や反共振を起こすこともあり、置き換えにあたっては注意が必要です。 電子機器の主役であるLSIやICの高集積化とともに、それらに供給される電源の低電圧化が進んでいます。 また、多機能化にともなって消費電力も増大し、大電流化も進んでいます。 こうした低電圧・大電流化に対応するため、電子機器の電源では中間バスコンバータから複数の小型DC-DCコンバータ POLコンバータ をLSIやICなどの負荷の直近に配置する分散電源システムが採用されるようになりました。 POLコンバータには複数のコンデンサが外付けされます。 とりわけ平滑用の出力コンデンサには大きな静電容量が求められるため、従来はアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサが使われてきました。 しかし、 これらの電解コンデンサは小型化が困難で、回路の省スペース化の妨げとなります。 また、リップル電流による自己発熱が大きいなどの問題を抱えています。 各種コンデンサの使用上の注意点 MLCC、アルミ電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサの主な特長と注意を以下に示します。 MLCCへの置き換えにあたっては、これらのコンデンサの長所と短所とともに、使用にあたっての注意点を知っておく必要があります。 大容量のMLCCは電解コンデンサからの置き換えが可能ですが、温度やDCバイアスによる静電容量変化率が大きいという短所があることに注意が必要です。 また、ESRが低すぎることが逆効果となり、電源回路では異常発振を起こすこともあります。 MLCC タンタル 電解コンデンサ アルミ 電解コンデンサ 主な特長• 小型・低背• 高信頼性・長寿命• 低ESR 等価直列抵抗• 極性がない• 大容量• DCバイアス特性にすぐれる• 大容量• 安価 使用上の注意点• DCバイアス 直流電圧印加 や温度による静電容量変化が大きい• ESRが低い長所が、逆に電源回路では異常発振などの原因となることがある• ESRが比較的高く、リップル電流による自己発熱が大きい• 定格電圧が低い• 形状が大きい• 高温環境下での寿命が短い• ESRが高く、リップル電流による自己発熱が大きい 直流電流は一定電圧で一方向に流れる電流です。 しかし、電源回路の直流電流には、ノイズ電流をはじめ、さまざまな交流成分が重畳します。 たとえば、商用交流を整流 全波整流 して得られる直流電流には、商用交流の2倍の周期のさざ波 リップル 状の脈動電流が含まれます。 また、スイッチング方式のDC-DCコンバータでは、直流電圧にスイッチング周期の脈動電流が重畳します。 これらはリップル電流と呼ばれます。 アルミ電解コンデンサは10年の寿命 アルミ電解コンデンサは静電容量が大きく、また安価なため、電子機器に多用されていますが、寿命があるので使用にあたっては十分な注意が必要です。 アルミ電解コンデンサの寿命は、一般に10年程度といわれています。 これは電解液のドライアップ 蒸発 により、静電容量が低下することによるものです 容量抜け。 電解液の消失量は温度と関係し、「アレニウスの法則」と呼ばれる化学反応速度論にほぼ従うことが知られています。 このため、リップル電流による自己発熱が大きい条件での使用は、アルミ電解コンデンサの寿命をさらに縮めることになります。 また、電解液のドライアップはESRも上昇させます。 直流電圧にリップル電圧が重畳される場合は、リップル電圧のピーク値が、定格電圧 耐圧 を超えないように注意が必要です。 電源回路などでは、定格電圧が入力電圧の3倍程度のコンデンサが使われます。 MLCCはESRが低く、定格電圧も高いので、きわめて信頼性にすぐれているのが特長です。 ノート:POLコンバータ 降圧型DC-DCコンバータ の基本回路 図8はPOLコンバータなどとして電子機器に多用される降圧型の小型DC-DCコンバータの基本回路です。 コンバータとしての主要回路はIC化されていて、これにコンデンサやインダクタがプリント基板上で外付けされます 内蔵された製品もあります。 ICの前段にあるコンデンサを入力コンデンサ Cin 、後段にあるコンデンサを出力コンデンサ Cout といいます。 DC-DCコンバータの出力コンデンサは、電荷を蓄えて出力電圧を平滑化するとともに、交流であるリップル成分をグランド側に逃がして除去する役割を担います。 降圧型DC-DCコンバータにおける出力コンデンサの特性比較 次のような評価基板を用いて、降圧型DC-DCコンバータの出力コンデンサの出力電圧を比較してみました。 ESRは、一般アルミ電解コンデンサ>タンタル電解コンデンサ>機能性高分子アルミ電解コンデンサ>MLCCの順に大きく、自己発熱を起こすリップル電圧も、この順に大きくなっています。 機能性高分子アルミ電解コンデンサは、導電性ポリマーを電解質として低ESR化を図ったタイプで、一般アルミ電解コンデンサと比べて、リップル電圧は格段に小さくなっていますが、形状はやや大型で価格も高価です。 しかし、容量増加でリップル抑制することは基本的に困難です。 それは、容量増加とともに、時定数がアップしてしまうからです。 時定数が小さいほど、コンデンサの充放電にかかる時間が短く、時定数が大きいほど長くなります。 過剰に大きな容量の電解コンデンサを用いると、時定数もきわめて大きくなるので、短時間のスイッチングが繰り返されるDC-DCコンバータにおいて、スイッチOFFの時間内に放電が終了せず、電解コンデンサに電荷が残ってします。 結果として、十分に電圧が低下せず、電圧波形に歪みが発生して出力が不安定になってしまい、良好なリップル抑制が得られません(図14)。 図14:大容量のアルミ電解コンデンサでは波形に歪みが発生 負帰還が安定して動作するかどうか判定するグラフとしてボード線図があります。 これは横軸を周波数、縦軸を利得 ゲイン と位相とするグラフです。 そこで、位相の遅れを減少させるために、エラーアンプの周辺にコンデンサや抵抗を接続し、位相遅れをキャンセルすることで調整します。 これを位相補償といいます。 出力コンデンサに、ESRが高いアルミ電解コンデンサを使った従来の設計では問題がなかったのですが、ESRの低いMLCCでは補償不足となるため、異常発振を起こすことがあり、置き換えにあたっては注意が必要です。 MLCCはESRが低いのが特長ですが、デカップリング用途でも、これが弊害となってしまうことがあります。 たとえば、大電流・低電圧で駆動するICのデカップリング用として、複数のMLCCが並列接続されます。 コンデンサがコンデンサとして機能するのはSRF 自己共振周波数 以下の周波数帯で、SRF以上ではインダクタとして機能します。 このため、2つのMLCCのSRF 自己共振周波数 が近接していると、インダクタとコンデンサによるLC並列共振回路を形成して発振しやすくなります。 これが反共振という現象です。 反共振は強烈なインピーダンスピークを生み、その周波数においてノイズ除去効果が弱くなり、電源電圧が不安定になるため、回路の誤動作などの原因になったりします。 質問ノート:ESRコントロールMLCCは、DC-DCコンバータなどの位相補償にも使えますか? きわめて効果的に使用できます。 複雑な回路ネットワークを用いて位相補償をすると、部品点数の増加という問題が生じますが、最適ESR値に設計することで、部品点数を抑えながら、安定した動作が可能になります。 また、既存製品と同じ材料・工法で製造しているため、プリント基板の配線設計やレイアウトなどに特殊な制約がないこともメリットです。 電解コンデンサからMLCCへの置き換えガイド 電解コンデンサからMLCCへの置き換えにあたって、お客様の用途に合った最適MLCCの選び方をご説明いたします。 お客様の製品の信頼性向上にお役立てください。 特性から選定するときの注意点 高誘電率系は電圧印加による容量変化にご注意ください すぐれたコンデンサであるMLCCにも弱点があります。 MLCCは印加される電圧によって静電容量が変化してしまうのです。 印加されるのが直流電圧の場合、これをDCバイアス特性 直流電圧特性 といいます。 静電容量の変化 DCバイアス依存 は低誘電率系 種類1 ではほとんどみられませんが、高誘電率系 種類2 のMLCCにおいて表れます。 これは、高誘電率系が自発分極している強誘電体 BaTiO3など を使用していることに起因します。 したがって、 直流電圧を印加して使用する場合は、誘電体の特性や使用電圧・耐圧を考慮に入れて選択してください。 また、小型サイズのコンデンサほど、静電容量の減少が大きくなる傾向があります。 このため、容量選定にあたっても、DCバイアス特性を考慮に入れる必要があります。 TDKでは、アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサからの置き換えを実現するMLCCを豊富にラインナップしています。 また、異常発振や反共振を抑制するためにESR値を制御可能なESRコントロールMLCCも提供しています。 お客様の用途に合ったMLCCをお選びいただき、お客様の製品の信頼性向上にお役立てください。 電解コンデンサからMLCCへの置き換えガイド まとめ• MLCCは高い定格電圧、すぐれたリップル抑制、長寿命・高信頼性という特長により、民生機器から産業機器にいたるまでの広範な分野で、置き換えが進んでいます。 また、ESRがきわめて低いという特長が、逆に異常発振や反共振といった問題を起こすことがあり、置き換えにあたっては注意が必要です。 TDKでは 異常発振や反共振を抑制するためにESR値を制御可能なESRコントロールMLCCも提供しています。 TDKでは以下のような設計支援ツールをホームページ上で無償で提供しています。 回路設計やEMC対策などにお役立てください。 SEATはTDKの部品の特性を表示したり、部品の効果を確認するいくつかのシミュレーション機能を搭載したソフトウェアです。 コンデンサ、インダクタ、フェライトビーズ、コモンモードフィルタなど非常に多くの部品が収録されていますので、最適な部品を検索するツールとしてご利用ください。 TDKの電子部品の特性を回路シミュレータ上で再現するためのシミュレーションモデルです。 Sパラメータ、等価回路モデル、SPICEモデル、各種シミュレータ用ライブラリをご提供しています。 周波数特性とDCバイアス特性を考慮したDCバイアスモデルは、電源回路設計にお薦めです。
次のマザーボードやビデオカード、電源ユニット等の PC パーツには、アルミ電解コンデンサを採用している製品があります。 このような製品を使うとアルミ電解コンデンサは劣化し寿命が短くなりますが、製品を使わずに長期間放置してもアルミ電解コンデンサは劣化し寿命が短くなるのか気になります。 アルミ電解コンデンサ採用製品を故障等に備えて長期間保管しておく、アルミ電解コンデンサ採用製品が搭載されているパソコン自体を長期間使わずに保管しておく等、結果としてアルミ電解コンデンサを長期間放置してしまう人は少なくないと思います。 によると、アルミ電解コンデンサの長期間放置について以下のとおり書かれています。 ・アルミ電解コンデンサを長期間放置すると、漏れ電流が増加する傾向がある。 ・漏れ電流は、電圧を印加すると電解液の修復作用により元のレベルになる。 ・温度が高いほど漏れ電流が増加するので、直射日光の当たらない常温の場所で保管するのが望ましい。 ・長期間放置後、アルミ電解コンデンサが組み込まれた機器の場合は、30分程度エージング(慣らし運転)する。 ・通常の保存温度5〜35度かつ2年以内の放置であれば、電圧印加やエージングは不要。 劣化し寿命が短くなるとは書かれていませんが、漏れ電流が増加するそうです。 アルミ電解コンデンサ採用製品が搭載されているパソコンを2年以上放置したのであれば、30分程度エージングすると良いと考えられます。 マザーボードやビデオカード、電源ユニット等、アルミ電解コンデンサ採用 PC パーツ単体の場合は、パソコンに組み込んで30分程度エージングする方法の他に、CPU、メインメモリー、マザーボード、電源ユニットの最小構成、必要に応じて最小構成にビデオカード等を追加してエージングする方法でも良いと考えられます。 しかし、パソコンや PC パーツを長期間放置した後に使う場合、エージングすると良いと取扱説明書(マニュアル)等に書かれているのを見たことがありませんので、パソコンや PC パーツに関してはエージングする必要はないとも考えられます。 (取扱説明書を隅々まで読んではいないので見落としているかもしれない) Nichicon の資料には、アルミ電解コンデンサを使用する場合の寿命については書かれていますが、長期間放置中の寿命については書かれていません。 長期間放置する場合は劣化せず寿命は短くならないとは考えにくいので、寿命は短くなると思います。 によると、アルミ電解コンデンサを長期間放置すると漏れ電流が増加するだけでなく、寿命に影響を及ぼすとも書かれています。 長期間放置された製品は、電圧処理(注-1)を行ないますと、電解液により酸化皮膜が修復され、漏れ電流は放置前のレベルに戻りますので、電圧処理をお勧めします。 漏れ電流の増加は製品の耐電圧により異なり、一般的に定格電圧が高いほど増大する傾向にあります。 また放置期間が長くなると製品の寿命に影響を及ぼす可能性がありますので、機器の期待寿命は保管期間を考慮してご使用願います。 どれくらい寿命に影響を及ぼすのか書かれていませんが、使用する場合と比べたら寿命は短くならないと読み取れます。 には、シーケンサの保管について書かれていますが、アルミ電解コンデンサを長期間放置した場合の寿命について以下のとおり書かれています。 たとえば,常温で10年間保管すると,2. 5年程度寿命が短くなります。 高温,高湿の場所では,さらに劣化の進行が速くなります。 長期間放置の場合でも想像以上に劣化し寿命が短くなる印象を受けますが、劣化し寿命が短くなるのは確かだと思います。
次のマザーボードやビデオカード、電源ユニット等の PC パーツには、アルミ電解コンデンサを採用している製品があります。 このような製品を使うとアルミ電解コンデンサは劣化し寿命が短くなりますが、製品を使わずに長期間放置してもアルミ電解コンデンサは劣化し寿命が短くなるのか気になります。 アルミ電解コンデンサ採用製品を故障等に備えて長期間保管しておく、アルミ電解コンデンサ採用製品が搭載されているパソコン自体を長期間使わずに保管しておく等、結果としてアルミ電解コンデンサを長期間放置してしまう人は少なくないと思います。 によると、アルミ電解コンデンサの長期間放置について以下のとおり書かれています。 ・アルミ電解コンデンサを長期間放置すると、漏れ電流が増加する傾向がある。 ・漏れ電流は、電圧を印加すると電解液の修復作用により元のレベルになる。 ・温度が高いほど漏れ電流が増加するので、直射日光の当たらない常温の場所で保管するのが望ましい。 ・長期間放置後、アルミ電解コンデンサが組み込まれた機器の場合は、30分程度エージング(慣らし運転)する。 ・通常の保存温度5〜35度かつ2年以内の放置であれば、電圧印加やエージングは不要。 劣化し寿命が短くなるとは書かれていませんが、漏れ電流が増加するそうです。 アルミ電解コンデンサ採用製品が搭載されているパソコンを2年以上放置したのであれば、30分程度エージングすると良いと考えられます。 マザーボードやビデオカード、電源ユニット等、アルミ電解コンデンサ採用 PC パーツ単体の場合は、パソコンに組み込んで30分程度エージングする方法の他に、CPU、メインメモリー、マザーボード、電源ユニットの最小構成、必要に応じて最小構成にビデオカード等を追加してエージングする方法でも良いと考えられます。 しかし、パソコンや PC パーツを長期間放置した後に使う場合、エージングすると良いと取扱説明書(マニュアル)等に書かれているのを見たことがありませんので、パソコンや PC パーツに関してはエージングする必要はないとも考えられます。 (取扱説明書を隅々まで読んではいないので見落としているかもしれない) Nichicon の資料には、アルミ電解コンデンサを使用する場合の寿命については書かれていますが、長期間放置中の寿命については書かれていません。 長期間放置する場合は劣化せず寿命は短くならないとは考えにくいので、寿命は短くなると思います。 によると、アルミ電解コンデンサを長期間放置すると漏れ電流が増加するだけでなく、寿命に影響を及ぼすとも書かれています。 長期間放置された製品は、電圧処理(注-1)を行ないますと、電解液により酸化皮膜が修復され、漏れ電流は放置前のレベルに戻りますので、電圧処理をお勧めします。 漏れ電流の増加は製品の耐電圧により異なり、一般的に定格電圧が高いほど増大する傾向にあります。 また放置期間が長くなると製品の寿命に影響を及ぼす可能性がありますので、機器の期待寿命は保管期間を考慮してご使用願います。 どれくらい寿命に影響を及ぼすのか書かれていませんが、使用する場合と比べたら寿命は短くならないと読み取れます。 には、シーケンサの保管について書かれていますが、アルミ電解コンデンサを長期間放置した場合の寿命について以下のとおり書かれています。 たとえば,常温で10年間保管すると,2. 5年程度寿命が短くなります。 高温,高湿の場所では,さらに劣化の進行が速くなります。 長期間放置の場合でも想像以上に劣化し寿命が短くなる印象を受けますが、劣化し寿命が短くなるのは確かだと思います。
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