新型コロナウイルスで大きく変わる、我々の生活。 そんな中で、注目されているのがフィンランド。 コロナ発生前から「在宅勤務が3割」。 仕事より家族。 外飲みはほとんどなく、平日夜も週末も家族と一緒に過ごしている。 2020年1月に刊行された『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ社、東京都千代田区)=写真=は、こうしたフィンランド人の働き方、ライフスタイルを紹介し、図らずもコロナに対応するライフスタイルのヒントとして好評である。 著者の堀内都喜子(ときこ)さんは、学生時代にフィンランドの大学に留学。 現在は、フィンランド大使館の広報を務めている。 一般的にフィンランドのデザインや建築は、「シンプルで機能的」と表現される。 それはフィンランド人の暮らし方や働き方にも共通すると、本書は紹介する。 通勤時間は20分。 首都ヘルシンキや近郊であれば地下鉄や路面電車などの公共交通機関がある。 運動のため徒歩や自転車の人もいるが、冬が長く、そのうえ寒いので、ほとんどの人は車で通勤する。 会社に定時や朝礼はないので、思い思いの時間に出社。 ランチをササッと食べ、午後4時には帰宅。 その後は、家で趣味やスポーツ、家族と過ごし、夜はたっぷり眠る。 平均睡眠時間は7時間半以上という。 なぜそれが可能なのかといえば、働き方のシンプルさにある。 日本人は関係作りを重視して1回目は顔合わせ、その後何度も顔を合わせるということが多いが、フィンランド人にはあいさつだけの面談は不要。 「1度、会ったら、その後はメールや電話でいいです、ということになる」(本著75ページ)。 会うと時間が取られてしまうからだ。
次の今回取り上げる書籍は『』(堀内都喜子著)です。 【書籍紹介】 34歳の女性首相誕生で注目のフィンランド! ワークライフバランス世界1位! フィンランド流ゆとりのある生き方。 25倍、在宅勤務3割、夏休みは1カ月。 2018年に2年連続で幸福度1位となったフィンランドは、仕事も休みも大切にする。 ヘルシンキ市は、ヨーロッパのシリコンバレーと呼ばれる一方で、2019年にワークライフバランスで世界1位となった。 効率よく働くためにもしっかり休むフィンランド人は、仕事も、家庭も、趣味も、勉強も、なんにでも貪欲。 でも、睡眠は7時間半以上。 目次 一部抜粋 1 フィンランドはなぜ幸福度1位なのか ・2年連続で幸福度1位の理由 ・「ゆとり」に幸せを感じる ・自分らしく生きていける国 ・ヨーロッパのシリコンバレー ・「良い国ランキング」でも1位 2 フィンランドの効率のいい働き方 ・残業しないのが、できる人の証拠 ・エクササイズ休憩もある ・コーヒー休憩は法律で決まっている ・「よい会議」のための8つのルール ・必ずしも会うことを重要視しない 3 フィンランドの心地いい働き方 ・肩書は関係ない ・年齢や性別も関係ない ・ボスがいない働き方 ・歓送迎会もコーヒーで ・父親の8割が育休をとる 4 フィンランドの上手な休み方 ・お金をかけずにアウトドアを楽しむ ・土曜日はサウナの日 ・心置きなく休む工夫 ・休み明けにバリバリ働くフィンランド人 ・おすすめの休みの過ごし方 5 フィンランドのシンプルな考え方 ・世界のトレンドはフィンランドの「シス」!? ・ノキアのCEOも「シス」に言及 ・職場でも、シンプルで心地いい服を ・偏差値や学歴で判断しない ・人間関係もシンプルで心地よく ・コミュニケーションもシンプルに 6 フィンラドの貪欲な学び方 ・仕事とリンクする学び ・2人に1人は、転職の際に新たな専門や学位を得ている ・学びは、ピンチを乗り切るための最大の切り札 ・将来を見据えてAIを学ぶ人も多い 堀内 都喜子 ライター 長野県出身。 大学卒業後、日本語教師などを経てフィンランドのユヴァスキュラ大学大学院に留学。 コミュニケーションを専攻し修士号取得。 帰国後は都内のフィンランド系機械メーカーに勤務する一方、ライター、通訳としても活動。 2013年よりフィンランド大使館広報部でプロジェクトコーディネーターとして勤務。 著書『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社新書)。 『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』 ポプラ新書 翻訳作品『チャーム・オブ・アイス~フィギュアスケートの魅力』(サンマーク出版).
次のだが、一部の人がまだ仕事をしているのに15時や16時に会社を出るのは後ろめたくはないだろうか。 フィンランド人は「人は人、自分は自分。 既定の時間数を働いたら帰るのは当然」と考えていて、誰かの顔色をうかがう様子は見られない。 どちらかといえば「私もそんなふうに定時で帰りたい」と思っている人も多い。 フィンランドの友人が「大変な仕事を簡単そうにやっていたり、効率よくこなしサーっと帰るのが格好よく、できる大人の証拠」と言っていたが、まさにそういう効率のいい人が求められている。 在宅勤務は3割 フィンランドでは、週に1度以上、在宅勤務をしている人は3割になる。 職場が遠いために自宅で仕事をしている人もいれば、職場が近くともまだ小さな子どもの送り迎えの時間を考えて、週に1、2度自宅で働いている場合もある。 私の友人の1人は、結婚を機に数百キロ離れた地域に引っ越すことになったが、会社も本人も仕事の継続を望んだため、在宅に切り替えた。 今は、パソコンと電話があれば、ほとんどの仕事は問題なくできる。 社内の会議にもインターネット電話で参加している。 もう1人の友人は、週に1度だけ自宅で仕事をしている。 彼は、頻繁にレポートなど文章を書く必要があるため、家の静かな環境で集中してやりたくて上司に提案した。 さらに、まだ小さい子どもが小学校からまっすぐ帰ってきたときに、家で迎えたいと願ったことも在宅を選んだ理由の1つである。 オフィスで働くことは、同僚に気軽に相談したり、コミュニケーションを取って刺激を得たりする意味ではとても重要だが、週に1度は1人になれる今のペースがとてもいいのだそうだ。 『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)。 書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします 在宅勤務というと、勤務時間の管理ができないので難しいという声を日本で聞いたことがあるが、フィンランドでは逆にそれを管理するツールを聞いたことがない。 やらなければいけない仕事は山ほどあるし、自宅にいたらサボるとは、あまり考えていないようである。 今のような就労時間や場所に柔軟性が生まれたのは、1996年に施行された就労時間に関する法律の影響が大きい。 この法律は2020年1月に改正され、働く時間や場所が今まで以上に自由になる。 就労時間の半分は、働く時間も場所も、従業員と雇用主が相談して自由に決定することができるようになるのだ。 それによって、皆が一斉に会社に来て、一斉に帰るというよりも、一人ひとりが自分のライフスタイルにあった働き方を見つけ、多様な働き方が可能になる。 「仕事=会社で行う」という図式は崩れ、その人のライフスタイルにあった形で、最も生産性が高くなる場所と時間に行うというように変わっていっている。 さらに、人材を確保する意味でも、こういった柔軟な働き方の制度は求められている。 場所を問わず遠隔の作業も可能になれば、地方にある会社でも優秀な人材を全国から集めてくることもできるし、柔軟な働き方を認める企業は社内外の評判も高まる。
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