聴力 検査。 聴力検査

聴力検査

聴力 検査

【純音聴力検査】 音が聞こえたら、手元のボタンを押してもらう検査。 単純に「聴力検査」という場合はこの検査を指し、耳鼻科に行って耳が聞こえにくいと伝えると、必ず実施する検査です。 この検査では、聞こえが正常なのか異常なのかを診ます。 異常があった場合、異常の部位を大まかに判断することもできます。 検査は、周囲に雑音のある環境では正確な検査はできないので「防音室」で行われます。 頭にヘッドホンをかけられて、手にスイッチを持たされます。 ヘッドホンからいろいろな高さ(周波数)の音が聞こえてくるので、かすかにでも聞こえればボタンを押します。 この検査には、 気導検査と 骨導検査があって、ヘッドホンから出た音を 鼓膜を通して聞く検査は気導検査と言います。 骨導検査は、耳たぶの後ろの辺りに骨導レシーバーというものを当てて、耳の骨に直接振動を加えて聞こえを検査します。 ( でも説明しましたが、音は振動で、私たちはこの振動を伝えるしくみで音を聞いているので、鼓膜を通さなくても耳小骨に直接振動が伝われば同じように音は聞こえるのです) この純音聴力検査をする機器をオージオメータと言い、その検査結果はオージオグラムという図によって表わされます。 (オージオグラムの見方については別記事で説明します) =============== 【語音聴力検査】 これは 言葉の聞き取りが正常にできているかどうかの語音明瞭度を測定する検査で、検査には「語音弁別検査」と「語音了解閾値(語音聴取閾値)検査」の2種類があり、どちらもヘッドホンから流れてくる数字や50音を聞き取り、正答率を調べる検査です。 この検査は日常のコミュニケーション能力を測る上で重要な検査となります。 ヘッドホンから「あ」や「い」など、いろいろな50音がランダムに流れてくるので、聞こえたままを回答していく検査です。 検査には57語表と67語表があり、57語表は会話に出てくる頻度の高い50音が選ばれており、67語表は検査の簡易目的で語音を20語まで減らしたもので、57語表は8表、67語表は16表で構成されています。 開始の音量は純音気導検査の平均を参考にそれより強いレベルから開始し、正答率が100%ならば次の表では音圧を下げて測定します。 逆に正答率が100%未満であれば 音圧を上げて測定します。 状態に合わせて10~20dBほど音圧を変えて測定していきます。 難聴が伝音性の場合は音を上げて行くと正答率は100%(損失があったとしてもごく僅か)ですが、感音性難聴の場合は音を上げても100%にならないことが多く、音を大きくすることで却って聞き取りが悪くなることもあります。 この検査で得られた最も大きい正答率を語音弁別能と言いますが、 語音弁別能はその人が持っている明瞭度の上限ですから、 どれだけ補聴器で音を増幅しても、それ以上の明瞭度の改善は期待できないということになります。 この正答率と補聴器を装用した時の聞き取り能力の効果の指標は次の通りです。 80%以上の正答率だった場合は 補聴器の効果は充分見込め、静かな所では聴覚のみでも会話を理解することが可能です。 60~70%台だと日常生活等の普通の会話は理解可能ですが、 難しい話題などは正確に聞き取れない可能性があります。 40~50%台まで下がると、 日常会話でも正確に理解できないことがあるので、大切な話は筆談などを併用する必要が出てきます。 20~30%台は、 聴覚のみで会話を理解することはできないので、読話や筆談が必要になります。 20%未満は、 聴覚のみでの会話は不可能です。 以上の指標から見ると、語音明瞭度が50%以下の場合は、補聴器を装用しても 元の聴こえにはほど遠いことを覚悟しておく必要があるといえます。 日本では一桁数字を用いています。 数字のリストは「1行に6つ、6行の構成」で、1行目から2行目と移動するにつれて10dBか5dBずつ音圧が下がっていきます。 6行目まで検査を終えたら、列ごとに正答率を計算し、正答率が50%の音圧がその人の語音了解閾値となり、通常は純音聴力検査の平均聴力と同程度になるとされています。 但し、機能性難聴や高迷路性障害の場合は両検査の値に乖離が生じます。 一般の診療ではあまり行われませんが、必要に応じて実施されます。 =============== 【ティンパノメトリー】 鼓膜や中耳の疾患が疑われる時に行われる検査で、外耳道内の空気圧を変化させて 鼓膜の動きを調べます。 患者が耳閉感や音が響くなどの症状を訴える時にする検査で、中耳の中に滲出液が溜まる滲出性中耳炎や、鼓膜の萎縮、中耳内の腫瘍などの診断に有用な検査です。 検査は、外耳道の入口に耳栓(小さなスピーカーやマイクロフォンと空気を送るポンプが入っている)をして、空気圧を変えることで音がどのように鼓膜に伝わるかを測定します。 測定結果はティンパノグラム(検査をして得られる曲線のグラフ)で分析しますが、これは空気圧を送るとそれが鼓膜に当たって戻ってきますが、その戻ってきた空気圧を測定したものです。 =============== 【耳小骨筋反射検査(SR)】 音を聞いた時の耳小骨筋という筋肉の反射を調べる検査です。 耳小骨筋(鼓室の中にある耳小骨に付着している筋肉)には、 アブミ骨筋と 鼓膜骨筋の2つがあり、それぞれ 顔面神経と 三叉神経に支配されています。 耳小骨の役割は、鼓膜の振動エネルギーを大きく増幅させて内耳にある蝸牛へ伝えることですが、これに付着している筋肉は、過剰な振動から耳を守る働きもあるのです。 簡単に説明すると、90~100dB以上の大きな音が聴こえると、内耳を守るためにアブミ骨筋が収縮して耳を騒音から守ろうとします。 この反射を利用した検査が耳小骨筋反射検査です。 実際に検査で記録するのは、主にアブミ骨筋の収縮なので、 アブミ骨筋反射とも呼ばれています。 この検査は、顔面神経麻痺の障害部位の判定などにも有用です。 =============== 【耳音響放射検査(OAE)】 音が聴こえると、内耳の蝸牛の外有毛細胞から音が発生します。 これを 耳音響放射と言いますが、この音が聴こえた時に 内耳側から放射される音を利用したのが 耳音響放射検査です。 この検査は、 スピーカーから発生した音に反応して出た 蝸牛からの音をマイクで拾って、内耳機能を調べます。 この検査は乳幼児の他覚的聴力検査のひとつとして使われることもありますが、内耳より中枢に異常がある聴覚障害の場合は検出されません。 また、近年は高齢化が進み、難聴者も増加しています。 外有毛細胞の減少で起こる老人性難聴にも有用な検査です。 =============== 【脳波を利用した聴力検査】 純音聴力検査などの一般の検査は、検査を受ける人に「聴こえる」「聴こえない」を応答してもらう必要があります。 こういう検査を 自覚的聴力検査と言いますが、自覚的聴力検査は新生児や乳幼児、また重症な患者など「聴こえる」「聴こえない」の応答ができない人には検査ができません。 こういう応答不能な場合や、心因性難聴や詐聴など聴こえの実際が自己申告では分からない場合に、本人の意思表示無しで検査できる方法があり、これを 他覚的聴力検査と言います。 この検査は、クリック音を聴かせて、 脳幹の反応波形を診る検査です。 詳細な説明は省きますが、人が音を聞くと、いくつかのピークを持つ反応が、蝸牛神経から、脳幹、橋、下丘にかけて発生します。 この波形をコンピューター解析します。 患者はベッドに横になり、電極とヘッドホンを装着してじっとしているだけです。 じっとしているならば眠ってしまっても構いません。 自覚的に反応する必要がないので、新生児の聴覚スクリーニングや、身体に重篤な障害がある患者や、脳死の判定などにも応用されています。 但し、クリック音によるABRでは2000Hz以上の聴力しか推定できません。 低音域の聴力を推定するにはトーンピップによるABRが用いられますが、これも周波数特異性の問題があるため、ABRは低音域の検査の信頼性が低いというデメリットを持っています。 脳波を利用するのはABRと同じですが、この検査は低音~高音までの広い範囲の周波数の検査が可能というメリットがあるので、近年、注目されている他覚的聴力検査です。 聴力検査は、この他にもいろいろありますが、最後に子どもの難聴について少しお話したいと思います。 =============== 【子どもの難聴検査】 言葉を認識する能力は、幼少期に身につきます。 言葉の獲得には臨界期があり、子どもの時に聴くことのなかった音を大人になってから聴いても、正確に聞き取ることができません。 なので、幼少期にできるだけ多くの言葉(発音)を聞かせることはとても重要です。 一般に子どもはお母さんのお腹にいる時から音を聴いており、生まれると同時にいろいろな言葉が自然に耳に入ってきます。 言葉を認識するための脳の学習は生まれた時から始まっているのです。 ところが聴こえているのかいないのかは、見た目では分からないため、発見は遅れがちになります。 幼少期は言葉を覚える脳の下地が作られる大切な時期ですから、お子様の聴力が気になる方は早めの検査をお薦めします。 今は「 新生児聴覚スクリーニング」といって、赤ちゃんでも聴力検査を受けることが可能です。 出生直後は中耳に液体がまだ貯留していることも多いようなので1日は様子を見る必要がありますが、生後2日以降ならば 検査は可能です。 赤ちゃんの検査は、自然睡眠下か安静時に実施することが望ましいので、出産後の入院中に検査してもらうのが一番実施は容易と聞きます。 ですから難聴の心配がある方は予め病院と相談しておくとよいでしょう。 上記の「聴性脳幹反応(ABR)」や「聴性定常反応検査(ASSR)」は、新生児スクリーニングによく用いられます。 生後3ヶ月以降の子どもに適応。 この条件付けを行った後に、音だけを出して、音源の方を向くかどうかで聴力を検査。 生後6ヶ月以降の乳幼児に適応。 一般に 3歳以上の幼児に適応。 ここで紹介した検査は、代表的な検査のみです。 この他にも検査はいろいろあります。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ [難聴関連の他の記事] 聴覚障害関係の記事は、この他「からだのエッセイ」や「感想」などでも数多く取り上げています。

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Audiometry Simulator: 聴力検査シミュレータ(教育用)

聴力 検査

一般に聴力検査という場合は、この標準純音聴力検査(測定)のことをさします。 聴力検査の中では最も基本的な、そして重要な検査です。 標準純音聴力検査(測定)の目的は二つあります。 一つは聞こえの程度が正常か異常か、異常とすればどの程度の聞こえの悪さかということを検査することです。 もう一つは、聞こえの悪さがどの部位の異常によるものかを大まかに判断することです。 純音とは倍音を持たない特定の高さのみからなる基本の音です。 標準純音聴力検査(測定)とは、ヘッドホンをつけた状態でオージオメータという装置からさまざまな周波数の純音をさまざまな強さで聞いて測定する方法です。 音の高さ(周波数)ごとに音の強さ(大きさ)を変えながら聞いて、どの程度聞こえたかを測定し、聞こえる最も小さな音の大きさ(可聴閾値)を調べます。 125Hzから8000Hzまでの7つの周波数において、聞こえないレベルから段階を踏んで音を強くしていき、聞こえ始めた時点で合図をして、その値(閾値)をオージオグラムに記入します。 この際、気導聴力と骨導聴力の両方を測定します。 また、この検査は周囲の雑音を遮蔽するために防音室で行います。 日本人の年齢別聴力レベル 平均 聴力検査室や聴覚検査室ともいいます。 聴力の検査は、周囲に雑音のある環境では正確に行うことはできません。 正確な聴力検査を行うためには、防音室と呼ばれる専用の部屋で行います。 防音室は、扉を二重にしたり、壁を厚くするなどして外からの音を遮断するようにつくられています。 広さとしては、狭いものでは半畳程度からあり、1~3畳程度の広さのものが一般的です。 聴力検査の機会 聴力検査は会社等で行う健康診断や するのが一般的ですが、耳鼻科等でも行うことが可能です。 自分の聞こえ方に不安を感じた場合はもちろん、定期的に自分の聴力を調べる習慣をつけるようにしましょう。 聴力の低下は自分ではなかなか自覚しにくいので、客観的な基準を持つことは耳の健康管理をする上ではとても大切なことです。 語音聴力検査(測定) 文字通り言葉の聞き取りを検査するものです。 聴覚は、単に音を聞くということだけではなく、人と人がコミュニケーションを取る上で欠かすことのできないものです。 言葉を使ってコミュニケーションをする場合、声は聞こえても何を言っているのかが理解できないと意味がありません。 そうした点からも、言葉がどの程度聞き取れているのかということを調べることは非常に重要だといえます。 語音聴力検査(測定)では、日常会話で使われる語音、「ア」とか「イ」とかいう語音や数字が使われます。 検査語音がどの程度の音の大きさだと何%正しく聞こえるかを調べる検査です。 外耳道や、鼓膜、耳小骨などの異常による難聴(伝音性難聴)では、音さえ強ければほとんど100%ことばを聞き取ることができます。 蝸牛や、それより後の経路に異常がある場合(感音性難聴)では、ことばの聞き取りが100%にならないことがあります。 語音聴力検査(測定)には、目的によって2種類の方法があります。 読音聴取閾値(SRT)測定 1桁の数字リストを使って、聞くことのできる最小レベルを測定します。 リストは1行に数字が6つあり、6行で構成されています。 ヘッドホンをつけた状態で、「1」とか「5」といった読み上げられる1桁の数字を聞こえた通りに用紙に記載します。 リストの数字は左から右へ、1行目から6行目へという順に読み上げられます。 また、左から右に行くにつれて、音圧(音の大きさ)を10dB(または5dB)ずつ下げていきます。 6行目まで終了したら、縦の列ごとの正答率を計算します。 正答率が50%の時の音圧が語音聴取閾値となります。 通常、語音聴取閾値は純音の平均聴力と同じ程度になります。 語音弁別測定 「あ」等の単音節リストを使って、語音をどれだけ正確に聞き取れるかを測定します。 例えば、 「あ」「ぎ」等は単音節、「あさ」は2音節、「あたま」は3音節となります。 語音弁別測定に使用される単音節リストの語表には2種類あります。 1表に20語の単音節があり8表から構成されている語表と、1表に50語の単音節があり同様に8表から構成されている語表があります。 ヘッドホンをつけた状態で、読み上げられる単音節を聞こえた通りに用紙に記載します。 まずは、1表を語音が十分に聞こえる大きさで測定します。 1表の正答率が100%の場合は、1表の時よりも10dB低い音圧で2表を測定します。 1表の正答率が100%未満の場合は、1表の時よりも10dB高い音圧で2表を測定します。 表ごとに音圧を10~20dB変化させて測定します。 音を強くしていっても100%にならないことが多くありますし、場合によっては、音を強くするとかえって聞き取りが悪くなるケースもあります。 最高の正答率を語音弁別能といいます。 語音弁別能は、その人が持っている最高の明瞭度なので、補聴器を装用してもこの値が大幅に改善される訳ではありません。 日常生活の中でのコミュニケーションを考えた場合、言葉を聞き取る能力である語音弁別能は重要な指標であるということができます。 その他の聴力検査 自記聴力検査 ヘッドホンを耳に当て、器械から検査音が聞こえてきたらスイッチを押します。 押していると音が小さくなって聞こえなくなるので、スイッチを離します。 スイッチを離していると再び音が大きくなり聞こえてくるので、またスイッチを押します。 これを何度も何度も繰り返し、聞こえている間だけスイッチを押すという検査です。 これを連続音と断続音で行い、内耳の機能や聴神経の働きを調べます。 SISI検査(内耳機能検査) SISI検査は、ヘッドホンから一定の間隔で20回音を聞き、音が大きくなったことに気づいたら知らせるという検査です。 20回のうち何回気づいたかを%で表わします。 聴性脳幹反応検査(ABR) 脳波を利用した聴力検査です(ABR)。 この検査は、眠っている間に音を聞かせそれに反応する脳波をコンピュータで記録し、聴力を測定するものです。 この検査は赤ちゃん、幼小児、知能の低下があって普通の検査ができない時、および脳腫瘍による難聴の診断に極めて有用です。 また、脳波の波形を分析することで、難聴の程度、障害部位を診断することも可能です。 自らスイッチを押さなくても良いので、客観的な聴力検査ができます。 この検査は聞こえの神経路の障害部位の診断とともに、乳幼児の他覚的な聴力検査としても応用されています。 ティンパノグラム 子供に多く見られる滲出性中耳炎は、中耳腔に液体が溜まる中耳炎ですが、これを診断するにはティンパノグラムと呼ばれる検査が大変有用です。 この検査では、外耳道の入口に耳栓をして検査します。 この耳栓の中には、小さいスピーカーとマイクロフォン、それと空気の圧力を送るポンプが入っています。 ポンプによって外耳道の圧力を変え、その時、音がどのように鼓膜に伝わるかを調べる検査です。 耳音響放射検査(OAE) 最近の研究により、音の受容器である内耳から逆に音が放射されていること(耳音響放射)が解りました。 耳の中から外に向かってエコーが返ってくる現象を利用して、内耳の状態を調べる検査です。 エコーは主として有毛細胞から出ているので、この検査によって外有毛細胞の健康状態がわかります。 この検査は聞こえに関する内耳の機能を調べる検査ですが、乳幼児の他覚的な聴力検査のひとつとしても応用されています。 耳小骨筋反射検査(SR) 耳小骨筋は、鼓室の中にある耳小骨に付いている筋肉で、アブミ骨筋と鼓膜張筋の二つがあります。 鼓膜に大きな音が加わると、内耳の障害を防ぐためにそれらの筋肉は耳小骨の動きを制限しようと収縮します。 おおむね90~100dBという大きな音を聞かせると耳小骨筋が収縮し鼓膜の動きを抑えます。 実際に記録されるのは主にアブミ骨筋の収縮なので、アブミ骨筋反射とも呼ばれています。 検査を行う方の耳に耳小骨筋の一つは顔面神経に支配されているので、この検査で顔面神経の障害がおおよそどこで発生したかがわかります。 検査を行う方の耳に耳栓を入れ、反対耳にはヘッドホンをつけて検査します。 徐々に大きな音を聞いて耳小骨の収縮の様子を波形に出します。 新生児(生まれてから30日以内の赤ちゃん)の聴力検診のこと。 1,000人のうち1~2人は生まれつき聴覚に障害を持つといわれています。 生まれつき聴覚障害、難聴があると話音や声に気付きにくいため言語の発達が遅れます。 しかし、早期に難聴を発見できれば、補聴器などを用いて教育を受けることが可能になります。 先天難聴児の約半数は、難聴の家族歴、子宮内感染などにより聴覚障害を合併する危険が高い児であり、従来からこうしたケースに対しては聴性脳幹反応(ABR)などの聴覚検査を行ってきましたが、残りの半数はこのような危険因子がなく、出生時に何ら異常を示さない児であり、検査を受ける機会がないため、全新生児を対象のスクリーニングを実施しないと早期発見をすることが出来ません。 また、難聴の頻度は1,000人に1~2人と、先天性疾患より頻度が高いので、全新生児を対象に検査を行う必要があります。 近年では、正確度が高く安全で、かつ、多数の新生児に短時間で簡便に検査が実施できる検査機器が開発され、新生児聴覚スクリーニングが可能になりました。 日本では、平成17年には出生児の約60%が、聴覚スクリーニングを受けていると考えられます。 新生児聴覚スクリーニングに使用する聴覚検査は二つの方法があります。 自動聴性脳幹反応(Automated ABR)とスクリーニング用耳音響放射(OAE)で、両方とも新生児聴覚スクリーニングのために作られたものです。 聴性脳幹反応(ABR)は音に対する聴神経から脳幹の電気的反応をみるものですが、防音室で行う検査は児を眠らせて行う必要があり、また、結果の判定は熟練したものが行う必要がありました。 自動ABRはベッドサイドで、自然睡眠下で短時間に実施できますし、コンピュータに記憶させた正常児の波形と比較することによって、正常な反応が得られたかどうかを判定する機能を持っています。 35dBという、ささやき声程度の刺激音に対しての反応を見ているので、軽度の難聴から発見することが可能です。 もう一つの方法の、耳音響放射(OAE)は、音が内耳の蝸牛に到達すると、外有毛細胞が収縮、伸展し、基底板の振動を増強しますが、この振動が入力音と逆の経路を通って、音として外耳道に放射されたものが耳音響放射です。 スクリーニング用OAEは、刺激音を聞かせ、これに反応して返ってきた音が認められるかどうかを自動的に判定します。 この反応が得られた場合には、少なくとも40dB以上の聴力があるとされています。 どちらの検査も、精密検査を行う児を選ぶためのスクリーニング検査であり、聴覚障害があることを診断する検査ではありません。 「パスpass」の場合は検査による反応が得られたということであり、検査時点では正常の聴力があると考えられます。 しかし、「要再検refer」の場合は検査による反応が得られなかったので、再検査が必要です。 正常児でも何らかの理由(中耳に羊水などが残っている、耳垢があるなど)でスクリーニング検査時には反応が得られないことがあります(偽陽性)。 複数回のスクリーニング検査で「要再検refer」の場合は、反応が得られない原因を調べるために精密検査が必要です。 「要再検refer」は、直ちに聴覚障害があることを意味するものではなく、聴覚障害の診断は精密検査によって行われます。 新生児聴覚スクリーニング検査は、医師、臨床検査技師、助産師、看護師、言語聴覚士等が行い、日本耳鼻咽喉科学会が選定した全国で190施設の新生児聴覚スクリーニング後の精密診断機関で実施しています。 お店に行って実際に補聴器を試してみましょう。 聴力測定もできます。

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聴力検査の1000Hz,4000Hzとは?聞こえない場合の原因は?

聴力 検査

坂口です。 難聴で耳鼻科を受診すると、聴力検査を行います。 その結果はオージオグラム(聴力検査表)という図で見ることができます。 「病院で説明されたけど、よくわからない」という方のために、この記事ではオージオグラムの見方を説明します。 もしお手元にオージオグラムがありましたら、ご用意して読み進めて下さい。 オージオグラムとは オージオグラムとは、 オージオメーター(聴力を測定する機械)で測定した聴力を記録した図のことです。 こちらは実際に当院で治療を受けられた方のオージオグラムです。 左が発症直後、右が治療後(発症21日目)です。 治療の経過はをご覧ください。 見やすいように、作り直してみました。 まずは記号の説明から始めます。 音= 空気の振動なので、 気導聴力と呼びます。 検査ではヘッドホンをつけて測定します。 骨導聴力とは、空気を介さず骨に振動を与えて測る聴力のことです。 [ が右耳、]が左耳です。 検査では、耳の後ろの骨(乳様突起)にブルブル震える機械をつけて測定します。 骨導聴力は、鼓膜の振動をはぶくことで 音が伝わる経路のどこに問題があるのか?を特定するために測定します。 スケールアウトとは、測定不能を意味します。 先ほどの図では 「機械で出せるのは125Hz・70dBが最大だけど、聞こえなかった」「250Hz・90dBが最大だけど、聞こえなかった」ことを意味します。 音の大きさ・音の高さと生活音の関係 次に、音の大きさと高さです。 縦軸が音の大きさ(dB:デシベル)、 横軸が音の高低(Hz:ヘルツ)を表しています。 と言われても「70dB・125Hzがどんな音か?」なんてわかりませんよね。 そこで、日常生活で聞こえる音がどれくらいの大きさ・高さなのか?が一目でわかるイラストを作成しました。 例えば、日常会話の音域は30dB~60dB・500Hz~2000Hzくらいです。 ですので500Hz~2000Hzの聴力は生活の質にダイレクトに影響します。 先ほどの図を元に、気導聴力を聞こえる音域(緑)、聞こえない音域(赤)に色分けしてみました。 なお日常生活で骨導聴力を直接体験することはほぼありません。 骨伝導スピーカーを使う時くらいでしょうか。 平均聴力レベルの見方と難聴の重症度 最後に、図の下にある「平均聴力レベル」と書かれた表の見方です。 「3分法」「4分法」「6分法」とありますが、 4分法の数値を参考にするのが一般的です。 ここからは平均聴力レベルの算出方法について説明します。 世界的にはこちらの方が一般的のようです。 英語の発音は日本語に比べて高い音が多いため、4000Hzの聴力も重視する傾向にあるのでしょう。 難聴の重症度 難聴の重症度は、 4分法の数値を参考にします。 25dB~40dB:軽度難聴 小さな声や騒音下での会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚する。 会議などでの聞き取り改善目的では、補聴器の適応となることもある。 40dB~70dB:中等度難聴 普通の大きさの声の会話の利き間違いや聞き取り困難を自覚する。 補聴器の良い適応となる。 70dB~90dB:高度難聴 非常に大きい声か補聴器を用いないと会話が聞こえない。 しかし、聞こえても聞き取りには限界がある。 90dB~:重度難聴 補聴器でも聞き取れないことが多い。 人工内耳の装用が考慮される。 (日本聴覚医学会難聴対策委員会の報告より引用) これ以外にも、重症度の基準はいくつかあります。 厳密に考えるよりは「生活にどれくらい支障があるか」という自分の感覚を優先しても良いでしょう。 オージオグラムは無料でもらうことができる 「病院で聴力を測ったけど、オージオグラムは手元にない」という方へ。 聴力検査をしたらオージオグラムがもらえるはずです。 もし、もらえない時は「自分の耳の状態を把握しておきたいので、オージオグラムのコピーをもらえますか?」と言ってみましょう。

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