マウスの繁殖方法 動物施設で最も飼育数の多いマウスの繁殖方法(自然交配法)について解説します。 マウスの系統・個体によって産子数や離乳時期が異なることがあります 原則 自然交配法によるマウス繁殖の概略は、以下の通りです。 雄マウスと雌マウスをケージ内に同居させて交配させ、交配後 約20日の妊娠期間を経て子マウスが誕生する。 母マウス1匹あたり5〜10匹の子マウスが得られます(系統により差あり)。 子マウスは誕生から4週間後に離乳し、独立して飼育する事が可能。 誕生から8週間後には性的に成熟し、雄と雌を交配させて子マウスを得る事が可能。 ポイントは、交配がいつ成立したか、本当に成立したかどうか、どの親マウスから産まれたのか、を把握する事です。 そうしないと、以下のような弊害が起こります。 すでに交配済みの雌マウスを交配させても交配率が上がらない• 連続して交配に使用した雄マウスが疲れていて交配率が上がらない• 複数の雄マウス同士が雌をめぐって喧嘩し怪我をする 以下で、押さえておくべきポイントについて解説します。 交配の方法 ケージ分け• 雄マウスと雌マウスは、別々のケージで入荷され、飼育されています。 交配による次世代作製• 以下の点に留意し、雄マウスと雌マウスを同居させ交配させる。 性成熟 :マウスは、雄雌ともに8週齢をすぎると性成熟し、交配して子を産めるようになります。 性周期 :雌マウスの外陰部を観察し、外陰部が赤く腫脹している(性周期が発情前期にある)ものを選んで交配に用いると、交配率が上がります。 (外陰部の腫脹の様子については、のページの[発情前期]の写真をご参照ください)• 先住効果:雄マウスのケージに雌マウスを入れると、交配率が上がります。 個体数 :雄マウス1匹に対して、雌マウス1〜2匹。 時間 :夕方に、雄雌マウスの同居を開始させます。 翌朝、雌マウスの外陰部を観察しが確認されたら、交配が成立しています。 膣栓は正午頃には外れてしまうので、午前中に確認する。 親となる雄マウスと雌マウスの情報と、膣栓確認日を記録しておく。 膣栓が確認できた雌マウスは1ケージにまとめておく。 分娩後も1週間ほどケージ交換せず、母マウスに哺育させる。 分娩後4週間経ったら、離乳させる。 雄雌の子マウスを別ケージに分ける。 分娩後8週間経ったら、子マウスを得るために交配させる事が出来る。 読み込んでいます... 効率的な繁殖技術 動物施設では、自然交配ではなく体外受精を用いた効率的なを確立しております。 その技術を利用すると、させ体外受精をおこない、迅速に多数の子マウスを得る事が出来ます。 ご興味ある方は、へご相談ください。 注意点 遺伝子組換え生物の取り扱いは、されています。 そのため、遺伝子改変動物が施設から逃亡した場合などは、施設および研究者が処罰されます。 飼育室内であっても、マウスがケージから逃げてしまったときは施設スタッフにお知らせください。 専用の器具等を用いて捕獲し、ケージに戻せるようにご協力いたします。 cardadmi kumamoto-u.
次のずばり 「マウスの飼育状態で、実験結果が台無しに?」というタイトルであり、「マウスやラットを使った動物実験で、再現性がない場合、それは飼育環境に原因があることが多い」と書かれています。 Sara Reardon 12 February 2016 マウスで有効に思われた治療法が人にはほとんど効果がないことは知られていますが、この記事がさらに問題にしているのは、 あるマウス群で成功した治療法が、別のマウス群でうまくいかないことも多いという点です。 「マウスやラットをつかった研究は、もともと問題だらけ」とすら書かれています。 日本では、動物実験の密室性について指摘をすると、研究者の方々がよく「論文にすべて公開している」などと言いますが、私たちの知りたいことは論文には載っていないのが普通です。 この記事でも、マウスは餌や寝床、照明の小さな変化にもとても敏感な動物だが、研究者はそれらの環境条件についてほとんど報告をしていないということについて触れられています。 広いケージでオモチャがたくさんある環境で飼育するとできる腫瘍が小さかったという研究も知られていますし、この記事でケージサイズの指摘がないのが不思議ではありますが、「実験室によってマウスの飼育環境は大きく違っており、それらの環境条件がマウスの生理状態に大きく影響を及ぼすことは研究論文から明らかだ」と書かれています。 ケージどころか、もっと微妙な違いですら、実験に影響を及ぼすということでしょう。 「飼育環境が違うマウスで、大きな違いが出ることに驚く人がいます。 私にとっては、このことに驚く人が多いこと自体が、驚きなのです。 」 (ジョンズホプキンス大学の病理学者であるCory Brayton氏) この記事では、交絡因子(結果に影響を与えてしまう他の因子のこと)の例として、概日リズム(約24時間周期で変動する生理現象)の例を挙げています。 概日リズムの違いで実験は異なる結果に カルフォルニア大学の神経学者Christopher Colwell氏は、同僚と、同じ遺伝子改変マウスの系統を使って自閉症の行動研究をしていましたが、異なる結果が出てしまったとのこと。 その原因は、概日リズムの研究をしていた同氏は日中でもマウスを暗闇で飼育してマウスの体内時計を操作し、夜行性動物のマウスが昼間でも敏感になるようにしていたのに対して、同僚はそんなことはしていなかったというところにありました。 マウスの概日リズムを乱すような飼育をしてしまうと、行動学の実験に違った結果を与えてしまうわけです。 同氏は、「人間だって真夜中にテストされれば、社会的、認知的なテスト結果は悪くなってしまうだろう」とも言っているとのことですが、同僚と同じ試験をしていて気が付いたからよかったようなものの、間違った条件に研究者自身が気が付かないまま論文となって公表されているものも数多くあるのではないかと思わせるエピソードです。 食べ物で体は変わる また、日本の学会でも飼料メーカーの方から聞いたことがありますが、マウスに与える栄養分は実験成功のカギであるにもかかわらず、マウスの餌に無関心な研究者は多いという話も出てきます。 餌の影響として挙げられているものを箇条書きにすると以下の通りですが、驚きの内容も含まれています。 マウスの餌には、女性ホルモンや内分泌かく乱化学物質が含まれているものがあり、いくつかの病気、 特にガンに関する研究結果に影響が出る。 肥満の研究に使われる高脂肪、高糖分の餌は腐りやすく、そうなると、マウスは食べるのをやめるので、逆に痩せてしまうことがあるが、研究者がそれに気づかない場合がある。 餌によってマウスの腸内微生物も変わる。 マウスの腸内細菌の種類は、マウスの販売業者によって違う。 マウスの腸内細菌の構成が違うと、行動学テストにおいて不安レベルが異なってくる。 しかし、マウスがもつ微生物を調べようとする行動学研究者は少ない。 マウスの腸内微生物は、大気環境や、母マウスがもっていたストレス、免疫機能など、多くの因子に影響を受ける。 腸内微生物が異なれば、同じ遺伝子変異を導入したマウス系統でも、違った特質や表現型になる。 (!) また、マウスの繁殖・供給機関として有名なジャクソンラボラトリーの話が出てきますが、餌の種類や量、飲み水のpH(酸性・アルカリ性の程度)の厳しい管理を行っているにもかかわらず、所在地の異なる同社の3つの施設で、マウスの性質は異なるのだそうです。 顧客の研究機関で動物実験が標準化できるように、ジャクソンラボラトリーから特別な餌や飼育指導書を供給する試みを始めたそうですが、それで本当にクリアできる問題なのかは疑問です。 しかも、現在行っている実験結果に影響が出るとして、改良されたマウスや餌を採用したがらない研究者もいるとのことですから、保守的なのは日本だけではないようです。 研究者は時間がない 科学研究は本質的に競争でもあるので、研究者が動物実験の手法を変更することをためらいがちになることについても書かれています。 つまり、実験中に正しいタイミングで動物を扱い臨床状態やバイオマーカーを検査するであるとか、実験には老いたマウスやオス・メスの両方を使い広い範囲での情報を得るであるとか、環境要因もいろいろと含めて考えるであるとか、いろいろ含めれば含めるほど実験は長く時間がかかり、たくさん論文を書くことなどできなくなるだろう、というわけです。 この問題に対する米国国立衛生研究所(NIH)の対策は、「ある療法が臨床試験へと入る前には動物実験を繰り返すことを求める機関もあるが、NIHは広くは求めない」という形をとってきているとのこと。 動物実験を無駄に繰り返すことより人のデータをとることこそ重要だと考え方が変わってきていることを感じます。 一方、NIHは2014年にメスのマウスを含めることを求め、コストを問題にする研究者には補助金を与えることにしたとのことですが、メス以外の交絡因子に関しては、まだこのような例はないそうです。 Natureは動物実験を否定しているわけではありませんから、マウスの系統や育てられた環境条件などの交絡因子を知ることにも意義を認めているようですが、やはりどこまでそのように知見をつきつめていっても、動物実験そのものの欠陥として問題は残るようにしか感じられません。 しかも、「交絡因子は、それほど注目されていないのが現状です」と締めくくられていますから、研究者は今現在も問題に気づかずに論文を公表し続けているということになります。 「マウスで成功したから人間でも治療法につながる可能性がある」などといった甘言を弄する報道には、もっともっと厳しい視線を投げかける必要があるでしょう。
次の抄録 動物の過密飼育 crowding は,心理社会的なストレッサーとされているが,従来の方法は飼育面積を一定にし,個体数のみを変化させているため,個体数の増加と1匹あたりの占有スペースの狭少化という2つの要因が複合されたものであるといえる。 そこで本研究ではケージ内の個体数とケージのサイズの両方を変化させるという方法をとり,免疫能に及ぼす影響を追求した。 またケージ内の動物の構成メンバーの変化が及ぼす影響についても検討を加えた。 実験1ではマウスをまずケージあたり4匹ずつに分けて14日間馴化飼育し,その後ケージあたり4匹 Control群 ,小スペースあたり4匹 Crowding-I群 ,ケージあたり16匹 Crowding-II群 の計3群に無作為に分け7日間飼育を行った。 結果は以下の通りであった。 1 体重に群間で有意差は認められなかった。 2 総白血球数に有意差は認められなかったが,Crowding-II群にリンパ球百分率の有意な低値,そして好中球百分率および絶対数の有意な高値が認められ,ストレッサーの継続負荷による白血球構成比の変動が示唆された。 3 好中球NBT還元能ではCrowding-II群に低値を示す傾向が観察され,細菌貪食能ではCrowding-II群に有意な低値が認められた。 一方Crowding-I群では,NBT還元能,貪食能ともにCrowding-II群ほどの低下は認められなかったが,いずれもControl群とCrowding-II群の中間の値を示す傾向がみられた。 これらの結果から,個体数の増加によるマウス相互間の心理社会的要因の複雑化がストレッサーとして重要な意味をもつことが示唆された。 実験2ではマウスをまずケージあたり5匹ずつに分けて14日間馴化飼育し,その後ケージあたり5匹 Control群 ,小スペースあたり5匹 Crowding- 1 群 ,ケージあたり20匹 Crowding- 2 群 の3群に分けたが,Control群とCrowding- 1 群はケージ内のマウスの数と構成メンバーは馴化飼育と同一にし,ケージへの移動のみを行った。 群分け後2日目に抗原としてSRBCを腹腔投与し,7日間飼育を行った。 結果は以下の通りであった。 1 体重にはいずれの時期も有意差は認められなかった。 2 特異免疫反応として測定したPFCおよび抗SRBC抗体価は,群間に有意差は認められなかった。 なおマウスの産生した抗体はIgMであると考えられた。 3 血漿中のIgM濃度に有意差は認められなかったが,Crowding- 1 群が高値を示した。 またIgG濃度では,Crowding- 1 群に有意な高値が認められた。 4 好中球NBT還元能は,エンドトキシン刺激時では有意差は認められなかったがCrowding- 2 群が低値を示し,細菌刺激時ではCrowding- 2 群に有意な低値が認められた。 また好中球の細菌貪食能においてもCrowding- 2 群に有意な低値が認められた。 一方Crowding- 1 群はControl群に比べて,有意差は認められなかったがいずれも高値を示した。 このように,マウスの構成メンバーを変えず飼育面積の狭少化のみを施して過密にした場合は,同様にマウスの構成メンバーを変えなかった対照群に比べ,免疫能が亢進する傾向が観察された。 一方ケージ内の個体数を増やして過密にした場合は,条件設定は実験1とは異なるが,好中球機能の顕著な低下が認められた。 本研究は7日間という短期間のストレス負荷の結果であり,今後より綿密な実験デザインを設定し長期間の検討を行いたいと考えている。
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