外部の弁護士などが構成する特別調査チームが経緯の報告書をまとめた。 今回の問題に絡んで金融庁は野村HDと野村証券に対し、金融商品取引法に基づく業務改善命令を出す方針だ。 報告書によると東証が進める市場区分の再編について、有識者懇談会のメンバーだったの研究員が3月5日に野村証券のストラテジストに、時価総額基準に関する議論の進捗や自身の見方などを伝達。 ストラテジストが日本株の営業担当者などにこの内容を教え、そのうち3人が33の機関投資家らに「特別な情報」として提供していた。 調査委は「明確な法令違反があったわけではない」としつつ、情報の管理のあり方や問題を組織として防げなかったことについて「市場のゲートキーパーとしての役割を果たすという意識がいまだ全社員に徹底されていない」と指摘した。 報告書がまとまったことを受け、野村ホールディングスはこの日開いた取締役会で社内処分を発表した。 森田敏夫共同グループ最高執行責任者(COO)も月額報酬の2割を3カ月間減額するなど、ホールディングスと野村証券を合わせて7人の報酬を減らす。 また、関係した社員や上長は別途、社内規定に基づいて処分したとしている。 再発防止については、不祥事の舞台となった「グローバル・マーケッツ営業二部」を廃止し、企業分析などを担当する調査部門と、投資家からの注文執行の機能を分離する。 調査部門は投資家への情報提供のみに注力し、執行部隊は最良執行のための技術開発などに徹することで同様の事態が起こらないようにした。 コンプライアンスの研修なども徹底する。 もっとも、これで解決するほど問題は簡単ではない。 野村証券は2012年に自社が主幹事を務める企業の公募増資に関する情報を投資家に漏らし、金融庁から金融商品取引法に基づく業務改善命令を受けている。 そのときも再発防止を約束したが、似た構図で再び問題を起こしてしまった。 永井CEOは「全社員に対するコンプライアンス意識の徹底に尽きる」と繰り返した。 今回の問題を受け、社債の引受証券会社を変更する動きが出始めている。 は月内に発行条件を決める30年債と40年債について、野村証券を主幹事証券から除外した。 6月に社債発行を予定するホンダファイナンスや東京地下鉄、は、野村証券を主幹事証券から外す可能性も含めて検討を始めた。 野村HDは前期に1000億円を超える最終赤字を計上し、海外事業の縮小や国内店舗の統廃合などリストラに着手している。 そこに不祥事による行政処分が重なる見込みで、現場の士気は下がっている。 かつて国内で圧倒的な存在感を放った最大手証券だが、当面は信頼回復に専念することになる。
次の永井浩二 61.7% 6月24日の株主総会での取締役選任議案の採決で際だったのは、会長の古賀氏とCEOの永井氏の選任への賛成率の低さだった。 野村では3月に情報漏洩問題が表面化。 東証での市場改革に関する有識者懇談会の議論の内容が懇談会のメンバーだった野村総合研究所のフェローから野村証券に漏れ、営業担当者が機関投資家に伝えていた。 金融庁は5月に業務改善命令を出し、株価は一時、年初来安値をつけた。 株主からは「永井降ろし」の声が噴出。 海外機関投資家に絶大な影響力を持つ投資助言会社2社は古賀氏や永井氏の再任への反対を表明した。 経営陣の責任や取締役会議長でもある古賀氏が指名・報酬委員会のトップを兼務していることを問題視したのだ。 野村は総会6日前に両委員会の委員長から古賀氏を外し、自社株買いなどの株価対策も発表。 なんとか株主総会を乗り切った。 「指名・報酬委員会の人事を見直さなければ、古賀さんも永井さんも危なかったのではないか」と大手証券関係者は話す。
次の責任が認められる従業員や役員に対する責任追及や処分としては、刑事責任の追及(告訴)、民事責任の追及(損害賠償請求)、役員に対する減俸・降格、従業員に対する懲戒処分が考えられます。 民事責任については損害賠償額が数百億円に及ぶ場合があるほか、刑事責任においても業務上過失致死罪などの刑が科される場合があります。 はじめに 近時、会計不正や品質・データ偽装などの企業不祥事が相次いでいますが、当該企業等の信用が失墜することで、補償金や賠償金等の経済的損失にとどまらず顧客の流出をはじめ企業の存続に対してきわめて甚大なダメージを受ける例も数多く見られます。 他方で、企業だけではなく、当該企業の取締役等の役員についても、刑事責任を問われるケースや、株主代表訴訟等によってきわめて多額の賠償責任を負うケースも見受けられます。 企業としては、不正を行った役職員および不正に責任のある役員に対し、刑事責任や損害賠償請求その他の民事責任を追及する必要がある場合も出てきます。 以下、不正に関与、または不祥事に責任のある役職員に対する責任追及と処分のポイントについて解説します。 また、危機管理・リスク予防のための内部通報制度の実務対応については、以下も参照してください。 「 」• 「 」• 「 」• 「 」 役員が不正・不祥事の責任を問われるケース 取締役は、会社に対して善管注意義務を負っています(会社法330条・民法644条)。 取締役がその任務を怠ったときは、会社に対してこれによって生じた損害について賠償する義務が生じることがあります(会社法423条1項)。 企業において不正・不祥事が発生した場合に取締役が責任を問われるケースは、以下のとおりです。 役員が不正に直接関与しているケース まず、役員が、意図的に不正・不祥事に関与していた場合には、 当該役員は会社に対する善管注意義務に違反したことを理由に損害賠償等の責任を負うことになります。 役員が不正に直接関与していないケース また、役員自らが、不正・不祥事に直接関与していなかった場合であっても、以下の場合に責任が認められることがあります。 不正行為に関し、監視・監督を怠っていた場合( 監視・監督義務違反)• 内部統制システムの構築を怠っていた場合( 内部統制システム構築義務違反またはその監視義務違反)• (1)不正行為に関し、監視・監督を怠った場合の責任(監視・監督義務違反) 取締役は、担当業務に関して従業員を監督すべき義務を負うほか、担当業務以外についても他の役員の職務執行を監視する義務があるとされています。 他方、取締役会非設置会社の場合、原則として、取締役は各自が業務を執行しますが、他の取締役の業務執行を監視・監督する義務も負っているとされています。 監視義務や監督義務に違反した場合については、その役員が不正・不祥事を認識していたか、あるいは認識可能性があった場合に責任が問われることになります( ・民集27巻5号655頁)。 【東京地裁平成11年3月4日判決・判タ1017号215頁】 架空・水増しの発注を行って総額約6,000万円の裏金を作っていたことが発覚し税務当局より追徴課税されたことについて、代表取締役に業務監視を行うべき注意義務の懈怠があったとして提起された株主代表訴訟• 取締役が会社に対して負うこれらの善管注意義務または忠実義務として、従業員の違法・不当な行為を発見し、あるいはこれを未然に防止することなど従業員に対する指導監督についての注意義務も含まれる• 取締役が従業員の業務執行について負う指導監督義務の懈怠の有無については、当該会社の業務の形態、内容及び規模、従業員の数、従業員の職務執行に対する指導監督体制などの諸事情を総合して判断するのが相当である 取締役が、不正・不祥事が行われることを知り得べき状況にあるにもかかわらず(認識可能性)、何ら対策をとらずに監視監督を怠った場合に責任が認められることになります。 会社法362条4項6号が規定する「 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」を、一般に 内部統制システムと呼びます。 裁判例(大阪地裁平成12年9月20日判決・判タ1047号86頁)においても、「 健全な会社経営を行うためには、目的とする事業の種類、性質等に応じて生じる各種のリスク、例えば、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、事務リスク、システムリスク等の状況を正確に把握し、適切に制御すること、すなわちリスク管理が欠かせず、会社が営む事業の規模、特性等に応じたリスク管理体制(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する」と判示しています。 取締役会設置会社において、内部統制システムに関する事項の決定は、重要な業務執行の決定として取締役会で決議する必要があるとされています(会社法362条4項6号)。 もっとも、内部統制システムの基本方針・大綱は取締役会で決定しますが、具体的な内部統制システムを構築する義務を負うのは、業務を執行する取締役(代表取締役や業務担当取締役等)であるとされています。 そのため、不正・不祥事が発生した場合に、内部統制システム構築義務違反を問われるのは、まずは代表取締役・当該不正・不祥事に関係する業務の業務担当取締役となります。 ただ、その他の役員についても、業務を執行する取締役が内部統制システム構築義務を履行しているか否かについて監視する義務を負うとも考えられており、この考えによれば、当該監視義務に違反した場合に責任を問われる可能性があることになります。 判例によれば、「 通常想定される不正行為を防止しうる程度の管理体制を整えていたかどうか」が問題とされ、また、当該リスク管理体制(内部統制システム)が機能していたのかについても問題となります。 さらに、「 過去に同様の不正行為が存在したなど、問題となる不正行為の発生を予見すべきであったという特別な事情があったかどうか」も問題となります(最高裁平成21年7月9日判決・判時2055号147頁)。 事案と裁判所の判断の内容は、『 』 (3)不正発覚後の損害拡大回避を怠ったことの責任(損害拡大回避義務違反) 上記に加え、取締役は、善管注意義務の一内容として、企業の信用が毀損・低下してしまった場合に、これによる損害の発生を最小限度に止める義務(損害拡大回避義務)を負うとされています(大阪高裁平成18年6月9日・判タ1214号115頁参照)。 事案と裁判所の判断の内容は、『 』 を参照してください。 不正・不祥事に責任のある役員に対する責任追及の判断 刑事責任追及の判断 (1)不正行為に関する刑事責任 不正調査の結果、不正を行った役員に刑事責任があると認められる場合には、企業として刑事告訴・告発を検討することになります。 刑事告訴・告発すべきか否かは、弁護士とも相談のうえで慎重に検討することが必要となります。 その場合には、犯罪の重大性や悪質性、会社が受けた被害の大きさ、被害の回復の有無、社内の規律維持への影響、辞任・退職・懲戒等の処分の有無、取引先への影響等の各事情を総合的に考慮して判断することになるものと思われます。 他方で、不正により被害を被った被害者や監督官庁、地方公共団体から刑事告訴・告発がなされる場合もあります。 そのような場合には、対応が後手に回ってしまうリスクがあります。 外部から刑事告訴・告発がなされたケースには、以下のようなものがあります。 廃棄物を不法投棄したケースで、県による刑事告発(廃棄物処理法違反)がなされた例(その結果、企業に罰金5,000万円、担当取締役(不正行為者)について懲役2年の実刑)• 免震製品のデータ偽装がなされたケースで、当該製品の取引先関係者が、不正競争防止法違反の疑い(免震製品の性能が国の基準を満たしているとする虚偽の検査成績書を作成し、出荷先の建設会社に交付した疑い)で検察庁に対して告発をした例(代表者らは不起訴、不正が行われた会社は不正競争防止法違反罪により罰金1,000万円)• 土壌汚染に関して必要な届け出を怠って土地の開発を行ったケースで、市民から土壌汚染対策法違反で刑事告発がなされた例(後に不起訴処分)• 土壌汚染が検出された事実を告知せずに地上マンションを分譲したケースで、宅地建物取引法違反で、同社代表者らや企業について検察官送致がなされた例(後に起訴猶予処分) (2) 不正に適切に対処しなかった結果生じた事故に関する刑事責任 不正(製品の不具合等)を認識しながら、適時に開示・公表を行わなかった結果として第三者に致死傷の結果が生じたような場合には、業務上過失致死傷罪(刑法211条)の責任を問われる可能性があります。 大型トラックのハブが破損し脱落したタイヤが歩行者にぶつかり死亡事故が生じたケースで、同社において以前にも事故があり強度不足の疑いがあったハブについて運輸省に対して虚偽の報告をするなどリコール隠しを行った結果、死亡事故が生じたとして、同社の品質保証部門の責任者2名に業務上過失致死罪の刑が確定した例(禁錮1年6か月、執行猶予3年)• ガス湯沸器の製造業者につき、ガス湯沸器の修理業者等が内部配線の不正な改造を行ったことにより不完全燃焼が起こって一酸化炭素中毒による死亡事故が生じたケースにおいて、消費者に対する注意喚起を徹底しなかったことによって同事故を招いた過失があるとして、製造業者の代表取締役および品質管理担当の取締役に業務上過失致死罪の刑が確定した例(禁錮1年6か月、禁錮1年(いずれも執行猶予3年)) 民事責任追及の判断(損害賠償請求等) 刑事責任のほか、不正を行った役員に対する民事責任の追及(損害賠償請求等)についても検討することになります。 民事責任の追及は、企業が被った財産的損害を回復することを目的とするものですが、それと同時に、対外的に企業の自浄能力を示してさらなる信用の低下を防止・回復することができるほか、企業の厳正な姿勢を示すことにより再発防止に寄与するものと考えられています。 ここで注意すべきは、不正行為者に民事責任が認められる(またはその可能性が高い)にもかかわらず、合理的理由もなくその追及を行わない判断をしたことを理由に、取締役の善管注意義務違反の責任を問われる可能性があることです。 債権を回収するために訴訟提起をすることまでが必要か否かについては、取締役に一定の裁量があると考えられています。 もっとも、以下のような状況において訴訟提起をしない場合には、取締役の裁量の範囲を逸脱し責任を負う可能性があるとされています( ・判タ1228号269頁参照)。 取締役の役付(社長、副社長、専務、常務)を解職(降格)• 取締役の辞任を求める、または、株主総会決議により取締役を解任 もっとも、解任に正当な理由がない場合には、解任された取締役から、任期満了までの報酬や損害賠償の請求がなされるおそれがあります(会社法339条2項)ので、注意が必要です。 また、社外取締役、非常勤監査役や顧問の報酬を減額する例は、一般的とはまではいえませんが、たとえば社外取締役や監査役の報酬の一部を一定期間自主返上するといった例もあります。 刑事告訴・告発すべきか否かは、弁護士とも相談のうえで慎重に検討することが必要となります。 不祥事に責任のある従業員に対する処分の検討 不正を行った従業員に対しては、就業規則に従い、訓戒・戒告、減給、降格、解雇などの懲戒処分を検討することになります。 就業規則に規定がある場合であっても、 「当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」といえない場合には、懲戒処分は無効となります。 一般的に、懲戒処分の内容を決定する際には、不祥事への関与の動機・態様・程度、会社に与えた損害の程度(信用の毀損、実損害、業務への支障)、被害弁償の有無、他の従業員や社会に与える影響、反省や謝罪の程度、社内での地位・立場、過去の処分歴、過去の同種事案での処分とのバランスなどが考慮されます。 また、不祥事を起こした事実を踏まえて当該役職としての適格を欠くと評価される場合などには、当該業務上の必要性を前提とした人事権の行使として、降格処分や適正な配置配転を行うことなども考えられます。 人事処分(懲戒処分)の検討については、連載「不動産・建設業界における近時の不祥事ケースと危機管理・リスク予防の実務対応」 第8回『 』も参照してください。
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