医学小知識 アミロイドーシスとは 太田西ノ内病院 血液内科 アミロイドと呼ばれる線維蛋白が臓器へ沈着することで臨床症状を呈してくる症候群である。 大きく分けて全身性と限局性とに分けられる。 診断には生検によるアミロイド沈着の証明(Congo red染色)が必要である。 したがって臨床症状から沈着臓器を疑うことになる。 しかし、意外とこの病気の存在に気付くことは少なく診断に至らないことが多い。 ここでは全身性アミロイドーシスの代表であるAL(amyloidosis of Ig light chain type)、免疫グロブリンのL鎖に由来する、について概説する。 原発性と骨髄腫、マクログロブリン血症に伴うものがある。 アミロイドの沈着とそれによって起こり易い臨床症状としては、巨舌、消化管症状、起立性低血圧、ネフローゼ症候群、手根管症候群、末梢神経障害、骨格筋の硬結、皮膚アミロイド、心不全、肺X線異常陰影などである。 血清M蛋白、特に尿中BJP(ベンスジョーンズ蛋白)陽性で、上記所見があり他に原因疾患が見当たらないときは、アミロイドーシスを疑うべきである。 残念ながら、本疾患に対する有効性の高い治療法はなく、QOL(quality of life)は低く生命予後は不良である。 対症療法以外の試みられる治療としては、骨髄腫に準じた化学療法、DMSO(dimethylsulfoxide)の経口、経皮投与などが挙げられる。 また最近は、造血幹細胞移植の有効性も報告されている。
次の発症者のほとんどが40歳以上 と高齢者に多い疾患であり、高齢化に伴い患者数が増加していくと予想されている。 1997年以降に化学療法に変革が起き、その結果として生存率は改善している。 多発性骨髄腫を含む形質細胞性腫瘍の前段階として ()(以後MGUSと記載)がある。 また、症状がない段階として ()(以後SMMと記載)が定義されており、症状のある段階は症候性骨髄腫と呼んで区別している。 多発性骨髄腫ではMGUSからSMMを経て症候性骨髄腫に至ると考えられており、治療は症候性骨髄腫になってから始められる。 原因・発生メカニズム [ ] 多発性骨髄腫は ()で発生すると考えられている。 胚中心は免疫グロブリンの体細胞超変異およびクラススイッチが起きる場所であり(詳細は参照)、変異が起こりやすい。 多発性骨髄腫の発症の初期段階としては、14番染色体長腕(14q)を含む染色体転座と高2倍体が知られている。 14qには ()(IgH)遺伝子があり 、転座によってIgHエンハンサーの近くに移動したがん原遺伝子が恒常的に過剰発現して腫瘍化すると考えられている。 高2倍体では、奇数番染色体(3,5,7,9,11,15,19,21)のトリソミーが確認されている。 トリソミーが腫瘍化を引き起こすメカニズムとして、(染色体破砕)が関与している可能性が示唆されている。 リスク因子 [ ] 加齢、男性、黒色人種、多発性骨髄腫の家族歴は発症率を高めるリスク因子であることが確認されている。 移民の比較で有意差がみられなかったことから環境因子の影響は小さいと考えられている。 職業関連では、農業、消防士、理容師、業務中の化学薬品と農薬への曝露もリスクが高くなることが報告された。 生活因子ではタバコやアルコールは発症率と無関係だと言われているが、過体重や肥満はリスク因子だという。 放射線被曝がMGUSまたはMMの発生リスクと関係があるかどうかについても研究されている。 が被爆者を対象にしたMGUS研究によれば、被爆時の年齢20歳以上では被曝線量と有病率に関連性はみられなかったが、被爆時に若年であると被曝線量が多いほどMGUSの有病率が上昇するという結果になった。 一方、の鉱山労働者を対象にした研究では、曝露量は多発性骨髄腫の発生リスクを上昇させないという結論が出た。 また、アメリカ合衆国の原子力施設4つの作業者を対象にした研究では、45歳以上の中高年の群では50ミリ以上で多発性骨髄腫の発生率が有意に増加することが確認された。 日本赤十字センターの鈴木憲史は、日本の労災認定基準50ミリシーベルトはこの米国での研究結果を踏まえて定められたものだと推測している。 疫学 [ ] 日本とイギリスの統計データでは50歳以上で高齢になるほど罹患率が高くなることが確認されており、一般的に高齢者に多い疾患だと考えられている。 また、MGUS患者は一般集団に比べて多発性骨髄腫や関連疾患になりやすいとの報告もある。 3倍の確率だった。 また、血清M蛋白の初期濃度と種類も多発性骨髄腫への進行リスクに関係しており、型と型のM蛋白は型に比べて進行リスクが高く、血清M蛋白の初期濃度が高いほど多発性骨髄腫への進行する割合は上昇する。 腫瘍化した形質細胞が破骨細胞を活性化し骨芽細胞を抑制することで溶骨性変化が起こり,骨痛や病的骨折・高血症も伴う。 また正常造血も抑制され貧血などの血球減少も伴う。 異常産生されるグロブリン軽鎖蛋白であるベンズジョーンズ蛋白(BJP)により腎障害もおこる。 臨床像 [ ] 骨の痛み [ ] 多発性骨髄腫による骨の痛みはとにみられることが多く、運動することにより悪化することがある。 同じ部分が持続的に痛む場合は、病的を来している可能性がある。 脊椎に病変がある場合は、脊髄圧迫を引き起こす場合がある。 多発性骨髄腫では、増殖した腫瘍細胞によって が放出される。 IL-6は破骨細胞を活性化する因子 OAF:osteoclast activating factor としても知られ、IL-6によって活性化された破骨細胞が骨を吸収・破壊するため、多発性骨髄腫に侵された骨をすると、骨に穴が開いているように見える 打ち抜き像:"punched-out" resorptive lesions。 また、骨の破壊によって血中濃度が高まり、高カルシウム血症や、それに起因する様々な症状が発生する。 感染症 [ ] 多発性骨髄腫患者で発生しやすいに、肺炎・腎盂腎炎・などがある。 のとしては、・・肺炎桿菌(はいえんかんきん)などがある。 腎盂腎炎の病原体としては、大腸菌や細菌などがある。 多発性骨髄腫が発症すると、抗体の製造能力が低下する。 そのため、不全が引き起こされ、上記のような感染症のリスクが高まる。 腎障害 [ ] 急性腎不全も慢性腎不全も起こりうる。 その一般的な原因としては、高カルシウム血症や、腫瘍細胞から異常産生されるグロブリン軽鎖による腎尿細管障害がある。 その他の原因として、繰り返す腎盂腎炎、腫瘍細胞浸潤などがある。 における腫瘍細胞の浸潤と産生により、骨髄での赤血球産生が抑制されておこると言われている。 神経症状 [ ] よくある問題として、高カルシウム血症による易疲労感・脱力感・意識障害がある。 頭痛・視覚障害・網膜症は異常産生されたグロブリン蛋白によって血液の粘稠度が高まることにより生じうる(過粘稠症候群)。 腫瘍細胞が脊柱管浸潤に浸潤すると、脊髄圧迫による根性疼痛・膀胱直腸障害がおこり、さらに進行すると麻痺を生ずる。 また、アミロイド蛋白の蓄積によって末梢神経障害を生ずることもある()。 検査 [ ] 血液検査 [ ]• 蛋白分画• 免疫固定法 尿検査 [ ]• クレアチニン・クリアランス 画像 [ ]• : 骨に「打ち抜き像 punched out lesion 」と呼ばれる骨融解像がみられる。 (CT)• (MRI) 診断 [ ] 診断基準 [ ] 一般的には、6月に「国際骨髄腫作業班(International Myeloma Working Group:IMWG)」が発表した診断指針があり、世界的に広く用いられている。 その後4月に更新されている。 病期分類 [ ] 旧来は「Durie-Salmon分類」が汎用されていたが、に「IMWG」が発表した国際病期分類が広く用いられるようになった。 年齢と状態によって治療方法が選択される。 65歳未満:自家(ASCT)+高用量化学療法(HDT)による寛解導入療法 一般的に以下の通りに行われる。 65歳以上:多剤併用化学療法 旧来通りにMP療法やCP療法が用いられていたが,近年ではこれにボルテゾミブやレナリドミドなどを組み合わせた治療法が標準的である. 移植療法 [ ] 40歳未満発症の症例においては、末梢血による自家(ASCT)が標準的に行われ奏効している。 40~65歳までは初発症例において行われる。 65歳以上では行われることはほとんどない。 化学療法 [ ] 以前より以下の化学療法が行われる• MPB療法:(MEL)+(PSL)+• MPT療法:(MEL)+(PSL)+• LD療法:+• CP療法:(CPA)+(PSL)• VAD療法:((VCR)+(ADR)+(DEX)• HD-DEX療法:大量(DEX) 以下は分子標的薬を含む、近年に開発された新薬で、旧来の医薬品よりも余命向上が期待され、そのうちいくつかの医薬品は2019年現在では第一選択に使用される。 (サレド) 催奇形性の薬剤として知られ、日本でも一時承認取り消しになった経緯があるも、有効性が提唱され、再承認された。 DEXと併用しTD療法またはMP療法と併用したMPT療法としても奏効率は良好である。 再発または難治性の多発性骨髄腫に使用される。 レブラミド) サリドマイドからの誘導体として開発され、催奇形性が少ないと言われている。 サリドマイドと同じくDEXやMP療法と併用して投与されることもある。 未治療の症例に対しても施行されている。 ポマリスト) レナリドミドと同じくサリドマイドからの誘導体。 再発または難治性の多発性骨髄に用いられる。 レナリドミドおよびボルテゾミブの治療歴がある患者が対象とされる。 デキサメタゾンと併用される。 (ベルケイド) プロテアソーム阻害剤で。 未治療の症例に対しても施行されている。 (ニンラーロ) 経口プロテアソーム阻害剤。 再発または難治性の多発性骨髄腫に用いられる。 レナリドミドおよびデキサメタゾンと併用される。 (カイプロリス) プロテアソーム阻害剤で。 再発または難治性の多発性骨髄腫に用いられる。 レナリドミドおよびデキサメタゾンと併用される。 または、デキサメタゾンと併用される。 (ファリーダック) ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤。 再発または難治性の多発性骨髄腫に用いられる。 ボルテゾミブおよびデキサメタゾンと併用される。 (エムプリシティ) 抗SLAMF7モノクローナル抗体。 少なくとも 1 つの標準的な治療が無効または治療後に再発した患者を対象とする。 レナリドミドおよびデキサメタゾンと併用される。 (ダラザレックス) 抗CD38モノクローナル抗体。 再発または難治性の多発性骨髄腫に用いられる。 レナリドミドおよびデキサメタゾン、またはボルテゾミブおよびデキサメタゾンと併用される。 以下は治験中の医薬品である。 治験中であるため、エビデンスは乏しい。 ABT-199 阻害薬で、経口剤である。 現在、PhaseIIIである。 NK012 医薬品。 現在、PhaseIIである。 isatuximab 抗CD38抗体。 現在、PhaseIIIである。 (米)• selinexor XPO1阻害剤。 日本は、PhaseI。 4回以上の治療歴があり、多剤耐性の多発性骨髄腫に対して、米FDAは2019年7月3日に承認している。 bb2121 CART-T療法。 日本では、PhaseII。 TAK-573 免疫サイトカイン療法。 日本では、PhaseI。 日本では、PhaseI。 歴史 [ ] 19世紀 [ ] 多発性骨髄腫の第一例目は、 にサミュエル・ソリー Samuel Solly が記載した39歳の女性の症例だったとされている。 同じく1844年 、ロンドンの内科医 は胸背部と腰部の強い疼痛を訴える53歳の男性患者の尿に異常があることに気がついた。 彼は内科医 で法医学者の ()にこの患者の尿を送り、解析を依頼した。 、ジョーンズはこの尿の異常成分が特徴的な熱凝固性を示す様の物質であることを発見し、 ()と命名した。 この患者は3ヶ月の闘病後に死亡して病理解剖されたのだが、 ()は腰椎と肋骨を顕微鏡で観察し、血液細胞の約2倍の大きさで卵円形の細胞が存在したことをに発表した。 この細胞は後に発見されたと特徴が一致していた。 、マッキンタイヤーはこの疾患をベンス・ジョーンズ型骨髄腫として発表した。 「多発性骨髄腫」という病名が命名されたのはのことだった。 von Rustizky は病理解剖で骨髄に多発性の腫瘍を確認し、1873年の論文で「多発性骨髄腫」という病名を使用した。 20世紀 [ ] 1930年代に血清や尿タンパク質の電気泳動検査が導入、1950年代には免疫電気泳動法による単クローン性骨髄腫蛋白の同定検査が開発され、多発性骨髄腫の診断技術は著しく進歩した。 、Blokhinらはサルコリシンが多発性骨髄腫に有効だと報告した。 また、同年にが開発され、にはのダニエル・バーグセーゲル Daniel Bergsagel がメルファランを使用して多発性骨髄腫の初の治療成功例を報告した。 その後、も有効性が報告された。 にはRaymond Alexanianら がメルファラン単独よりもと併用した方が治療効果が高いことを示し、MP療法は標準的な治療法として1990年代まで使われることになった。 1970年代後半からはいくつかの多剤併用療法が考案されたが、1960年代から1990年代初頭まで治療成績はほぼ変化せず、多剤併用化学療法はMP療法より患者の生存期間を延ばすことはできなかった。 、Bart BarlogieとRaymond Alexanianら がVAD療法を報告、MP療法に耐性となった症例などに使用されるようになった。 1990年代以降 [ ] 、J・フォークマン(J Folkman)はがと共に作用して多発性骨髄腫の細胞増殖を抑制することを報告した。 これ以降、新薬の開発が増え サリドマイドと類似した構造をもつ免疫調節薬としてやが開発された。 また、阻害薬であるや阻害薬であるなども開発された。 日本における多発性骨髄腫 [ ] MP療法は標準的な治療法として1990年代まで使われていた が、日本ではメルファランが入手困難な時期が続いたためCP療法が行われていた。 、を代表幹事として「骨髄腫治療研究会」が発足した。 「日本骨髄腫研究会」の前身となる団体であった。 、は「造血器腫瘍診療ガイドライン」を発刊した。 2月時点で、日本では分子標的薬のうち、 、、、が承認されている。 また、同年には多発性骨髄腫では初となるも承認された。 類縁疾患 [ ] 原発性マクログロブリン血症 [ ] IgM型免疫抗体産生細胞であるIgM産生B細胞が性に増殖する。 病態は、IgMの増加によって血液の粘りが強くなる過粘稠症候群を起こす。 症状は、過粘稠症候群による、等がある。 検査は、血液検査ではIgMが異常高値を示す。 治療は、腫瘍細胞に対してMP療法、CP療法、フルダラビンなどのを行い、過粘稠症候群に対して血漿交換療法を行う。 血漿交換療法は、血液のうち細胞成分を除いた液体部分の成分を交換する治療で、大量のIgMを取り除くことで粘度を正常に戻して症状を防ぐ。 MGUS [ ] MGUS(エムガス:Monoclonal gammopathy of undetermined significance)は、かつては良性単クローン性ガンマグロブリン血症と呼ばれた疾患である。 多発性骨髄腫やに移行する場合もある。 骨病変、高カルシウム血症など多発性骨髄腫に特有な症状は認められない。 BJPを認める症例も極めて稀である。 厳重な経過観察が必要である。 全身性アミロイドーシス [ ] (amyloidosis)とはアミロイドと呼ばれる蛋白が全身の臓器に沈着する疾患である。 原発性アミロイドーシスは(難病)に指定されており、心アミロイドーシスを合併すると予後は特に不良である。 反応性AAアミロイドーシスでは基礎疾患の治療により改善を期待できるが、他の病型では予後を変える治療法はなく、のみである。 近年、全身性 AL型 アミロイドーシスに自家が有効であると報告され、においても一部施設で行われている。 関連項目 [ ]• 脚注 [ ] 注釈 [ ]• 国立がん研究センターがん対策情報センター. 2017年9月15日閲覧。 , pp. 61-62. , p. , p. 128. , p. 129. , p. 123. , p. , p. 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The New England Journal of Medicine 310: 1353-1356. , p. , p. 153. , p. 株式会社. 2016年9月28日. 2017年9月15日閲覧。 参考文献 [ ]• 谷脇雅史「多発性骨髄腫診療の歴史,現況と将来展望」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 7-13頁。 木崎昌弘「多発性骨髄腫に対する化学療法と分子標的療法の変遷と展望」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 28-33頁。 飯田真介、飯垣淳「多発性骨髄腫に関するガイドライン概説」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 46-53頁。 鈴木憲史「我が国における多発性骨髄腫の疫学的動向」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 57-62頁。 中路重之、高橋一平、佐藤論、秋元直樹、村下公一「多発性骨髄腫の疫学:国際比較」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 63-67頁。 二見宗孔、東條有伸「分子生物学 多発性骨髄腫診療の分子生物学:概論」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 87-91頁。 花村一朗「発症機序 骨髄腫発症の分子生物学的機序;概論」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 121-125頁。 古川雄祐、菊池次郎「発症機序 Bリンパ球の分化と骨髄腫発症機序」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 126-131頁。 伊藤拓水、山本淳一、半田宏「免疫調節薬(immunomodulatory drugs: IMiDs)による抗骨髄腫効果の機序」『日本臨牀』第74巻増刊号5、2016年7月20日、 152-157頁。 島田舞、大竹皓子「」『』第36巻第9号、、2008年9月1日、 854-857頁、。 外部リンク [ ]• - 国立がん研究センター がん情報サービス• 慶應義塾大学医学部血液内科. 2017年10月9日閲覧。 小野薬品工業. 2018年3月5日閲覧。 - 新潟県立がんセンター新潟病院、2018年10月7日閲覧.
次のそうですね。 ですので、尿蛋白の原因が起立性蛋白質であるということを判定するには、 起床後すぐの早朝尿をチェックすればいいということになります。 起きてすぐならば、寝ている状態での尿を見ることができるためです。 前彎(ぜんわん)性蛋白尿 脊椎を前彎された状態(つまり下の図のように後ろに反った状態)が続いた結果、蛋白尿が出ることがあります。 これを前彎(ぜんわん)性蛋白尿と言います。 脊椎を前に突き出すとイメージしていただけると前彎の上の図がしっくりくると思います。 では次に、 病気が原因で蛋白尿となるものについてみていきましょう。 病的な尿蛋白の原因 病的な尿蛋白の原因として、大きく以下の3つに分けられます。 腎前性(じんぜんせい)• 腎性(じんせい)• 腎後性(じんごせい) それぞれについて説明します。 腎前性蛋白尿 腎前性とは腎臓よりも前の段階に原因があり、血中に異常なタンパクが増加し、それが尿中に漏れ出ることを言います。 この原因としては、• 多発性骨髄腫(が漏れ出る)• 溶血性疾患(となる)• 横紋筋融解症(となる)• 甲状腺機能亢進症• 心不全• 妊娠(生理的な状態から病的な状態まで) などが挙げられます。 腎性蛋白尿 腎性とは、腎臓そのものに原因があり、尿をろ過する糸球体の障害によりタンパクが尿中に漏れ出ることを言います。 この原因としては• 糸球体腎炎• ネフローゼ症候群• 腎硬化症• 膠原病• アミロイド腎• 妊娠中毒症• ファンコニ症候群• Lowe症候群• Wilson病• 重クロム酸・水銀・カドミウム中毒• 腎毒性薬剤 などが挙げられます。 腎後性蛋白尿 腎後性とは腎臓よりも後ろの段階に問題があるものを指します。 ろ過された尿が腎盂よりも下の尿路(尿管、膀胱、尿道)の異常によりタンパクが尿に出てしまいます。 ここの原因としては、• 尿路の炎症• 尿路の結石• 尿路の腫瘍 などが挙げられます。 上の原因でも出てきましたが、女性ならではの原因がこちらです。 女性特有の尿蛋白の原因 先ほどの病気ではない原因で陽性となってしまう尿蛋白のところでも出てきましたが、女性の場合は、 妊娠中にも尿蛋白が出ることがあります。 妊娠中は、検診時に毎回尿検査しますが、妊娠中の尿蛋白の数値を見ることで、 妊娠中毒症が隠れているか判断するためでもあるのです。 妊娠中は普段よりも尿蛋白が出やすく、母親自身の分だけでなく、胎児の分もろ過するためと言われています。 しかし、検診の度に尿蛋白が陽性となる場合は、詳しい検査をし早期に治療する必要があります。 妊娠中毒症を放置すると、 妊娠高血圧症候群や 腎臓にも負担がかかり、 流産や 胎盤早期剥離の原因ともなり、母子共に危険な状態に陥ることがあるためです。 参考文献: 最新 尿検査 その知識と病態の考え方 第2版P45〜49 今日の臨床検査 2011ー2012 P29 最新 検査のすべてP19 よくわかる検査数値の基本としくみP52・53 新版検査と数値を知る事典P181 病気がみえる腎泌尿器 P21 最後に 今回は、尿蛋白の原因についてまとめました。 今回のポイントはこちら。 尿蛋白の原因は、病気ではない原因と病気が原因の場合がある• 病気が原因でない場合の尿蛋白を、生理的蛋白尿という。 生理的蛋白尿には、機能性蛋白尿と体位性蛋白尿がある。 病的な蛋白尿は、腎前性・腎性・腎後性に分けられる。 女性の場合、妊娠中に出やすい。 妊娠中毒症にも注意が必要。 尿検査で尿蛋白が陽性になった=病気がある。 というわけではありません。 生理的な蛋白尿もありますので、再検査を行います。 この 再検査を受けることで余計な心配を軽減できることもありますし、仮に病気が見つかったとしても早期発見早期治療することにより腎臓の負担・機能の障害を抑えることができます。 ですので、尿蛋白が陽性となった場合は、まずは再検査を受けるようにしてください。
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