- 目次 -• 大腸がん ステージ4という病態は絶望的なレベルではありません 余命という言葉は残酷です。 これから先、数十年希望に満ちた人生や生活があり、それをわずか12ヶ月くらいに凝集させて生きていくという作業をしなくてはなりません。 しかしそんなことは出来る訳がありませんから、凝集よりも削除に近い作業をしなくてはなりません。 おまけに厳しいがんの治療をしながらの生活となります。 大腸がん ステージ4の5年生存率は16%です。 5年以内にこの病気で84%の人が亡くなられるということを示しています。 もちろんこれは統計的な平均値ですから、それぞれの人の病態によって異なります。 5年生存率16%ということは、6人に1人の割合でがん治療の効果が出て5年以上生存している人がいるということです。 決して絶望的なレベルではないことを知るべきです。 0ではない以上、希望の灯を自ら消してしまう必要は全くありません。 現代医学は大腸がんステージ4の病態の完治や5年生存率の向上のために極めて多くの専門家集団が日夜研究を重ねています。 高度な医療技術もどんどん進化していますから5年生存率16%もやがては20%、30%と向上していくかもしれません。 大いに期待したいものです。 大腸がん ステージ4の病態 大腸がん ステージ4という病態は大腸やリンパ節だけでなく他の臓器の肝臓や肺、腹膜などにも転移した状態のことをいいます。 大腸がんは、大腸の壁のもっと内側の粘膜で発生します(原発巣)。 この粘膜でできたがんは長い時間をかけて、やがて大腸の壁を突き破り、その外側を走っているリンパ節に転移します。 このレベルがステージ3aです。 そしてリンパ節にあるがんはリンパ液によって運ばれ次のリンパ節に転移し4か所以上に転移しているとステージ3bになります。 そしてさらに リンパ液で運ばれたがん細胞は肺や肝臓にも到達してここで増殖していきます。 これがステージ4です。 この状態になると治療は困難を極めます。 この時ほとんどの場合、医師から余命の宣告を受ける人が多くなります。 生存に赤信号が点灯するわけです。 ステージ4の生存率はステージ3とは極端に異なる ステージ3aはリンパ節への転移が3か所以下です。 5年生存率は77%と高い完治率となっています。 ステージ3bはリンパ節への転移が4か所以上です。 この状態ですとリンパ節以外への転移の可能性が疑われます。 そのため5年生存率は60%と低くなってきます。 そして次がステージ4です。 一気に5年生存率が16%に大きく下がります。 3bと4では天と地ほどの差があります。 つまり少なくともステージ3bまでの病態になるまでにがんが発見され治療に入らないと生存を脅かす極めて厳しい局面にならざるをえません。 余命宣告をされるのはこの時です。 早期発見のために年1度の大腸がん検診がいかに重要かおわかりいただけると思います。 大腸がんステージ4は延命治療が中心です 大腸がん ステージ4はリンパ節だけでなく肝臓や肺にまで転移しているため大変難しい治療となります。 余命宣告はおおよそ8ヶ月から12ヶ月と言われる患者さんが多いようですが、実際にはそれ以上長く生きられる人もたくさんいます。 このステージでの主な治療は延命治療が中心となります。 もちろん転移の状況によっては肝臓や肺に転移したがんを徹底的に除去する外科的な治療もあります。 治療には抗がん剤や放射線などの補助的な治療によってがんの進行スピードを遅らせるというものです。 カテゴリから探す•
次の大腸がんの治療方針は各種検査から病気のひろがりを判断し、進行度(ステージ)を診断して決定します。 がんと診断されると「 私はあとどれだけ生きられるのだろう」と思われるかもしれません。 この平均余命はがんであってもどの部分のがんかによって異なりますし、 同じ大腸がんであってもがんの種類やステージによって異なります。 簡単に表現すると5年生存率はその病気になった人が5年後生きている確率です。 生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。 大腸がんの5年生存率はがんの中ではやや良い数字になっていますが、病気が発見されたときのステージが進んでいれば進んでいるほど5年生存率は下がるため、早期発見が重要です。 大腸がんの種類と進行度について 大腸がんの種類 大腸がんにはいくつかの分類があります。 部位による分類 大腸がんは病気のある部位によって大きく結腸と直腸に分けられ、さらに結腸は細かく分類されます。 結腸がん• 盲腸がん• 上行結腸がん• 横行結腸がん• 下行結腸がん• S状結腸がん 直腸がん 見た目による分類 がんの見た目による分類を肉眼的分類といいます。 肉眼的分類はまず早期がんと進行がんに大きく分けられ、さらにその形によって細かく分類されます。 早期がん <隆起型>• 有茎性(Ip型)• 亜有茎性(Isp型)• 無茎性(Is型) <表面型>• 1型(腫瘤型)• 2型(潰瘍限局型)• 3型(潰瘍浸潤型)• 4型(びまん浸潤型)• 5型(分類不能型) 細胞の種類による分類 病変を顕微鏡で見たときの分類です。 大腸がんの多くは腺がんであり、腺がんはさらに細かい分類があります。 腺がん• 乳頭がん• 高分化型管状腺がん• 中分化型管状腺がん• 低分化型腺がん• 粘液がん• 印環細胞がん その他• 扁平上皮がん• 腺扁平上皮がん• その他 大腸がんの進行度(ステージ) 進行度は大腸がんの病気のひろがり具合を表します。 病変の深さ、どのリンパ節まで転移しているか、ほかの臓器に転移があるかどうかの3つを評価してステージ0から4まで分類します。 一般的に数字が大きくなるにつれ病気のひろがり具合が広いことを表しています。 大腸がんの場合は簡単に表現すると、病変が粘膜の中にとどまっていればステージ0、固有筋層までにとどまっていて リンパ節転移がない場合ステージ1、粘膜筋層よりも深いところまでひろがっているもののリンパ節転移がないものをステージ2、リンパ節転移はあるが遠隔転移はないものをステージ3、遠隔転移があればステージ4となります。 大腸がんのステージ別5年生存率 5年生存率とは 5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。 病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、大腸がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。 5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。 がん全体の5年生存率は男性で59. 1%、女性で66. 0%、全体では62. 1%でした(2006~2008年のデータ)。 大腸がんの5年生存率はどのくらいあるか 2006~2008年の大腸がんの5年生存率は男性で72. 2%、女性で69. 6%とがん全体と比較してやや良い数値でした。 ステージ別での5年生存率は ステージ1と2あわせて:96. 6% ステージ3:72. 1% ステージ4:15. 8% と報告されています。 ステージ3になるまで、つまりリンパ節転移する前に治療する事ができれば、かなり高い5年生存率が得られるということになります。 リンパ節転移をしていても遠隔転移がなければ7割近い5年生存率が得られます。 ステージ4になると5年生存率はかなり低下しますが、同じステージ4でも転移の部位によっては手術によって完治を望める場合もあり、 あくまで5年生存率は目安と考えて下さい。 ステージ4の平均余命とは 平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。 100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。 患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。 平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。 大腸がんステージ4の平均余命 大腸がんステージ4の平均余命は九州大学病院のグラフによると約20カ月です。 このデータは大腸がん以外で死亡した人も含んでいます。 ステージ4の生存率は36か月(3年)で25%まで徐々に低下しており、ざっと1カ月に2%ずつ低下するグラフとなっています。 罹患数と死亡数の推移 罹患数の推移 国立がん研究センターの報告では1985年を基準の1. 00とすると、1990年の罹患率は1. 5、2000年は2. 2、2010年は2. 8とかなりの増加傾向にあります。 将来の予測データでは2039年までの罹患数はほぼ横ばいと推測されていますが、年齢別でみると75歳以上の患者数は20年で約1. 37倍になると推測されています。 死亡数の推移 1960年に約5,000人であった大腸がんの死亡数はその後増加し1973年ごろには年間1万人、1986年には2万人、1995年には3万人、2004年には4万人、2016年には年間5万人を突破しました。 年齢調整を行い高齢化の影響を取り除いたデータでは人口10万人あたりの死亡者数は1980年で12. 8でしたが、1990年には20. 2、2003年30. 8、2016年40. 1まで増加しています。 大腸がんの末期症状とケアに関して 大腸がんの末期症状 大腸がんの末期症状としては大腸の病変が大きくなることによる 腹痛、吐き気、便秘、下痢、腹部膨満感などがあります。 また、病変が大きくなって便の通過が困難になると、腸閉塞(イレウス)の状態になり、頻回な嘔吐も見られるようになります。 さらにがん組織はとてももろいので容易に出血して、下血がみられ、貧血が進行することもあります。 お腹のあちこちにがん細胞がある場合には腹水が増えて、お腹が膨らむこともあります。 大腸がん末期のケアについて 大腸に対する処置 大腸の病変が大きくなり便が病変部位を通過できなくなった場合、腸の中に便や腸液、ガスが貯まって腸閉塞の状態になります。 食事をしなければ腸が詰まってもそのような状態にはならないのでは、と思われるかもしれませんが、全く飲んだり食べなかったりしても腸液はたまるので、腹痛や腹満感、頻回な嘔吐、ときには腸管が破裂して命にかかわる状態になる可能性もあります。 このような時には 人工肛門の手術やステント留置が行われます。 人工肛門とは腸の途中をお腹の表面に出して人工的に便の出口を作る手術で、病変よりも手前(口側)の腸で人工肛門を作れば便や腸液、ガスが体外に出されて腹痛や頻回な嘔吐といった症状は出にくくなります。 手術ではありますが、全身状態によっては局所麻酔で行うことができます。 ステント留置は腸の狭くなった部分に金属で作られた筒を挿入して中の通りを確保する方法で、こちらは大腸カメラを使って、腸の内側から治療することができますが、病変の位置によってステントが使える場所と使えない場所があります。 一旦ステントで中の通りが改善しても、病気の進行によりステントの中に病変が入り込んで再び腸閉塞になることもあります。 大腸がんの治療として手術の適応がない場合でも、大腸がんから出血したり、腸に穴が開いて寿命を縮める可能性があるときは、そのような事態を避けるために大腸の病変だけ切除することもあります。 全身に対する処置 痛みについてはほかのがんと同様に、 医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。 食欲不振や吐き気についてはその症状を和らげる薬が使われます。 栄養状態が悪いときには点滴で栄養を補うこともあります。 そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。
次の 私のように、がん患者さんを頻繁に診療する立場の医師は、「私はあとどのくらい生きられるでしょうか?」「余命は何カ月でしょうか?」と尋ねられることが数え切れないほどあります。 他の医師もおそらく同じでしょう。 理由は簡単です。 「そんなこと分かりっこないから」です。 「余命」とは、「その人があとどのくらい生きられるか」を意味する言葉です。 しかし、同じがんで、かつ進行度が似た人でも、生きられる期間はあまりにもさまざまです。 余命を正確に予想することなど到底できません。 がんの進行の速さや、薬がどのくらい効くか、患者さんの体力がどのくらいか、どんな持病があるかなどの特徴が、一人として同じ人はいないからです。 そこで「余命」を伝える場合は、「生存期間中央値」という値を便宜上使います。 例えば、過去のデータから同じ病気の人を99人集め、生きられた期間が長い順番に並べた時に、ちょうど真ん中の50番目に来る人の生きた期間が「生存期間中央値」です。 誤解してはならないのが、ある病気の生存期間中央値が3カ月であっても、「その病気を持つ人が今後生きられる期間が3カ月である可能性が最も高い」という意味ではないということです。 これは、学校の試験の成績にたとえるとよく分かります。 例えば、ある学校の中学1年生の学力テストの得点の中央値が、これまでのデータから60点だと予想されるとしましょう。 ここに、毎日まじめに勉強し、いつも成績優秀なA君と、全く勉強せずにテレビゲームばかりしているB君がいます。 この2人の成績を予想するとして、「二人とも中央値である60点を取る確率が高い」と言えるでしょうか? A君はきっと中央値より高い点数を取る可能性が高く、B君は中央値より低い点数を取る可能性が高いはずですね。 中央値とはあくまで、性質の異なる人たちを集めた時に、真ん中にくる値にすぎません。 個人がどの値に位置するかは、その個人次第、ということになります。 そして「がんの性質」と「余命」の関係は、「試験前の勉強量」と「試験の成績」の相関関係とは比べ物にならないほど複雑です。 しかし、これだけでは説明として全く不十分です。 これらの数字はあくまでステージ4の大腸がん全体の生存期間中央値で、実際には多種多様です。 肝臓に転移が1カ所あっても、肺や肝臓、おなかの中に広くがんが広がっていても「ステージ4の大腸がん」です。 また、今は肝臓に転移が1カ所でも、1カ月後は肺に転移が現れているかもしれません。 同じサイズの肝転移のあるステージ4の大腸がんでも、抗がん剤がよく効けば長く生きられますし、抗がん剤の効き目が悪ければ余命は短いかもしれません。 肝臓の転移も部位によっては手術で切除できるものもあれば、そうでないものもあります。 もしかすると、肝転移のサイズが小さくなったらその時点で手術を検討できる、というものもあるかもしれません。 がんの性質や進行のスピード、治療介入の影響で、生存期間の可能性の幅はあまりにも広いということです。 よって、患者さんから「余命」を尋ねられたら、ここに書いた全てのことを説明しなくてはなりません。 そして、ある程度の幅をもって予想していただく、ということになります。 余命を問われた医師が、上述したような回りくどい答えを返すと、「医師はきっと余命が分かっているはずなのに、ごまかされた」「あとどのくらい生きられるか正確に知らないと、家庭や仕事の調整ができ ないのに、はっきり教えてもらえなかった」と不信感を持つ人がいます。 こういう方々の中には、がんの標準治療に不信感を示し、医学的根拠のない民間医療に傾倒し、結果的に余命を縮めてしまう人もいます。 皆さんは、がんの余命宣告というものが、どうしてもこのようなあいまいな形でしか行うことができない、ということを分かっておいていただきたいと思います。
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