「 スリーピング・ビューティー」はこの項目へされています。 2011年のオーストラリア映画については「」を、堂本奈央による漫画作品については「」をご覧ください。 『 眠れる森の美女』(ねむれるもりのびじょ、: La Belle au bois dormant)は、の古い・。 では、410に分類されている。 童話集にも取り上げられ、では、『 茨姫』(いばらひめ)として類話が取り上げられている(KHM 50)。 また、の『ペンタメローネ』所収の『太陽と月とターリア』も類話として知られている。 『 眠りの森の美女』『 眠り姫』の訳題もある。 "Sleeping Beauty"(スリーピング・ビューティー)の英語題で呼ばれることもあり、同タイトルの小説も発行されている。 日本語の表題からは、文法的に、眠っているのは美女とも森ともとれるが、これはフランス語の原題も同様である。 しかし、La Belle au bois dormantは(形容詞転移)というが使われており、眠っているのは美女と考えるのが正しいとされる。 の演目や、映画としても有名である。 また日本では、によって化されている。 あらすじ [ ] 民話のため、ストーリーには様々な種類のパターンが存在するが、ここではひとまず、日本語圏では最もポピュラーなグリム版に基づいてストーリーを紹介する。 ある国に、子供に恵まれず悩んでいた王と王妃がいた。 しかし、ある時、王妃の前にが現れて、「あなたは1年以内に女の子を産む」と予告し、その予告通りに女の子が生まれた。 願いが叶って非常に喜んだ王と王妃は、国内に住む魔法使いの女達を祝宴に招待することにしたが、魔法使いの女は国内に13人いたにも関わらず、彼女達をもてなすために必要な金の皿が12枚しかなかったため、13人目の魔法使いだけは招待されなかった。 祝宴に招待された12人の魔法使い達は、それぞれ「徳」「美」「富」など魔法を用いた贈り物を王女に授けるが、11人目の魔法使いが贈り物を終えた直後、突如として13人目の魔法使いが現れ、祝宴に招待されなかったとして、「王女は15歳になると、のが指に刺さって死ぬ」というをかけて立ち去る。 王と王妃をはじめ城の人々が大騒ぎする中、まだ贈り物をしていなかった12人目の魔法使いが「この呪いを取り消すことはできないが、呪いの力を弱めることはできる」と言い、「王女様は死ぬのではなく、100年間眠り続けた後に目を覚ます」と告げた。 王女の運命を心配した王は、国民に命じて国中の紡ぎ車を焼き捨ててしまう。 王女は順調に育っていくが、15歳になった時、一人で城の中を歩いていて、城の塔の最上階で一人の老婆が紡ぎ車を使い糸を紡いでいるのを見て興味を示し、紡ぎ車に近寄った途端に錘が手の指に刺さり、王女は深い眠りに落ちる(この老婆の正体は13人目の魔法使いであったとも言われる)。 呪いは城中に波及し、王と王妃をはじめ城の人々も全て眠りに落ちるが、城の周囲のだけが急速に繁茂し、やがて城には誰も入れなくなった。 中には侵入を試みた者もいたが、のように絡み合った茨に阻まれ、全員が茨に絡まって動けなくなり落命した。 そして、長い年月が過ぎたある日、近くの国の王子がこの国を訪れ、茨の森に囲まれた城を見て、城の近くに住む老人に「あの城には何があるのか」と問いかけると、老人は「城の中には美しい王女様が眠っていると子供の頃に聞いたことがある」と答えた。 それを聞いた王子は何としても王女の姿を見てみたいと思い、どんな危険を冒してでも城に入る決意をして茨の森に近付く。 この時、城にかかっていた100年の呪いが解けて、茨はひとりでに道を開け、王子は無事に城の中に入り、眠っている王女を見付けてキスをする。 王女は目を覚まして王子を見そめ、同時に城の人々も全員目を覚まし、王女と王子はその場ですぐに結婚して幸せに暮らした。 ペロー版の相違点 [ ] 誕生の予告はない。 ここでは仙女と表され、8人登場する。 魔法をかける順番はグリムの徳・美・富…とは違い、美・徳そして富はない。 また、グリムでは12枚の金の皿であるが、ここでは7枚の金の箱入りの食器となっている。 眠りにおちた王女を悲しみ王と王妃は王女に別れを告げず城を去ってしまう。 他の者たちは妖精の魔法により眠らされてしまう。 グリムとの大きな違いは王女は王子のキスで目覚めるのではなく、100年の眠りから覚めるときがやってきていたため、自分で目を覚ます。 また、グリム版では省かれたと思われる、2人の結婚の後の話が残っている。 「王女は2人の子供をもうける。 しかし、王子の母である王妃は人食いであり、王女と子供を食べようとする。 そこを王子が助け、王妃は自分の悪行が息子にばれて気が狂い自殺してしまう」といった内容である。 バジレ版「日と月とターリア」との相違点 [ ] 「」も参照 祝福はない。 ペロー版同様、誕生の予告もない。 王女にはタリーアという名前がある。 眠りにおちた王女を悲しみ、父親は別れを告げて、この悲しみを忘れるために城を去る。 他の者たちの描写は一切ない。 その後、鷹狩りで偶然たどり着いた王が、眠る王女を見つけ、あまりの美しさに我慢出来なくなり愛の果実を摘む。 そして王国へ帰り王女のことを忘れてしまう。 王女は寝ている間に双子を出産し、麻糸がとれて目を覚ます。 思い出した王は王女に会いに行き、出産を喜ぶ。 とりあえず王国に帰った王であったが、王女のことが気にかかり、王妃はそれに気づく。 嫉妬した王妃は王の名前を装い、双子を呼び寄せ殺し、スープにして王に食べさせようとするが、子供に同情した料理人が子山羊とすりかえる。 次に王妃はタリーアを呼び寄せて火焙りで殺そうとしたが、王が助けにはいり、子供をスープにして飲ませたという話をきいて王は怒り狂い、王妃を火の中に投げ込む。 展開 [ ] バレエ [ ] 詳細は「」を参照 にによって『眠れる森の美女』( Sleeping Beauty)として、600万ドルの制作費をかけて長編アニメーション映画化され、同年に全米公開された。 日本での公開は。 ミュージカル [ ] 劇団東少によってミュージカル化される。 初演は(昭和40年)。 翌(昭和41年)にの公演で上演。 その後も全国各地で上演され続け、(昭和55年)からはでの東京定期公演が復活すると『眠れる森の美女』もレパートリーに加わる。 近年では、(平成8年)の公演で、(平成13年) - (平成14年)の公演で、(平成18年) - (平成19年)の公演で、(平成28年)の公演でが王女役を演じている。 原作との相違点としては以下が挙げられる。 グリム版では12人の魔法使い、ペロー版では7人の妖精が呼ばれたが、ミュージカルでは赤の妖精・緑の妖精・白の妖精の3人が呼ばれた(呼ばれなかった黒の妖精を含めると4人の妖精が登場する)。 もっとも呼ばれたのが妖精であるという点はペロー版に準じている。 王女の誕生と同じ日に、原作には登場しない料理番夫婦にも女の子を誕生させ、2人の成長を交錯させながら、運命に翻弄される王女と運命を切り開く料理番の娘の生き様を対比させている。 脚注 [ ].
次の「眠れる森の美女」というタイトルでも知られている「いばら姫」。 ヨーロッパの古い民話として伝えられ、多くの人が童話に取りあげているほか、さまざまな類話も存在します。 日本では、19世紀にドイツのグリム兄弟が編纂した「グリム童話」の内容がもっとも有名なので、まずはこちらのあらすじを紹介していきましょう。 とある国に、長い間子どもを授かることができずに悩んでいる王と王妃がいました。 ようやく女の子を授かったので、大喜び。 お祝いのパーティーを開くことにします。 この国には魔法使いの女が13人いましたが、お城には金の皿が12枚しか無かったため、12人だけ招待し、残りの1人には声をかけませんでした。 パーティーに出席した魔法使いたちは、「美」「徳」「富」など魔法を用いたプレゼントを王女に贈ります。 しかし、11人目の魔法使いがプレゼントを渡した直後、招待されなかった魔法使いが現れたのです。 自分だけが呼ばれなかったことに怒り、復讐として「王女が15歳になったら、紡ぎ車の針が指に刺さって死ぬ」という呪いをかけてしまいました。 城中がパニックになるなか、まだ贈り物をしていなかった12人目の魔法使いが、呪いを取り消すことはできないが弱めることはできるとし、「王女様は15歳になっても死ぬことはなく、100年間の眠りにつく」と告げます。 王女の行く末を心配した王は、国中の紡ぎ車を捨ててしまいました。 王女は順調に成長し、15歳になります。 ひとりで城の中を歩いていると、塔の最上階の部屋で、見知らぬ老婆が糸を紡いでいるところを見かけました。 不思議に思って近寄ったとたん、錘が手の指に刺さり、そのまま100年の眠りについてしまったのです。 さらにこの呪いは城中に降り注ぎ、王や王妃をはじめ城にいる全員が眠りに落ちてしまいました。 そして城の周りは茨で覆われるようになり、城には誰も入れなくなってしまったのです。 それから長い年月が経ったある日、隣国の王子がそばを通りかかります。 茨に覆われた城を見て不思議に思い、近くに住む老人に問いかけると、「城の中には美しい王女が眠っている」と言われました。 どんな王女がいるのか気になって仕方がなくなり、勇気を出して茨に近づいたその時、ちょうど100年の呪いが解けて、茨はひとりでに道を開け、王子は中に入ることができたのです。 眠っている王女にキスをすると、王女は目を覚まします。 同時に城の人々もみな目を覚まし、王子と王女は結婚して幸せに暮らしました。 17世紀に活躍したフランスの詩人、シャルル・ペロー。 彼はグリム兄弟よりも先に民間の伝承をまとめた童話集を作成したことでも有名です。 そしてこのペローの童話集にも、「いばら姫」が収録されているのです。 グリム童話版とは異なる部分を紹介しましょう。 まずペロー版では、眠っていた王女が王子のキスで目覚めるわけではなく、眠ってから100年が経って呪いの効果が切れたため自分で目を覚ましています。 また2人が結婚した後ですが、実は王子の母親が人食いの性質をもっていて、王子が留守の間になんと王女と彼女が生んだ2人の子どもを食べようとするのです。 そこへ王子が現れ、人食いの王妃は自分の行動が息子にばれてしまったことに動転し、ゲテモノが入った大きな桶の中に自ら飛び込んで死んでしまいました……。 ペローの編纂した童話は、子どもにも読みやすいように脚色を加えているものが数多くありますが、「いばら姫」に関しては、グロテスクで恐ろしい結末となっています。 「いばら姫」は本当は怖い!原作の「太陽と月とターリア」がかなりエグい 「いばら姫」の原作は、ペローが編纂したものよりももっと昔、17世紀前半にイタリアの詩人ジャンバティスタ・バジーレがまとめた説話集『ペンタメローネ』だといわれています。 そのなかの一遍、「太陽と月とターリア」という話が、「いばら姫」の原作だとされているのです。 しかしその内容は、なかなか衝撃的なもの。 あらすじをご紹介しましょう。 ある国にターリアという王女が生まれ、その誕生を祝うパーティが開かれていました。 パーティーに出席していた占い師が、「麻糸によってターリアに災いが起きる」と予言をします。 そしてその予言どおり、麻に紛れ込んでいた棘が指に刺さり、ターリアは眠りに落ちてしまうのです。 父親は悲しみに暮れ、この悲しみを忘れるために城を去ってしまいました。 それからしばらく経ったある日のこと。 ある国の王が、鷹狩りをしているうちに偶然ターリアが眠る城へと辿り着き、彼女の姿を見つけます。 そして、あまりの美しさに我慢ができなくなり、そのまま眠っている彼女を犯してしまうのです。 それでもターリアは目を覚まさなかったので、王は自国に帰ってしまいました。 ターリアは眠りながら王との子を妊娠、なんとそのまま双子を出産します。 まもなく指の棘が抜け、呪いが解けて目を覚ましました。 双子は、タイトルにもなっている「太陽」と「月」と名付けられました。 ターリアと関係をもった王は、自国から彼女の元へとやってきて、双子の誕生を喜びます。 しかしここで問題となったのが、王には妻である王妃がいるということ。 王は自国に戻った後もターリアと双子のことを気にかけていたので、王妃がその存在に気付いてしまいました。 嫉妬に狂った王妃は、王を装って「太陽」と「月」を呼び出します。 そして双子を殺してスープにしようと命令をするのですが、双子に同情した料理長が子ヤギとすり替えて事なきをえました。 次に王妃は、ターリアを呼んで火あぶりにしようとしますが、これは王にバレてしまいます。 怒った王は王妃を火の中に投げ込み、殺してしまったそうです。 ターリアが目覚めてからの展開にボリュームが割かれていることがわかります。 一般的に広まっているグリム童話では、目を覚ました王女と王子が結ばれるハッピーエンドですが、もともとは一時の感情で浮気をしてしまった王をきっかけに、まさに命がけのバトルがくり広げられるというもの。 眠っている王女を犯し、王女が眠ったまま双子を出産するというのも、かなり衝撃的です。 こんなにも複雑なストーリーでしたが、時が経つにつれて、夢があって親しみやすい、シンプルな物語に改変されていったのでしょう。 美しすぎる絵が魅力の大人が楽しめる「いばら姫」.
次の昔、子供ができなくて、毎日「ああ、子供がいればなあ」と言っていた王様とお后さまがいました。 しかしあるときお妃さまが水浴びしていると、蛙が水から陸にあがり、「あなたの望みはかなえられますよ。 1年経たないうちに娘が産まれます。 」と言いました。 蛙の言ったことが本当になり、お后さまはとても可愛い女の子を産みました。 王様は喜びを抑えられなくて、大宴会を開くことを命じました。 そして親戚や友達や知人だけでなく、やさしく子供によい運をつけるようにと賢い女の人たちも招きました。 この王国には13人の賢い女の人たちがいましたが、食事を出す金のお皿が12人分しかなかったので一人は家に残さなければなりませんでした。 宴会はとても豪華に開かれ、終わりになったとき、賢い女たちが赤ちゃんに魔法の贈り物を授けました。 一人は美徳を、別の人は美しさを、3人目は富を、等々、人がこの世で望むあらゆるものを授けていきました。 11人の賢い女が約束を言い終えたとき、突然13人目の賢い女が入ってきました。 招待されなかったので仕返ししようと思ったのです。 挨拶もしないで、誰も見もしないで、大声で「王様の娘は15歳のとき紡錘に刺され、倒れて死ぬのだ。 」と叫びました。 それから、もう一言も言わないで、向きを変えると、部屋を出て行きました。 みんながショックを受けましたが、12人目の賢い女の人は、まだ願掛けを言わないで残っていたので、前に出てきて、呪いの言葉を取り消すことはできず、和らげることだけができるので、「死ぬのではなく、王女様は100年の深い眠りに入ります。 」と言いました。 王様は愛する子供を不運から守りたくて、国中の紡錘を燃やすようにと命令を出しました。 一方で賢い女の人たちの贈り物は若い娘に対して豊かに実りました。 娘はとても美しく、慎ましく、性格がよく、賢いので、娘を見た誰でも愛さずにはいられませんでした。 娘が15歳になったちょうどその日に、王様とお后さまは家にいなくて、娘は全く一人で宮殿に残されました。 それで、あちこち歩き回り、気の向くままに部屋や寝室を覗きこんでいました。 そして最後に古い塔にきました。 狭い曲がりくねった階段を上ると、小さなドアに着きました。 錆びた鍵が錠前の中にあり、娘が鍵を回すとドアがぱっと開き、小さな部屋に紡錘をもったおばあさんがいて忙しそうに亜麻を紡いでいました。 「こんにちは、おばあさん。 そこで何をしているの?」と王様の娘は言いました。 「糸を紡いでいるんだよ。 」とおばあさんは言って、頷きました。 「それってどういうものなの?とても愉快にカタカタ回るわね。 」と娘は言って、紡錘を手に取り、自分でも糸を紡ごうとしました。 しかし、紡錘に触れた途端、魔法の宣告が果たされ、娘は紡錘で指を刺してしまいました。 そしてチクっと感じたその瞬間に、娘はそこにあったベッドに倒れこみ、深い眠りに落ちました。 そしてこの眠りは宮殿中に広がり、ちょうど家へ帰り大広間に入ってきた王様とお后さまが眠りにつき始め、宮廷全体も一緒に眠り始めました。 馬たちも馬小屋で、犬たちは中庭で、鳩たちは屋根の上で、ハエは壁にとまって、眠りに入りました。 暖炉で燃えている火でさえ、静かになり眠りました。 焼き肉はジュージューいうのをやめ、コックは、食器洗いの子が何か忘れたのでの髪を引っ張ろうとしていたのですが、手を離し、眠りに入りました。 風がやみ、お城の前の木では葉っぱ一枚も二度と動きませんでした。 しかし、お城の周りには茨の垣ができはじめ、年ごとに高くなり、とうとう城の周りを囲いこみ、上におおいかぶさりました。 それでお城の何も見えなくなり、屋根の上の旗ですらも見えませんでした。 しかし、みんなは王女様を茨姫と呼んだのですが、美しい眠っている茨姫の話は国中に行きわたり、その結果、ときどき王様の息子たちがきて、茨の垣を通り抜けて城に入ろうと試みました。 しかし、入ることはできませんでした。 というのは、イバラがまるで手があるかのように固くくっついて、若者たちはイバラに引っ掛かり二度とほどくことができないで、惨めに死んでしまったからです。 長い、長い年月のあと、また一人の王様の息子がその国にやってきて、老人がイバラの垣について話していて、「その後ろにお城があり、中に茨姫という名の素晴らしく美しい王女様が100年間ねむっているんだそうだ。 しかも、王様やお后さまも宮廷中が同じように眠っているんだとよ。 」というのを聞きました。 「これもうちのじいさんから聞いたんだが、もうたくさんの王様の息子が来て、イバラの垣を通り抜けようとしたんだけど、イバラにしっかりくっついたまま可哀そうに死んでしまったそうだよ。 」と老人は付け加えました。 すると若者は、「僕は怖くない。 美しい茨姫に会いに行くよ。 」と言いました。 やさしい老人はできるだけやめさせようとしましたが、若者は老人の言葉に耳を貸しませんでした。 しかしこの時にはちょうど100年が経って、茨姫がまた目覚める日が来ていました。 王様の息子がイバラの垣に近づくと、それは大きな美しい花々でしかなくなり、ひとりでにお互いから分かれて、王子を無傷で通させ、そのあと、垣根のように王子の後ろでまた閉じました。 宮廷の中庭で、王子は馬やぶちの猟犬が横になって眠っているのを見ました。 屋根には翼の下に頭をいれて鳩が座っていました。 家に入ると、ハエが壁にとまって眠っていました。 台所のコックは食器洗い番の子をつかまえようとまだ手を伸ばしていました。 女中は毛をむしろうとして黒いめんどりのそばに座っていました。 王子はさらに進んで行きました。 すると大広間では宮廷の全員が横になって眠っていて、王座の近くには王様とお后さまが寝ていました。 それからもっと進んでいくと、あたりは静まり返って息の音すら聞こえるくらいで、ついに塔に着き、茨姫が眠っている小さな部屋の戸を開けました。 そこに茨姫は横たわっていて、とても美しいので王子は目をそらすことができませんでした。 そしてかがみこむとキスしました。 しかし、キスした途端、茨姫は目を開け目覚めて、とても可愛らしく王子をみつめました。 それから二人は一緒に塔を降りました。 すると王様がめざめ、お后がめざめ、宮廷全体が目覚めて、とても驚いてお互いを見ました。 そして中庭の馬たちは立ち上がって体を振り、犬たちは跳びあがって尻尾を振り、屋根の鳩たちは翼の下から頭を引き抜き周りを見て、外へ飛び立ちました。 壁のハエはまた這い歩き、台所の火は燃え上がってちろちろして肉を焼きました。 焼き肉はまた回ってジュージュー音を立て始め、コックは食器洗いの子の耳を殴ったのでその子は悲鳴をあげ、女中はとりの毛をむしり終えました。 それから、王様の息子と茨姫との結婚式がとても華やかにおこなわれ、二人は死ぬまで満足して暮らしました。
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