第54話(最終話) 天下太平への道 劉平が曹丕との戦いに備えていると知って、皇后の曹節は不安でならない。 そなたの兄に会って話し合うだけだ、と劉平は安心させようとするが、節は、その前に伏寿に会うのか、と訊ねてくる。 伏寿が潜伏していることは節も知っていたようだ。 曹操に知られては困るので黙っていたことを明かす。 「お二人が会えれば、私の罪は消えます」 「だが、まだ会えぬ」劉平は決意している。 建安25年、曹丕は許都を攻めるため譙(しょう)まで南下してきた。 城門の上で劉平が待ち受けている。 「陛下は話し合いを望んでいる」城門の上から声をかける。 曹仁は、行けば殺すつもりだろう、と警戒する。 司馬懿に促され、曹丕は馬を降りる。 「予は行く。 陛下はそんな男ではない」 城壁の上に登ってきた曹丕は、曹操の思い出から話し始める。 陛下と同じ考えです。 しかし、この時代では、 2人は敵となる定めでした」 「魏王の願いをかなえるために、大軍を率いてきたのか」 「陛下、私にはそんな度量はない。 夢をかなえるためには、もっと大きな力が要る。 陛下と戦い、決着がつけば、兵力をまとめて中原を守れます」 「もし戦が膠着するようなら、 孫権と劉備に隙を突かれる。 中原で諸侯が争って、 そなたの父の努力もすべて無駄になる。 力が欲しいのは夢をかなえるためか、野心を満たすためか」 「分かりませぬ。 私は父の寵愛と信頼を求めてきました。 自分が父より強いと示したいだけ。 父ができなかったことをやる。 この国を愛していても、勝者にならねば、 国を救うことはできませぬ」 「人を殺す救い。 野心まみれの理想。 そんなものは、ありはしない。 絶対に朕に勝てるか?」 「分かりませぬ。 だが、死んでも負けられぬ。 陛下、申し訳ない。 戦うしかありませぬ」 「そなたも、この数年の中原の平穏を見たであろう」 「恥ずかしながら、 この数年は各地で戦っていました。 目に入るのは、血と殺し合いだけでした」 劉平はため息をつき、一気に吐き出す。 「朕はそなたとは戦わぬ。 もし戦ってしまったら、 朕は他の諸侯と変わらぬことになる」 小さくうなずき、己に言い聞かせる。 「誰が天下を統一してもよいのだ」 曹丕は劉平を見つめる。 「まさか、陛下は・・・」 「そうだ。 朕は存在しない皇帝だ」 笑う劉平の前で、曹丕はひざまずく。 その様子は城壁の下からでも見える。 曹仁は歯噛みする。 「負けを認めるのか」 司馬懿は言う。 「戦をしたいのですか」 降りてきた曹丕に、どうして負けを認めるのです、と曹仁が怒る。 「違う」曹丕は言って城門の上を見上げる。 「あいつは退位する」 ということは、と曹仁が訊くと曹丕は宣言する。 「予を陛下と呼べ」 「陛下・・・陛下・・・」 曹仁は兵士たちに告げる。 「魏王が陛下になったぞ」 「陛下、万歳」 と曹仁がひざまずくと、兵士たちもそろって跪いて唱和する。 「陛下万歳」 「陛下、万歳」 司馬懿は劉平を見つめる。 朝議では反対の声が上がる。 家臣がそろって床にひれ伏し、泣きながら諫める。 劉平は帽子を玉座に置き、階段を下りて賈詡(かく)に深く礼をする。 「漢王朝のために耐えてくれたのに、 その苦労を無駄にしたな」 「天下の民にかわり、 陛下のご英断にお礼を申し上げます」 皆がひれ伏している朝堂を、劉平は通り抜ける。 外に出ると、雨模様の空が急に明るくなり、雲の隙間から陽光が伸びてくる。 劉平は思わず微笑んでしまう。 「戦を仕掛けるには身勝手さが要る。 お前には無理だ。 だが、まさか皇帝をやめるとはな」 「私には絶対的な力があった。 だが曹丕を破っても曹氏は滅ぼせない。 曹氏は分かれて各々諸侯になる。 その機に乗じて、孫権と劉備が攻めてくれば、 また戦続きになる。 民には一時の平穏さえもなくなる。 何とか落ち着かせた、この天下が、 また戦乱の世に向かう」 「お前のおかげで分かった。 天下統一は、誰がやってもいい」 「前に、皇帝を代わってやると言っただろう」 「お前の跡を継ぐなど、こちらから願い下げだ」 「だが大きな力を得られるぞ」 仲達は劉平の顔をのぞきこむ。 「なぜ私を信じる? 私を、手段を選ばぬ野心家とは思わぬのか」 「野心があっても、功績を挙げればいいのだ。 お前に力を与えて、曹丕を助けさせたい。 内紛を鎮め、外敵を防ぎ、 ばらばらになった天下をまとめてくれ」 仲達は大きな石を持ち上げ、劉平の手のひらに置く。 「これからは石ころで遊ぶのだな。 まだ皇帝気取りだぞ。 年よりじみた奴だ」 「私はこの天下が統一されるのを見ていよう」 河原に水を飲みに来た鹿がいた。 仲達は弓を取って劉平に渡す。 「腕が鈍っていないか見せろ」 劉平が矢を射るが、鹿には当たらず、鹿は逃げていく。 劉平は笑って弓を返す。 「仲達、我が使命は終わった。 お前の道はこれから始まる」 「私の代わりに世の中を楽しめ」 「また会えるか」 「さよならは言わぬ」 二人は手を握り合い、馬に乗ってそれぞれの方向に駆けだしていく。 「陛下を山陽公にした。 あそこはいいところだ。 皇帝の待遇も与えた。 厚遇したはずだ」 曹丕は弁解するが節には通じない。 我らは逆臣として史書に記される」 「史書を書かせるのは私だ」曹丕は怒鳴るがすぐに冷静になる。 「我ら宗家のため、新しい王朝を開く。 父上も皇帝にする。 私はあいつより皇帝にふさわしい」 「やましさと恐れを抱き続けるのね」 「何だと」節をにらみつける。 「何を言うのだ」 怒鳴られた節は玉璽を取り上げると、それを曹丕に投げつける。 玉璽は床に転がり、曹丕は慌てて損傷がないか調べる。 衣の袂で玉璽を撫で上げるのだ。 曹丕はそれを抱きかかえて「父上」とつぶやく。 「見ていますか。 あなたができなかったことを、 私はやり遂げました。 皇帝になったのです」 しかし、その口から血痰がこぼれ出る。 医師は、若いころの傷で臓器が痛んでいると診断する。 心静かに養生してください、と医者は言う。 もうすぐ即位するし、内外に敵を迎えて養生などできぬ、と曹丕は否定する。 養生できぬのなら、どうなるのだ、と訊くと、医者はおののきながら答える。 「あと10年、生きることは難しいでしょう」 「10年か。 初代皇帝としての功績を挙げるには十分だろう。 足りる。 十分だ」 曹丕はうなずきを繰り返す。 曹丕は庭で琴を弾きながら詩を吟じる。 「腕は変わらぬだろう」 「何でしょうか」 「皆は明後日の即位の儀式で忙しいが、 私はすることがない。 一緒に琴を弾ける。 もしお前が望むのなら、2人で出かけよう。 私が馬車を御す」 甄宓は悲しそうな顔だ。 「私は籠の中の鳥です」 分かっている、つらい思いをさせたな、と曹丕は慰める。 「我らは苦労を重ね、ずっと耐えてきた。 もう大丈夫、 私が皇帝になれば、我らは自由だ」 曹丕は甄宓の手を引いて座らせる。 「私が皇帝になれば、お前は皇后だ。 都を洛陽に移そう。 お前のために、琴を弾く舞台を作る。 昼間、お前は子どもたちに学問を教え、 務めが終われば、 一緒に美しい光景を詩にしよう。 よいな」 曹丕は甄宓の頬をなで、つぎに甄宓が曹丕のほほに手を伸ばす。 曹丕が甄宓の手を包み込む。 「お前は美しい」 ため息をつきながら、目をつぶる。 「私には一緒にいてくれる昔なじみがまだ残っている」 「それは違います。 私の昔なじみは、もういません。 あの、光り輝いていた若者、 私と鄴の町を駆け回った馬鹿な人。 廊下で琴を弾いていた友人、あの人はもう死んだ。 この世に、自由のある皇帝などいない」 「私は違う。 違うのだ」 曹丕は甄宓の両手で頬をつかませる。 「私には自由がある。 天下さえ得られる。 得られぬものはない。 もっと広い世界をお前に見せてやる。 偉大な国を作るのを、お前に見せてやろう。 よいな」 甄宓も涙を流している。 「洛陽に移る? 我らを閉じ込める牢が大きくなるだけ。 互いが捕らわれているのを見ないといけない。 あまりにもひどすぎる。 あなたは私を構えず、私もあなたを救えない。 こうしましょう」 甄宓は頬をつかんでいた手を力いっぱい引きはがし、その手で横にある琴の弦をつかむ。 弦は音を立てて切れ、甄宓の指も血だらけになってしまう。 「あの時のことと、琴の音を忘れない。 尊厳を守りましょう」 甄宓は笑いながら立ち去っていく。 曹丕はまたもや血を吐く。 琴にかかった血の上に、花びらが落ちてくる。
次の中国ドラマ 『三国志 Secret of Three Kingdoms』は、 2019年11月4日の毎週月曜~金曜の午後5時からBS12トゥエルビで全54話が放送されます。 また 動画の見逃し配信サイト・ TSUTAYA TVでも視聴可能です! ジャンルを問わず、ベストセラーを出し続ける 中国の人気作家マー・ボーヨンの小説「三国機密」を映像化! マー・ティエンユーと エルビス・ハン、 レジーナ・ワンなど、見目麗しい人気豪華俳優陣による 中国史上最も有名な戦乱の世を描いた歴史ロマン大作です。 中国では映画さながらの深みある映像と豪華な衣装にセット、今までの三国志にはない大胆な脚本や演出で観るものを魅了し、 動画再生回数 30億回超えを記録しました。 三国志 Secret of Three Kingdoms(中国ドラマ)あらすじ 中国ドラマ『三国志 Secret of Three Kingdoms』の あらすじをご紹介します。 たくさんの英雄や実力者たちが各地で対立し、勢力争いをしていた後漢末期。 その中でも群を抜いていた曹操は、漢の皇帝である献帝・ 劉協(マー・ティエンユー)を囲い込み、裏で操ります。 そのことで段々と 曹操(ツェー・クワンホウ)と皇帝の溝は深まり、一触即発の気配が漂っていました。 同じ頃、許都から遠く離れた司馬家に幼い頃から預けられ、司馬家の次男・ 司馬懿(エルビス・ハン)と本当の兄弟のように育てられた 楊平(マー・ティエンユー)。 彼は武術や医術を学び、心優しい青年に育っていました。 揚平は突然迎えに来た父・楊俊と共に馬車で都へ向かうことになり、司馬懿と別れの挨拶も出来ず去ることになります。 道中、楊平たちの馬車に近寄ってくる馬車が現れます。 「盗賊です」と言う声を聞いた父・楊俊はこの声を合図とし、自分の乗っている馬車の御者を短剣で刺します。 そして馬車から降りると、そこに止まっている馬車に乗る漢の大臣・楊彪に挨拶をし、自分の腕を切り落とします。 驚く楊平… しかし楊俊は痛みに耐えながら、息子に楊彪と一緒に行くことを強く叱咤します。 理由も分からないまま、父の言葉に従って馬車に乗った楊平…その後、楊俊は自分たちが盗賊に襲われ、息子は命を落としたと偽装します。 楊平は、楊彪から自分が皇帝の双子の弟という秘密を打ち明けられます。 そして実権を握っている曹操を退け、漢王朝の力を取り戻すために兄から呼ばれたことを知ります。 その夜、空には彗星が現れ、間もなく世の中に大きな変化があることを告げていました。 楊平は弘農王の妃・ 唐瑛(ドン・ジェ)と会い、自分が置かれている奇怪な状況の説明を求めます。 しかし唐瑛から「自分の目で確かめなさい」と言われます。 参内する唐瑛の付き添い宦官になりすました楊平は、皇帝の寝殿へ向かいます。 しかし時すでに遅く、病弱な皇帝は息絶えていました。 亡き兄が残した詔を皇后である 伏寿(レジーナ・ワン)から賜った楊平(のちは劉平)は、兄の遺志を継いで皇帝と入れ替わります。 そして伏寿はこの秘密を隠すため、寝殿に火を放ちました。 この瞬間から劉平の戦いが始まります。 伏寿や唐瑛の力を借り、皇帝として振る舞うも、今までの皇帝と違う言動を怪しむ臣下たち…そんな中、劉平の死に疑問を抱いた司馬懿が真実を探り出し、皇帝となった劉平の前に現れます。 様々な策略が渦巻く中で、血を流さずに太平の世を作りたいと願う劉平…彼を支えようとする伏寿…そして劉平と強い絆で結ばれている司馬懿… 果たして、劉平が願うような世が来るのでしょうか? 三国志 Secret of Three Kingdoms(中国ドラマ)ネタバレ・最終回結末 中国ドラマ『三国志 Secret of Three Kingdoms』の ネタバレ・ 最終回結末をご紹介します。 曹操の娘・曹節は劉平に嫁ぎ、皇后となっていました。 曹操の遺志に反して兄・ 曹丕(タン・ジェンツー)が攻めてくることを知った曹節は、自分を罪人として罰するように言います。 しかし劉平は「あなたのせいではない。 あなたを必ず守ります」と言うと、曹丕と話をするために立ち去ります。 曹操の跡を継いだ曹丕は司馬懿と共に劉平のいる許都を目指し、約30万人の兵を引き連れてきます。 城門の上で待っていた劉平は曹丕に話し合いを求めます。 曹丕は「自分が武力を使って許都を手にすることで、他者からの侵略を防ぎ、この地は平和になると考えた。 そのために私は必ず勝たなくてはならない」と出兵した理由を率直に話します。 「武力による救い…」と劉平は呟きます。 彼は 「この地を再び血に染めるのでなく、太平の世が作れるのなら私は退位する」と曹丕に告げます。 劉平の言葉を聞いた曹丕は跪き、尊敬の念を持って皇帝に挨拶しました。 正式に譲位をした劉平が王宮殿の外に出ると、雲の間から光が差し、彼の顔を照らしました。 眩しそうにした 劉平は、ホッとした表情で柔らかに微笑みます。 すべてが終わったことを曹節に話す劉平…彼は今までのことを詫び、彼女のこれからを心配します。 曹節は「実家に帰って母と暮らすので安心してください。 落ち着いたら陛下と伏寿様に会いに行きます」と微笑みながら答えました。 宮廷を出るその日、司馬懿が劉平のために馬を用意して待っていました。 司馬懿は「今回、戦わない道を選ぶことを分かっていたが、退位するとは思わなかった」と話します。 そんな 司馬懿に劉平は「今後も曹丕を支えて、今よりも平和な世を作って欲しい」と頼みます。 「また会えるだろうか」と聞く劉平に、司馬懿は「私たちには別れはない」と言います。 そして2人は馬に乗り、違う道を歩み始めます。 そして 劉平は伏寿のもとを訪れ、再会した2人は幸せを噛みしめます。 王宮殿を訪れた曹丕は1人緊張しながら、ゆっくりと歩みます。 そして王座をじっくり眺めると、震える手で王印の入った箱を開けました。 そこに現れた曹節は皇帝を廃位に追いやったこと、これから自分たち曹一族が逆賊として歴史に名が残ることなど不満や恨みをぶつけます。 曹丕は「曹一族を逆賊と呼ばせない、そんなことはどうにでもなる」と叫びます。 その言葉に曹節は王印を高く上げ、兄に投げつけます。 曹丕は床に転がった王印を大切そうに拾うと、震えながらしっかりと抱き締めます。 そして 亡き父の幻影から逃れられない彼は、曹操に向かって「やっと手に入れた」と叫びます。 曹丕は戦の怪我や長年の心の疲労で身体を壊していました。 医師から「後10年しか生きられない」と告げられた曹丕でしたが、「新王朝の基盤を作るには十分な長さだ」と言いながら涙を流します。 甄宓(ワン・ シャオミン) は曹丕が奏でる琴の音色を聞いて、庭にいる彼の傍へ進みます。 手を止めた曹丕は「自分にとっての友人は君しかいない。 これからは一緒に居られる」と薄っすら微笑みながら話しかけます。 しかし 甄宓は「昔の友人はもう何処にもいません」と静かに言いました。 それから7年後…曹丕が亡くなり、曹丕の息子が王位を継承します。 葬儀の列が進む中、皇帝の後見人となった司馬懿は山羊の傷を手当てしている劉平を見つけます。 視線を交わした劉平は予想した通りの姿になった司馬懿を見て、フッと小さく笑います。 さらに時は経ち… 曹一族が建国した魏を司馬懿の孫・司馬炎が滅ぼし、中国大陸は晋によって統一されます。 スポンサーリンク 三国志 Secret of Three Kingdoms(中国ドラマ)感想 中国ドラマ『三国志 Secret of Three Kingdoms』の 感想をご紹介します。 豪華な衣装や細部にまで拘ったセット、そして美しい俳優たち… ここまで数多くの美形が出演しているドラマは珍しいと思います。 そして皇帝役を演じたマー・ティエンユーは、本当に見惚れてしまうほどのイケメンです。 始めの方は可愛らしさを感じる姿でしたが様々な苦難を乗り越え、成長し、 最終回で見せる姿は哀愁を帯びていて胸キュンです! 「血を流さずに太平の世を作りたい」と言う信念を貫き、王宮殿を出た後の晴れ晴れとした表情…今までの苦労を考えると思わず「頑張ったね」と労いの言葉をかけたくなりました。 それに対して、皇帝になることに決まってからの曹丕はとても悲壮感が溢れていました。 結局、身だけでなく、心まで壊れてしまった彼…何かに固執する怖さを垣間見た気がします。 美しい物や人にウットリ満喫しながらも、人間の野心や欲望をヒシヒシと感じ、考えさせられるドラマでした。 しかし中国の歴史はやっぱり凄いと痛感です。 三国志 Secret of Three Kingdoms(中国ドラマ)キャスト・出演者 中国ドラマ『三国志 Secret of Three Kingdoms』の キャスト相関図をご紹介します。 献帝の双子の弟ですが産まれてすぐに楊俊に預けられ、王宮の外で育てられました。 司馬懿とは幼い頃から一緒に育ち、兄弟以上の絆があります。 ある日、兄である献帝の遺志を継いで秘密裏に皇帝に成り代わります。 皇帝になってからは自分の理想である太平の世を作ろうとします。 歌手や俳優としても活躍する彼は「四人の義賊 一枝梅」「古剣奇譚~久遠の愛~」「幻城」などに出演しています。 ほんわかした雰囲気の彼ですが、実は苦労人です。 司馬懿(しばい) 役:エルビス・ハン (韓東君) 字は仲達。 名門・司馬家の次男です。 幼い頃から一緒に育った劉平が盗賊に襲われ、亡くなったと言われますが、遺体が偽物であることを見破ります。 そして皇帝となった劉平を探し当てます。 その後は劉平の良き理解者となり、才能を発揮します。 彼は2014年に「神雕侠侶~天翔ける愛~」でデビューし、翌年には中国で大ヒットしたドラマ「無心法師」で主役を演じました。 伏寿(ふくじゅ) 役:レジーナ・ワン(万茜) 後漢最後の皇帝である献帝の皇后です。 夫である劉協の遺志を継ぎ、漢王朝の再興のために劉平を助け、奔走します。 途中、考えの違いから険悪な仲になりますが、彼の思いを理解した後は支えます。 いつも冷静で付け入る隙を見せない気丈な女性ですが、劉平の人柄を知った後は彼に惹かれていきます。 最近では「麗王別姫~花散る永遠の愛~」や「海上牧雲記 3つの予言と王朝の謎」に出演しています。 唐瑛(とうえい) 役: ドン・ジェ(董潔) 劉協と劉平の異母兄である弘農王の妃です。 弘農王は13代皇帝となりますが無理やり廃位させられ、毒を盛られます。 唐瑛は亡くなった弘農王を1人で弔いながら暮らしていました。 劉平を皇帝の身代わりにするという計画に協力し、劉平たちの秘密を守るために尽力します。 しかし武術の達人で、裏の顔を持っています。 司馬懿と恋仲になりますが幸せな時は短く、最後は謂れのない疑いをかけられ、自ら死を選びます。 歴史的には弘農王は皇帝とは認められておらず、後漢王室の系図にも記載されていないそうです。 「傾城の雪」や「如懿伝~紫禁城に散る宿命の王妃~」に出演しています。 曹操(そうそう) 役:ツェー・クワンホウ(謝君豪) 字は孟徳。 三国志の中でも有名な武人に上がる曹操は、三国の1つである魏の基礎を築きました。 出演ドラマには「月に咲く花の如く」「神龍<シェンロン>-Martial Universe-」などがあります。 曹丕(そうひ) 役: タン・ジェンツー(檀健次) 字は子桓で、曹操の息子です。 父に連れられ、幼い頃から戦場で戦ってきました。 跡取りであった兄(母違い)の死の真相を探っていく中で、自分の母が兄の死に関与していることを知ります。 そのことから父に愛されず、父に認められるために人一倍努力し、壊れていきます。 そのドラマと同じ脚本家チャン・ジャンが手掛けた「三国志~司馬懿 軍師連盟~」に出演し、司馬懿の息子である司馬昭を好演しています。 郭嘉(かくか) 役:サニー・ワン(王陽明) 字は奉孝。 奇才と呼ばれた曹操の軍師で、曹操から絶大な信頼を寄せられていました。 飄々としながらも、常に自分を失わず、だからと言って清廉でなく、バランスの取れた人物でした。 病気で若くして亡くなります。 大ヒットした台湾ドラマ「イタズラな恋愛白書~In Time With You~」で俳優デビューし、その後「あの星空、あの海。 ~人魚王の伝説~」にも出演しています。 姓は日本と同じ扱いです。 諱はその人の霊的人格と結びついていると考えられ、年長者や親以外が使うことはありませんでした。 そのため呼び名には字が使われていました。 スポンサーリンク 三国志 Secret of Three Kingdoms(中国ドラマ)登場人物相関図 中国ドラマ『三国志 Secret of Three Kingdoms』の 登場人物・ 相関図をご紹介します。 三国志 Secret of Three Kingdoms(中国ドラマ)基本情報 三国志 Secret of Three Kingdoms 2019年11月4日スタート(全54話) BS12トゥエルビ 毎週月~金曜 午後5時~ 2018年10月スタート CS放送「衛星劇場」 原作:マー・ボーヨン(馬伯庸)「三国機密」 脚本:チャン・ジャン(「三国志 ~司馬懿 軍師連盟~」) 監督:パトリック・ヤウ(「デッドポイント ~黒社会捜査線~」「ロンゲストナイト」「パラダイス!」) 監督:スティーブ・チェン(「女医明妃伝~雪の日の誓い~」).
次の第54話(最終話) 天下太平への道 劉平が曹丕との戦いに備えていると知って、皇后の曹節は不安でならない。 そなたの兄に会って話し合うだけだ、と劉平は安心させようとするが、節は、その前に伏寿に会うのか、と訊ねてくる。 伏寿が潜伏していることは節も知っていたようだ。 曹操に知られては困るので黙っていたことを明かす。 「お二人が会えれば、私の罪は消えます」 「だが、まだ会えぬ」劉平は決意している。 建安25年、曹丕は許都を攻めるため譙(しょう)まで南下してきた。 城門の上で劉平が待ち受けている。 「陛下は話し合いを望んでいる」城門の上から声をかける。 曹仁は、行けば殺すつもりだろう、と警戒する。 司馬懿に促され、曹丕は馬を降りる。 「予は行く。 陛下はそんな男ではない」 城壁の上に登ってきた曹丕は、曹操の思い出から話し始める。 陛下と同じ考えです。 しかし、この時代では、 2人は敵となる定めでした」 「魏王の願いをかなえるために、大軍を率いてきたのか」 「陛下、私にはそんな度量はない。 夢をかなえるためには、もっと大きな力が要る。 陛下と戦い、決着がつけば、兵力をまとめて中原を守れます」 「もし戦が膠着するようなら、 孫権と劉備に隙を突かれる。 中原で諸侯が争って、 そなたの父の努力もすべて無駄になる。 力が欲しいのは夢をかなえるためか、野心を満たすためか」 「分かりませぬ。 私は父の寵愛と信頼を求めてきました。 自分が父より強いと示したいだけ。 父ができなかったことをやる。 この国を愛していても、勝者にならねば、 国を救うことはできませぬ」 「人を殺す救い。 野心まみれの理想。 そんなものは、ありはしない。 絶対に朕に勝てるか?」 「分かりませぬ。 だが、死んでも負けられぬ。 陛下、申し訳ない。 戦うしかありませぬ」 「そなたも、この数年の中原の平穏を見たであろう」 「恥ずかしながら、 この数年は各地で戦っていました。 目に入るのは、血と殺し合いだけでした」 劉平はため息をつき、一気に吐き出す。 「朕はそなたとは戦わぬ。 もし戦ってしまったら、 朕は他の諸侯と変わらぬことになる」 小さくうなずき、己に言い聞かせる。 「誰が天下を統一してもよいのだ」 曹丕は劉平を見つめる。 「まさか、陛下は・・・」 「そうだ。 朕は存在しない皇帝だ」 笑う劉平の前で、曹丕はひざまずく。 その様子は城壁の下からでも見える。 曹仁は歯噛みする。 「負けを認めるのか」 司馬懿は言う。 「戦をしたいのですか」 降りてきた曹丕に、どうして負けを認めるのです、と曹仁が怒る。 「違う」曹丕は言って城門の上を見上げる。 「あいつは退位する」 ということは、と曹仁が訊くと曹丕は宣言する。 「予を陛下と呼べ」 「陛下・・・陛下・・・」 曹仁は兵士たちに告げる。 「魏王が陛下になったぞ」 「陛下、万歳」 と曹仁がひざまずくと、兵士たちもそろって跪いて唱和する。 「陛下万歳」 「陛下、万歳」 司馬懿は劉平を見つめる。 朝議では反対の声が上がる。 家臣がそろって床にひれ伏し、泣きながら諫める。 劉平は帽子を玉座に置き、階段を下りて賈詡(かく)に深く礼をする。 「漢王朝のために耐えてくれたのに、 その苦労を無駄にしたな」 「天下の民にかわり、 陛下のご英断にお礼を申し上げます」 皆がひれ伏している朝堂を、劉平は通り抜ける。 外に出ると、雨模様の空が急に明るくなり、雲の隙間から陽光が伸びてくる。 劉平は思わず微笑んでしまう。 「戦を仕掛けるには身勝手さが要る。 お前には無理だ。 だが、まさか皇帝をやめるとはな」 「私には絶対的な力があった。 だが曹丕を破っても曹氏は滅ぼせない。 曹氏は分かれて各々諸侯になる。 その機に乗じて、孫権と劉備が攻めてくれば、 また戦続きになる。 民には一時の平穏さえもなくなる。 何とか落ち着かせた、この天下が、 また戦乱の世に向かう」 「お前のおかげで分かった。 天下統一は、誰がやってもいい」 「前に、皇帝を代わってやると言っただろう」 「お前の跡を継ぐなど、こちらから願い下げだ」 「だが大きな力を得られるぞ」 仲達は劉平の顔をのぞきこむ。 「なぜ私を信じる? 私を、手段を選ばぬ野心家とは思わぬのか」 「野心があっても、功績を挙げればいいのだ。 お前に力を与えて、曹丕を助けさせたい。 内紛を鎮め、外敵を防ぎ、 ばらばらになった天下をまとめてくれ」 仲達は大きな石を持ち上げ、劉平の手のひらに置く。 「これからは石ころで遊ぶのだな。 まだ皇帝気取りだぞ。 年よりじみた奴だ」 「私はこの天下が統一されるのを見ていよう」 河原に水を飲みに来た鹿がいた。 仲達は弓を取って劉平に渡す。 「腕が鈍っていないか見せろ」 劉平が矢を射るが、鹿には当たらず、鹿は逃げていく。 劉平は笑って弓を返す。 「仲達、我が使命は終わった。 お前の道はこれから始まる」 「私の代わりに世の中を楽しめ」 「また会えるか」 「さよならは言わぬ」 二人は手を握り合い、馬に乗ってそれぞれの方向に駆けだしていく。 「陛下を山陽公にした。 あそこはいいところだ。 皇帝の待遇も与えた。 厚遇したはずだ」 曹丕は弁解するが節には通じない。 我らは逆臣として史書に記される」 「史書を書かせるのは私だ」曹丕は怒鳴るがすぐに冷静になる。 「我ら宗家のため、新しい王朝を開く。 父上も皇帝にする。 私はあいつより皇帝にふさわしい」 「やましさと恐れを抱き続けるのね」 「何だと」節をにらみつける。 「何を言うのだ」 怒鳴られた節は玉璽を取り上げると、それを曹丕に投げつける。 玉璽は床に転がり、曹丕は慌てて損傷がないか調べる。 衣の袂で玉璽を撫で上げるのだ。 曹丕はそれを抱きかかえて「父上」とつぶやく。 「見ていますか。 あなたができなかったことを、 私はやり遂げました。 皇帝になったのです」 しかし、その口から血痰がこぼれ出る。 医師は、若いころの傷で臓器が痛んでいると診断する。 心静かに養生してください、と医者は言う。 もうすぐ即位するし、内外に敵を迎えて養生などできぬ、と曹丕は否定する。 養生できぬのなら、どうなるのだ、と訊くと、医者はおののきながら答える。 「あと10年、生きることは難しいでしょう」 「10年か。 初代皇帝としての功績を挙げるには十分だろう。 足りる。 十分だ」 曹丕はうなずきを繰り返す。 曹丕は庭で琴を弾きながら詩を吟じる。 「腕は変わらぬだろう」 「何でしょうか」 「皆は明後日の即位の儀式で忙しいが、 私はすることがない。 一緒に琴を弾ける。 もしお前が望むのなら、2人で出かけよう。 私が馬車を御す」 甄宓は悲しそうな顔だ。 「私は籠の中の鳥です」 分かっている、つらい思いをさせたな、と曹丕は慰める。 「我らは苦労を重ね、ずっと耐えてきた。 もう大丈夫、 私が皇帝になれば、我らは自由だ」 曹丕は甄宓の手を引いて座らせる。 「私が皇帝になれば、お前は皇后だ。 都を洛陽に移そう。 お前のために、琴を弾く舞台を作る。 昼間、お前は子どもたちに学問を教え、 務めが終われば、 一緒に美しい光景を詩にしよう。 よいな」 曹丕は甄宓の頬をなで、つぎに甄宓が曹丕のほほに手を伸ばす。 曹丕が甄宓の手を包み込む。 「お前は美しい」 ため息をつきながら、目をつぶる。 「私には一緒にいてくれる昔なじみがまだ残っている」 「それは違います。 私の昔なじみは、もういません。 あの、光り輝いていた若者、 私と鄴の町を駆け回った馬鹿な人。 廊下で琴を弾いていた友人、あの人はもう死んだ。 この世に、自由のある皇帝などいない」 「私は違う。 違うのだ」 曹丕は甄宓の両手で頬をつかませる。 「私には自由がある。 天下さえ得られる。 得られぬものはない。 もっと広い世界をお前に見せてやる。 偉大な国を作るのを、お前に見せてやろう。 よいな」 甄宓も涙を流している。 「洛陽に移る? 我らを閉じ込める牢が大きくなるだけ。 互いが捕らわれているのを見ないといけない。 あまりにもひどすぎる。 あなたは私を構えず、私もあなたを救えない。 こうしましょう」 甄宓は頬をつかんでいた手を力いっぱい引きはがし、その手で横にある琴の弦をつかむ。 弦は音を立てて切れ、甄宓の指も血だらけになってしまう。 「あの時のことと、琴の音を忘れない。 尊厳を守りましょう」 甄宓は笑いながら立ち去っていく。 曹丕はまたもや血を吐く。 琴にかかった血の上に、花びらが落ちてくる。
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