1995年に竣工引き渡しを実施した分譲マンションで、杭工事に不具合があったという。 25年前の案件で今ごろおわびとはなんだ。 気になって調べたら、とんでもない瑕疵(かし)事件だった。 JR九州ブランド失墜の危機だ。 その象徴的な存在は日本初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」をはじめとする観光列車群である。 テレビの旅行番組などで何度も紹介されてきたから、九州以外の人々にとって「九州の鉄道は楽しそう」というイメージだと思う。 私たち鉄道ファンや旅行好きにとっても鉄道事業者である。 一方で、政治的、経済的な視点で見ると、JR九州は「副業の優等生」であり「奇跡の三島会社」である。 33年前、大赤字の国鉄を分割民営化するときに、JR九州、JR四国、JR北海道は「自社努力だけでは黒字化できない」と予想された。 そこで経営安定化基金を授けられ、その金利で赤字を埋める枠組みを作った。 その中で、JR九州は積極的に異業種に進出した。 マンション建設、コンビニ、ドラッグストア、飲食店などだ。 JR九州はこれら子会社の健闘が評価され、鉄道事業が赤字にもかかわらず東証一部上場を果たした。 鉄道事業は2016年から黒字化されているけれども、これは上場にあたって経営安定化基金を組み入れたからだ。 九州新幹線の20年分の使用料として繰り上げて支払ったほか、固定資産を圧縮して減価償却費を減らすなどで大幅にコストを削減した。 鉄道事業の実態としては、在来線区間のほとんどが赤字。 5月27日には特に乗客が少ない12路線17区間を公表し、路線維持に向けて沿線自治体と協議する意向を示した。 同日、熊本地震で被災し不通となっていた豊肥本線肥後大津~阿蘇間を8月8日に運転再開すると発表。 一方でその前日には、日田彦山線の不通区間についてBRT(バス高速輸送システム)転換の見通しが立った。 17年7月の豪雨で不通になる以前から利用客数が少ない区間だった。 JR九州が路線の救命を選択する。 それは経営努力である。 経営努力は多角経営にも発揮された。 JR九州の営業収益の構成比は、19年3月期連結ベースで、運輸サービスが40%、不動産・ホテルが19%、建設が8%、流通・外食が24%となった。 営業利益では不動産・ホテルが39%となり、運輸サービスの42%に迫る。 JR九州はもはや不動産業、と揶揄(やゆ)される。 これは褒め言葉だ。 例えば大手私鉄の東急グループの売上高構成比において、交通事業は17. 5%にすぎない。 不動産事業、ホテルリゾート事業の合計は24. 9%になる。 東急グループは流通など生活サービス事業が57. 6%に上る。 JR九州は大手私鉄のセオリーをたどり、鉄道事業者から地域生活事業へコマを進めている。 問題のマンション「ベルヴィ香椎六番館」は福岡市東区にある。 販売はJR九州と福岡綜合開発(現・福岡商事)のJV(企業共同体)が担当した。 施工は若築建設とJR九州の子会社である九鉄工業だ。 最寄り駅はJR香椎線の舞松原駅だ。 徒歩1分の好立地は当然で、JR九州がマンションを販売するために設置した駅である。 舞松原駅から博多駅まで乗り換え1回で約30分。 18年度の1日あたり乗車人数は1040人で、JR九州の全駅数567のうち165位。 マンション事業も鉄道事業も大成功。 鉄道事業のために宅地販売を成功させた、阪急電鉄の小林一三の手法の再現である。 ベルヴィ香椎は壱番館から十番館まで合計8棟ある。 忌み数字を嫌ったようで4番館と9番館は欠番だ。 このうち壱番館から八番館までの7棟が香椎線の線路の西側にあり、十番館だけは線路の東側にある。 舞松原駅の隣にはJR九州独自ブランドのマンション「MJR舞松原」もある。 つまり、JR九州は新駅と込みで合計9棟のマンションプロジェクトを始めた。 分譲は1995年とあるけれども、着手は90年から。 JR九州が発足して3年後、初めて手掛けたマンション販売事業である。 しかし、引き渡してから2年ほどの間に、壁面のひび割れが相次ぐ。 施工会社はその都度修理で対応した。 そのうちに壁と天井に隙間ができる、玄関ドアが閉まらないなど、建物の歪(ゆが)みが疑われた。 構造欠陥問題だとして住民の訴えが続いていた。 この問題については、現地の報道機関が詳しく報じている。 ・「まともな状況じゃない」10cm超傾く欠陥マンション 住民の追及で判明した新事実とは【福岡発】(テレビ西日本) ・福岡のマンション傾斜、販売会社が謝罪 住民側に施工不良認める(西日本新聞) ・JR九州、「施工会社の報告を信じた?」(福岡県民新聞) また、福岡市の企業情報サイト「NETIB-NEWS」が詳しく追っているので、こちらでは簡単な説明にとどめる。 マンション問題として知りたい方はそちらを参照されたい。 1997年にマンション管理組合は屋内外の被疑カ所について住人に対してアンケート調査を実施した。 同年10月、管理組合として全体集会を開いて協議し、販売側へ問題提起。 しかし、施工会社、販売会社ともに構造物の瑕疵は否定した。 25年にわたり、住民が瑕疵を指摘し続け、費用負担してまで調査するなどの交渉が続くも、施工会社、販売会社ともに2005年の福岡県西方沖地震、16年の熊本地震の影響などと回答したという。 時系列も合わない上に、不具合は同じ敷地の7棟のうち6番館だけだから説明がつかない。 25年も経てば住み替える人も出てくるわけで、中古物件を仲介した不動産屋が買主に瑕疵を説明しなかったなどの二次被害も生まれている。 19年12月にこの問題がテレビニュースで報じられ、さらに調査した結果、杭の長さが足りないことが判明し謝罪することになった。 ただし「NETIB-NEWS」では、他の棟も「構造スリットを施工しない」という手抜き工事が指摘されている。 上記の福岡県民新聞では「建築工事中に初期沈下を起こしており、造作工事で調整している跡がある」とし、当初から傾斜を知りつつ販売したという疑惑もある。 しかし筆頭株主は福岡銀行で、他の株主も金融系、九州電力や西日本鉄道も連ねている。 しっかりした会社だろうと思う。 そしてJR九州は地元の企業としてはトップブランドだ。 施工会社の若築建設は一般の知名度は低いものの、筑豊炭田の積み出し地、若松築港の建設から始まった会社だ。 海洋土木で国内外に実績がある。 1990年は若築建設の創業100周年に当たる。 つまり、ベルヴィ香椎はJR九州と若築建設にとって初のマンション物件、記念碑的なプロダクトだった。 しかし、裏を返せばマンション事業の素人所帯である。 私が初めて都内の新築マンションを購入した時は、参考になる本や情報をあさった。 その経験しかないけれど、販売も施工も実績がない会社の物件は手を出しにくい。 それでもベルヴィ香椎は人気物件で販売は好調だったようだ。 JR九州初のマンションといえども、やはり鉄道で実績のある大企業「JR九州」のブランドは信頼できるし、1990年にJR九州が旭化成と協業した戸建て住宅販売などの実績もある。 施工会社は若築建設のほか、JR九州の子会社の九鉄工業が加わっている。 このマンションは「JR九州のマンション」だ。 しかも、JR九州はマンション住民のために、徒歩5分以内の場所に駅まで作ってくれた。 私のような鉄道ファンなら飛びついたかもしれないし、鉄道ファンでなくても通勤至便な好立地だ。 当時の新聞報道によると、低金利を背景に3000万円台の新築マンションが売れており、西日本鉄道とJR九州が新規案件で競う構図となっていたようだ。 私は初めてマンションを買った時の気持ちをよく覚えている。 モデルルームを見て、抽選に応募し、ドキドキしながら当選を待った。 住宅金融公庫(当時)の審査もヒヤヒヤしつつ無事に通り、契約会でハンコを押しまくった。 建築中は何度も現場説明会へ行き、そこで仲良くなった未来の隣人たちと飲み会を開いて交流した。 新築の入居の達成感。 入居後、外廊下の風切り音が大きくクレームとなったけれども、施工会社の真摯な対応で解決されたこともよく覚えている。 ベルヴィ香椎六番館を購入した人々も同じく晴れやかな気持ちだっただろう。 しかしそれは入居早々に落胆に変わる。 外装ひび割れと、年々増加していく歪み、同じフロア同士で10センチになる高低差に悩まされてきた。 購入者の窓口となる販売会社も、施工会社も非を認めない。 その状態が25年間も続いた。 そんな住戸のローンも払い続けるしかない。 心からお気の毒だと思う。 そして、鉄道ファンとしても、信じていたJR九州の行為に悲しくなった。 私なら心を病みそうだ。 JR九州の副業のやらかしにすぎない。 しかし、JR九州がこの事態を知りつつ、25年も謝罪に応じなかったことは罪深い。 なぜなら、JR九州はその後、自社ブランドマンション「MJR」シリーズで大成功を収め、これらの実績を踏まえて、2016年に東証一部に上場して完全民営化を果たしている。 欠陥マンションを放置しながら。 国土交通省はJR九州の完全民営化に着手し、15年に「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律」を改正してJR九州を対象から除外した。 JR九州の完全民営化は国のプロジェクトだ。 副業による経営安定化を評価して完全民営化を良しとした。 しかしその副業で、ベルヴィ香椎六番館の問題は考慮されていなかったか。 考慮されたとしても差し支えないと判断したか、あるいは知らなかったか。 国交省がJR九州の副業で問題を抱えていることを知らなかったでは済まない。 なぜなら、マンション建設に関連する企業の監督官庁もまた国交省だからである。 1995年当時の建設事業の管轄は建設省で、鉄道は運輸省だった。 だからといって、2016年に「組織が縦割りだったから」という言い訳はきかない。 むしろ、一体となった国交省だからこそ、JR九州を総合的に評価できたはずではないか。 ちなみに、国交省は05年に民間確認検査機関イーホームズと一級建築士の構造計算書偽造問題を公表した。 いわゆる「姉歯事件」は国中が騒乱した。 国会で証人喚問まで行われている。 このさなか、ベルヴィ香椎問題は発生から10年も経過したまま放置されている。 マンション問題といえば、07年に完成した「パークシティLaLa横浜」も15年に建物の傾き問題が明るみに出た。 虚偽データに基づいた工事が行われ、複数の杭が強固な地盤に届いていなかった。 国交省は同年10月に「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」を設置し、有識者会議の中間とりまとめ報告書をとりまとめた。 ベルヴィ香椎六番館も傾いていたわけだが。 パークシティLaLa横浜は16年に全戸建て替えが決定した。 解体・建て替え工事費用は約300億円、住民に対する待機住戸などの補償で約100億円、合計400億円で住民と合意し、20年に完成予定だ。 ただし、18年に事業主が施工会社3社を相手取り、総額459億円の訴訟を起こしている。 これを知ったベルヴィ香椎の住民たちはどんな思いだっただろうか。 JR九州、福岡商事、若築建設、九鉄工業の関係者もこの事件はご存じだろう。 なぜ知らぬ振りができたのか。 もう一つ、東京証券取引所の審査も気になる。 上場検査基準はとても厳しい。 日本取引所グループで公開されている「上場審査の内容」には、事業の健全性もある。 個々の商取引について問う事項はないとはいえ、ベルヴィ香椎六番館は「事業の健全性」を問われる。 この問題を解決し、不動産事業の健全性を盤石にすべきだった。 一連の記事を読めば当事者間で問題解決するきっかけはたくさんあるし、客観的に見ても、2005年の姉歯事件、15年の「パークシティLaLa横浜」事件という他山の石がある。 もちろん東証一部上場にあたって、各事業の健全性、コーポレートガバナンスもチェックできた。 もちろんJR九州がペラ1枚のおわび書面で済ませることはないだろう。 この問題に対するプロジェクトチームも発足しているかもしれない。 完全な解決策は建て替えだと思う。 「NETIB-NEWS」の内容が正しければ、ベルヴィ香椎の全棟で「構造スリット」の有無を確認し、瑕疵があれば、やはり建て替えだ。 相当な金額になる。 しかし、これはきちんと解決しなくてはいけない。 施工に関わっていないとしても「瑕疵を放置する販売会社だ」となれば、今後JR九州のマンションを買いたいと思う人は減るだろう。 中古相場は下落し、他のMJRシリーズの住民も影響を受ける。 5月18日にJR九州のサイトで公開された「株主提案に対する当社取締役会意見(補足資料)」では、「JR九州住宅における不祥事(2018年9月)」が株主から指摘されている。 JR九州住宅の従業員が融資に関する書類を偽造した問題だ。 会社からの回答は「第三者委員会を設置し調査を実施、グループガバナンスの改善・強化を図っている」だった。 ベルヴィ香椎問題も第三者委員会を設置し「なぜ25年も問題を先送りしたか」「なぜ完全民営化、株式上場で明るみに出さなかったか」を解明してほしい。 「NETIB-NEWS」で指摘されているように、建築物の瑕疵担保期間の10年(最大20年)の経過を狙っていたとすれば悪質だ。 私はこのニュースが本当に残念でつらい。 これから私は「マンション問題を放置したJR九州の九州新幹線」に乗るのだろうか。 「マンション問題を放置したJR九州の『或る列車』」でおいしいケーキをいただくのか。 「マンション問題を放置したJR九州の『ななつ星in九州』」に乗るくらいなら、ほかのクルーズトレインのほうがいいなあ、なんて思い続けるのか。 JR九州のニュースを見聞きするたびにベルヴィ香椎がついてまわるではないか。 なんてことしてくれたんだ。 (杉山淳一).
次のひどすぎる。。。 1995年に福岡市東区で建てられた総戸数330戸、7階建ての分譲マンション「ベルヴィ香椎六番館」。 床にビー玉を置くと勢いよく球が転がっていく・・・まるでピタゴラスイッチの大型玩具みたいやね。 子どもが小さいうちはごまかせても、住んでいたら不安で仕方がない。 家に入ろうと玄関のカギを開けるとドアが開かない所もあるんだってさ。 まるで牢屋だね。 なんで悪いことしてないのに脱出したくなるんだよ。 新築入居から2年してから建物にひび割れが多数確認されて、当時から協議がなされていたというからシビれるね。 すでに25年が経過。。。 マンションを販売したのは「JR九州」「若築建設」「福岡綜合開発(現・福岡商事)」の3社で、施工したのは若築建設と九鉄工業。 販売会社の「福岡商事」の筆頭株主は「福岡銀行」。 施行会社の九鉄興行の筆頭株主は「JR九州」。 う~ん、こりゃたまらんね。 購入者は誰もが安心して買っただろうに・・・。 この福岡市東区にある 「ベルヴィ香椎六番館」だけど建設時から傾斜が始まっていて、耐震上重要な杭が支持層に到達していなかったり、「耐震スリット」が施行されていなかったことが分かっている。 「建設当時から建物の傾斜が始まっていた」 こんなことが・・・ と思ってしまうけど、これが今の日本の一部上場企業やら大手企業の仕事なわけだから、おっそろしいというか悪質というか、建設業界の闇を見た感じがするね。 建設当時から 「ベルヴィ香椎六番館」の傾斜が始まっていたとあるけど、建築工事中にすでに初期沈下が起きていて、造作工事で調整している跡があることから、傾斜が分かっていながら販売していたと日本建築検査研究所株式会社が断定している。 室内の調査では、梁や床の傾斜が確認できていて、ベランダの柱アルミサッシの縦枠やキッチンのシンクは水平に調整されて設置されていたというから、隠蔽まる出しの施工内容となっている。 不思議なことに、福岡市東区の 「ベルヴィ香椎六番館」のニュースは、メディアでほとんど取り上げられることなく、インターネットニュースと毎日新聞だけが報じている。 地元でも大手の企業集団だったから、マンション需要が伸び悩んでしまったり、欠陥記事を掲載することで各媒体への広告出稿が減少してしまうことを懸念してのことかもしれない。 こういう時は、広告を出してくれている企業に媒体社(新聞社など)から 「こういう記事を書きますよ」 と連絡がいくことがある。 その時の企業広報担当者の対応いかんで記事が小さくなったり、記事が出ないこともある。 もちろん大きく掲載されることもね。
次のこのマンション「ベルヴィ香椎」の不具合は いつ頃から判明していたのか? 竣工から2年後の1997年には、ひび割れが異常に多いなどの不具合が表面化し、住人に対するアンケート調査が実施されている。 そして、1997年10月、管理組合として全体集会を開いて協議し、販売側へ問題提起している。 翌1998年1月から管理組合理事会と販売側との協議が始まり、1999年10月には高低差の調査が行われ、簡易的な調査で31mmの高低差が確認されている。 2016年8月の管理組合総会においては、開閉が困難な玄関扉の管理組合費による交換に関して決議したが、その際、ほかの住戸からもマンションの傾斜に関する不満が続出したため、同年9月に傾斜に関する調査を行ったところ、 98mmの高低差が判明した。 2017年4月の管理組合総会においては杭長の調査が議決され、7月に杭長の調査が実施された。 同年10月には杭長以外のひび割れや玄関扉も含めた再調査が実施され、最大高低差101mmなどが報告されている。 2018年2月の総会においては、調停を申し立てることと、そのための調査を行うことが決議されている。 Bさん一家がマンションを購入した2018年10月より8カ月も前に、すでに管理組合は調停申し立てを決議しているのである。 一連の決議事項については当然、管理組合の議事録に記載されている。 また、区分所有者にも報告されている。 アンケートや大掛かりな調査を管理会社が知らないはずはない。 売主についても不可解な点が多い。 Bさんが部屋を内覧した際に家具やシートで隠されていた部分の壁に穴が空いていたことにBさんは入居後気づいたという。 この売主は 部屋の不具合に関するアンケートの際、「部屋の壁のひび割れあり。 クローゼットの建て付けが悪い。 巾木の取り付けが悪い」と回答している。 仮に売主が管理組合の総会に参加しておらず 議事録も読んでいなかった(通常では考えられないことであるが)としても、少なくとも自分の部屋の不具合については認識していたのである。 また、この部屋の隣の住人は アンケートで傾斜調査を希望しており、隣の住戸では相当な不具合を認識していたことがわかる。 売主がこれらの不具合の事実を故意に隠して部屋の売却を急いだことは間違いないと言わざるを得ない。 記者は、このマンションを仲介した不動産会社である「S社福岡支店」(福岡市博多区)の担当者Rに取材を申し入れたが、「本社の指示により 取材は受けられない」という不誠実な返答だった。 不動産仲介会社S社の担当者RがとったBさんの契約に際しての行動、「会社が休みである水曜日に喫茶店で契約」・「手付金を現金にて喫茶店で受け取り」・「調停が行われていることを契約日前日に知っていながら、買主であるBさんに説明しない」などは、不動産仲介業者の常識から大きく逸脱した行為である。 参考までに 別の不動産業者に問い合わせたところ、「大手の仲介業者ほど、クーリングオフ対策のため 必ず事務所での契約を行うようにしています。 マンションの問題点があれば後々、仲介業者の責任を問われないよう、必ず購入者に伝えます。 マンションが傾斜しているなど、とんでもない大問題なので、これを隠すことは考えられませんし、私の会社であれば、問題が明らかなマンションの売買を仲介することはありません。 月末の契約を急かしたことから、ノルマの関係もあったのかもしれませんが、不適切だと思います」と語ってくれた。 ベルヴィ香椎六番館の不具合については、管理会社が知らないはずはなく、仲介をする不動産会社も少し調べただけで マンションが抱える問題はわかったはずである。 実際、まったく無関係な立場である記者でさえ、十数年前から 「ベルヴィ香椎で施工の不具合があり、管理組合と販売会社が揉めている」という噂を耳にしていた。 Bさん夫妻は、売主とS社に売買契約解除を求める調停を申し立てているが、S社の誠意はまったく感じられないという。 (つづく) 【桑野 健介】.
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