旅番組でしばしば起こる「出会い」の多くが仕込まれたものであることは、いまや公然の秘密といっていいでしょう。 しかし、そんな風潮に真っ向から逆らう番組、それこそが『家族に乾杯』(NHK)です。 「作ったらアカン。 段取ったらダメ」とカメラのはるか先を歩く鶴瓶師匠のまわりでは、なぜいつも奇跡が起こるのでしょうか。 「出会いの天才」の真髄 2010年、鶴瓶はマクドナルドのCMに起用された。 マクドナルドの「M」と鶴瓶の「M」字ハゲが合致するのが起用の理由ではないかと言って、鶴瓶はその会見で笑わせた。 そのCMのコピーは「出会いの天才」。 まさに鶴瓶をよくあらわした言葉だ。 戸部田誠『笑福亭鶴瓶論』(新潮新書) ちなみに、このCM撮影でも「出会いの天才」っぷりを発揮する。 偶然、CMに美容師役として出演していたのが、かつて鶴瓶のアフロヘアーを切った美容師だったのだ。 盟友である立川志の輔は「鶴瓶師匠と話していると、『あれ、この師匠は世界中の人と繋がってるんじゃないかな? 地球の中心は、この人なんじゃないかな』」と錯覚するほどだと語っている。 それをもっともよく堪能できる番組が、2017年に放送20周年を迎えた『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK総合)だ。 この番組こそ、鶴瓶の人や場所や時間へのスケベさを体現している番組だろう。 鶴瓶がゲストと二人でとある場所を訪れ、そこで出会った人たちに家族の話を聞くというだけの番組。 今でこそ、何も決めない、何も作らない、文字通りの「ぶっつけ本番」の旅であるが、はじめからうまくはいかなかった。 10年以上かけて鶴瓶の理想とする形にしたのだ。 出会う女性たちがみな、ばっちり化粧をしているのだ。 テレビの撮影のために準備し、作られていたのだ。 それは1995年に放送された『家族に乾杯』の前身番組『さだ&鶴瓶のぶっつけ本番二人旅』でのことだった。 さだまさしが以前、谷汲村の歌を作ったことがある縁で、そこを訪れるという企画だった。 鶴瓶はタイトル通り「ぶっつけ本番」だと思っていた。 だが、通常の旅番組がそうであるように、スタッフは事前にロケハンをし、面白くなりそうな人や場所を用意していた。 当然のことである。 ましてやNHK。 きっちり作り込むことが正義なのだ。 だが、鶴瓶は絶対に作ったらいけないと考えていた。 鶴瓶は急遽、さだまさしと別れ、勝手にさだのコンサートをしようと動き出す。 楽器を持っている人を探し、ギターを借りる。 道行く人たちに手当たり次第に声をかけ、人手も集めた。 コンサートにはライトが必要となれば、走っているトラックを追いかけ、積んでいた工事用のライトを借り、お手製のステージを作り上げた。 もちろん、最初から村でコンサートするという企画ならば、もっとちゃんとしたステージが出来ただろう。 しかし、村の人たちを巻き込んで手作りで、その場で作り上げることが鶴瓶には大事だったのだ。 それが『家族に乾杯』の原点だった。 筆者の僕は幸運にも一度、この番組のロケに密着する機会を得たことがある。 そこで驚いたのは、鶴瓶の「作らない」ことへの徹底したこだわりだった。
次の旅番組でしばしば起こる「出会い」の多くが仕込まれたものであることは、いまや公然の秘密といっていいでしょう。 しかし、そんな風潮に真っ向から逆らう番組、それこそが『家族に乾杯』(NHK)です。 「作ったらアカン。 段取ったらダメ」とカメラのはるか先を歩く鶴瓶師匠のまわりでは、なぜいつも奇跡が起こるのでしょうか。 「出会いの天才」の真髄 2010年、鶴瓶はマクドナルドのCMに起用された。 マクドナルドの「M」と鶴瓶の「M」字ハゲが合致するのが起用の理由ではないかと言って、鶴瓶はその会見で笑わせた。 そのCMのコピーは「出会いの天才」。 まさに鶴瓶をよくあらわした言葉だ。 戸部田誠『笑福亭鶴瓶論』(新潮新書) ちなみに、このCM撮影でも「出会いの天才」っぷりを発揮する。 偶然、CMに美容師役として出演していたのが、かつて鶴瓶のアフロヘアーを切った美容師だったのだ。 盟友である立川志の輔は「鶴瓶師匠と話していると、『あれ、この師匠は世界中の人と繋がってるんじゃないかな? 地球の中心は、この人なんじゃないかな』」と錯覚するほどだと語っている。 それをもっともよく堪能できる番組が、2017年に放送20周年を迎えた『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK総合)だ。 この番組こそ、鶴瓶の人や場所や時間へのスケベさを体現している番組だろう。 鶴瓶がゲストと二人でとある場所を訪れ、そこで出会った人たちに家族の話を聞くというだけの番組。 今でこそ、何も決めない、何も作らない、文字通りの「ぶっつけ本番」の旅であるが、はじめからうまくはいかなかった。 10年以上かけて鶴瓶の理想とする形にしたのだ。 出会う女性たちがみな、ばっちり化粧をしているのだ。 テレビの撮影のために準備し、作られていたのだ。 それは1995年に放送された『家族に乾杯』の前身番組『さだ&鶴瓶のぶっつけ本番二人旅』でのことだった。 さだまさしが以前、谷汲村の歌を作ったことがある縁で、そこを訪れるという企画だった。 鶴瓶はタイトル通り「ぶっつけ本番」だと思っていた。 だが、通常の旅番組がそうであるように、スタッフは事前にロケハンをし、面白くなりそうな人や場所を用意していた。 当然のことである。 ましてやNHK。 きっちり作り込むことが正義なのだ。 だが、鶴瓶は絶対に作ったらいけないと考えていた。 鶴瓶は急遽、さだまさしと別れ、勝手にさだのコンサートをしようと動き出す。 楽器を持っている人を探し、ギターを借りる。 道行く人たちに手当たり次第に声をかけ、人手も集めた。 コンサートにはライトが必要となれば、走っているトラックを追いかけ、積んでいた工事用のライトを借り、お手製のステージを作り上げた。 もちろん、最初から村でコンサートするという企画ならば、もっとちゃんとしたステージが出来ただろう。 しかし、村の人たちを巻き込んで手作りで、その場で作り上げることが鶴瓶には大事だったのだ。 それが『家族に乾杯』の原点だった。 筆者の僕は幸運にも一度、この番組のロケに密着する機会を得たことがある。 そこで驚いたのは、鶴瓶の「作らない」ことへの徹底したこだわりだった。
次のContents• 番組はどのようにして作られるのか 毎回違った「ゲスト」にどのあたりを訪れたいか?そこで何をやりたいか?をリクエストして訪れる地方を決めています。 ゲストの出身地方面や、ゲストと何かゆかりがあるところが多いようです。 場所が決まったらスタッフが事前に一泊二日で下見をします。 ある程度番組のイメージができるようにするためです。 このときはその町の人にテレビの事前調査に来ていると絶対気づかれてはなりません。 気づかれたらぶっつけ本番ができなくなりますからね。 NHKの制作責任者は「番組のセールスポイントは、その地域の方の自然そのままの姿が写しだされるように、ぶっつけ本番を実施している」ことと言っています。 鶴瓶も「台本がなく、何も決まっていないから、予期せぬことが起こりそれが面白いのだ。 」と言っています。 ですから番組の進行としては特に台本などありません。 以下のようにして作られています。 そこに予期せぬ面白さが現れる。 そして番組は放送日、ロケ日、スタジオ収録日、と逆算から決めていって、最後にそれに添うゲストを決めるようです。 超多忙なゲストは日程調整でも大変ですね。 スポンサーリンク やらせは? 番組を見ている限りは「やらせ」はないように思います。 番組に出てこられる人々はいわゆる素人ばかりですから、「やらせ」があれば逆になんとなく不自然で分かると思います。 もちろん100人が100人とも全て好意的、協力的とは思えませんが、生放送ではないので後で編集して、非好意的、非協力的な方は放送しなければ良いだけですからね。 今や国民的スタートなった鶴瓶、そして「鶴瓶の家族に乾杯」という番組がメジャーでNHKで全国放送されていることから、自分たちの地域に来てくれたと歓迎の気持ちが強いのだと思います。 ですから最初はなかなか大変だったと思いますが、そこは鶴瓶に力があったのだと思います。 ぶっつけ本番!? 先ほども述べましたが、スタッフが事前に一泊二日で下見をしています。 そういう意味からは「ぶっつけ本番」とは言い難い部分はあります。 しかし、台本や事前打ち合わせなどは一切なく、鶴瓶やゲストの行動しだいで番組が進行していきますから、「ぶっつけ本番」といっても良いのは番組を見ていて良く分かります。 見ていて台本などなく、地元の人たちとの会話の中からストーリーが出来上がっていくのが良く分かります。 そこが面白いところでもあり、驚きやら感動やら笑いやら、時には運命的なことなども感じることもありますね。 ドラマなどはある程度先が読めるところがありますが、この番組は全く先が読めませんからね。 ハプニングは? 当然、ハプニングはあります。 というか、この番組はハプニングの連続で成り立っています。 ただ、時には放送しにくい、しないほうが良いのではと思うハプニングもありましたね。 たとえば2012年3月12日に放映された東北大震災の被災地「陸前高田市」を震災1年後に訪ねた時に、元気な子にインタビューしたときのことです。 tanteifile. 芸能人が来たということではしゃいでいた子に思わず「お父さんは、お母さんは」と鶴瓶が尋ねてしまい、父親は消防団で津波に流されて亡くなってしまった。 思わずその子は「お父さんのことを思い出し、悲しみにくれてしまった。 」そのことが番組に放送されました。 もちろん、放送して良いかは母親の承諾を取ってからのことです。 その子に鶴瓶が被災地を勇気付けるために来たということが伝わったのでしょう。 また、2016年7月4日に放映された山本耕史が登場したとき、地元の青年に堀北真紀の旦那さんになった人ですね。 堀北真紀のファンだった青年は「全国の堀北真紀ファンの一人で傷ついた一人である。 naver. 石田三成役を演ずることを知ると「やられちゃうんだ、ざまあ見ろですね。 」と言ってしまいましたね。 これには堀北ファンは思わず代弁してくれてありがとうという気持ちになったでしょう。 この2つの話からも、放送するかどうか迷ってしまうハプニングが起きてしまい、このことからも「ぶっつけ本番」であることが伺えますね。 まとめ• 番組を見ていると「やらせ」はないように思います。 ぶっつけ本番であることが分かるハプニングの連続であることが番組から伺えます。 あっと驚くハプニングも時にはあり、やらせでないことがそのことからも伺えます。 特に感じたのは「お父さんは?」の震災地訪問の時と、山本耕史の「堀北真紀」事件ですね。 まだまだ、放送は続くと良いですね。 そしてあっと驚くハプニングをまた見たいものです。
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