遺族年金が支給される金額 愛する家族の死は考えたくはありませんが、何があるかは分からないのが人生です。 病気や事故で急に配偶者が亡くなってしまった場合、残された家族は非常に不安になってしまうことでしょう。 近年は夫も妻も仕事を持つ共働き世帯が増えています。 2人で家計を支えていた場合、残された家族は悲しみを乗り越え、今後は1人で家計を支える生活費が必要です。 遺族には国から「遺族年金」が支給されます。 遺族年金は亡くなった配偶者の条件でもらえる金額が異なります。 今後もしものときに、どのくらい備えておけばいいか、遺族年金についての知識を持っておきましょう。 遺族年金とは 遺族年金とは、国民年金や厚生年金保険の被保険者や、被保険者であった人が亡くなったときに、亡くなった人と一緒に生計を維持していた家族が受け取る年金です。 (*被保険者であったとは、被保険者の資格を取得した日からその資格を喪失した日の前日までの期間のことです) 遺族年金のしくみと金額 遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。 亡くなった人が国民年金加入者であれば「遺族基礎年金」を、厚生年金加入者であれば「遺族厚生年金」がそれぞれ支給されます。 また、要件に合えば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されます。 遺族年金は細かい受給要件がありますので、受給要件と金額を見てみましょう。 例えば子供が2人いる家庭で、受給要件を満たしている夫が亡くなった場合、遺族基礎年金は年間1,227,900円となります。 遺族厚生年金 遺族厚生年金は、計算式が少し複雑なので、下記表の平均標準報酬月額別の概算金額を参考にしてください。 (*遺族厚生年金は加入歴が300カ月未満でも300カ月とみなして計算します) 平均標準報酬月額 25万 35万 45万 遺族厚生年金(年額) 約40万 約56万 約72万 平均標準報酬月額とは、今まで貰ってきたおおまかな給料の平均と考えてください。 遺族年金が支給される要件は複雑です。 支給の要件を妻、夫別にモデルケースで分かりやすく確認してみましょう。 遺族年金が支給される要件とは 遺族年金支給の前提は国民年金に滞納がないことです。 この滞納がないというのは、亡くなった2カ月前まで1年間支払いの滞納がないことを指します。 (免除期間も含めます) 厚生年金については会社員の場合、給料から天引きされていれば支払いができています。 給料明細を確認してみてください。 また、退職後に厚生年金に加入していなくても、死亡した原因が厚生年金加入中の傷病の場合、初診日が5年以内であれば対象となります。 平成27年10月から公務員も、以前の共済年金が厚生年金になっているので確認しましょう。 夫死亡、妻の場合• ここで注意してもらいたいのは、「子」とは18歳未満(障害がある場合は20歳未満)を指します。 ただし、18歳未満でも婚姻をしている場合は対象外なので気をつけましょう。 遺族厚生年金は、夫の平均報酬月額が25万円で計算をすると年間約40万支給されます。 この家族の場合であれば遺族年金は年間約140万円です。 妻死亡、夫の場合• 例)妻Bさん50歳(会社員)死亡時、夫50歳、長男21歳、次男19歳、長女13歳 遺族基礎年金は、子が1人分加算されますので約100万円です。 この場合、18歳未満の長女のみ「子」としてカウントします。 遺族厚生年金は妻死亡時の夫の年齢に注目してください。 妻死亡時に夫が55歳以上でなければ、夫は対象者になれません。 遺族厚生年金は子も対象者ですので、この場合は子が遺族厚生年金を受け取れます。 子供がいない場合 遺族年金は死亡した人によって生計を維持されていた人の今後の生活費を賄う意味合いが強い年金です。 対象年齢の子がいない場合、遺族基礎年金は支給されません。 ここでのポイントは、子がいないと遺族基礎年金は、夫または妻、どちらが死亡しても残った配偶者は貰えないということです。 夫死亡、妻の場合• 例)夫Cさん55歳(会社員)死亡時、妻50歳、子どもなし 遺族基礎年金は貰えません。 この家族のケースは、遺族厚生年金のみ支給対象になります。 妻死亡、夫の場合• 例)妻Dさん45歳(会社員)死亡時、夫50歳、子供なし このケースの夫は、遺族基礎年金と遺族厚生年金両方とも対象外です。 ただし、遺族厚生年金は妻の父母や祖父母も対象者ですので、妻の父母や祖父母がもらえます。 支給開始は60歳からとなっています。 遺族年金支給条件のまとめ 遺族年金は受給者が誰かで支給されたり、されなかったりします。 下記の表に簡単にまとめていますので、参考にしてください。 受給者 遺族基礎年金 遺族厚生年金 子がいる 妻 支給あり 支給あり 夫 支給あり 支給あり 子がいない 妻 支給なし 支給あり 夫 支給なし 支給あり 子 支給あり 支給あり 父母、祖父母 支給なし 支給あり 妻に先立たれると夫が大変 遺族年金は配偶者の死後、家計を支える生活費の意味合いが強い年金です。 しかし、制度が現代の夫婦の労働形態に追いついていません。 昭和の時代は夫のみが働き家計を支える世帯が主流でした。 しかし、現在は夫婦で共働きをして家計を支える世帯が増えています。 子がいる妻が残された場合、遺族年金は手厚いのですが、夫が残された場合は、受給要件が厳しいのが現状です。 妻が先立った後の夫の生活を考えるのも現代の問題です。 遺族年金は女性に優遇措置 遺族厚生年金には40歳以上の女性に優遇措置があります。 中高齢寡婦加算 妻には40歳から65歳になるまでの間、要件を満たした場合、遺族厚生年金に584,500円(年額)が加算されます。 夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で、子がいない妻• 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。 (子の年齢が対象から外れた場合など) 遺族年金が貰えない場合もある 遺族基礎年金は対象年齢の子がいないと支給されませんが、遺族厚生年金も支給が制限される場合があります。 5年間の期限付き給付 夫の死亡時点で、30歳未満の子がいない妻は、遺族厚生年金が5年間の期限付き給付になります。 しかし、夫の死亡時点で30歳以上の子のいない妻は、再婚しない限り生涯に渡り遺族厚生年金を受け取れますので、受け取り額に大きな差がでます。 まとめ ライフスタイルはさまざまですが、備えるべき相手や時期を明確にしておくことが大切です。 もしものとき、残された家族の生活を守れるのは、今生きているあなた自身です。 遺族年金が受給できない時期などを考慮し、手厚く保障を掛けておくなどして、残された家族の生活を考えておきましょう。
次の遺族共済年金 受給要件 組合員の方や退職共済年金等を受けている方などが、次の1から4のいずれかに該当したときは、遺族の方に遺族共済年金が支給されます。 組合員の方が死亡したとき。 組合員であった間に初診日がある傷病により、退職後、その初診日から5年以内に死亡したとき。 障害共済年金(1級、2級)の受給権者または障害年金(1級~3級)の受給権者が死亡したとき。 1から3を「短期要件」といいます。 組合員期間等が25年以上の方または退職共済年金等の受給権者の方が死亡したとき。 4を「長期要件」といいます。 (注)• 短期要件と長期要件の両方に該当するとき(たとえば、組合員期間等が25年以上の組合員の方が死亡したときなど)は、遺族の方の申出がなければ「短期要件」に該当することとされています。 短期要件による遺族共済年金の額の計算においては、300月みなしの保障措置があります。 「組合員期間等が25年以上」についてはをご覧ください。 配偶者および子• 祖父母 (注)• 子や孫については、18歳に達した日以後の最初の3月31日までの間にあってまだ配偶者がない方か、組合員若しくは組合員であった方の死亡当時から引き続き障害の程度が1級又は2級に該当している方となります。 夫、父母、祖父母は60歳以後の支給となります。 生計維持関係については、加給年金額が支給される場合と同様の取扱いとなっていますので、詳しくはをご覧ください。 年金額 遺族共済年金は、次の合計額となります。 なお、遺族共済年金の額は、受給要件が「短期要件」であるか「長期要件」であるかにより、計算方法が異なります。 短期要件 年金額を構成する各種金額の計算式は以下のとおりとなります。 厚生年金相当額(AとBを比較して高い方の額) A.本来水準額(イとロの合計額) B.従前保障額(イとロの合計額) 注1 組合員期間の総月数が300月未満のときは、イ、ロのそれぞれの額に換算率(300月/組合員期間の総月数)を乗じます。 注2 昭和13年4月1日以前に生まれた方は、0. 999に読み替えます。 職域加算額(AとBを比較して高い方の額) A.本来水準額(イとロの合計額) B.従前保障額(イとロの合計額) 注1 組合員期間の総月数が300月未満のときは、イ、ロのそれぞれの額に換算率(300月/組合員期間の総月数)を乗じます。 注2 昭和13年4月1日以前に生まれた方は、0. 999に読み替えます。 妻加算額 584,500円 妻が遺族共済年金を受ける場合で、40歳から65歳に達するまでの間、加算されることになっています。 したがって、妻が65歳となったときは、妻加算額が加算されなくなりますので、その分年金額が減額となりますが、ご自身の老齢基礎年金が支給されます。 老齢基礎年金の請求については、最寄りの年金事務所へおたずねください。 なお、国民年金の遺族基礎年金を併せて受けることができるときは、その間、この妻加算額は支給が停止されます。 長期要件 年金額を構成する各種金額の計算式は以下のとおりとなります。 厚生年金相当額(AとBを比較して高い方の額) A.本来水準額(イとロの合計額) B.従前保障額(イとロの合計額) 注 昭和13年4月1日以前に生まれた方は、0. 999に読み替えます。 職域加算額(AとBを比較して高い方の額) A.本来水準額(イとロの合計額) B.従前保障額(イとロの合計額) 注1 組合員期間の月数が240月 20年 未満であるときの給付乗率は、1/2を乗じます。 注2 昭和13年4月1日以前に生まれた方は、0. 999に読み替えます。 妻加算額 584,500円 妻が遺族共済年金を受ける場合で、組合員期間が20年以上あるときに限り、40歳から65歳に達するまでの間、加算されることになっています。 なお、国民年金の遺族基礎年金を併せて受けることができるときは、その間、この妻加算額は支給が停止されます。 遺族基礎年金について 遺族共済年金を受給できる方が、次の1、2のいずれかの条件に該当するときは、原則として、国民年金法による「遺族基礎年金」があわせて支給されます。 遺族共済年金を受給できる配偶者で、子(注)がいるとき• 遺族共済年金を受給できる子がいるとき (注)子については、[遺族の範囲と順位]の(注1)をご覧ください。 この場合、「組合員若しくは組合員であった方の死亡の当時から引き続き障害の程度が1級または2級に該当している方」は、20歳未満の方に限られます。 遺族基礎年金の額 子の人数 年金額 2人のとき 224,300円 3人目から1人につき 74,800円 遺族共済年金の失権 遺族共済年金を受けている方が、次の1から4のいずれかに該当したときは、その受ける権利はなくなります。 死亡したとき• 婚姻したとき• 直系の血族または姻族以外の方の養子になったとき• 子や孫である方が18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき 子のいない30歳未満の妻に対する遺族共済年金について 平成19年4月以降、夫の死亡により30歳未満で遺族共済年金を受けることになった妻の場合、有期給付となることがあります。 1 30歳未満で遺族共済年金を受けることになった妻に子がいないとき 遺族共済年金の受給権は、5年間が経過したところで消滅します。 2 30歳未満で遺族共済年金を受けることになった妻に子がいて、国民年金法による遺族基礎年金を受けられるとき 妻が30歳に到達する前に遺族基礎年金の受給権が消滅した場合には、そのときから5年間が経過したところで遺族共済年金の受給権は消滅します。 (注)子とは、18歳未満 18歳到達の年度末まで の子、または20歳未満で障害の程度が1級、2級に該当する子をいいます。
次の「 遺族年金」とは、 日本年金機構が扱う公的年金で、 ・ 国民年金から支給される「遺族基礎年金」 ・ 厚生年金から支給される「遺族厚生年金」 の2種類があります。 どちらも「加入さえしておけば、万一の時に遺族に支給されるもの…」、漠然とそう思っている人が多いのではないでしょうか。 しかしながら、 遺族年金には受け取るための条件があり、合致しない場合には支給されないこともあります。 とりわけ、 40代後半から64歳までの妻は最も公的保障が薄い「遺族保障空白世代」です。 今回は、 遺族年金の支給条件と期間について重点的にお話します。 nenkin. 20歳になると自動的に「国民年金被保険者」になるため加入手続きは不要ですが、 未納・滞納期間が多いと保障対象外となるので気をつけましょう。 「遺族基礎年金」はいくら支給されるのか 遺族基礎年金の支給額は加入期間にかかわらず、支給開始時点の「国民年金満額」と同額です。 【年金支給額】 約78万円(令和2年1月時点) 【支給加算額】 子の人数によって、次の金額が加算されます。 つまり、 「子がいない配偶者」や「末子が19歳以上の配偶者」には支給されません。 また、当初18歳以下の子がいて支給開始になったとしても、 子が成長して条件と合致しなくなった時点で支給は停止されます。 「遺族基礎年金」の支給対象から外れてしまった場合 該当する子がおらず「遺族基礎年金」を1度も受け取っていない場合には、 次の条件を満たすと「寡婦年金」か「死亡一時金」を受け取ることができます。 ただし、 どちらか一方しか選べません。 【死亡一時金】 【条件】 保険料納付期間(免除期間を含む)が3年以上ある者が、「老齢基礎年金」「障害基礎年金」を受け取ることなく死亡したとき 【支給金額(一時金タイプ)・対象者】 支給金額: 死亡した者の「保険料納付月数」に応じて12万円~32万円。 「子の有無」や「妻の年齢」、「婚姻期間」など、さまざまな条件によって 「遺族基礎年金」も「寡婦年金」も受け取れなかった場合には、一時金として受け取れます。 ただし、 被保険者死亡時より2年以上が経過すると権利失効となるので気をつけましょう。 nenkin. パート勤務でも、勤務時間や契約期間によっては加入できます。 また、闘病のために退職していても 「在職中に発症して、初診日から5年以内に死亡」した者は、厚生年金被保険者と同様に支給対象として扱われます。 手続きは会社が行い、保険料も給与天引きで納められるため、未納や滞納を気にする必要はないでしょう。 この場合でも「国民年金」を手放すわけではありません。 国民年金には全ての人が加入しており、会社員には「厚生年金」が上乗せされる仕組みです。 「遺族厚生年金」は、いくら支給されるのか 個々の報酬(月収・年収)と生まれ年によって計算されるため、1人1人金額が異なります。 計算方法は次の通りですが、 正確な金額を知りたい場合には日本年金機構に相談してください。 「遺族厚生年金」支給対象者 ・ 死亡した夫によって生計を維持されていた「妻」 ・ あるいは、死亡した妻によって生計を維持されていた「妻死亡時に55歳以上の夫」 遺族厚生年金は「子の有無」を問いません。 また、該当する配偶者がいない場合には、「子」、「父母」、「孫」、「祖父母」の順で受給権が生じるため、 遺族のうち誰かが必ず受け取れる仕組みになっています。 ただし、 「子のない30歳未満の妻」は5年間の有期給付です。 この場合の「子(孫)」とは、 「18歳到達年度の末日 3月31日 を経過していない子」 「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子」 に限られます。 さらにプラスになる「中高齢寡婦加算」 遺族厚生年金を受け取っている妻が 条件を満たすと、次の金額が加算されます。 【加算額(年金タイプ)】 加算額:約58万円 支給期間: 妻が40歳から65歳になるまで 40代後半から64歳は、公的遺族保障の空白世代 それぞれの遺族年金の支給期間をまとめると、次の図の通りです。 図では、妻の年齢・子の有無以外の条件は、全て満たしていると仮定しています。 育児がひと段落した 40代後半から老齢年金が始まる前の64歳までが最も公的遺族保障が薄くなっているのがお分かりいただけると思います。 ちょうど民間保険の「高額死亡保障を下げる」見直しを検討する頃ですが、その前に1度「もしもの時」について話し合っておいたほうがよいかもしれません。 「遺族保障空白世代」は対策を検討 公的遺族保障の空白世代には「生命保険の死亡保障」が必要不可欠と言えます。 妻(受取人)が65歳になるまでを受取期限として毎年少しずつ受け取れる年金タイプの死亡保障であれば、だんだんと保障総額が減る分保険料を節約できます。 国民年金基金や付加年金は老齢年金の増額には有効ですが、遺族保障としては少額の一時金が支払われるだけです。 「遺族保障空白世代」を乗り切るために、しっかり自己対策しておきましょう。 (執筆者:仲村 希).
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