新型コロナウイルスへの感染状況を調べるため、日本でも「抗体検査」の準備が進められています。 「抗体検査」がそもそもなんなのか、簡単にご説明しましょう。 細菌やウイルス等の病原体が体内に入った時、人間の体は病原体と戦うだけでなく、病原体を分析します。 そして形の合うタンパク質を作り出し、体内に侵入した病原体と結合させ、毒を出したり増殖したりすることを防ぐのです。 (参照:) 抗体検査は、血液内にこの「抗体」が存在しているかどうかを調べる検査です。 (ちなみにですが、コロナウイルスに感染後、完治したからといって抗体を必ず持っているわけではありません) PCR検査と違い、検査には血液そのものを使用します。 簡易な抗体検査には「検査キット」というものがあり、そこに血液を垂らした後、しばらくすると線が出てきます。 その線の出方で抗体を持っているかどうかを識別するのです。 (これは簡易なキットの場合です。 精度を高める場合、もっと詳細な検査と時間が必要です) 抗体検査キット(イメージ) この抗体検査、人によっては「ゲームチェンジャー」(状況を変える存在)と呼ぶ人もいます。 なぜでしょうか。 抗体を持つ人から「コロナ前」の生活ができる? 今人々がなるだけ外に出ず、接触を少なくしているのは、コロナウイルスに感染するのを防ぐためです。 それなら堂々と、コロナウイルスが流行る以前のように経済活動を行ってもらったり、まだコロナに掛かっていない人同士の接触を中継したり、コロナに掛かってしまった人の面倒を見たり、といったことができるのではないか。 そして、そういった人が増えてきたら、また元の生活を取り戻すことができるのではないか、そういった考えがあります。 ウイルスの感染具合や致死率が分かる 更に抗体検査にはメリットがあります。 新型コロナウイルスは未だわかっていないことが多いウイルスです。 致死率も、精度が曖昧なPCR検査と死者数を照らし合わせて出した数値でしかありません。 しかも国ごとにかなりばらつきがあります。 しかし抗体検査は「今ウイルスに感染している人」はわかりませんが、「過去に罹って治った人」は分かる検査です。 それにより、どのぐらいの人が実は感染していたのか、どのぐらいのひとが治ったのか調べることが出来ます。 もし感染した人、治った人の数や分布がわかれば、今が感染拡大前なのか、ピーク時なのか、終焉期なのか判明します。 更には感染経路や、どういった行動が感染を流行らせたり、防いだりしているのか、(BCGや土足等あらゆる説がでましたが、未だ有効な説とはなっていません)解明する糸口になるかもしれません。 またどのぐらいの人が抗体を持っているのか判明することで、どの程度経済活動を復活させて良いのか、リスクをシミュレーションした上で実行することができます。 もしこの通りのことが起きるとしたら、確かに「ゲームチェンジャー」です。 残念ながら課題も多い 「そんなにすばらしいものならいますぐやるべきだ!」と思われたかもしれません。 確かにそれも間違っていません。 しかし抗体検査にはまだ課題が多いことも事実です。 抗体=免疫ではないため、2度目の感染の可能性もありえる。 抗体は確かに、2回目同じ病原体が来た際、防御の主役として働きますが、抗体があるからといって免疫まで持っているわけではありません。 「だが、抗体反応が起きることが、免疫獲得を意味するかどうかは別の問題だ」と、WHOの新興感染症対策部門を率いるマリア・ファン・ケルクホーフェ()氏は述べる。 「免疫という文脈で、抗体反応をどう捉え得るのか。 われわれが真に理解する必要がある点だ」 中国や韓国でも、一度感染した後、再度症状を確認した事例がいくつかあります。 (参照:) 決して抗体をもっているからといって、安心はできないのです。 「完璧な検査方法」がまだ確立してない さらに問題としては、検査キットがまったくもって完璧でないことです。 例えばイギリス政府は先月末頃に350万本の抗体検査キットを中国に発注しました。 急ぎ発送された検査キットのうち1750本を、英国内の企業9社に試験させたところ、大量使用のできるほど信頼性のあるテストキットは見つかりませんでした。 現在英国政府は、検査キットのメーカーに協力していますが、うまく行かない場合は中国に返金を求めるとのことです。 (参照:)(英語) また同じくインド政府も、中国の抗体検査キットを5億個程確保していました。 しかしながら精度が思わしくないため使用を取りやめるとのことです。 インドは医療制度が整っておらず、抗体検査に賭けていた部分もあり、大きなダメージが予測されます。 「例え精度が低くてもしないよりマシ」という声もあります。 しかし考えてみて下さい。 例えば多くの人のもとに検査キットが届けられたとしましょう。 一部の人が、「抗体を持っていないにもかかわらず、抗体を持っている、と結果が出た」場合、その人は「自分は抗体をもっている」と信じます。 そういう人が、コロナが流行る前の生活に戻ったり、コロナウイルス発症者のお世話をしたらどうなるでしょうか。 多くの悲劇が起きてしまいます。 まだ治ってる途中かもしれない また、例え精度の高い抗体検査ができたとしても、更に問題があります。 「抗体がある」ということは「治った」訳ではないのです。 今回の新型コロナウイルスでは、無自覚感染者が多い、というニュースは聞かれているかと思います。 その「無自覚感染者」が精度の高い抗体検査を受け、正しく「抗体がある」と結果が出たとします。 しかし、抗体があってもまだその抗体がコロナウイルスと戦っている最中かもしれません。 「抗体がある = 感染す心配がない」という誤った認識のまま、喜びいさんでコロナ前の生活に戻ったり、高齢の両親の元を訪れたりしたらどうなるでしょうか。 ある種「抗体を持っている人」は「まだ罹っていない人」より危険な場合があるのです。 (参照:)(英語) あくまで一つの調査として行うのがベスト 他にもいろいろな問題が提起されています。 「免疫パスポート」を作り、感染する可能性の低い人から経済活動に復帰してもらおう、という案もありますが、抗体を持っている人、持っていない人の間で起こる格差や、「抗体を持っている人がうらやましい」という意識から、外に出始める人がでてくるかもしれません。 また、血液を使う以上、衛生や感染リスク等を考えなければならず、そうなると医療リソースを使っていいものなのかどうか、考える必要も出てきます。 しかし抗体検査が有用なのも事実です。 今はとにかくコロナウイルスに対して、多くのことを知る必要があります。 感染具合、致死率等を知ることで、医療リソースを適切に配分したり、ピークに備えたりすることが出来ます。 (いっそ検査だけして、本人には結果を知らせない、ということで色々な問題が解決するかもしれませんが……国民感情的には難しいかもしれません) 冒頭にも述べたとおり、政府は抗体検査の意向を示してはいますが、未だ検査キットの精度や、「密」を作ったり医療リソースを消費することなく、大量の人数を検査する方法等に、頭を悩ませています。 いずれにせよ一番今避けなければいけないのは混乱です。 「いち早く検査してほしい!」と思うのも自然な感情ですが、今は静かに待ちましょう。 有料の検査や、今後の政府が行う検査で「抗体を持っている」と判断されたとしても、喜び勇んで人々と接触するなら悲劇が起こります(理由は先程述べたとおりです) あくまで、「人類がコロナウイルスを解明するための検査」として、粛々と受け止めるのがベストなのかもしれません。 (参照:)(英語).
次の峰 宗太郎 京都大学薬学部卒業、名古屋大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。 国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所、獨協医大埼玉医療センター勤務等を経て2018年より現職。 国内外で得たスタンダードな医療知見の元、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。 医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。 専門は病理学・血液悪性腫瘍・感染症の病理診断、ウイルス学、免疫学。 予防医療普及協会顧問。 ニューノーマルに備える重要トピック解説 ニューノーマル時代には、どのような前提でビジネスを構築し、遂行していけばいいのか。 さまざまな識者のインタビュー、寄稿からコロナと共存しながら事業を継続する鍵を探る。 峰 宗太郎(みね・そうたろう) 京都大学薬学部卒業、名古屋大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。 国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所、獨協医大埼玉医療センター勤務等を経て2018年より現職。 国内外で得たスタンダードな医療知見の元、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。 医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。 専門は病理学・血液悪性腫瘍・感染症の病理診断、ウイルス学、免疫学。 (一社)予防医療普及協会顧問。 現在、新規感染者数が落ち着いて流行状況が一時的に収まっており、医療施設の占有率、特にICU病棟に余裕が生まれてきているのは事実だ。 ところが、緊急事態宣言解除前と比べて、基本的な状況は何も変わっていない。 つまりウイルス(に感染した人)は社会に存在し続けており、もし感染が起きてしまっても広げないことが重要で、専門家会議も述べている「新しい生活様式」のような感染予防が常に必要になる。 それぞれが距離を取る、手をしっかり洗う、マスクをしっかり着ける。 一般生活に取り入れられる行動の変化によって、感染を抑えなければならない。 では、これが大前提にある上で、何を指標にし、どんな情報に企業や個人が注目すべきか。 まず、流行状況だ。 新規感染者数、感染が起きている地域、クラスターが発生している場所、これらに注視して、リスクを低減する行動に結び付けていただきたい。 例えば、東京で再び感染が増えている中で、夜の接待を伴う飲食店などで発生しているとの情報がある。 それ以外に注目すべきなのが、1人の感染者が平均何人に感染させるかを示す「実効再生産数」だ。 その他、街の混雑度、医療機関の占有度(特にICU病床)、いろんな公的なチャネルから情報を拾い、東京アラートのような指標も基準にするといい。 さらに個別には、感染症コンサルタントなどとともに、具体的なガイドラインを策定するのが望ましい。 例えば、会社として夜の接待は自粛するなどといった具体的な内容を決めるのも重要だ。 職場における感染対策について、厚生労働省や産業医による日本産業衛生学会が指針を出し、オフィスや通勤時での注意点を示している。 身近な軍師として、産業医を活用いただきたい。
次のPR 抗体検査メリットデメリットを知っておこう 抗体検査を受けることができれば、 誰でも簡単に血液一滴で15分後には抗体反応が分かるので。 過去に陽性反応があったかが分かることでうつされる心配もうつす心配もなくなるので 「 自分は免疫があるのだ」と安心して職場復帰ができるので医療機関で戦う人たちにとって家族に安心して会えるためメリットはとても大きいと言われています。 がデメリットもあります。 抗体検査は精度がPCR検査より悪いことです。 中国で製造された抗体検査キットを何百万セット購入したイギリスは精度が悪すぎて使えないとして返品して返金騒動を起こすほどでした。 どの企業も自信満々で販売していても「その検査は本当に問題ないのか?精度は何%か?」が明確ではない場合が多いです。 もう一つは「 新型コロナウイルスは一度感染しただけで免疫ができて本当に安全かが明確ではない」ということです。 様々なメディアでもいまだに議論されていますがPCR検査で陽性だった人が陰性になり退院後に再び陽性反応が出た事例もあります。 何度も掛かる可能性のあるいまだ未知のウイルスであるため抗体検査で安心できるとは誰も明確にできていません。 実はメリットが多く報道されている抗体検査ですが、精度が低い、信頼性が低い、 更に「新型コロナウイルスに対する情報が少なすぎる」おかげで誰もが胸を張ってこれを使えば安心ですね。 とは言えないのが現状です。 PR 抗体検査はどこで受けることができるのか? 実は日本で販売されている新型コロナ抗体検査を行っている医療機関は見つかっておりません。 私の調べ方が悪い可能性もありますが、少なくとも日本のクリニックで「新型コロナの抗体検査行っています」などを載せたブログやHPは見つかっておりません。 PCR検査が受けれないなら抗体検査を受けよう!と言う人も多いはずなのでビジネスチャンスだとは思うのですが現時点(2020年4月13日)では日本の医療現場やクリニック等では新型コロナ抗体検査を受けることはできない可能性が高いです。 ただし、確実に 日本には「新型コロナ抗体検査キット」は医療・研究向けに販売されているので、例えば大学病院などの大きな病院に問い合わせしてみるのも良いかもしれません。 日本で販売されている抗体キットは? 現在日本で購入できるコロナ検査キットが確認できたのは3つです。 (韓国薬事承認済)• (中国薬事承認)• (オーストラリア薬事承認済)• (中国で千件の臨床試験のみ) が1は 韓国製で2・3は 中国製なので例のイギリスで返品騒動のあったどれかの可能性があるので注意が必要ですね。 4のクラボウは国内メーカーが作った抗体検査キットです。 が「 本製品の使用による発生した損害及び損失について弊社は責任を負いません」と書かれているので・・・怖いです。 これらは個人購入ができるのか? 抗体検査は個人購入は可能か? 現時点では抗体検査キットを個人で購入することはできません。 ヤマト科学で販売している「GenBody Inc. 抗体迅速検出キット」も「イノビータ」「オールテスト」「クラボウ製)も現時点では 「個人向けではなく研究用として販売しています。 医薬品医療機器法に基づく体外診断薬用医薬品として承認・認証等を受けておりません。 診断目的では使用できません。 と書かれているので日本では個人での使用が制限されている可能性があります。 が、逆に日本で承認されていないから個人で購入ができると大々的に宣伝できないだけで、実は個人である程度の暗黙の了解が理解できれば購入できたりするのでしょうか・・・・? 興味はありますが勇気のある人は各検査キット販売代理店に問い合わせしても良いかもしれません。 まとめ:日本の承認を待った方がいいかも 承認を急いでいることを願うしかありませんが抗体検査を販売している機関は全て研究向けに販売している限り個人で購入するのは待った方がいいかもしれません。 日本での抗体検査の臨床結果が出ない限りは前述したとおり「抗体検査の精度が悪いのか?信頼できるのか?」が不明なままです。 現時点では焦って購入すべきではないと思います。 以上です。
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