失業者も死者も多い米国の現状 コロナウイルスは多くの死者を出しましたが、ウイルスとの戦いは多くの失業者も出しています。 日本ではまだそこまで多くありませんが、アメリカのように解雇が容易な国では顕著です。 Weekly jobless claims hit 3. 84 million last week, higher than economist expectations of 3. 5 million. The total brings the rolling six-week figure to 30. 3 million. 先週の失業保険金請求は、384万件に達し、経済学者が予想した350万件を超えました。 6週間の合計では、3000万件を超えます。 グラフで見ると一目瞭然、リーマンショックと比較にならないほどの失業者が発生していることが分かります。 この数字は1930年の大恐慌以来の数値です。 — ロイター ReutersJapan 規制解除を求めるデモと、ロックダウン継続を求めるデモ隊が衝突 しかしアメリカは感染者数・死者数も多い国です。 コロナ感染者は100万人を超え、死者数は5万8千人を超えました。 参考までに、日本の確認された感染者は14,305人、死者数は455人です(5月1日現在) それほどの「悲劇」に見舞われている国ならば、ロックダウンし、早く終息することが大事にも見えますが、アメリカの半分の州は、飲食店や小売店の営業を再開させることを検討しています。 なぜそのような判断をしようとしているのでしょうか。 一概に「命の軽視」とも言えない状況 ロックダウンを積極的に支持している人は、「命よりも経済を優先するのか」と、規制緩和派に詰め寄ります。 しかし、アメリカの場合一概にそのような二元論で語ることは難しいかもしれません。 アメリカでお金を持っていないことは、そのまま死につながりかねないからです。 日本でもし病気になった時、たとえ失業し、口座残高が0円で、財布にお金がなかったとしても、医療を受けることが出来ます。 例えば「無料定額診療」制度があります。 地域ごとに設定された年収よりも低い場合、受診料が無料になるのです。 また、国民健康保険制度により、多くの治療は3割負担で受けられますし、高額医療費制度により一定の金額以上の医療費は払い戻されます。 しかしアメリカでは事情が変わります。 そもそもの医療費が高額です。 例えば日本でCTスキャンを撮る場合、全額負担うしたとしても18,000円~40,000円程度ですみます。 多くの人の場合、更にそこから3割負担となり5,000円~10,000円ですむのです。 アメリカの場合、 貧困層は保険にはいれませんし、さらに保険に入っていたとしてもCTスキャンは対象外だったり、何か病気を誘発するような生活習慣がないか、等厳しくチェックされます。 他にも、(週によって変わりますが)救急車が有料だったり、入院や手術で家を買えるほどの金額が請求されたりと、医療コストが日本とは段違いなのです。 トランプ大統領はしましたが、病気はコロナウイルスだけではありません。 そんな中で失業したらどのように感じるでしょうか。 命の危険を感じるのではないでしょうか。 他にも家賃を払えなくなった場合、(これも州によりますが)それほどの期間を置かず家から退去を命じられたり、ライフラインを止められることもあります。 アメリカでも一人当たり13万円の現金給付が決められましたが、病気の際それがどの程度助けになるかは怪しいところです。 また、滞在許可証を持たない移民 800万人という説有 や、字を読めない人 1600万人という説有 も少なくありません。 そういった人にとって、今回の経済危機は「命の危機」なのです。 「経済」を優先する国は他にも 他にもロックダウンより経済を優先するよう、決断した国はあります。 例えばブラジルでは累計感染者が8万5千人、死者数が5,900人を超えました。 一応外出自粛例は出ていますが、多くの店や人がそれを守っていません。 そもそも大統領自らが外出自粛に反対しています。 政治混乱も感染拡大の要因だ。 ボルソナロ氏は社会隔離政策を掲げる保健相を解任し、早期の経済再開を求める。 連邦政府と州知事が連携できておらず、一貫性のある政策がとれていない。 ボルソナロ氏は28日、死者数が増加していることについて「残念なことだ。 でも私にどうしろというのか」と述べ、批判を浴びた経緯がある 幾人かの著名人も「経済優先」の意見を上げています。 たとえばテスラのCEO、イーロンマスクは以下のように述べています。 テスラCEOのマスクはまた、トランプ支持者の投稿に「同意見だ」とリプライした。 「今回のパンデミックで最も恐ろしいのは、ウイルスそのものではない。 米国人が腐敗した政治家の意見に、たやすく操作されてしまうことだ」と、そのアカウントは述べていた。 また日本でもホリエモンこと堀江貴文氏が、飲食店や映画館等の自粛要請等に反対の意見を示しています。 専門家の人達は別にその業種が潰れても責任は取らなくていいからね。 損もしないし。 その対策がほとんど意味なくても。 一応やっとこーかー。 みたいな感じよね、こんなのに付き合ってらんねーよマジで。 今はとにかく「行動自粛」「感染封じ込め」が是とされていますが、 死者を多量に出しつつも、いち早く活動を再開した国が経済的に優位な位置を占めた場合、経済優先こそ正しかった、という声もあがるでしょう。 実際、経済再開派の方の声は日に日に大きくなっています。 これを書いている私自身、どちらを「正義」とも言い難いです。 コロナ封じ込めは全力を尽くすべき災厄ですが、経済的困窮が今の時代でも弱者の命を奪うことは、多くの国で見られている事実です(といっても日本では、しかるべき処置をとれば死ぬことはあまりありませんが) 結局のところ、全てが終わってみないとわからないのかもしれません。 人類が初めて遭遇する、と言っていいほどの大きな危機です。 今ある材料で「正義」を語るよりは、コロナ後の「反省会」で最適解を探り、次のコロナ、次の感染症、次の災厄時のマニュアルを作ることが重要かと思います。
次の24日、営業を再開した米ジョージア州アトランタの美容院(AFP時事) 【ワシントン時事】米国で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、南部ジョージア州が24日、制約していた経済活動の一部を再開させた。 科学軽視との強い批判を押し切る形で、感染拡大を防ぎつつ経済の痛みを和らげるという「実験」に動きだした。 米メディアによると、州都アトランタ近郊のボウリング場ではこの日、開店を待つ人の列ができた。 ある男性は感染リスクについて「外出するしないは自由だ」と自己責任を強調した。 美容院では、従業員がマスクと手袋を着け、来店した客には検温が行われた。 経済再開に動いた各州の中で、ジョージアは最も再開の幅が広い。 27日からは映画館やレストランの営業も可能になる。 同州では5日連続で死者が20人を超え、連邦政府が求める「感染者数の2週間に及ぶ低下傾向」という基準を満たさないまま、経済活動再開に踏み切った。 「安全な職場へ戻ろう」と訴えるケンプ知事(共和党)は、人と人との距離を保つことや、健康状態の確認により「リスクを最小化」すると主張する。 ただ、営業再開が可能となる業種にはマッサージ店なども含まれ、無症状の感染者を通じた感染拡大リスクが残る。 「数週間後には感染者が急増する」(アトランタ市長)という懸念は根強い。 企業や商店も慎重だ。 米メディアの取材に応じた理髪店主は不安を感じながらも「従業員の生活のため」と営業再開を決めた。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、百貨店大手メーシーズなど、州内での営業再開を控える企業が目立つ。 安全性のリスクに加え、入場制限で十分な利益が見込めない事情も影響しているという。 経済活動再開の旗を振ってきたトランプ大統領も及び腰だ。 24日のツイッターでは「彼(ケンプ知事)にはOKだとは一言も言っていない」と距離を置く姿勢を示した。
次のもっとも、米国が国家非常事態宣言を出したのは3月13日のこと。 外出禁止令などの影響が本格的に出るのは第2四半期(4-6月期)になる。 米議会予算局が4月24日に公表した予測では年率39. 6%のマイナスになるという、統計開始以来、誰も見たことのない数字になりそうだ。 深刻なのは失業が急増していること。 非常事態宣言以降の失業保険の新規申請件数は累計3300万件。 5月8日に発表された4月の雇用統計では、失業率は14. 7%に跳ね上がった。 絶好調だった2月の失業率は3. 5%だったから、その激変ぶりが分かる。 さらに5月も失業者は増え続けており、ミネアポリス連邦準備銀行のニール・カシュカリ総裁は、テレビのインタビューで、 「実際の失業率は最悪の場合23%まで高まっている恐れがある」 と指摘している。 1929年に始まった世界大恐慌では、全労働者の25%に当たる1300万人が失業したとされる。 それに匹敵する「コロナ大恐慌」に米国経済は直面しつつあるわけだ。 専門家からは時期尚早の声 それにもかかわらず、トランプ大統領が7月以降の経済に強気の見通しを示すのは、11月3日が投票日の大統領選挙が控えているからだ。 再選を目指すトランプ大統領にとって「経済失政」を追及される事態は何としても避けたい。 大恐慌真っ只中の1932年の大統領選挙では、経済崩壊を挽回できなかった現職で共和党のハーバート・フーヴァー大統領が、民主党のフランクリン・ルーズベルト候補に大敗を喫した。 その二の舞は避けたいという思いがにじむ。 もちろん、トランプ大統領の口先介入だけで景気が回復するわけはない。 それでも、新型コロナの蔓延が未だに収束する気配がなくとも、経済活動の再開へと大きく踏み出さざるを得ないのだ。 米国で外出禁止令(ステイ・アット・ホーム)が最初に出されたのは、カリフォルニア州の3月19日。 3月22日にはニューヨーク州などが外出禁止に踏み切り、その後多くの州が追随した。 それから1カ月たった4月半ばになると、各地で外出禁止令の解除を求めるデモが発生した。 このままでは、新型コロナで死ぬ前に、営業ができずに経済的に死んでしまう、という市民の焦りが背景に見える。 もともとトランプ大統領は、 「4月12日のイースターまでに、経済を再始動させる」 としてきたから、こうした解除要求のデモにも理解を示し、容認する姿勢を見せた。 デモの多くが民主党知事の州で行われており、参加者にもトランプ支持者が多いという点も無視できない。 4月24日には、全米で初めてジョージア州が外出禁止令を解除した。 当然、専門家からは時期尚早という声が上がった。 4月6日に1万人だった死者は、11日に2万人を突破、19日には4万人になっていた。 死者数の増え方を見る限り、新型コロナの蔓延が収束したとは到底言えない状況だった。 にもかかわらず、解除に抵抗を示す州知事に対してトランプ大統領は、 「自分には絶対的な権限がある」 と述べ、外出禁止令の解除を強く求めていく姿勢を鮮明にした。 5月1日にはテキサス州も解除に踏み切った。 さらにトランプ大統領は5月5日になると、マイク・ペンス副大統領が統括する「新型コロナウイルス対策タスクフォース」を解散するとぶち上げた。 同じ5日段階で米国内の死者が7万人を突破したことが明らかになったにもかかわらず、だ。 経済活動の再開に踏み切ったイースター明けには、トランプ大統領自身が死者予測を「6万〜6万5000人」に引き下げていたが、あっさりそれを上回った。 さすがにタスクフォースの解散は撤回したが、経済活動の再開は進めていく姿勢を今も保っている。 「これでゴルフに行ける」 そんなトランプ大統領の「危険な賭け」を参考にしたのだろうか。 安倍晋三内閣は5月4日、非常事態宣言自体は全都道府県に対して5月31日まで延長するとする一方で、重点的に対策を求める13の「特定警戒都道府県」以外の34県については、一定の感染防止策を前提に、社会・経済活動の再開を容認した。 具体的には、飲食店や小売店などに対して行ってきた休業要請を取りやめることを認めたのである。 これを受けて青森、岩手、宮城、鳥取、島根、香川、高知、宮崎などが休業要請の全面的な解除に踏み切ったほか、多くの県で一部業種の休業要請を解除した。 宮城県では飲食店やカラオケ店、ライブハウスなどを対象としていた休業・営業時間短縮要請を全面解除。 「経済が疲弊している」(村井嘉浩知事)というのが最大の理由だ。 特定警戒に指定された大都市圏の13都道府県以外で、休業要請を維持したのは福島、奈良、大分、沖縄の、ごく一部の県にとどまった。 「これでゴルフに行ける。 自家用車で行けば、屋外だし、安全だろう」 と、インタビューに答えていた市民もいたが、首都圏でも群馬県は、ゴルフ場やホテル・旅館などの休業要請の解除を決めた。 国は県境を越えた移動の自粛を引き続き求めているが、営業を再開すれば、他県からも客がやってくるのは明らかだ。 経済活動は再開されることになるが、新型コロナ蔓延のリスクは否が応でも高まってしまう。 国内での死者は、5月7日時点で600人を超えた。 100人を超えたのが4月5日だから1カ月前。 300人を超えたのは半月前の4月22日だ。 感染者数の増加はPCR検査の実施件数に左右されるが、死者の増加ペースを見る限り、収束過程に入ったとは言えないだろう。 「アベノマスク」すら届かない 「なぜ緊急事態宣言を全国に広げたんだという批判が根強くある」 と地方選出の政治家は言う。 感染者や発症者がほとんどいないのに、経済を止めてどうする、というのだ。 そんな声に安倍官邸は押されたという面も強い。 だがこれは「危険な賭け」だ。 全国に緊急事態宣言を拡大した4月16日以前、地方の危機感が乏しかっただけでなく、東京や大阪などから地方に遊びに行ったり、帰省したりする人がいて、そうした人が感染を拡大させていたことが分かっている。 要請解除で、再び人の動きが活発化し、蔓延を拡大させるリスクは十二分にある。 結局、新型コロナの蔓延が明確に収束に向かっていると言えない中で、休業要請の取りやめに踏み切らざるを得なくなったのは、休業に伴う補償や資金繰り対策が後手に回っているためだろう。 すったもんだの末に全国民に一律10万円の支給を決めたが、法律が国会で成立したのは4月30日。 支給申請が始まったのは早い自治体で5月1日からだ。 中小企業などに最大200万円を支給する「持続化給付金」も支給が5月8日に始まったものの、申請はすでに40万件を超えていて、実際に現金を手にできるまでには相当な時間がかかると見込まれている。 真っ先に決めた1世帯2枚の「アベノマスク」ですら、まだ届かない地域が少なくない。 どうせ現金給付にも時間がかかると多くの国民は諦めモードだ。 飲食店や小売店など、売上高が減少どころか「消滅」して、明日の支払いにも事欠く事業者は、一刻も早く資金を手にできなければ潰れていくことになる。 「帝国データバンク」によると、新型コロナの影響を受けた全国の倒産(法的整理と事業停止)件数は、5月7日までに119件にのぼるという。 ホテル・旅館が32件、飲食店が12件、アパレル・雑貨小売店が10件にのぼった。 だが、これもまだ序の口だろう。 政府の対策の遅れが、今後、続々と悲惨な数字となって現れる。 第2次安倍内閣発足直後の2013年1月から続いていた雇用者数の対前年同月比の増加も、4月で止まることになりそうだが、その数字は5月末になって表面化する。 経済の瓦解を許せば、比較的高い支持率が続いてきた安倍内閣の人気も一気に凋落する。 まさに大恐慌最中のフーヴァー大統領に自らを重ね合わせているのは、トランプ大統領だけでなく、安倍首相も同じかもしれない。 だが、収束傾向が見えない中での経済活動の再開という「危険な賭け」によって、再び感染が拡大すれば、次は強力な「ロックダウン(都市封鎖)」に踏み切らざるを得なくなる。 そうなれば、日本経済は最悪だと思える今以上の、深刻な危機に陥ることになる。 磯山友幸 1962年生れ。 早稲田大学政治経済学部卒。 87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。 その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。 現在はフリーの経済ジャーナリスト。 著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間——大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。 関連記事• (2020年5月11日より転載).
次の