この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 を参考にして、 物語全体の流れが理解できるように(も含めて)、をしないよう ご自身の言葉で。 ( 2015年11月)() なんでも直感的に行動する多柏学院の中等部の少年・直会カナエ(なおらい かなえ)はある日、先輩の山辺多梓の相談を受け、多柏学院の旧校舎へ入り、その旧校舎にあった不思議な扉へ踏み入った途端、謎の『星』に飛ばされてしまう。 その『星』にいたのは『星平線のそよぎ』と名乗る謎の少女で、彼女から「ズバリ、世界を救ってもらいます!! 」と告げられる。 一方、カナエを慕いながらも妹扱いされている女子小学生の一条摩芙(いちじょう まふ)も何かを感じ、悩みながらも決断し動き出そうとしていた。 登場人物 [ ] 主要登場人物 [ ] 直会カナエ(なおらい かなえ) 多柏学院の中等部二年生の男子生徒で、学生寮[黄葉館(こうようかん)]の男子寮に寮住まいしている。 性格は思い立てばすぐ行動する危なっかしい少年で、多柏学院とその周辺において危険人物として名を知られている。 しかし、彼のやる事は大抵素朴な善行で、ほぼ全てに成功していることから、扱いが非常に難しいと周囲に思われている。 突き進んで切り抜ける道筋を知る不思議な能力を持っており、カナエはこの能力を『 既(すんで)の道』と呼んでいる。 ある人から教わったと、1巻でカナエはそよぎに語っている。 1巻で先輩の山辺手梓から、放課後に旧校舎の点検の手伝いを頼まれ、手梓や里久や摩芙と共に旧校舎に赴き、一人きりになった時に『言づて妖精の扉』と学院で噂されている不可思議な扉を発見し、アクシデントでその扉に入ってしまい、扉にあった紋章の名前が『半開きの目』だと感じた瞬間、扉を通って不思議な星『キミが象る星』に到着する。 そして、その星で『星平線のそよぎ』と名乗る不思議な少女と出会い、彼女から世界を救ってほしいと頼まれる。 最初は断るがそよぎから、より見出す可能性の象徴『半開きの目』と誰知らず降りる破滅の象徴『半閉じの目』のことを聞き、破滅の元凶である『半閉じの目』を宿した人間をカナエの宿す『半開きの目』の力で見つけ出してほしいと説明される。 その翌日、学院に歪んだ運命の欠片『クレンペル』が大量にあふれているのを目撃した後、肩の上に現れたそよぎパペットから『半開きの目』の力である『 十字印(じゅうじいん)』の使い方を戦いながら教わる。 そして、クレンペルを蹴散らしながら『半閉じの目』を宿した手梓を発見するが、『ハインの手先』となった摩芙に邪魔される。 しかし、そよぎパペットと話しているうちに、手梓が捜していたのがそよぎであることに気付き、手梓をそよぎに会わせることで『死像』を崩壊させ、事態を収束した。 なお、カナエは自分の前に立ちはだかった『ハインの手先』が摩芙だとは気付いていない。 一条摩芙(いちじょう まふ) 多柏学院の初等部五年生の女子生徒で、[黄葉館]の女子寮に寮住まいしている。 大人しくて引っ込み思案な性格の美少女で、いつもカナエの側にいる、カナエの妹的な存在。 カナエに好意を抱いており、1巻の旧校舎で(アクシデントで)手梓の胸を掴んで顔を埋めていたカナエを見て、怒りのままにカナエに頭突きをする程である。 カナエにも内緒で、『半閉じの目』と呼ばれる謎の集団の一味『ハインの手先』として活動している。 1巻で旧校舎の点検を手伝っている最中に、唐突な呼びかけと知らされた事実から『ハインの手先』として動く時が来たことを知る。 その日の夜更けに、何処とも知れぬ空間の海に浮かぶ阿呆船で『友たるハイン』とアルベドに、カナエが『半開きの目』に魅入られた事を報告した。 その翌日、『半閉じの目』の呪力で何者にも自分を見留めることが出来なくなるようにした後、手梓に『半閉じの目』の呪力を注ぎ込んで『死像(トランジ)』の核にし、手梓を発見したカナエの前に立ちはだかり、『半閉じの目』の力である『 渦巻文(うずまきもん)』で邪魔をする。 しかし、手梓がそよぎと再会した事で手梓の執着が消え、カナエが『死像』を崩壊させたことで撤退した。 なお、摩芙は『半開きの目』の走狗になったのがカナエだと気付いているが、自分が『ハインの手先』になったことはカナエには気付かれていない。 星平線のそよぎ(せいへいせんのそよぎ) 1巻でカナエが迷い込んだ不思議な星で、カナエを待っていた謎の少女。 天真爛漫なお調子者で、痛いところを突かれると逆ギレする癖がある。 過去に『扉』の修復や情報収集のために外の世界に出ているときに、手梓と出会い友達になる。 カナエと出会った翌日、大量の『クレンペル』と遭遇したカナエの肩の上に『そよぎパペット』を送り込み、それを媒介にカナエに『半開きの目』の力の使い方を教える。 しかし、『死像』の核になっているのが手梓だと知って驚愕し、自身が『扉』の外に出で手梓と再会し話し合ったことが事態が収束するきっかけとなり、手梓と話し合って自分の名前を伝えた。 多柏学院(たかえがくいん) [ ] 桧原里久(ひのはら りく) 多柏学院の中等部二年生の男子生徒で、カナエのクラスメート兼[黄葉館]のルームメイトでもある。 冷静沈着で、カナエの起こす騒動にも動じず付き合い、時には手助けすることもある貴重な友人。 山辺手梓(やまのべ たずさ) 多柏学院の高等部二年生の女子生徒で、この春から女子寮の寮長を務める優等生。 努力家で、高等部一年の二学期が終了した時に成績が学年五位から転落したことで両親に責められ、その後より努力して成績上位を保てたが、周囲が自分の努力を見ていないと感じ、他人の目が嫌になっていた手梓は旧校舎群の点検を自主的に継続して、一人きりでいることを好んだ。 そんな時に、旧校舎で謎の少女と出会い、何度も接する内にその少女と親しくなる。 しかし、ある日からその少女と会えなくなり、次第に精神的に追い詰められていき、1巻の中盤で『ハインの手先』として動く摩芙に『半閉じの目』の呪力を注ぎ込まれ、世界を破滅に導く運命の獣『死像(トランジ)』の核にされてしまう。 しかし、謎の少女がそよぎであることに気付いたカナエによって、そよぎと再会し話し合ったことで執着が消え、弱った『死像』をカナエが崩壊させたことで解放された。 その後、やっとそよぎの名前を知り、友達になった。 1巻の序盤で彼女から旧校舎の点検の手伝いをカナエが引き受けたことが、カナエが『星平線のそよぎ』と出会うきっかけとなった。 橘樹逢(たちばな あい) 多柏学院の中等部の社会科教師で、カナエと里久の担任を務める女性教師。 [黄葉館]の寮監も務めている。 同じ寮住まいという関係から、非公式にカナエのお目付け役に任じられていると周囲に噂されている。 草刈都(くさかり みやこ) 多柏学院の初等部六年生の女子生徒で、一条摩芙のルームメイト。 初等部男子生徒からは、一条摩芙に送られるラブレターの『窓口』として認知されている。 半閉じの目 [ ] 友たるハイン 世界を破滅に導く『半閉じの目』と呼ばれる謎の集団の首魁。 外見は壮麗な羽根飾りや大仰な衣装に、自らをも透き通る水晶で成した骸骨。 3巻の後半で、摩芙の祖父である一条総吾(いちじょう そうご)が摩芙の代わりに『友たるハイン』の呪いを自身で引き受け、変わり果てた姿となったと天廼は推測している。 アルベド 『半閉じの目』に所属する『ハインの手先』の一体。 外見は馬の白骨で、力の抜けた中年男の声で話す。 3巻の後半で天廼と対峙した際、天廼から心十郎と呼ばれている。 魔術師 [ ] 八十辻夕子(やそつじ ゆうこ) カナエや里久のクラスメートの女生徒で、本人曰く[信仰なき魔術結社(アンチフェイス)]に所属している『魔術師』(但し、所属しているのは夕子と父親の正典の二人だけである)。 伝承魔術『架空五芒星』を操る。 八十辻正典(やそつじ まさのり) 八十辻夕子の父親で、[信仰なき魔術結社]の長である魔術師。 伝承魔術『書式五芒星』を操る。 娘の夕子には厳しく接しているが、それは夕子の身を案じるが故の行動である。 暗殺血統[羅比陀(らひだ)] [ ] 柘植縒(つげ より) [羅比陀]の頭領で、表向きは海沿いの旅館[鴨根荘(かもねそう)]の女将。 石川交(いしかわ こう) [羅比陀]の一員で、石川直の兄。 表向きは[鴨根荘]の従業員である整った顔立ちの均整の取れた体格の男性。 石川直(いしかわ なお) [羅比陀]の一員で、石川交の弟。 表向きは[鴨根荘]の従業員である軽い雰囲気の長身の男性。 友坂雛(ともさか ひな) [羅比陀]の一員で、カナエたちの前では[鴨根荘]の宿泊客を装っていた二十歳過ぎの優しげな美貌の女性。 その他 [ ] 天廼行永(あめの ゆきなが) 『半開きの目』と『半閉じの目』の動向を密かに窺う謎の男性。 カナエの様に『既の道』を辿ったり、摩芙の様に死像を造る等、不可解な点が多い。 2巻の後半で夕子を死像の核にしてカナエと摩芙を試し、3巻で[羅比陀]の頭領・柘植縒を拉致して交たちにカナエたちを襲撃させる一方で、縒を死像の核にしてカナエたちを襲わせて試した。 その際に十字印と渦巻文の両方の力を操った上に、カナエに『既の道』を教えた師匠である事が判明し、摩芙の怒りを買った。 用語 [ ] 半開きの目 直会カナエや『星平線のそよぎ』など、特定の者にしか見えない紋章で、今より見出す可能性の象徴の紋章でもある。 『半閉じの目』と相反する力でもある。 半閉じの目 誰知らず降りる破滅の象徴の紋章で、『半開きの目』と相反する力でもある。 集団としての名前でもあり、『友たるハイン』を首魁とし、アルベドや一条摩芙が『ハインの手先』になっている。 既刊一覧 [ ] 単行本は、全てより「」レーベルとして刊行されている。 既刊3巻(2015年9月10日現在)。 巻数 タイトル 初版発行日(発売日) ISBN 1 カナエの星 (同日 ) 2 カナエの星 2 2015年(同日 ) 3 カナエの星 3 (同日 ) 脚注 [ ] 注釈 [ ].
次のカーテン越しに射し込む柔らかな朝日の光と、耳を擽る小鳥の囀りが、朝の訪れを穏やかに報せる。 射し込んだ光が瞼を叩き、その眩しさにゆるりと目を開く。 「んん〜………もう……朝ね」 胡蝶カナエはゆっくりと上半身だけを持ち上げると、ぼやけた視界のまま周囲を見渡す。 布団の端に脱ぎ捨てられた寝巻きに、後片付けに使った紙屑が散乱している。 ああ、またやってしまったと、頬に熱が集中するのを感じる。 その熱と相反するように、身体が冷えて身震いをすれば、己が一糸まとわぬ姿であったと思い出した。 ちょうど手元にあった半々羽織を羽織ると、隣で眠る青年へと声を投げ掛けた。 「ねえ義勇くん。 当然のごとく彼の寝巻きも乱雑に脱ぎ捨てられている。 「し、仕方ないでしょっ!?久しぶりに二人きりだったんだから……」 「……限度というものがある」 「任務続きで色々溜まってたの!いいでしょ!義勇くんだって乗り気だったじゃない!」 「……最初の一回だけはな」 「うっ………」 昨晩の事を思い出して頬を羞恥に染めたカナエは、義勇から掛け布団を剥ぎ取り、顔を隠すようにくるまった。 布団を奪われた義勇はやはり不機嫌気味な顔でカナエを見遣ると、「うぅぅぅ」と可愛らしい呻き声を上げる彼女の頭をそっと撫でた。 「身体は大丈夫か?」 「うん………身体より心の方がぼろぼろです………」 昨夜の彼女は凄かった。 普段の凛として美しい大輪の花のような彼女からは想像できない程の。 羞恥の波が引いたのだろう。 頭を撫でる義勇の手を取ると、自らの頬にそっと導き頬擦りをした。 「なんだかんだ言って、義勇くんは優しいわよね」 口下手とド天然が災いして壊滅的に人付き合いが苦手な義勇だが、その実しっかりと他人の事を見ている。 彼の前で隠し事はできないだろうと思ったことは一度や二度ではなかった。 「俺は……優しいわけではない」 「もうっ、私が優しいって言ったら優しいんですー」 「……好きに言ってろ」 彼はそう言うが、こうして自分の事を大切に思ってくれていることは所作の一つ一つから感じることができるし、空回りすることが殆どだが、不器用なりにカナエの手伝いだってしてくれる。 鮭大根が絡むこと以外は自分のことを後回しにしてでもカナエを優先してくれる。 そんな優しい義勇だが、だからこそカナエは不満を募らせていることがある。 「……義勇くん。 いつになったら私のこと『好き』だって言ってくれるの?」 「……昼から任務だろう。 準備をするぞ」 「も〜!そうやってまたはぐらかす〜!」 義勇とカナエが恋仲となって、一年が経過しようとしていた。 何度も何度もお互いを求め合い、口付けを交し、身体を重ね、深く熱く繋がって、心だって繋がっている筈なのに、未だに、一度だって義勇はカナエに「好き」だとか「愛してる」の言葉を伝えたことは無かった。 ただ単純に恥ずかしいという理由もあるし、本来ならば鬼殺隊に居場所など無く、無意味で無価値な人間である自分がカナエの隣に立っていること自体が烏滸がましいと潜在的に気持ちが後ろを向いてしまっているから、素直な気持ちを伝えることに躊躇いがあるのだ。 「言ってくれなきゃ分からないことだってあるのよ?」 「俺は口下手だからな」 「『好き』の二文字くらい口下手でも言えるわよ!」 カナエの抗議を完全に無視して寝巻きを羽織ると、枕元にあった紙紐で無造作に伸びた髪を括る。 「はぁ……もう……。 お風呂借りるわね?」 「ああ」 ここは竹林に囲まれた水柱の屋敷だが、幾度となく通っているカナエにしてみれば自分の家のようなもので、完全に勝手を理解している。 棚からタオルを取り出すと、いそいそと風呂場へと向かった。 その後ろ姿を見送ると、義勇は再び布団へと身体を投げ出した。 「持て余すな………」 思えば、人付き合いを行う上で必要最低限の能力すら持ち合わせていない絶望的に口下手な義勇を理解し、好いてくれているのはきっとカナエだけだろう。 なぜカナエのような非の打ち所の無い美人が自分の恋人なのか、お付き合いを始めて一年近く経つ今でも分からない。 夢でも見ているのではないかと疑い、何度も頬に人差し指で『雫波紋突き』を叩き込んだ。 やはり夢ではなかったと、全治二週間の怪我の代償に再確認できたことは大きな収穫であった。 カナエほどの器量よしなら、自分の他にも嫁の貰い手は沢山あるだろうに。 自分以上にカナエのことを幸せにしてくれる男がいるだろうに。 対してカナエ。 髪に椿油の香料を塗りながら。 「はぁ〜……またやっちゃったぁ……」 義勇と二人きりになると、どうにも自制が効かなくなってしまい、愛おしいという気持ちが溢れ出て、その全てを義勇にぶつけてしまう。 ぼそぼそと文句は言うものの、カナエの我儘を全部受け入れてくれるから、ますます義勇に甘えてしまう。 思い返せば、初めて彼と出会ったのは、一年と半年ほど前の合同任務。 最初見た時は、もはや彼の代名詞となった鉄面皮から、冷淡な人なのだろうなと思ってしまった。 しかしその認識は即座に覆される事となる。 思いの外手強い鬼に劣勢を強いられ、共に戦っていた剣士達が今まさに鬼に殺されようとした時に、颯爽と現れた義勇がいとも容易く頸を斬り飛ばし、皆の急窮地を救ったのだ。 「怪我は無いか」 「すまない。 俺がもう少しはやく来ていれば」 「お前はまだ大丈夫そうだな。 こいつを連れて今すぐ帰れ。 後始末は俺がやっておく」 思いがけない言葉に呆気にとられていたカナエだが、義勇に言われるがまま負傷した隊士を運んでいると、遅れて到着した隠の隊士が目に入ったので後を任せ、義勇の元に向かった。 「冨岡くん……よね?助けてくれてありがとう」 「礼なら不要だ」 「そうは言っても……」 「俺はこれから別の任務に向かう。 足の怪我は悪化したら剣士にとって致命傷だ。 今すぐ帰れ」 「えっ………どうしてそれを………?」 気遣いにしてはやや乱暴な言葉だけを残し、義勇は風のように消え去った。 まさか、足の怪我を見抜いていたなんて。 他人には一切興味が無さそうなのに。 言い方は乱暴で不器用だが、そこには確かに優しさが見えて、カナエは頬を緩めた。 その日からだろう。 カナエが義勇を意識し始めたのは。 気づけば目で追っていた。 ある時、任務で負傷した隊士を庇いながら鬼と戦っていた。 ある時、しのぶの持っていた荷物を自ら受け持っていた。 ある時、ぼんやりと空を見上げながら「ムフフ」と可愛らしく 恐らくそう思っているのはカナエだけだろう 笑っていた。 ある時、町娘達に声を掛けられていた。 何度も任務を共にこなし、冨岡義勇という人間に触れる度に、カナエはどんどん彼に惹かれていった。 義勇に相応しい人間になるべく剣の腕を磨き、血反吐を吐きながら己を叩き上げた。 ある日の柱合会議。 お前たちで勝手にやっていろ」 鬼殺隊の今後について会合を行おうとした矢先だった。 突如義勇が立ち上がり、会合そっちのけで退出してしまったのだ。 もはやそれが毎度の事なので、不死川や悲鳴嶼は不満げに顔を歪めるが、宇髄に至っては口笛を吹きながら頭の後ろで手を組んでいる。 誰も義勇を追いかけようとしない。 義勇を庇ってやりたいカナエだったが、カナエの目から見ても義勇は勝手が過ぎるし、あまりにも協調性に欠けている。 これでは、他の柱の面々から自覚が足りないと責め立てられても仕方がない。 「私……追いかけてきますね」 「おっ?胡蝶姉、派手に優しいんだな。 あの冨岡を気にかけるなんてよ」 「ケッ、アイツに何言っても無駄だと思うがなァ」 「…………南無」 義勇を引き止めることを諦めた面々の言うことは無視したカナエは義勇を追うべく駆け出した。 半々羽織の背中に追いつくのに、さほど時間を要することは無かった。 「冨岡くん!」 「…………」 呼び掛けたのに、聞こえている筈なのに、義勇はカナエの方を向かない。 流石のカナエも腹が立って、義勇の羽織の袖口を掴んだ。 「ちょっと冨岡くん!」 「なんだ」 ようやく振り返った義勇の視界に入ったのは、両頬を膨らませご立腹のカナエの姿。 なぜカナエが怒っているのか理解できない義勇は、人をおちょくっているとしか思えないような顔でカナエを見遣るものだから、カナエは更に怒気を高めてゆく。 「さっきの言い方はないんじゃないかしら?」 「お前には関係ない」 「あるわよ。 私たちは同じ柱なのよ。 言葉通りに受け取れば見下され、突き放されるかのような言い方だが、カナエは義勇の優しさを知っているから、その言葉の裏に見え隠れする真意を知りたくて、逃がさないように義勇の手首をぎゅっと掴んだ。 「ちゃんと話して。 私……もっと冨岡くんのこと知りたい」 「……時間の無駄だ。 俺に構うな」 先程よりも強く手を振り払うと、今度こそ義勇は風のように掻き消えた。 去り行く背中を呆然と眺めていたカナエだったが、この程度の拒絶で諦める筈も無かった。 「ねえねえ冨岡くん」 「………」 以降、暇さえあれば義勇の元を訪れ語りかける日々。 柱の人脈を駆使して義勇の屋敷を探し出し、昼夜問わず玄関の戸を叩く。 「とーみーおーかーくーん!居るのは分かってるのよ!」 「…………なんだ、コイツは」 「あれ?鍵開いてるわね。 入りまーす」 入ります?帰りますの間違いだろう。 そう思い布団の中に身を沈めると、廊下からドタドタと騒がしい足音が聞こえてくる。 まさか、思った時には時すでに遅し。 勢いよく障子が開かれ、月明かりを背に廊下で仁王立ちしているカナエの姿が視界に入った。 「お邪魔します!」 「帰れ」 月に映える美しい笑みを浮かべるカナエを一瞥すると、くるりと寝返りを打ち背を向けた。 カナエに付きまとわれてはや二週間。 ここまで自分に構ってきた人間は過去に一人しかいない。
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