タイトル* 『帰郷/荒れ地に燃える恋』 The 1994 監督:Jack Gold 脚色:Robert W. Lenski 原作:トマス・ハーディ 音楽:カール・デイヴィス Story 1842年Egdon Heath。 2年前にこの荒野にやってきた鄙には稀な美女ユーステイシアは、そのミステリアスな美しさゆえか迷信深い村人たちに"魔女"と呼ばれ敬遠されていた。 デイモンも彼女の魅力に抗しがたい男の一人で、トマシンという婚約者がいながらもユースティシアへの未練断ち切れず、何かと理由をつけては結婚式の日取りを延ばしているのだった。 そんな時、パリで成功を収めたトマシンのハンサムな従兄クリムが5年ぶりに帰郷し、たちまちユースティシアと恋に落ち結婚する。 ユースティシアは華やかな都会に憧れ、この閉鎖的な村を出るという望みをかけて結婚したわけだが、クリムの方は都会の暮らしに倦み教育者として故郷に奉仕したいという望みを抱いていた。 やがて勉学のし過ぎかクリムは目を患う。 ユースティシアと、今やトマシンの夫となったデイモンは再び接近するようになるのだが・・・ Check! ボンファイアー・ナイト イギリスでは、11月5日は「ボンファイヤー・ナイト」または「ガイ・フォークス・デイ」といって、伝統的に篝火を焚く習わしになっている。 これは1605年に起きた火薬陰謀事件に起源を持つ風習。 パブ「The Quiet Woman」 田舎のパブによくあるように、このパブも村のコミニュティ・センターのような役割を果たし、宿泊もできるようになっている。 クリスマスのある風景 5年ぶりにパリから帰ってきたクリムは、久しぶりに母と従妹とともにクリスマスを過ごす。 ヨーブライト夫人はヒイラギを用意し家を飾りつける。 聖ジョージ旗 白地に赤十字 をモチーフにしたイングランド兵とトルコ兵が戦う劇は「mummer」と呼ばれるクリスマスに行われる仮面劇。 古代ドルイドの壺 博識なクリムは、ヒースの古い塚をあける作業を手伝い、古代ドルイドの壺を発掘する。 この物語の舞台となっているコーンウォール地方は、古くからケルト文化が根付いており、このような祭祀的なものが発掘されるのだろう。 その他イギリス的見どころ 小川、石橋などエクスムーアで撮影された風景が美しい。 カントリーダンスを踊る場面もある。 ロケ地 Exmoor, Devonshire キャスト.... Eustacia Vye.... Damon Wildeve Thomasinの夫に・Eustaciaに横恋慕 Ray Stevenson.... Clym Yeobright パリ帰りの青年・Eustaciaの夫に.... Diggory Venn 顔料売り・Thomasinに一途な愛を捧げる.... Thomasin Damonの妻・Yeobright夫人の姪 Paul Rogers.... Captain Vye Eustaciaの祖父・退役軍人.... Mrs. Yeobright クリムの母、Thomasinのおば Celia Imrie.... Susan Nunsuch Eustaciaを忌み嫌う女 Peter Wight.... Timothy Susanの息子 Gregg Saunders.... ところが組織を抜けることなど断じて許さぬと、組織の二代目のボスはフィリックスが面倒を見ていた後輩の殺し屋ジミーをはじめ何人かの若手たちにフィリックスの始末を命じる。 一方で殺し屋を廃業したフィリックスが頼まれた新たな仕事とは、33年間一度も外に出ることなく大切に育てられた大人コドモ、ババの子守だった。 世間知らずの無邪気なババに振り回されるフィリックスだったが、殺し屋組織からの追っ手をかわすためにキリンのぬいぐるみを抱えたババを連れて逃げ回ることになり・・・ 007シリーズや「チキ・チキ・バン・バン」にオマージュを捧げ、文字通りキスと銃声に満ちた風変わりな愛の物語。 主演にのステラン・スカルスガルド、共演はクリス・ペン、のポール・ベタニー。 Check! スーパーで買い物指南 フィリックスが外の世界を知らないババをフィリックスは小さいスーパーにつれて行き、酒やコーヒーなど何を買うべきか教える場面が。 棚に並んだ食品を観察するのも面白い。 食堂でイングリッシュ・ブレックファスト ババを待ちに連れ出したフィリックス。 街の軽食堂でイングリッシュ・ブレックファストを食べる場面が。 タマゴ、ベーコン、ソーセージ、ベイクドビーンズと定番のメニュー。 ナーサリー・ライム(マザー・グース) ババが口ずさんでいるソーセージの歌は、イギリスの子供に好まれる童謡"Five fat sausages"。 Five fat sausages sizzling in a pan one went pop the other went bang, Four fat sausages sizzling in a pan one went pop the other went bang, Three fat sausages sizzling in a pan one went pop the other went bang, Two fat sausages sizzling in a pan one went pop the other went bang, One fat sausage sizzling in a pan one went pop the other went bang, No fat sausages sizzling in a pan. 父と子、そして守るべき対象 この作品には複数の父子関係が描かれている。 高級老人ホームに入所しているダディ・ズーとフィリックス アンティーク密輸業者のビッグ・ボブと世間知らずのババ フィリックスとシェリーのおなかにいるまだ見ぬ赤子。 そしてフィリックスがババを保護していたように、殺し屋のジミーもまた常に影からフィリックスを見守っていた。 「いつも側にいたんだ、守護天使のように。 あんたは俺の憧れだった・・・」 ロケ地 London Zoo フィリックスがババをロンドン動物園に連れてゆく場面が。 キリンやペンギン・コーナーのあたり等。 Enfield Road フィリックスたちが一時身を潜めるシェリーの妹の家。 その他 テムズ川周辺、テレコムタワーが見える夜景など。 Langleybury キャスト Stellan Skarsgard.... Felix Chris Penn.... Bubba Paul Bettany.... Jimmy Felixを慕う後輩の殺し屋 Allan Corduner.... Big Bob Bubbaの父・アンティーク密輸業者 Jacqueline McKenzie.... Sherry Felixの恋人 Martine McCutcheon.... Mia Bubbaがサハラクラブで知り合った女の子 Sienna Guillory.... Kat 殺し屋組織のメンバー・Jimmyを誘惑する Ashley Artus.... Mick Foot 殺し屋組織のメンバー Sean Connolly.... Bouncer.... Daddy Zoo Felixの父 参考資料とソフト 『ギャング・オブ・UK』... 1998 監督・脚本:Andy Hurst Story ロンドンの大銀行に三人組の強盗が人質をとって篭城し、人質の女性一人以外は全員死亡するという凄惨な結末に終わった。 担当刑事バジャー警部を差し置いて、警察上部から調査を依頼されたという謎めいた精神管理センターCyclopsのコナー教授はたった一人の生存者ジョーに詳しい事情を聞いていた。 二人組のチンピラ、エディとイアンは、獄中の金庫破りの名人メイトランドに銀行強盗の話を持ちかけ、メイトランドに死んだふりをさせることでまんまと彼の脱獄を成功させた。 綿密な計画通り銀行に押し入ったものの、すぐに警察が駆けつけたため何名かの人質を取って銀行に立てこもることにする。 周りを取り囲む警官隊を指揮するのはバジャー警部。 そもそもメイトランドが投獄されたのは、1978年のカジノ襲撃事件の際催涙ガスをかけられて目が見えない間に謝って女性警官を射殺してしまったという容疑からで、その時の担当刑事がこのバジャーだった。 やがて篭城が長引くにつれ、理性を失っていった犯人と人質たちは・・・ 取調べが進むにつれ、ジョーの証言から、思いもよらない真相が明らかになってゆく。 そしてコナー教授の真の狙いは? Check! 紳士強盗 メイトランドやエディたちは、銀行強盗にあたってサヴィル・ロウ仕立てのスーツに山高帽を身に付けていく。 豪華家具 メイトランドの相棒ハリーは、カジノで奪った金をひとりで持っていったため莫大な財産を手にした。 そのためエディの家も豪華なアンティーク家具を揃えたインテリア。 キャスト、Trivia エレベーターのことは英語で「lift」というのだが、本作品では「elevator」と米語に統一されている。 アメリカ市場向けを意識したのか。 邦題『ギャング・オブ・UK』は公開予定の話題作『ギャング・オブ・ニューヨーク』(マーティン・スコセッシ監督作品)のタイトルを意識したものだろう。 原題「You're Dead... 」というフレーズは作品中に何度も登場する重要なキーワード。 のおしり、の70年代ファッションなどがファンの方にはたまらないかも。 Cyclopsとは一つ目の怪物のこと。 ロケ地 ロンドン ドイツ 音楽 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ マニック・ストリート・プリーチャーズ ガーディアンズ B-52'S ブロンディ キャスト.... Maitland 伝説的犯罪者・脱獄してエディの計画に乗る.... Eddie メイトランドの相棒の息子 David Schneider.... Ian エディの部下).... Jo (おとり捜査官だが実は・・・?) Barbara Flynn.... Professor Corner Cyclops代表者 John Benfield.... Inspector Badger 昔メイトランドを逮捕した刑事 Patrick Field.... Guffin Badger警部の部下 Roger Ashton-Griffiths.... Cliff Sniffton 銀行支店長・人質 Jane Peachey.... Vesuvius Eddieの彼女 Badi Uzzaman.... Chandra 催眠療法士・人質 Rayner Bourton.... Harry メイトランドの相棒・エディの父親 参考資料とソフト 1998年 ドイツ=イギリス 98分.
次の若く美しい農場の女主人バスシバと、3人の求婚者たちの物語が、英国ウェセックス(ドーセット)地方の田園を舞台に展開する。 味付けはメロドラマチック(ハーレクインロマンス風ともいう?)で、最後はハッピーエンド、ハーディ作品のなかでは読みやすいといえるだろう。 タイトルの Far From The Madding Crowd は、トマス・グレイ Thomas Gray 1716-71 の詩 (墓畔非歌, 1751)の一節からとられたもの。 なんとも度肝を抜かれるのが、ヒロインの名前 Bathsheba(英語読み バスシバ) だ。 あの、ダビデ王に横恋慕されて、夫を殺される女性(聖書読み バテシバ)である。 こんな名前を娘につける親がいるのだろうか、と思いきや、物語中、Cain(ケイン/ カイン)という羊飼いの青年も登場するからびっくり。 こんな名前がついたのも、 「あいつの母親ってのが、聖書を読める女じゃなくてね、アベルがカインを殺したと思って、洗礼の時にあいつを Cain と呼んじまって。 間違いに気づいたときはもう教区の記録から消せなくて、手遅れだったわけでさ。 〔…〕その母親を育てた両親ってのがえらく不信心でね、娘を教会にも学校にも通わせなかったんすよ。 親の因果が子に報い、ってやつですねえ」(第10章) ウソみたいな話だが、洗礼という儀式での命名は大きな効力があったようだ。 作家の E. Forster は1879年1月1日に生まれて Henry Morgan とまず役所に登録されたが、生後2ヵ月(厳寒期を避けて日延べしたのでしょう)で洗礼を受けるときに Edward Morgan という彼の父の名が誤って用いられてしまった。 337)という。 さて、このケイン青年の台詞でおもしろいのは、これ。 今、この国にはふたつの宗教があるだろ。 国教会 High Church と非国教会 High Chapel だよ。 俺、フェアにいこうと思ってさ、午前に国教、午後に非国教の礼拝に行ったんだ。 国教じゃあ、歌いながらお祈りして、虹の色全部拝むんだ。 非国教じゃあ、説教しながらお祈りして、くすんだ茶色や漆喰の白しか拝まないんだよな。 (第33章) High Church に対する High Chapel という言い方は、初めて見た。 この Chapel は、具体的にはメソジストを指していると思われる。 色を拝む、というのは、教会内部の装飾や、牧師の祭服の華やかさを指しているのだろう。 非国教の「くすんだ茶色や漆喰の白」であるが、英国 The National Trust Magazine の2000年秋号に、まさにこれだ! という非国教派の礼拝堂の写真が載っていた。 Loughwood Meeting House Dalwood, Axminster, Devonshire という、1653年頃(まさにクロムウェルが仕切っていたピューリタンの時代)にバプテストが建てたもの。 周囲の壁は白い漆喰のみで飾り気なし、正面中央(普通は、十字架とかキリスト磔刑像がかかっているとこ)に説教壇があって、あとは升目に仕切った木製の座席があるだけ。 きわめてシンプル。 しかし真正面に説教壇というのはすごい。 この Meeting House、現在はナショナル・トラストの管理下にあり、通年、無料で見学可能だという。 *National Trust サイト内の案内は *国教会の装飾の多い「チャーチ」と、このバプテストの「チャペル」を比較してみたページは しかし、既出の『当惑した牧師』(当ブログ内の紹介は)同様、午前と午後で違う教派の教会に行く、というのは当時はそう珍しいことではなかったわけだ。 酒場でとぐろを巻いているおっさんたちの台詞にも注目(第42章)。 少々長いが、ぜひ紹介したいのでやぎたに流に訳してみる。 「ジョーゼフ、お前さん確か、非国教徒だったな」 「とんでもねえ、おら、まだそこまでいっとらんよ」 「俺はってえとな、忠実な国教徒じゃ」 「おらもそうだよ」 「自分のことはあんまりいいたかねえけんど、俺はいっぺんも主義を変えたことはねえ。 生まれついた古い信仰に、膏薬みたいに張り付いてきたさ。 国教のもんはよ、酒場にいても、主義についてはちっとも悩んだり不安になったりすることはねえ。 だがよ、これが非国教のもんだと、照ろうが降ろうが教会に足運んで、はね駒(馬)みてえに血迷った礼拝をせにゃならん。 とはいっても、あいつらなりに頭が働く連中だってことは確かだ。 身内やら、新聞に載っている難破船やら、誰のためでもきれいな祈り文句を自分で考えて唱えることができるんだからなあ」 「そうだ、そん通りだ。 なのに、おらたち国教派は、前もって全部印刷してもらってないとわかりゃしねえ、神様みたいなお偉方に何をいっていいのやら。 まるで生まれる前の赤ん坊みてえによ」 「非国教派の連中は、おらたちより天のお偉方と仲がいいなあ」 「そうだなあ。 天国に行くやつがいるとしたら、それがあいつらだってこたあ、よくわかってる。 そのために一生懸命お勤めしてるんだ、天国行きの値打ちがあるってもんよ。 国教にしがみついとる俺たちが、同じように天国に行けると思うほどおめでたくはねえ、そんなの無理だってわかってるさ。 だがよ、天国に行きてえからって、馴染んだ主義を変えるやつには我慢なんねえ。 そんなことするくれえなら、数ポンドの金のために相棒を裏切るほうがまだマシだ。 なあ、皆の衆、俺んとこのジャガイモが霜で全滅しちまったときによ、俺たちの牧師のサードリー司祭様が種芋を一袋くださった。 司祭様んとこには自分とこで使うのもなければ、買う金もないのによ。 司祭様がいなけりゃ、畑にジャガイモ植えられんとこだった。 そんなことがあったってのによ、宗旨替えができるかい? いやあ、節は曲げないぜ、俺らが間違ってんだとしても、それでもええ、地獄に墜ちる連中と一緒に墜ちようじゃねえか!」(第42章) よくぞいった、コッガン爺さん!(酔っぱらってはいるけど) つまりは、非国教の信仰者は、絶対に礼拝を休まずに熱く自由祈祷を捧げる才能がある、一方で祈祷書に頼りっぱなしの国教の信仰者はのんびりしているが、それなりの信念は持っているというわけだ。 *「自由祈祷」VS. 「成文祈祷」 前者は、その人の心に湧き出るまま、自由に祈るもの。 後者は、あらかじめ決まっている文章を読む(暗誦する)ことで祈るもの。 礼拝中に信徒による祈祷がなされるとき、自由祈祷か成文祈祷かは、教派により異なる。 メソジストは自由、国教会は成文で祈る。 このくだりに対して、英文学者の斎藤勇は「宗教を否定するかのように思われていたハーディですら、キリスト教がイギリス人の間に深く浸みこんでいることを指摘している」(『イギリスのキリスト教諸派』)と述べている。 【農夫の悪魔払い祈祷】 真夜中にどうしても門が開かない。 これは悪魔の仕業だと、農夫が跪いていろいろな文句を唱える場面がある。 この農夫は国教会(イングランド聖公会)の教会に行っている。 彼が唱える文句は次の順番だ。 the Lord's Prayer 主の祈り• the Belief 使徒信経 the Apostles' Creed• the Ten Commandments 十戒• 子どもの頃にたたきこまれるので、歳を取ってからも何の苦もなくすらすら唱えられたはずだ。 ここで注目すべきは、最後の「Dearly Beloved Brethren 〜 Saying After Me」である。 英国教会の祈祷書をチェックしてみると、Dearly Beloved Brethren で始まる式文はいくつかあるのだが、Saying After Me でくくられるのは早祷・晩祷にある「勧告{すすめ}」のみである。 つまり、この句が出てくることでこの農夫が教会の早祷/朝の礼拝 Morning Prayer; Mattins か晩祷/夕の礼拝 Evening Prayer; Evensong に出席していることがわかるわけだが、では、なぜそれが聖餐式の祈祷文ではなかったのか? アングリカンの礼拝=午前10時頃から(司祭がいれば)毎週行われる聖餐式、というイメージのある現代人には、ちょっとふしぎに思える。 ひとやすみ 【文献調べの落とし穴】 著作権の切れた古い文献の画像がネットでどんどん公開されている。 嬉々として19世紀のものをチェックするうち、祈祷書調べの落とし穴に気づいた。 上記の早祷式文が格好の例となっているので、ここに記録しておく。 現代の Chuch of England が提供するには、「saying after me」が入っている。 従って、テキスト検索することで該当箇所にたどりつける(ちなみに、わたしの手元にある書籍版の祈祷書にもこの句は入っている)。 しかし、1869年、すなわちこの物語が刊行された当時に使用されていたであろう The Book of Common Prayer では同じ箇所の末尾が「... ところが、同じく Hathi で閲覧可能な1849年の The daily services of the United Church of England and Ireland に掲載された を見ると、ちゃんと末尾に「... of the Heavenly Grace, saying after me」とあり、この句が唱えられていたことがわかる。 1869年版祈祷書では、「書かれていなくても唱えるのが当然」なので略されたのだろう(司式者呼びかけ文としての「after me」は、テキスト検索しても、この祈祷書では一箇所もヒットしない)。 つまり、ハーディのこの小説に最も近い資料である、という理由で、もし1869年版祈祷書 のみをチェックしていたら、この句の謎は解けなかったことになる。 結論:文献は、もし当時のものが参照できたとしても、同時に新しいものも利用してダブルチェックしてみよう。 [OCT-2012] 実は 20世紀の初頭まで、英国教会の礼拝といえば日曜日の早祷または晩祷を意味していた。 当時の聖餐式は年に4回がせいぜいだったという。 ヴィクトリア朝中期のイングランドでは「ヴィクトリア女王とその夫君にならって、年に二回しか陪餐しない人が多かった。 525。 1872年の (教会の法律便覧)では、教区民は年3回の陪餐が推奨されている p. 102。 というわけで、酔っぱらった農夫が唱える句からも、当時の礼拝が早祷・晩祷を意味していたことが読み取れる。 ついでながら、現在の日本聖公会では日々の礼拝から消えてしまった〔後述〕十戒が、英国教会では聖餐式の祈祷文に入っていることを指摘しておく。 また、教会の東側の壁には、誰でも読めるように十戒の文字を掲げることになっていたという( The Book of Church Law, 1872, p. 400)。 (Temple Church, London)は、祭壇の後ろのスクリーンに用いられた十戒の例。 なお、米国聖公会でも聖餐式に十戒を唱えることになっている。 実際に某カテドラルの礼拝に参列した方の話では、礼拝の冒頭のプロセッションの間に会衆が唱えていたそうだ。 使徒信経を唱えるのは洗礼式か、早祷・晩祷に限られ、聖餐式 [The Lord's Supper or Holy Communion] にはニケヤ信経 [the Nicene Creed] を唱えることも覚えておきたい。 ひとやすみ 【日本聖公会の礼拝で十戒は唱える?】 現在日本聖公会の1990年口語祈祷書では、「聖餐準備の式」に「3. 十戒による準備」が入っている。 それ以前の1959年文語祈祷書では、聖餐式の「準備」において、司式者がこれを唱えることになっていた。 ただし、古い信徒の方にうかがったところ、実際に礼拝で十戒を唱えたことはないという。 なお、「禮拜畧式規則」第六條には「聖餐式の十誡は主日に於いて毎月一回かならず用ふべし」の文言がある()。 さて、イングランドの風俗として興味深いのは、バスシバが気まぐれにおこなう「聖書と鍵を使った恋人占い」。 13章に出てくるが、残念ながら、実際にどうやって占うのかは判然としない。 また、2月14日のヴァレンタインデーに、男性宛てにカードを送る場面も(これが、重大な運命の分かれ目になってしまう)。 もっとも、ハーディは、これらの慣習はもうほとんどすたれてしまった、と1895年頃の前書きに記している。 恋人同士が結婚式を挙げようとして、片方が All Saints' Church(諸聖徒教会)、もう片方が All Souls' Church(諸魂教会)に行ってしまい、そのすれ違いでまたまた運命が狂う……というエピソードは、いかにもありそうな、なさそうな……? ここでおさえておきたいポイントは、当時「 挙式は12時まで」だったこと。 恋人同士は11時半に教会の前で待ち合わせるが、11時45分に花嫁が間違いに気づいたときにはもう遅かったのである。 12時の鐘が鳴ると同時に、待機していた司祭らは退場。 教訓:大事なことは時間に余裕をもって行いましょう。 もしくは奮発して「special license」(特別結婚許可証。 場所や時間を問わずに結婚できる)を購入しましょう。 ひとやすみ 【英国国教会 Church of England 挙式時間メモ】 1603年教会法により8〜12時まで。 1886年からは15時まで、1934年から18時までに延長。 以降、現在に至るまで8〜18時が有効な挙式時間。 婚姻証明書には挙式担当司祭のほか、2名の証人がサインする欄がある。 従って、2名以上の証人(司祭本人はのぞく)の同席も必要。 なお、この作品は1967年に英国でジョン・シュレシンジャー監督により映画化されており(邦題『遥か群衆を離れて』)、ヒロインはジュリー・クリスティ、それにアラン・ベイツ(ゲイブリエル役)とテレンス・スタンプ(トロイ軍曹役)が出ていた。
次のタイトル* 『帰郷/荒れ地に燃える恋』 The 1994 監督:Jack Gold 脚色:Robert W. Lenski 原作:トマス・ハーディ 音楽:カール・デイヴィス Story 1842年Egdon Heath。 2年前にこの荒野にやってきた鄙には稀な美女ユーステイシアは、そのミステリアスな美しさゆえか迷信深い村人たちに"魔女"と呼ばれ敬遠されていた。 デイモンも彼女の魅力に抗しがたい男の一人で、トマシンという婚約者がいながらもユースティシアへの未練断ち切れず、何かと理由をつけては結婚式の日取りを延ばしているのだった。 そんな時、パリで成功を収めたトマシンのハンサムな従兄クリムが5年ぶりに帰郷し、たちまちユースティシアと恋に落ち結婚する。 ユースティシアは華やかな都会に憧れ、この閉鎖的な村を出るという望みをかけて結婚したわけだが、クリムの方は都会の暮らしに倦み教育者として故郷に奉仕したいという望みを抱いていた。 やがて勉学のし過ぎかクリムは目を患う。 ユースティシアと、今やトマシンの夫となったデイモンは再び接近するようになるのだが・・・ Check! ボンファイアー・ナイト イギリスでは、11月5日は「ボンファイヤー・ナイト」または「ガイ・フォークス・デイ」といって、伝統的に篝火を焚く習わしになっている。 これは1605年に起きた火薬陰謀事件に起源を持つ風習。 パブ「The Quiet Woman」 田舎のパブによくあるように、このパブも村のコミニュティ・センターのような役割を果たし、宿泊もできるようになっている。 クリスマスのある風景 5年ぶりにパリから帰ってきたクリムは、久しぶりに母と従妹とともにクリスマスを過ごす。 ヨーブライト夫人はヒイラギを用意し家を飾りつける。 聖ジョージ旗 白地に赤十字 をモチーフにしたイングランド兵とトルコ兵が戦う劇は「mummer」と呼ばれるクリスマスに行われる仮面劇。 古代ドルイドの壺 博識なクリムは、ヒースの古い塚をあける作業を手伝い、古代ドルイドの壺を発掘する。 この物語の舞台となっているコーンウォール地方は、古くからケルト文化が根付いており、このような祭祀的なものが発掘されるのだろう。 その他イギリス的見どころ 小川、石橋などエクスムーアで撮影された風景が美しい。 カントリーダンスを踊る場面もある。 ロケ地 Exmoor, Devonshire キャスト.... Eustacia Vye.... Damon Wildeve Thomasinの夫に・Eustaciaに横恋慕 Ray Stevenson.... Clym Yeobright パリ帰りの青年・Eustaciaの夫に.... Diggory Venn 顔料売り・Thomasinに一途な愛を捧げる.... Thomasin Damonの妻・Yeobright夫人の姪 Paul Rogers.... Captain Vye Eustaciaの祖父・退役軍人.... Mrs. Yeobright クリムの母、Thomasinのおば Celia Imrie.... Susan Nunsuch Eustaciaを忌み嫌う女 Peter Wight.... Timothy Susanの息子 Gregg Saunders.... ところが組織を抜けることなど断じて許さぬと、組織の二代目のボスはフィリックスが面倒を見ていた後輩の殺し屋ジミーをはじめ何人かの若手たちにフィリックスの始末を命じる。 一方で殺し屋を廃業したフィリックスが頼まれた新たな仕事とは、33年間一度も外に出ることなく大切に育てられた大人コドモ、ババの子守だった。 世間知らずの無邪気なババに振り回されるフィリックスだったが、殺し屋組織からの追っ手をかわすためにキリンのぬいぐるみを抱えたババを連れて逃げ回ることになり・・・ 007シリーズや「チキ・チキ・バン・バン」にオマージュを捧げ、文字通りキスと銃声に満ちた風変わりな愛の物語。 主演にのステラン・スカルスガルド、共演はクリス・ペン、のポール・ベタニー。 Check! スーパーで買い物指南 フィリックスが外の世界を知らないババをフィリックスは小さいスーパーにつれて行き、酒やコーヒーなど何を買うべきか教える場面が。 棚に並んだ食品を観察するのも面白い。 食堂でイングリッシュ・ブレックファスト ババを待ちに連れ出したフィリックス。 街の軽食堂でイングリッシュ・ブレックファストを食べる場面が。 タマゴ、ベーコン、ソーセージ、ベイクドビーンズと定番のメニュー。 ナーサリー・ライム(マザー・グース) ババが口ずさんでいるソーセージの歌は、イギリスの子供に好まれる童謡"Five fat sausages"。 Five fat sausages sizzling in a pan one went pop the other went bang, Four fat sausages sizzling in a pan one went pop the other went bang, Three fat sausages sizzling in a pan one went pop the other went bang, Two fat sausages sizzling in a pan one went pop the other went bang, One fat sausage sizzling in a pan one went pop the other went bang, No fat sausages sizzling in a pan. 父と子、そして守るべき対象 この作品には複数の父子関係が描かれている。 高級老人ホームに入所しているダディ・ズーとフィリックス アンティーク密輸業者のビッグ・ボブと世間知らずのババ フィリックスとシェリーのおなかにいるまだ見ぬ赤子。 そしてフィリックスがババを保護していたように、殺し屋のジミーもまた常に影からフィリックスを見守っていた。 「いつも側にいたんだ、守護天使のように。 あんたは俺の憧れだった・・・」 ロケ地 London Zoo フィリックスがババをロンドン動物園に連れてゆく場面が。 キリンやペンギン・コーナーのあたり等。 Enfield Road フィリックスたちが一時身を潜めるシェリーの妹の家。 その他 テムズ川周辺、テレコムタワーが見える夜景など。 Langleybury キャスト Stellan Skarsgard.... Felix Chris Penn.... Bubba Paul Bettany.... Jimmy Felixを慕う後輩の殺し屋 Allan Corduner.... Big Bob Bubbaの父・アンティーク密輸業者 Jacqueline McKenzie.... Sherry Felixの恋人 Martine McCutcheon.... Mia Bubbaがサハラクラブで知り合った女の子 Sienna Guillory.... Kat 殺し屋組織のメンバー・Jimmyを誘惑する Ashley Artus.... Mick Foot 殺し屋組織のメンバー Sean Connolly.... Bouncer.... Daddy Zoo Felixの父 参考資料とソフト 『ギャング・オブ・UK』... 1998 監督・脚本:Andy Hurst Story ロンドンの大銀行に三人組の強盗が人質をとって篭城し、人質の女性一人以外は全員死亡するという凄惨な結末に終わった。 担当刑事バジャー警部を差し置いて、警察上部から調査を依頼されたという謎めいた精神管理センターCyclopsのコナー教授はたった一人の生存者ジョーに詳しい事情を聞いていた。 二人組のチンピラ、エディとイアンは、獄中の金庫破りの名人メイトランドに銀行強盗の話を持ちかけ、メイトランドに死んだふりをさせることでまんまと彼の脱獄を成功させた。 綿密な計画通り銀行に押し入ったものの、すぐに警察が駆けつけたため何名かの人質を取って銀行に立てこもることにする。 周りを取り囲む警官隊を指揮するのはバジャー警部。 そもそもメイトランドが投獄されたのは、1978年のカジノ襲撃事件の際催涙ガスをかけられて目が見えない間に謝って女性警官を射殺してしまったという容疑からで、その時の担当刑事がこのバジャーだった。 やがて篭城が長引くにつれ、理性を失っていった犯人と人質たちは・・・ 取調べが進むにつれ、ジョーの証言から、思いもよらない真相が明らかになってゆく。 そしてコナー教授の真の狙いは? Check! 紳士強盗 メイトランドやエディたちは、銀行強盗にあたってサヴィル・ロウ仕立てのスーツに山高帽を身に付けていく。 豪華家具 メイトランドの相棒ハリーは、カジノで奪った金をひとりで持っていったため莫大な財産を手にした。 そのためエディの家も豪華なアンティーク家具を揃えたインテリア。 キャスト、Trivia エレベーターのことは英語で「lift」というのだが、本作品では「elevator」と米語に統一されている。 アメリカ市場向けを意識したのか。 邦題『ギャング・オブ・UK』は公開予定の話題作『ギャング・オブ・ニューヨーク』(マーティン・スコセッシ監督作品)のタイトルを意識したものだろう。 原題「You're Dead... 」というフレーズは作品中に何度も登場する重要なキーワード。 のおしり、の70年代ファッションなどがファンの方にはたまらないかも。 Cyclopsとは一つ目の怪物のこと。 ロケ地 ロンドン ドイツ 音楽 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ マニック・ストリート・プリーチャーズ ガーディアンズ B-52'S ブロンディ キャスト.... Maitland 伝説的犯罪者・脱獄してエディの計画に乗る.... Eddie メイトランドの相棒の息子 David Schneider.... Ian エディの部下).... Jo (おとり捜査官だが実は・・・?) Barbara Flynn.... Professor Corner Cyclops代表者 John Benfield.... Inspector Badger 昔メイトランドを逮捕した刑事 Patrick Field.... Guffin Badger警部の部下 Roger Ashton-Griffiths.... Cliff Sniffton 銀行支店長・人質 Jane Peachey.... Vesuvius Eddieの彼女 Badi Uzzaman.... Chandra 催眠療法士・人質 Rayner Bourton.... Harry メイトランドの相棒・エディの父親 参考資料とソフト 1998年 ドイツ=イギリス 98分.
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