2017年4月より、超低用量ピル「ヤーズフレックス」が発売開始されました。 このヤーズフレックスについて、オリーブレディースクリニック麻布十番の山中智哉先生にお話を伺いました。 薬に含まれるホルモンによって排卵は起きませんが、子宮内にできた子宮内膜がはがれ落ちるため、休薬期間に生理が来ます。 ピルを服用することで子宮内膜の量が減るため、生理の出血時に強い痛みを伴う月経困難症に対し、ピルは有効な薬といえます。 排卵は起こらないため、服用しておけば基本的に妊娠しません。 昨年新しく発売されたヤーズフレックスも月経困難症に有効で、加えて子宮内膜症にも適用される薬です。 「超低用量ピル」とも呼ばれ、従来のピルよりも長い最長120日間の連続服用が可能です。 120日間服用したあとは4日間休薬します。 服用している期間は、基本的に出血は起こりません。 休薬期間のみ生理が来るので、従来のピルであれば年に12回の生理が起こりますが、 超低用量ピルのヤーズフレックスの場合は、年に3回程度しか生理が来ないことになります。 休薬をしたタイミングで、生理(あるいはもっと少ない出血)があり、そのあとに生理が来るのを避けることができます。 下の「ヤーズフレックス服用の方法と注意」を参照してください。 1サイクルが21日である従来のピルよりも選択肢が広がったといえます。
次のContents• ヤーズフレックスの成分 ヤーズには黄体ホルモンと卵胞ホルモンの2種類の合成女性ホルモンが含まれています。 この2つのホルモンの働きにより、脳の視床下部や下垂体が妊娠していると判断し、排卵をストップさせます。 この作用により子宮内膜の増殖がおさえられ、月経困難症や子宮内膜症の症状が軽減されます。 また、排卵が行われなくなる事で避妊効果も得られます。 ヤーズの黄体ホルモンの成分はドロスピレノン、卵胞ホルモンの成分はエチニルエストラジオールです。 ヤーズフレックスはこの2つの合成女性ホルモンが28日分全て同じ量で配合されています。 ヤーズフレックス ドロスピレノン (黄体ホルモン) エチニルエストラジオール (卵胞ホルモン) 1日目~28日目の錠剤(28錠) 3mg 0. ヤーズフレックスは日本で初めて 120日間連続して服用が認められているLEP 配合剤であり休薬期間を120日間設けないことで、生理時の疼痛を避けることができます。 「LEP 配合剤」は月経困難症などの治療目的で処方される薬剤の呼称であり、「低用量ピル」は避妊目的で使用される呼称です。 ヤーズフレックスは避妊目的では処方されませんので、ここでは「LEP 配合剤」とします。 ) 月経困難症だけでなく子宮内膜症でも保険適応されるLEP 配合剤 以前より、ヤーズは「月経困難症」への効能が認められ、保険適応となっていましたが、ヤーズフレックスは「子宮内膜症」に対する効果も承認されています。 関連記事 今まで日本には子宮内膜症に対する効能・効果で承認された LEP 配合剤はありませんでした。 そこで登場したのが、ヤーズフレックス配合錠なのです。 黄体ホルモンであるドロスピレノンの作用 ヤーズフレックスに含まれている黄体ホルモン剤「ドロスピレノン」は利尿剤である「スピロノラクトン」に構造上にており、弱い利尿効果があります。 そのため浮腫(むくみ)を軽減させる働きがあります。 また、ほとんどの黄体ホルモン剤にはわずかに男性ホルモン作用があるのですが、「ドロスピレノン」はほとんどありません。 なのでニキビ治療にも効果があります。 「マーベロン」にもニキビ改善効果がありますが、どちらがよりニキビ改善に効果があるかというと、男性ホルモンの活性をより低下させる「卵胞ホルモン」が多く含まれている「マーベロン」のほうがニキビ改善効果があるといえます。 関連記事 しかし今まで、ピルを服用して吐き気や頭痛、体重増加等の副作用があった人は卵胞ホルモン含有量が少ない「ヤーズフレックス」で改善されるかもしれません。 「ヤーズ」と同じ成分なら、血栓症が不安という声も 低用量ピルを服用することで、血栓症になるリスクが上昇することが知られています。 特にヤーズフレックスと同じ成分である「ヤーズ」は国内で3例の死亡例があり、不安に思う方も多いようです。 低用量ピル(LEP錠剤)には「エストロゲン」という女性ホルモンが含まれています。 この「エストロゲン」は血液を凝固する(固める)作用があるため、血栓症の発現頻度が高まるといわれています。 また、「ヤーズフレックス」に含まれる黄体ホルモン「ドロスピレノン」の作用に「利尿作用」があるのは先述の通りですが 利尿作用で体内の水分が減り、血液が濃縮し血栓症のリスクがさらに高まる可能性があります。 そのため、低用量ピル全般に言えることですが、「ヤーズフレックス」を服用する際は、「血栓症」について知っておく事が大切です。 また、DHA・EPAのサプリメントは血栓症予防に効果があることが認められていますので、不安な方は摂取するのも良いでしょう。 関連記事 ヤーズフレックスの服用方法 1日1錠、決められた時間に服用します。 ピルは飲み忘れ厳禁です。 服用1日目~24日目までは、出血がみられても連続して服用します。 25日目以降120日目の間に3日以上の出血が見られた場合、服用を中止し、休薬期間を4日とります。 (その間に消退出血が起きます) そのあと、また服用を開始します。 飲み忘れを防ぐためには、毎日同じ時間に飲む、毎日行う行動と一緒に服用するなど 例えば夜の歯磨きのあと 工夫をしている人が多いようです。 また、服用はなるべく食後にすることをお勧めします。 食後に摂ることで、胃腸への負担を軽くするためです。 ヤーズフレックスの破綻出血について 120日連続服用可能と言われていますが、120日の間3日以上の出血が1度も起きない場合は少ないようです。 多くの場合、それ以前に3日連続の出血(破綻出血)が起きます。 破綻出血とは、子宮内膜の維持ができなくなった時に起こるもので、内膜を維持するだけのプロゲストーゲン(黄体ホルモン)が不足し、エストロゲン(卵胞ホルモン)のバランスが崩れることで発生します。 通常の28日周期のLEP 配合剤(低用量ピル)は21日実薬服用後、7日間休薬期間をとるため、生理日(消退出血)がいつになるかわかりますが、ヤーズフレックスのように連続して服用し、破綻出血が起きてからの休薬期間の設定となると生理日がいつになるかわからないというデメリットがあります。 いつから、どのタイミングで飲み始めたらいい? ヤーズフレックスを初めて服用する時は 生理の初日に最初の1錠を飲み始めます。 また、生理初日から服用ができなかった(生理2日目以降7日以内)場合でも、服用を始めることは可能ですが、その場合避妊効果が低くなります。 2週間はセックスを控えるか、他の避妊法を併用しましょう。 ヤーズフレックスは日本では避妊目的での処方はされていませんが、避妊効果を期待する場合、生理が終わった後(7日目以降)に服用を始めることはおすすめできません。 その場合体内で排卵の準備が行われている可能性が高いからです。 次の生理日を待って飲み始めましょう。 ヤーズフレックスは避妊効果があるの?それはいつから? ヤーズフレックスは日本では月経困難症・子宮内膜症の症状軽減を目的としたLEP 配合剤として承認を受けているため、避妊目的での処方はされません。 しかし同じ成分の「ヤーズ」は外国で避妊効果を目的として製造・販売されており、きちんと決められた用法を守り服用することで避妊効果は得られるでしょう。 避妊効果は、生理の初日から1錠目を服用すれば、その日から得られます。 メカニズムを説明すると、女性の卵巣は、月経が開始すると、その時から次の排卵準備を始めます。 しかし生理開始から24時間以内の時点では、排卵準備はまだ本格化していません。 なので、そのタイミングでピルを服用することで排卵準備をストップすることができ、「その周期での排卵は起こらない」状態になります。 ピルの服用開始が生理初日となっているのは、そのためです。 しかし、生理開始から24時間以上経過してしまうと卵巣では排卵準備がスタートした状態になります。 ここでピルの服用を開始すると、排卵準備が落ち着くまでに時間が必要となり、確実に排卵をストップするのに2週間程度の時間がかかります。 しかし、この期間も生理2日目~7日目までです。 それ以降、8日目となると卵巣は排卵準備を完全にスタートしてしまっていると考えたほうがよいでしょう。 この期間にピルを服用し始め、2週間が経過してもコンドーム等の避妊手段をとらなければ 妊娠する可能性があります。 ヤーズフレックスを飲み忘れたら? 気をつけていても、「飲み忘れてしまった!」ということは良くあると思います。 ヤーズフレックスは 超低用量ピルに分類されるので、飲み忘れると不正出血や破綻出血がおきやすくなるので注意しましょう。 飲み忘れた場合の対処方法をお伝えします。 飲み忘れた場合(12時間~24時間) 毎日午後23時に服用していた人が、次の日の朝8時に服用するのを思い出した場合です。 思い出した時点ですぐに飲み忘れた分を服用します。 そして、その日の23時、その日の分を通常通り服用します。 1日に2錠飲むことになりますが心配はいりません。 飲み忘れた場合(24時間) 毎日午後23時に服用していた人が、昨日の23時にピルを服用していなかった事を次の日の23時に思い出した場合です。 思い出したときに、昨日の分と今日の分の2錠を服用します。 1日に2錠飲むことになりますが心配はいりません。 飲み忘れた場合(48時間経過) 2日間2錠、飲み忘れていることを3日目に気付いた場合です。 これには2つ方法があります。 そのまま1シート服用し続ける方法 気付いた時点で、昨日服用するはずだった分と、今日の分を服用します。 1日目の分は服用しません。 要するに、1日分飛ばすということです。 消退出血(生理)を起こしたくない、または7日以上実薬を服用し続けていて避妊効果を持続させたいと考える人はこの方法を選ぶとよいでしょう。 しかし、ヤーズフレックスは超低容量ピルなため、不正出血を起こす可能性があります。 また、実薬を連続して服用した日数が足りないと、緊急避妊が必要となる場合があります。 下記をご覧ください。 【1】第1週に飲み忘れた場合 休薬期間または第1週に性交渉を行った場合には緊急避妊を検討する 【2】第2週に飲み忘れた場合 直前7日間に連続して正しく服用した場合には緊急避妊は必要ない 【3】第3週に飲み忘れた場合 休薬期間を設けず、現在のシートの実薬を終了したらすぐに次のシートを始める 参考資料: 実薬を1日~6日しか服用していない時に2日以上飲み忘れていて、セックスをした場合は緊急避妊を検討しましょう。 妊娠する可能性があるからです。 7日連続して実薬を服用していた場合は、そのまま上記の方法で1日分服用をとばし、1シート服用し続けて大丈夫です。 21日以上服用していて2日間服用を忘れていた場合は、2シート目を服用し始めます。 そのまま服用をいったんストップし生理をおこす 48時間飲み忘れた場合のポピュラーな方法です。 婦人科ではこの方法を推奨する先生が多いでしょう。 このまま、あと2日間服用をストップし、生理をおこします。 そして4日間の休薬期間のあと、残っている錠剤を服用します。
次の「ピルを服用していても妊娠する可能性はあるのかな」あなたは今、そうお考えではありませんか?ピルには避妊効果があるとされていますが、100%ではないため不安に感じている方もいるでしょう。 そんなあなたに 朗報です。 「ピルは正しく服用することで妊娠する確率を限りなくゼロに近づけられる薬です」 この記事では、ピルの服用が妊娠に与える影響について詳しく解説していきます。 安心してピルを服用できるよう、ぜひこの記事の情報を参考にしてください。 ピルの種類 ピルには、大きく分けて 「低用量ピル」と 「アフターピル」の2種類があります。 2つのピルはそれぞれ効果や用途に異なる部分があるため、まずは両者の違いを見ていきましょう。 低用量ピル 低用量ピル(経口避妊薬)は、避妊のほか生理痛や生理不順、PMS(月経前症候群)、子宮内膜症などの改善を目的に使用される治療薬です。 毎日一回の服用と定められた休薬期間を守ることで、約98%の高い避妊効果を得られます。 低用量ピルは最も高い避妊効果と安全性を持つ治療薬として、現在多くの女性に使用されています。 また、こちらの記事では主に低用量ピルの事例について解説しています。 アフターピル アフターピル(緊急避妊薬)は、避妊せずに行った性交後に緊急的に服用するピルです。 最後の避妊手段とされ、早く服用すればするほど高い避妊効果が得られます。 服用までの時間に対する避妊率は以下の通りです。 服用までの時間 避妊率 24時間 99% 48時間 98% 72時間 97% 低用量ピルを服用すると妊娠率はどれくらい下がる? 低用量ピルは定められた用法用量に則って毎日きちんと服用することで、0. 1%(1年間ピルの服用を続けた1,000人の女性のうち一人)まで妊娠率を下げられます。 ただし飲み忘れてしまった場合妊娠率は 約5%まで上がり、 飲み忘れたピルの錠数が増えれば増えるほど妊娠率も上がるとされているため注意が必要です。 元の妊娠率に戻すには、飲み忘れたピルの錠数(=日数)に応じた対処方法を取らなければいけません。 飲み忘れたピルの錠数別の対処方法は、以下の通りです。 ただしピルの服用を中止してすぐの頃は、まだ生理周期が整っておらず不規則なため、正確な判定が出ないことがあります。 そのため、妊娠検査薬の利用はピルの服用を中止してから 3周期もしくは3か月程度経過してから行うのが望ましいでしょう。 妊娠中に低用量ピルを服用しても大丈夫? 妊娠中のピルの服用は控えましょう。 現段階では妊娠中における低用量ピルの服用が胎児の奇形率に影響を与えたという報告はありませんが、もともとこれまで妊婦に対する低用量ピルの安全性を担保するための臨床試験自体が行われておらず、 妊娠中のピルの服用はその安全性がまだ確立されていない状況です。 安全性が証明されていない現在の状況での服用は危険であるため、 妊娠が判明した時点でただちにピルの服用を中止するべきでしょう。 また授乳中のピルの服用は、母乳の量や質の低下を招くことやピルに含まれる成分が母乳に移行することがデータとして報告されているため、服用しないことが望ましいとされています。 ピルは服用すると将来妊娠出来なくなる? 「ピルを服用すると将来妊娠できなくなるのでは?」と思っている女性の方は多いかもしれませんが、心配は無用です。 低用量ピルの服用を中止した後の妊娠率はピルを服用していない女性とほぼ同等で変わりはありません。 またピルの服用を中止した後 約80%の女性が35日以内に、99%の女性が半年以内に 月経が通常通りに回復しているというデータもあります。 ピルの服用中止後3か月以内に約85%の女性が、基礎体温表において二相の排卵曲線を描くようになっているとされるデータもあり、この頃にはすでに妊娠できる状態にあることは明らかです。 低用量ピルを飲んでいたら生理がこなくなることがあるのは本当? 「ピルを服用していて休薬期間に入っているのに生理が来なくなってしまった」という場合には、一度医師の診察を受けましょう。 ピル服用中の休薬期間に生理(=消退出血)が来ない方は全体の1%未満とされていて、 2周期にかけて消退出血がなかった場合には妊娠している可能性があります。 生理が来ない場合でもピルの服用を続けることは問題ありませんが、 必要に応じて医師の検査を受けるのが望ましいでしょう。 まとめ:ピルの不安ごとは医師に相談しましょう! この記事では、ピルの服用が妊娠に与える影響について解説しました。 ピルは決められた服用方法と錠数を正しく守っていれば妊娠率を限りなく低く抑えることが可能ですが、不安を感じている方は医師に相談することをおすすめします。 最近ではオンライン診療の普及が進んでいて、来院することなく医師の診察を受けることが可能です。 ピルの購入を検討している方は、 医師に相談してご自身の中の不安をきれいに払しょくした上で安心してピルの服用を始めましょう。 東京プレイヤーズクリニックでは、インターネットを利用したオンライン診療を行っています。 来院しなくてもスマートフォンやパソコンで医師の診察を受けることでピルの処方が受けられるため、対面での診察や来院に抵抗がある方はぜひ一度ご確認ください。
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