「あしからず」とは古語における悪し(あし)という形容詞のシク活用で、未然形「あしから」に打消しの助動詞「ず」がついた形です。 「あし」には悪い、不適当だ、具合が悪いなどの意味があるので、「あしからず」を直訳すると「悪くない」となります。 また、悪し(あし)に似た表現で悪ろし(わろし)という言葉があります。 悪し(あし)が悪いという全否定の意味があるのに対し、悪ろし(わろし)には良くないといった少しグレーの部分を含んだ意味があります。 ちなみに、反対語は良いという意味の「よし」で「物の良し悪しを見分ける」とか「まだ良し悪しの判断ができない」などという時に対で使います。 同じように「よし」に似た表現で「よろし」という言葉があります。 「わろし」同様悪くないという意味で、古語には「よし」「よろし」「わろし」「あし」という順番で4段階の評価基準がありました。 「あしからず」はそれだけでは「悪くない」「気を悪くしない」という意味です。 本来ならば、「あしからずご了承ください」「あしからず思わないでください」「あしからずご容赦願います」となります。 「ご了承ください」「思わないでください」「ご容赦願います」という言葉が省略されて使われているのが「あしからず」です。 これは、しつこい言い回しを嫌った江戸時代の名残だと言われています。 江戸庶民は、最後まで言わない、ストレートに言わずぼかしたり、念押ししないのが恰好良いとされる「いきの」文化を大切にしていました。 つまり、「あしからずご了承ください」「あしからず思わないでください」と言いたいところを敢えて「あしからず」で止めたのが、「いき」とされ広がったと考えられています。 江戸の文化について少しふれておきましょう。 江戸の美意識は庶民の生活から生まれたといわれています。 「いき」という概念がありますが、身なりや振る舞いが洗練されていて恰好良いことを指します。 「いき」の反対は「野暮」、また型にはまり過ぎたものを「気障」といい、「気障」になるくらいなら「野暮」がよいとされ、「気障」が一番敬遠されていました。 会話においても、型にはまった決まり文句を避け、わざと外したり極限まで言葉を省略したりして、楽しんでいました。 有名な江戸言葉に「あたぼうよ」という言葉があります。 これは「あたりまえだ、べらぼうめ」が省略され「あたぼうよ」となり、それが「いき」とされ広がりました。 会話だけでなく服装や髪型、行動や生き方などのあらゆる分野において最上級のほめ言葉となる「いき」という概念は現在でも日本人の心の中に根付いています。 コマーシャルにも使われていた 「あしからず」という表現は、使用する側が本当に悪いことをした時や、使用する側の落ち度があって謝罪する場合には適切ではありません。 「この度は、当方の手違いにより大変なご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。 どうぞあしからずお許しください。 」という使い方はできません。 この場合、使用する側の落ち度があるので、「この度は、当方の手違いにより大変なご迷惑、ご心配をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。 大変申し訳ございませんでした。 」というようにしてください。 また、「あしからず」は相手を気遣う言葉なので、相手に対して失礼な言い方をしたあとに「あしからず」と結ぶのも適切ではありません。 この場合、典型的な嫌味に聞こえるので注意しましょう。 「あしからず」の敬語って? すでに決定してしまったことや、変更になったこと、その決定を覆すことができないことを相手にあらかじめ知らせる文章です。 「ATMは8月15日から8月17日の3日間、点検のためご利用できなくなります。 お客様には大変ご不便をおかけいたしますが、あしからずご容赦くださいますようお願いいたします。 」 この場合、お客様に対して、ある一定期間ATMが使えなくなることをあらかじめ告知する文章です。 あらかじめ決まっていること、知っておいてほしいことを告知する時には「あしからず」という言葉は便利に使えます。 ご不便をおかけしますという一文が重要で、「ATMは8月15日から8月17日の3日間、点検のためご利用できなくなります。 あしからずご容赦くださいますようお願いいたします。 」とすると、少し一方的に聞こえてしまいますので、注意してください。 謝罪・お詫びの例文 相手の気持ちに応えることができないとか、提案されたことに対して断る場合に使います。 また、こちらのミスではないけれど相手が思うようにことが進まなかった時などにも使います。 「この度は、当社の企画にご応募頂き、誠にありがとうございました。 応募者多数のため、社内で慎重に検討させていただいた結果、残念ながら不採用とさせていただきました。 何とぞ、あしからずご了承くださいますようお願いいたします。 」 この場合、応募者が多かったため、応募した企画が不採用になったという通知の文章です。 「何とぞご了承くださいますようお願いいたします。 」というより「何とぞ、あしからずご了承くださいますようお願いいたします。 」の方がやわらかく、貴意に添えないことへの申し訳ない気持ちを伝えることができます。 数に限りがある場合の例文.
次の「あしからず」という言葉があります。 「~ですので、あしからず。 」と聞いたことはないでしょうか。 または、買い物をしていて、「こちらの商品は完売いたしました。 あしからずご了承ください。 」などと書かれているのを目にしたことはないでしょうか。 この「あしからず」、少し年配の方が使いそうな、古臭い感じもします。 聞いたことはあるけれど、自分では使ったことがないという方も多いのかもしれませんね。 では、「あしからず」の意味はわかりますか? なんとなく知っている「あしからず」ですが、正しい意味や使い方を知らない人も多いんです。 今回は、「あしからず」の意味や使い方、目上の方に使えるかどうかを調べてみました! 目次• 「あしからず」の意味 さっそく「あしからず」を辞書で調べてみましょう。 「あしからず(悪しからず)」は連語として 「相手の希望や意向に添えない場合などに用いる語。 悪く思わないで。 気を悪くしないで。 」と出ています。 「あしからず」は「悪く思わないで」「気を悪くしないで」という意味なんですね。 そのまま丸覚えしておけばいいのですが、せっかくなのでもう少し詳しく説明させてください(笑)。 「あしからず」は古語のシク活用形容詞「あし(悪し)」の未然形「あしから」に打ち消しの助動詞「ず」がついたものです。 突然古文の授業のようになりましたが、難しいことはありません。 「あし(悪し)」はこの場合「悪く思う」「気分が悪い」という意味で用いられています。 それを打ち消しているということは「悪く思わない」「気を悪くしない」という意味になります。 そして、あとに続く意味が省略されていますので、補って「悪く思わないでください」「気を悪くしないでください」という意味の丁寧語になるのです。 「あしからず」の使い方 「あしからず」は「悪く思わないで」「気を悪くしないで」という意味でした。 詳しく言うと、 「悪意はありません。 仕方のないことなので、どうか気を悪くしないでくださいね」という意味を表します。 ですので、 相手に悪いとわかってはいるが、やむを得ないという時に使うようにしましょう。 やむを得ない事情での中止、予定変更、断りなどを伝える際、申し訳ない気持ちを表すことができます。 もちろん、本当に自分が悪いことをした時や、こちらに落ち度があって誠心誠意謝らないといけないような時には「あしからず」は使わないでくださいね。 【例文】• 「先ほどはお電話にでられず申し訳ございませんでした。 運転中でしたので、あしからず。 「出張のため出席できませんが、どうぞあしからず。 」 目上の人にも使える? では「あしからず」は目上の人にも使える表現でしょうか? 例えば仕事をする上で、上司やお客様、外部の方には敬語を使いますよね。 そんな中、「あしからず。 」で終わると、ちょっと唐突な感じがするかもしれません。 丁寧な言葉ではないのかな?と心配になりますよね。 結論から言うと、「あしからず」を目上の人に使うことは決して失礼ではありません・・・が、使うには 注意が必要です。 「あしからず」はそれだけで「気を悪くしないでくださいね」などの申し訳ない気持ちを丁寧に言ったものになります。 「あしからず思わないでください」などと文章をわざと最後まで言わないのも、みなまで言わず途中で止めて、続く部分を省略するという、日本語の昔からの言語習慣によるものです。 古典など読んでいると、あとに続く語を省略しているような文が沢山出てきますよね。 どうしても文章が突然終わるような印象は拭えませんから、「~、あしからず。 」と言うと、相手は失礼な印象を受けてしまうかもしれません。 ベターなのは、「あしからずご了承ください」のように、より丁寧な言い方に直して使うことです。 【例文】• あしからずご了承ください。 あしからずご承知おきください。 あしからず、ご容赦願います。 「あしからずご了承ください」と丁寧に言ったつもりでも、「あしからず」という言葉自体に、すでに良くない印象を持っている人もいます。 「あしからず」=「悪くない」=「私は悪くないので文句を言わないでくださいね」と言う意味にとらえられてしまうことがあるようです。 正しい使い方をすることはもちろん大事ですが、このように受け取る側の感じ方が問題になる場合もあります。 ですので、例えば付き合いの長い上司には「あしからずご了承ください」と言うけれど、本当に気分を害するとまずいような相手には別の言い方を考えるなど(汗)、相手や場面によって「あしからず」を使うかどうかの判断をしていく必要があるかもしれませんね。 少し、使い方の難しい言葉でした。 せっかく正しい使い方をしていても、印象を悪くしてしまっては損ですからね。 「あしからず」は時と場合を見極めて、うまく使っていきましょう。 最後まで読んでくださりありがとうございました!.
次の悪しからず / 「あしからず」と読む。 「希望に応えられなかったことについて、悪く思わないでください」といった気持ちを相手に伝えるときに使う慣用語。 断り状で使用する機会が多い。 類語に「ご希望に添えず」「ご要望に添えず」「誠に申し訳ありませんが」などがある。 本状と行き違いの場合は、悪しからずご容赦願います。 今回の貴兄のご要望には添いかねますこと、何とぞ悪しからずご了承ください。 応募者多数のため貴意に添いかねることになりました。 何とぞ、悪しからずご了承ください• 今回のお申し出、誠に申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。 ご希望に添えず申し訳ございません。 せっかくのご依頼ではございますが、どなたか他にふさわしい方にお願いいただければと存じます。 あしからずご容赦ください。 1週間ほど入院治療を要するとのことで、やむなく懇親旅行のほうは欠席させていただきました。 どうか悪しからずお許しのほどお願い申し上げます。 諸事に取り紛れ、貴意を得ず、誠に申し訳なく存じております。 なにとぞお許しくださいますようお願い申し上げます。 誠に申し訳ございませんが、先の申込みを取り消させていただきたく存じます。 事業ご賢察のうえ、悪しからずご容赦くださいますようお願い申し上げます。
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