唐突ですが・・・ 『週刊少年ジャンプ』2019年1号より連載中、鬼才藤本タツキの送る話題作 『チェンソーマン』がえげつないです! 悪魔と呼ばれる存在が蔓延る世界で、 借金まみれの主人公デンジは相棒 ポチタと共にデビルハンターとして悪魔を退治していく! と言うと、 ややありきたりに聞こえますが、この作品本当にジャンプで連載しているの?と疑わしく思うほど異色です。 藤本タツキ先生と言えば、ジャンプ+で連載していた『ファイアパンチ』がSNS上でバズり話題を呼びましたが、そのあまりにえげつなく生々しい人間描写と独特の感性は本作でも遺憾無く発揮されています。 デンジとポチタの関係。 借金返済のための命懸けの日々。 最底辺の生活の中で彼は何を思うのでしょうか。 そして、チェンソーマンの誕生の秘密にも迫ります! デンジとポチタの夢とは? 契約を交わしたデンジとポチタですが、第1話終盤で殺されてしまいます。 デンジに仕事を斡旋していた借金の取立人が、力を求めて悪魔と契約した結果乗っ取られてしまったためです。 多くの悪魔にとってデビルハンターは害悪でしかないので、デンジはポチタもろとも四肢をバラバラにされてゴミ箱に捨てられます。 死ぬ間際、ポチタを抱きながらデンジは思います。 「普通の生活を夢に見るだけでよかったのに」 この夢とは、比喩ではなく、眠ってみる夢のことです。 「食パンにジャム塗って、ポチタと食って、女とイチャイチャしたりして、一緒の部屋でゲームして…抱かれながら眠るんだ…」 そんな一瞬を、将来なんて非現実的なところではなく、今日見る夢に託していたのがデンジでした。 しかし、ポチタはデンジのもうひとつの夢のことを考えていました。 それは、 デンジが死んだあと、その体をポチタに譲るというものです。 悪魔には死んだ人間の体を乗っ取れるヤツがいるらしい。 ポチタにそれができるのなら、自分の体で普通の暮らしをして、普通に死んでほしい。 デンジのもうひとつの夢。 というより、ポチタとの約束だったのだと思います。 この夢の末路はある意味王道の展開になります。 ポチタは約束を破って、デンジの体を乗っ取るのではなく、逆に 自分の心臓をデンジに与え蘇らせました。 チェンソーマンとして生まれ変わったデンジは、悪魔を倒し、ポチタの心臓を胸に抱え新たな人生を切り拓いていきます。 チェンソーマンはえげつない? えげつない 藤本タツキの作品を読んでいつも思うのがこれです。 露骨で、いやらしい。 情け容赦もない。 (出典:三省堂) まさにこれ。 酷い、あんまりだと打ちのめされるのです。 デンジの生い立ちやポチタとのドラマは筋書きとして見るとよくあります。 なのに藤本タツキにしか描けないと感じるのは 徹底しているからでしょう。 親が死んでひとりになるってどういうこと? お金がないってどんな状態? お腹が空いても食べるものがないときの気持ちは? フィクションの世界では「なんとなく」「なあなあ」に流されがちなすべての現実を徹底して冷酷に描いていくのです。 これがキツい。 この作品には悪魔が出てきます。 ビジュアルもグロテスクで恐ろしければ、やることもまさしく悪魔です。 ですが、1話でもっとも怖いと感じたのは 借金の取立をしているヤクザでした。 良い人ではないのですがもの凄く悪人にも見えない。 そのバランス感覚が気持ち悪い。 ぜひ『チェンソーマン』のえげつなさを体感していただきたいです。 読めば一発でわかりますよ。
次のデンジに迷う余地はなかった。 彼の、公安デビルハンターとしての生活が始まる。 『チェンソーマン』登場人物(主人公) デンジ 本作の主人公。 一人称は「俺」。 年齢は16歳。 父の借金を背負わされ、デビルハンターとして悪魔を討伐し金を稼ぎ、自身の眼球や臓器を売っても尚、生きるのがやっとな極貧どん底生活を送っていた。 幼いころ(父親が死んだ直後)に瀕死の悪魔ポチタと血の契約を交わして以来、二人は相棒に。 二人で一つとしてヤクザ専属のデビルハンターとして活動する。 悪魔に魂を売ったヤクザの手によって一度は完全に死に至るが、相棒ポチタの力によって蘇生する。 ポチタが心臓となったことで、チェンソーの悪魔へと変身する『チェンソーマン』の能力を得た。 公安のデビルハンター、マキマに拾われて公安所属のデビルハンターになる。 自分の欲望や思ったことには正直に生きるタイプ。 思ったことをすぐ口にする。 これまで人と関わってきた経験がないため、協調性はゼロ。 幼いころから自分の身は自分で守ってきたため、恐いもの知らずでどんな敵にも(後先考えずに)突っ込む。 ポチタ 愛くるしい姿をしたチェンソーの悪魔。 お尻からチェンソーが突き出たような見た目をしている。 デンジが幼いころからいつも一緒にいた。 デンジがヤクザに殺害された際に、自分の命と力を引き換えにデンジを蘇生させる。 『チェンソーマン』登場人物(公安対魔特異課) その名の通り、公安に所属する対悪魔・殲滅を目的とした部署。 福利厚生が厚く、給与目当てで就職する者が後を絶たないが、殉職者も後を絶たない。 公安という性質上、民間のデビルバスターでは太刀打ちできないような強力な悪魔と対峙することも多い。 (殉職者が多い原因) 公安の中でも特異4課は実験的部隊とされており、例外的に魔人や悪魔が隊員として所属している。 マキマさん 内閣官房長官直属のデビルハンターであり、対魔特異4課のボスであり、デンジの直属の上司であり、美しい。 映画好き。 ミステリアスな雰囲気を醸し出す、若く綺麗な女性だが、驚異的な戦闘力を誇る、その力ははっきり言って最強。 (あらゆる漫画作品と比較しても相当上位の戦闘力) 生贄に対象者の名前を発言させることで、(たとえ対象者がどれだけ遠くにいようとも)瞬殺できる能力をもつ。 具体的には、マキマが両の掌をすり合わせた動作が発動の合図。 次の瞬間、攻撃対象は、まるでプレス機にかけられたかのように瞬時に圧殺される。 パワー デンジの同僚。 血の魔人。 自分の血を自在に操る能力を持つ。 血で武器を生成して攻撃したり、出血を止めることが可能。 一見すると人間の容姿をしているが、頭にツノが生えている。 また、人間のエチケットや常識、マナーは全く持ち合わせていない。 トイレも流さない。 『ニャーコ』と名付けた猫をとても大切に可愛がっている。 魔人になった経緯は、現在のところ不明。 早川アキ(先輩) マキマの部下でデンジの3年先輩の男性。 マキマのことが好き。 デンジのことは嫌い。 マキマの指示で、デンジとパワーを自室に住まわせることになってしまった苦労人。 最強の悪魔と言われる「銃の悪魔」に家族を殺された過去をもち、復讐のためにデビルハンターになった。 「狐の悪魔」「呪いの悪魔」「未来の悪魔」と契約を結んでおり、これらの悪魔を呼び出して戦う。 姫野(先輩) 通称「ゲロ先輩」。 (酔ってデンジにぶちかました描写があまりにも衝撃的だったことから) 隻眼で眼帯、煙草がトレードマーク。 デンジの先輩でアキのバディ。 詳細は明らかになっていないが、デビルハンター歴はかなり長い。 「幽霊の悪魔」と契約していて、「腕」を自由自在に操ることができる。 サムライソードとの激戦においてバディのアキを守るため自分の全てを「幽霊の悪魔」に捧げ、死亡。 東山 コベニ 新人デビルハンターで小柄な女性。 年齢は20歳。 引っ込み思案、小心者な性格であり、普段はネガティブ発言が多いが、極めて高い戦闘力を誇る。 ひとたび戦闘モードに入ると、人並外れた身体能力を駆使して相手を瞬時に葬り去る。 ビーム 「サメの魔人」。 個性的な外見をしていて、頭上半分がサメの頭部になっている。 戦闘時には顔全体がサメになり、ジョーズさながら敵に喰らいついて攻撃する。 また、地中や壁などをまるで水のように潜ったり泳いで移動することができる。 かなり便利。 デンジのことを「チェンソー様」と呼んで、崇め奉っている。 天使の悪魔 まるで、美しい女性のような容姿をしているが、性別は男性。 彼が直接触れた者は、寿命を吸い取られる。 『チェンソーマン』登場人物(敵) サムライソード かつてデンジを利用し、そして最終的に彼に殺されたヤクザの孫。 祖父を殺したデンジのことを恨んでいる。 「刀の悪魔」に変身し、切れ味鋭い刀身と目にも止まらぬ居合切りでデンジたちを苦しめる。 殺しても死なない驚異的な生命力をもつ。 レゼ 外見上は普通に可愛いJK。 しかしその正体は「爆弾の悪魔」。 自身を爆発させて攻撃したり、相手を爆発させて吹き飛ばしたり、爆発させた空気を利用して高速で移動できたり、とにかく爆発的に強い。 「銃の悪魔」の仲間とされているが詳細は不明。 はっきりしていることは、デンジの心臓を狙っているということ。 『チェンソーマン』読みどころ 映画的表現技法 映画でよくあるスローモーション描写。 引き金を引いて発射された銃弾は、ゆっくりゆっくりと空間を捩じり、裂きながら、確実に獲物に直進する。 そして、獲物に触れたと同時。 映画でよくあるやつです。 『チェンソーマン』はそういった映画的表現を、擬音や背景・集中線などを駆使し、コマ割りを巧みに操り、読者の視線を誘導して、見事に描き切っています。 圧倒的センス。 松本大洋や大友克洋…日本を代表する偉大な漫画家にも通じるものがあると言えば、褒め過ぎでしょうか?いや、決して褒め過ぎではないでしょう。 笑ってしまうほどの、ぶっ飛びヴァイオレンス描写 もう一つ映画的な点を挙げるとするなら、それはやはり、徹底的なヴァイオレンス描写でしょう、 例えば、マーティン・スコセッシ。 例えば、クエンティン・タランティーノ。 例えば、北野武。 古くは、黒澤明などもそうでしょうか… かの名監督、名作に共通してみられる「笑ってしまうほど悲惨なヴァイオレンス描写」。 自分とはかけ離れた世界の出来事だからこそ、そのむごたらしいヴァイオレンス描写を見ると、人は思わず「おいおいマジかよ」と、怯えながらも笑ってしまうものです。 人間の根底にある狂気と笑ってしまうほどの暴力描写。 それでいて、(言葉を選ばずにいえば)スタイリッシュ。 おしゃれ。 やはりこれに尽きます。 センスとバランス感覚。 暴力と笑いは紙一重とは言いますが、まさにその通り。 紙一重のバランスで作品に落とし込むセンス。 こういった描写が数多くみられるのが『チェンソーマン』の特徴でもあります。 第一話からすでにこれですから。 ジャンプでよく連載できたなぁと思います、本当に。 こういった描写はひたすら突き抜けて描くからこそ、凄みが出るし、同時に凄すぎて笑ってしまうものです。 もちろんただグロいだけでは、いけません。 やはり漫画においてもセンスとバランス感覚。 表現の一つとしてイケてるかどうか、です。 上の見開きのコマにしても、やっぱり非凡なわけで。
次の唐突ですが・・・ 『週刊少年ジャンプ』2019年1号より連載中、鬼才藤本タツキの送る話題作 『チェンソーマン』がえげつないです! 悪魔と呼ばれる存在が蔓延る世界で、 借金まみれの主人公デンジは相棒 ポチタと共にデビルハンターとして悪魔を退治していく! と言うと、 ややありきたりに聞こえますが、この作品本当にジャンプで連載しているの?と疑わしく思うほど異色です。 藤本タツキ先生と言えば、ジャンプ+で連載していた『ファイアパンチ』がSNS上でバズり話題を呼びましたが、そのあまりにえげつなく生々しい人間描写と独特の感性は本作でも遺憾無く発揮されています。 デンジとポチタの関係。 借金返済のための命懸けの日々。 最底辺の生活の中で彼は何を思うのでしょうか。 そして、チェンソーマンの誕生の秘密にも迫ります! デンジとポチタの夢とは? 契約を交わしたデンジとポチタですが、第1話終盤で殺されてしまいます。 デンジに仕事を斡旋していた借金の取立人が、力を求めて悪魔と契約した結果乗っ取られてしまったためです。 多くの悪魔にとってデビルハンターは害悪でしかないので、デンジはポチタもろとも四肢をバラバラにされてゴミ箱に捨てられます。 死ぬ間際、ポチタを抱きながらデンジは思います。 「普通の生活を夢に見るだけでよかったのに」 この夢とは、比喩ではなく、眠ってみる夢のことです。 「食パンにジャム塗って、ポチタと食って、女とイチャイチャしたりして、一緒の部屋でゲームして…抱かれながら眠るんだ…」 そんな一瞬を、将来なんて非現実的なところではなく、今日見る夢に託していたのがデンジでした。 しかし、ポチタはデンジのもうひとつの夢のことを考えていました。 それは、 デンジが死んだあと、その体をポチタに譲るというものです。 悪魔には死んだ人間の体を乗っ取れるヤツがいるらしい。 ポチタにそれができるのなら、自分の体で普通の暮らしをして、普通に死んでほしい。 デンジのもうひとつの夢。 というより、ポチタとの約束だったのだと思います。 この夢の末路はある意味王道の展開になります。 ポチタは約束を破って、デンジの体を乗っ取るのではなく、逆に 自分の心臓をデンジに与え蘇らせました。 チェンソーマンとして生まれ変わったデンジは、悪魔を倒し、ポチタの心臓を胸に抱え新たな人生を切り拓いていきます。 チェンソーマンはえげつない? えげつない 藤本タツキの作品を読んでいつも思うのがこれです。 露骨で、いやらしい。 情け容赦もない。 (出典:三省堂) まさにこれ。 酷い、あんまりだと打ちのめされるのです。 デンジの生い立ちやポチタとのドラマは筋書きとして見るとよくあります。 なのに藤本タツキにしか描けないと感じるのは 徹底しているからでしょう。 親が死んでひとりになるってどういうこと? お金がないってどんな状態? お腹が空いても食べるものがないときの気持ちは? フィクションの世界では「なんとなく」「なあなあ」に流されがちなすべての現実を徹底して冷酷に描いていくのです。 これがキツい。 この作品には悪魔が出てきます。 ビジュアルもグロテスクで恐ろしければ、やることもまさしく悪魔です。 ですが、1話でもっとも怖いと感じたのは 借金の取立をしているヤクザでした。 良い人ではないのですがもの凄く悪人にも見えない。 そのバランス感覚が気持ち悪い。 ぜひ『チェンソーマン』のえげつなさを体感していただきたいです。 読めば一発でわかりますよ。
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