薬が開発されるまでの流れ(より) 治験はまず少人数の健康な人を対象に行い、次は少人数の患者に行う。 効果が出そうであれば、さらに人数を増やして試験を行う。 このように、3つの段階がある(第1相から第3相)。 もちろん十分に説明を受けたうえで、本人の同意が必要だ。 この中で、薬を患者に投与して、血液検査を始めとするさまざまなデータを収集する。 そのデータを解析して、ようやく本当に効果があるといえるかが分かる。 効果ありという結果が出たら、国に承認申請する。 その結果、承認が得られれば、めでたく「医薬品」として販売でき、病院で処方ができるようになる。 その後も「製造販売後調査」が行われ、安全かどうか、有効な薬かどうかが確かめられる。 最終段階として「再審査」と呼ばれる審査があり、場合によっては承認取り消し、効能効果の削除または修正が行われることもある。 薬は、「何に効くか」「何に使うか」がきちんと定められている。 これを「適応」という。 アビガンは既にインフルエンザ薬として承認を受けているが、新型コロナウイルスへの適応はまだ承認されていない。 そのため「適応追加」を目的として、第2相もしくは第3相試験の治験から行われる。 アビガンの新型コロナウイルスに対する治験は、どんなやり方で実施しているかはまだ公表されていない。 しかし、既に中国では2本の治験が行われて、その結果、新型コロナウイルスにファビピラビル(アビガンの一般名称)が有効であるとの結果が出ている。 しかし、この中国での論文は取り下げとなった。 理由は現時点では不明であるが、近日中に差し替え版が掲載され、取り下げた理由も記載されるようだ。 関連記事• 不謹慎だと思われる方もいるかもしれないが、株式市場では、早速「コロナウィルス関連株」の物色が始まっている。 特に、今後需要が見込まれるマスクや医療廃棄物を手がける会社の株価は、ここ2週間で大きく増加した。 テキストマイニングを用いてAIで企業や経済の先行きを分析するxenodata lab. (東京都渋谷区)は、新型コロナウイルスの国内上場企業への影響予測を公開した。 それによると、世界的に感染が拡大した際の影響は、各業界共通で部品サプライヤーへの減益影響が大きいと予測された。 この法則がいまや崩れようとしている。 景気が後退しているにも関わらず物価が上昇する状態を、スタグフレーションという。 通常、景気が悪い中で物価が上がる場面は限定的であるが、今回においては消費税の増税による半ば強制的な物価の押上げが、これを現実のものにするかもしれない。 国内の不動産投資信託の状況を示す、東証REIT指数が大幅に下落している。 過去最大級の経済対策を決定した日本では、今後感染拡大防止が奏功した段階で、地域活性化などのアイデアの具体化を含む追加対策が打ち出されることになるだろう。 米国では、追加の経済対策が議論され始め、欧州でもEUがルールを一時緩和し、機動的な財政政策が打てるようになった。
次のいくつかの既存の薬物で患者への投与が試みられているが、中でも大きな期待を集めているのが新型インフルエンザ治療薬「アビガン」だ。 安倍晋三首相も記者会見でその有効性に触れ、政府として備蓄や増産を推進、海外数十カ国への供与も決まった。 しかし、国内では、新型コロナウイルスへの有効性と患者の安全性を確かめる治験が完了しておらず、希望する全ての患者が投与される状況ではない。 一部の学者や医師は「使用を拡大すべきだ」と声を上げるが、どのようにしたら今の日本で使えるのか。 医療関係者に話を聞くと、いくつもの課題と、その背景が見えてきた。 【松本光樹】 アビガンは富士フイルム富山化学(東京都)と白木公康・千里金蘭大副学長が開発した新型インフルエンザの治療薬。 2014年3月に国内での製造販売が承認された。 インフルエンザウイルスは、遺伝情報をDNA(デオキシリボ核酸)ではなくRNA(リボ核酸)の形で持つRNAウイルスと呼ばれる。 細胞内に侵入したウイルスは、RNAをコピーして増殖する。 アビガンはRNAの増殖に必要な「部品」に似た構造をしており、部品と間違えてアビガンが取り込まれると、RNAのコピーができなくなり増殖が止まる。 新型コロナウイルスもRNAウイルスなので、同様の作用が期待されている。 中国では臨床研究が深圳市や武漢市などで実施され、有効性が確認されている。 このうち深圳市の病院で80人の患者を対象に行われた試験では、アビガンを投与しなかった人たちは62%の改善にとどまったが、投与したグループは91%だった。 そもそもアビガンは、新型インフルエンザの治療薬であり、国内では新型コロナウイルスへの使用は医療保険の適用外だ。 保険適用されるには治験で有効性と安全性が確認されなければならない。 富士フイルムは3月31日から治験を始め、6月末に終了する予定。 その後、申請や承認の手続きを経て初めて広く使えるようになるが、実際に一般で使用が始まる時期は「数カ月後」から「1、2年先」まで諸説ある。 ただ、アビガンは妊婦に投与すると胎児が奇形になってしまう可能性があるとされており、国内での製造販売の承認は、新型インフルエンザが流行し、他に治療法がない場合、厚生労働相の要請を受けて初めて製造できるという条件付きだった。 今回は新型インフルエンザではないが、厚労相が要請し、3月上旬から製造を開始した。 富士フイルムは4月15日に増産を決定し、9月には月約30万人分の生産を目指す。 政府は200万人分の備蓄を目指すほか、海外への供与も打ち出し、活用に向け大きくかじを切った。 複数の患者にアビガンを投与した西日本の感染症指定医療機関の医師は「インフルエンザに対するインフルエンザ治療薬ほどの効果は得られなかった」と前置きしつつ、「新型コロナで重症になりそうな肺炎の場合、発熱、せきや呼吸困難が徐々に改善する患者が3分の2程度いた」と効果を実感している。 では、今の日本でどうすればアビガンを使えるのか。 平時に流通しているものではないため、薬の価格が決まっておらず、流通ルートも確立されていない。 そのため、医療保険を使わない「自由診療」で使おうとしても、一般の医療機関では入手することは不可能だ。 東京都足立区内にある病院の医師は「薬剤部にアビガンを入手しろと依頼したら、『流通ルートがないので無理』と言われた」という。 治験の場合、条件や人数、実施している医療機関の方針などがあり、希望通りに参加できるかは不明。 しかし、もう一つ道がある。 治験より規制の緩い「観察研究」という方….
次の当初は新型インフル向け アビガンをめぐっては、藤田医科大学が進めている特定臨床研究が中間解析の結果、有効性を示せなかったとする記事を一部報道機関が流した。 藤田医大はこの件について20日、Zoomで会見を開き「中間解析は有効性を評価するものではない」とし、現段階では判断できないと説明した。 安倍首相はこれまで、会見などで「3千例近い投与が行われ、効果があるという報告も受けている」「効果があるという成果が出れば、月内の承認を目指したい」と、いった発言を繰り返してきた。 アビガンは、新型インフルエンザの薬として2014年に承認された。 タミフルなどのインフル治療薬は細胞内でのウイルス増殖を抑えないものが大半だが、アビガンは増殖そのものをブロックする。 ウイルスに耐性ができるなどほかの治療薬が効かなくなった事態を想定し、国が必要と判断した場合にのみ患者に使うことを検討する、という前提だった。 このため、新型インフル発生時の「切り札」というイメージを持たれているが、現実は、そもそも効果があるのかどうかさえはっきりしていない。 アビガンについて、医薬品医療機器総合機構の審査報告書にはこうある。 「本剤の季節性のA型またはB型インフルエンザウイルス感染症に対する有効性はいまだ検証されたとは言えず、米国において臨床での有効性が示唆された段階に過ぎない」 厚生労働省新型インフルエンザ関連の小委員会作業班メンバーとして、アビガンの有用性について検討したことがある倭(やまと)正也・りんくう総合医療センター感染症センター長(大阪府)は「アビガンに新型コロナへの治療効果があるのかどうかは、まだ証明されていない」と話す。 りんくう総合医療センターでも、人道的な見地から未承認薬を使う制度を利用し、10人ほどの患者で使ったという。 しかし、効果があったかどうかは判断できていないという。 「自然経過で治る場合もあるだろうし、逆にプラセボ効果といって、アビガンを飲んでいるというだけで患者が何らかの安心感を得られる場合もある」。 患者をアビガンをのんだグループとのんでいないグループに分けて比較試験をしないと、見極めが難しいという。 アビガンはコロナに効く? それでは、アビガンの効果を裏付ける試験はどういう状況にあるのか。 国内では、開発したメーカーの富士フイルム富山化学が96例を目標にアビガンを使った場合と使わなかった場合とに分けて効果を比較する前向きの臨床試験を進めている。 藤田医科大学は特定臨床研究のほか、アビガンを使った患者の経過を観察する研究にも取り組んでいる。 臨床研究に詳しい植田真一郎・琉球大教授(臨床薬理学)は「国内でも患者に使う観察研究が進んでいるが、これは人道的な見地からアビガンを使い、経過を記録しているに過ぎない。 自然に治る患者さんが多いため、病状の改善がアビガンによるものか、自然経過なのかまったくわからず、何千例積み上げても効果を評価できない。 効果をみるには、アビガンを使った患者と使わなかった患者を比較して効果を確かめる臨床試験が必要だ」と話す。 そのうえで、臨床試験の難しさも指摘する。 このため、臨床試験によって薬の効果を致死率の違いで比べることは難しく、症状が続く期間など評価が難しい指標で比べざるを得なくなる」 先日、新型コロナに対して米国….
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