ショパン 英雄ポロネーズ 解説。 難所がたくさん!ショパン「英雄ポロネーズ」の難易度と弾き方のコツ!

発表会の定番曲!ショパン「軍隊ポロネーズ」の難易度と弾き方のコツ!

ショパン 英雄ポロネーズ 解説

古くは農民の間で踊られた舞曲らしいのですが,その起源ははっきりしません。 3拍子の中ぐらいの速さで行列して歩くように踊る音楽で,堂々とした雰囲気があります。 基本的なリズムは,「タン・タタ・タン・タン・タン・タン」という感じです。 ショパンは,ポーランド出身ということで,このリズムに子供の頃から親しんでいたと思われます。 ワルシャワに住んでいた時代から,パリ時代にかけて全部で16曲のポロネーズを作曲しています(実際はもっと多かったのかもしれませんが,現存しているのは16曲です)。 ポロネーズと並ぶポーランドの民族舞曲としてマズルカがありますが,それらに比べるとポロネーズの規模はもっと大きいものです。 ショパンが民族的主張を力強く表現しようとしたジャンルといえます。 第6番変イ長調,op. 53「英雄」 ショパンのポロネーズは,逆境時代のポーランドの憂鬱に満ちた曲と士気を高揚させるような強いリズムを持つものの2つに分けられますが,この「英雄ポロネーズ」は,後者の代表です。 非常に力強く華やかな曲ですので,ピアノ・リサイタルのアンコールとして弾かれることも多く,ショパンの全作品の中でも特に人気の高い曲となっています。 曲は3部形式で出来ています。 まず,堂々とした序奏で始まります。 徐々に盛り上がっていくような期待感をはらんだ素晴らしい序奏です。 続いて,高らかにポロネーズの主題が登場してきます。 まさにヒロイックなテーマです。 途中短調の部分が出てきますが,すぐにポロネーズの主題が戻ってきます。 中間部はアルペジオ風に弾かれる和音の連続で始まります。 左手の方は下降していく音を執拗に繰り返します。 これが次第に高潮していきます。 続いて,長調の新しいモチーフが出てきて一息つきます。 最後に,ポロネーズ主題がffで戻ってきます。 最後は力強いコーダで全曲が結ばれます。 61 「ポロネーズ」といえば,「力強いリズム」というイメージがありますが,その期待を裏切り,逆に優美で幻想的なムードを付け加えて作曲されたのがこの幻想ポロネーズです。 ショパンのポロネーズの中だけではなく,全作品の中でも特に独創的な作品となっています。 ショパンの最高傑作の一つと言われている作品です。 この作品は,ショパンが肉体的にも精神的にも衰えを見せ始め,ジョルジュ・サンドとの仲も決別寸前という最晩年に作曲されました。 ポーランド情緒の中に時々複雑で苦悶に満ちた表情が出てくるのもその状況を反映していると考えられます。 曲中にはその名のとおり「ポロネーズ」のリズムが出てきますが,それは力強いエネルギーを持ったものではなく,幻想曲の間に断片的現われて来るだけです。 そのためこの曲は「優柔不断な曲」として長い間理解されて来ませんでした。 曲は4つの主題を中心に成っていますが,自由な形式で書かれています。。 全体は3つの部分から成っています。 第1部は,自由な転調を繰り返す幻想的でスケールの大きい序奏で始まります。 その後,ポロネーズのリズムに乗って第1主題が出てきます。 これが展開された後,第2主題とその展開と続きます。 第1主題が展開された後,第3主題とその展開となります。 ここまでに出てくる主題は,いずれも転調を繰り返しますので,明るいのか暗いのか分からないムードに覆われています。 第2部は,ほっと一息つくように静かなコラール風の間奏で始まります。 その後,第4主題,第3主題の変形と続きます。 第3部は序奏が縮小された形で再現されます。 これまでのいくつかの主題が再現された後,次第に大きく盛り上がり,勇壮なコーダとなります。 一旦静かになった後,最後に一撃が加えられて全曲は終わります。

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曲目解説:ショパン/ポロネーズ

ショパン 英雄ポロネーズ 解説

小学校のころ、まだクラシック音楽がまともに全曲聴けないほどわかってなかった時、何曲かは大好きだった曲があります。 BACHのバイオリン協奏曲第2番、G線上のアリア、タンホイザー大行進曲、そして英雄ポロネーズです。 ショパンはそのころなぜか嫌いで、多分女の子が漢字テストは良くできるは、相撲しても負けるは、なにしても男子に勝っている時期で、その時にピアノを習っている女子が弾いていたりしたのもあるのか「暗くて難しそうで女みたい」という偏見のせい。 でも英雄ポロネーズは楽しいし元気はでるし、短いし言う事なしでした。 序奏から激しく転調するとこなんかしびれます。 中村紘子さんが、「あのダダダダダダダダ、の所がきつすぎて嫌い」と書いていらっしゃったのを読んで、「そんな事無いのになあ」などと思ってました。 とにかく当時の私のテーマソングにしたいぐらい聞き倒しました。 聞いて、と言うよりも、聞いたのは昔で、もう散々 弾いたので、どうしても弾き手の感想になってしまいます。 まあ聴く分には、主部のメロディが分りやすくていいですね。 でもあれ弾くのはかなり難しいんですよ。 で、タタ、タタタランタ、タタタランタタン、の所はオクターヴ (+付加音)で装飾音が入るので難しい。 ただ装飾音の ところは和音はタイで弾く必要はないので少し楽です。 そして、タン、タン、タン、タン、の所は広いアルペジオで、 特に左手のFCEsAの和音は私は届かないので、楽譜では 全てアルペジオの指定になっており、楽譜通り弾けますが、 全部の音を鳴らしきるのは難しい。 私の演奏の録音を聴いても、ちゃんと全部鳴っているが、 少々ソプラノメロディに気を取られているかな、と反省します。 ブーニンなんか跳躍して232で弾いていましたが、戻ってこれるかが 問題です。 後半も、右手にオクターヴの装飾音があり、広いアルペジオがあり、 左手も一番近い10度BFDes、EsBGesの交代ながら、やはり10度 なのでちゃんと鳴らしきるのは難しい。 右手も厚いし。 トリオは楽譜の指定テンポなら、手が小さく、左手のオクターヴを 全部15で取っても弾けます。 手の大きい人は15131415で 取ってください。 ヴィルトゥオーゾのピアニストがやたら速く弾くのには着いていけません。 むしろ右手も和音進行で難しいです。 感想としては、ここはいかにも英雄的な感じでかっこよかった、 でいいのではないでしょうか。 前の方が仰る、ポロネーズ・リズムが出てくる所、その前は、 音型がややこしいので初見が難しいですが、暗譜すれば容易で、 速いアルペジオもそんなに難しくありません。 ポロネーズ・リズムは勇壮に弾いてほしいですね。 感想としては、ここで初めてポロネーズ・リズムを知った、 なんて言うのがいいと思います。 まあ主部も付点の所はポロネーズ的ですし、弱拍で終止するのも、 ちゃんとポロネーズの形式を守っていますが。 ノクターン的な部分は、感想としては、勇壮な主部とトリオに対して、 対照的で、印象に残った、などがいいと思います。 演奏としては余り崩しすぎない事ですね。 イン・テンポでも十分 幻想的な、何か不安な感じが出るようにショパンは書いています。 コーダは感想はかっこいいでいいと思います。 演奏ではやはり最後の両手のオクターヴ(+付加音)の速い進行が 難しいですね。

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ショパン・英雄ポロネーズ〜管理人のピアノ練習奮闘記・第5話&作品解説

ショパン 英雄ポロネーズ 解説

ポーランドの代表的な民族舞曲にはポロネーズとマズルカがありますが、マズルカが農民の間で伝承されてきたのに対し、 ポロネーズは貴族の間で伝わってきたという違いがあり、堂々とした力強い音楽です。 ポロネーズには独特のポロネーズリズムというものがあります。 ショパンは生涯で、18曲のポロネーズを作曲しました。 その中で、ピアノと管弦楽用の作品「アンダンテスピアナート と華麗なる大ポロネーズ」、とピアノとチェロのための室内楽曲「序奏と華麗なるポロネーズ」 を除く16曲がピアノ独奏用の作品です。 そのうち、ショパンの生存中に出版された作品番号付きの 作品は7曲で、第1番から第7番に 相当します。 現在発売されているポロネーズ集のCDの多くはこの7曲を収録しています。 残りの9曲はショパンの少年時代の習作となっており、特筆すべきは「第11番ト短調」は 何とショパン7歳の時の作品で、これが現存する彼の作品の中で一番初めに作られたもののようです。 このことからも分かるようにポロネーズは、ショパンにとって最も身近な民族舞曲だったようです。 ショパンのポロネーズの中で最も人気が高いのは、第6番「英雄ポロネーズ」です。 それに次いで人気が高いのは、第7番「幻想ポロネーズ」、第3番「軍隊ポロネーズ」、「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」 というのが一般的だと思います。 第1番嬰ハ短調Op. 26-1は、技術的には比較的易しく軍隊ポロネーズよりも内容が豊かなこともあって、 ポロネーズの導入用としてピアノレッスンで取り上げられることの多い作品です。 ショパンコンクールではこれまで、ポロネーズの課題曲は第5番〜第7番、「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」の4曲から 任意の1曲を選択という決まりになっていたことからも分かるように、ショパンのポロネーズの中で音楽的内容と完成度、技術的な難易度が特に高いのが この4曲という見方が一般的です。 2015年の第17回ショパンコンクールからは上記4曲に加えて、ポロネーズ第1番・第2番セットという選択肢も加わり、 話題になりました。 ここではポロネーズ主要7曲(第1番〜第7番)、「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」を紹介します。 いずれも比較的規模が大きく充実した構成を持った作品です。 ポロネーズ第1番嬰ハ短調Op. 26-1 作曲年:1835年 出版年:1836年 ショパンのポロネーズは十数曲ありますが、多くの初期の作品は生前出版されず遺作となっています。 一方、この作品は初期の作品でありながら、正式な作品番号が付いていることからも分かるように、 ショパンが自らが出版と意図して公開した記念すべき最初のポロネーズということになります。 この作品はタイトルなしのポロネーズの中では比較的人気が高く、特にピアノ学習用としてショパンのポロネーズの導入を目的に ピアノレッスンで取り上げられることが比較的多い作品です。 ピアノを弾く方でこの曲をご存知の方も案外多いのではないかと思います。 曲の構成は複合三部形式(ABA BA -CDC-ABA BA )です。 主部はABAに分解することができますが、A部は跳ねるような付点リズムを基調とする力強い序奏からスタートします。 続いて嬰ハ短調の第1主題が登場しますが、この孤独な独り言のような憂鬱な旋律がこのポロネーズのテーマです。 主部の中間部にあたるB部はシンコペーションを含む和音+減七アルペジオの急速上昇という組み合わせが、 構成音を変えて続けられます。 アルペジオがやや技巧的ですが、手になじみやすく皆さんが練習で散々弾いてきた減七アルペジオですので、 特に難しいことはありません。 アルペジオの途中で左手が左方向(低音)に跳躍しなければならない点に多少注意を要する程度です。 これが終わると嬰ハ短調の並行調のホ長調の断片的なテーマが登場し、左手の伴奏音型はそのままにテーマが低音に移行しますが、 ここは右手が左手の上を超えて(交差して)低音を右手で取ることになります。 右手で取る低音の長い表情豊かなトリルを最後に、 再び自然に主部のテーマが戻ってきます。 この主部ABAですが、後半部のBAには繰り返し記号が付けられており、繰り返すのが一般的です。 中間部は主部とは打って変わって、変ニ長調に転調し、瞑想的で美しい旋律となります。 左手は8分音符を刻みながら刻々と微妙に和声が変化していきますが、その微妙に移ろいゆく和声の美しさは特筆すべきものです。 実はこの8分音符の和音の一部を右手の第1指も担っているんですよ。 これは弾く人は当たり前にやっていますが、 聴く人は気が付かないのではないかと思います。 右手は第1指で単音を刻み、それ以外の指で旋律を弾くということをやっていて、 右手で2声を担っているわけです。 その中で単音以外、旋律部が和音になったりプラルトリラーや装飾的パッセージが登場したりするため、 ピアノ演奏に慣れていない中級者にとって、ここはやや難関になりうる可能性がありそうです。 それにしてもこの刻々と変化するハーモニーは本当に美しく、ショパンの旋律美・和声美の極致と言っても決して過言ではなく、 僕自身の特別なお気に入りの1つです。 中間部(CDC)の中の中間部Dではテーマが左手に移り、右手は伴奏音型を刻むという両手の役割の入れ替えがあります。 音型はそのままに右手が刻む音型の最高音がそのまま旋律部に移行するなど、ここは複雑な対位法的処理がなされていて、 なかなか独創的な工夫が施されています。 左手のテーマは静かでありながらもやるせない情熱に溢れていて、 これを音楽的に表現するのがこの曲を弾くときの大きな楽しみになっています。 このように左手が担う旋律が静かで情熱的でやるせなさを感じさせるという点で、ショパンの作品ではワルツ第13番の中間部と似ているとも言えます。 この情熱は静かに静かに高みを迎えて、最後の最後にクレッシェンドして中間部の最初の変ニ長調のテーマに戻ります。 この変ニ長調の最初の和音は力をためたようなあまり強くないフォルテで弾くのが良いと思いますが、最初の1小節でディミヌエンドして静かさを取り戻します。 この充実した音楽的な中間部が終わると、主部に戻ります。 この部分は主部が登場した時と同じようにABABAのように繰り返すのが一般的ですが、ルービンシュタインのように繰り返さずにABAで 終わらせるピアニストもいます。 僕自身も感覚的には主部の再現がABABAでは冗長すぎるのではないかとも感じていて、 バランス的には省略したいところです。 いずれにしてもこの曲はコーダがなく、主部の再現をそのままに突然終了します(しかも弱音終了=女性終止です)。 第1版:2002年10月 第2版:2017年2月 ポロネーズ第2番変ホ短調Op. 26-2 作曲年:1834-35年 出版年:1836年 荘厳で暗いポロネーズの典型。 ユニゾンと重い和音がアッチェレランドとリタルダンドを繰り返しながら 不気味に繰り返され、重々しい和音の連打とともに第一主題が暗い激情とともに大爆発します。 当時の暗いポーランドの悲運と、そしてショパンの絶望感を象徴しているようです。 続く変ニ長調の部分では ポロネーズリズムが明快に示され、リズミックですが、柔和さとは無縁の威厳があり、半ば軍隊的です。 中間部トリオは主部と比較して短く、ポーランドの国民的な牧歌といった趣のロ長調の旋律が素朴に響きます。 技術的にはあまり難しくないですが、全体的に重く暗い情緒が支配する大曲です。 ポロネーズ第3番イ長調Op. 40-1「軍隊」 作曲年:1838年 出版年:1840-41年 作品40の2つのポロネーズは、ショパンが恋人のジョルジュ・サンドと夢の別天地マジョルカ島への逃避行に向かった頃の作品です。 その第1曲、Op. 40-1は「軍隊ポロネーズ」として親しまれている有名な作品で力強く、ショパンの特徴であるロマンティックな旋律や詩的なハーモニーは 全く登場しないという徹底ぶりであるのに対して、第2曲、Op. 40-2は重々しく悲痛な作品で、内容的には「軍隊ポロネーズ」を遥かに凌ぐ芸術作品でありながら、 その知名度は「軍隊ポロネーズ」の足元にも及ばないという何とも皮肉な現象が起きています。 このように第1曲「軍隊ポロネーズ」はひたすら力強い和音の連続で、ショパンらしいロマンティックな旋律が全く登場しない点や、 第1曲「軍隊ポロネーズ」と第2曲Op. 40-2が著しいコントラストを成している点から、これらの2つの作品は独立したものではなく、 2曲で1セットと考えた方が妥当と言えそうです。 20世紀の大ピアニスト、アルトゥール・ルービンシュタインは第1曲Op. 40-1「軍隊ポロネーズ」はポーランドの栄光を、 第2曲Op. 40-2はポーランドの衰退を表現したものだと述べていますが、確かに言い得ています。 このOp. 40-1「軍隊ポロネーズ」は、ショパンの名曲を集めたCDには必ずと言ってよいほど収録されている定番の名曲で、 ショパンのポロネーズの中では、英雄ポロネーズに次いで人気の高い作品ではないかと思います。 (当サイトのポロネーズ人気投票では、英雄ポロネーズの次に人気があったのは幻想ポロネーズでしたが、 幻想ポロネーズは内容的に難解のため、一般的な人気は、やはり「軍隊ポロネーズ」の方が高いと思われます) 曲の構成は典型的な3部形式で次の通りです。 16分音符や3連打で和音を連続して弾く部分があるなど、 手首のスナップを利用しないと速度が得られない部分があり、慣れないと戸惑うかもしれません。 また左手に9度に広がる和音を16分音符で連打しなければならない部分が早くも1小節目の3拍目に登場するので、 手の小さい人はここで断念せざるを得ないでしょうか(9度が届かないという人は滅多にいないとは思いますが、 16分音符で連続して弾くには、ある程度余裕をもって9度が届かなければならず、特に女性には厳しいのでしょうか)。 またアルペジオ記号は付いていますが、10度の分散和音もあり、ここは10度が届くか届かないかで難易度が変わってきます。 両手のユニゾンで16分音符の3連符を弾く部分も、しっかり弾くのは意外に難しいと思います。 調性も目まぐるしく変わります。 ショパンの作品としてはこのような分厚い和音や進行はやや特異なものではないかと思います。 その後、再びA部が戻ります。 この「B-A」には反復記号が付いていますが、ルービンシュタインのように反復しないピアニストもいれば、 ポリーニのように反復記号は絶対に無視しないピアニストもいて様々です。 僕の場合、反復するのは冗長に感じてしまうのですが、それはこの曲の刷り込みがルービンシュタインの演奏だったから ということと関係があるのかもしれません。 中間部: C:ニ長調:ここの左手のリズムはまさにポロネーズリズムそのものです。 非常に明快な和音で、右手は単音の旋律を力強く奏しますが、 途中、右手に16分音符の3連符でトレモロの動きが出てきます。 この部分は反復記号通り、反復するのが一般的です。 D:調性不明:両手でユニゾンのトリルの後、32分音符の音階の4つの音をユニゾンで弾いた後、跳躍して両手で同じ和音でポロネーズリズムを刻む、 という単位を、音を変えて繰り返した後、ユニゾンのトリルの後の音型が16分音符になるところは運指に工夫が求められるところです。 ユニゾンの16分音符の後の1音を左手のオクターブで取るようにすると、右手が跳躍せずにすみ、余裕をもって弾けます。 あとはこのD部で取り立てて難しいところはないと思います。 D部が終わると再びニ長調のCが戻ってきます。 このD-Cにも反復記号が付いていますが、反復しないピアニストもいます。 主部の再現: ここは主部と全く同じですが、冒頭のA部の繰り返しは省略されます。 B-Aは主部の提示部同様、反復記号が付いていますが、 反復しないピアニストもいます。 この曲にはコーダはなく、Aの最後の音型でそのまま何の前触れもなく唐突に終わります。 僕自身の流儀はルービンシュタイン同様:主部(AABA)-中間部(CCDC)-主部の再現(ABA)です。 これで十分だと思います。 反復記号に忠実に従うとこの曲は冗長になってしまうと感じるのですが、ショパンが指示した通りに弾くのがやはり基本なのでしょうか。 ここは意見が分かれるところと思います。 ポロネーズ第4番ハ短調Op. 40-2 作曲年:1838-39年 出版年:1840-41年 この曲も「暗いポロネーズ」の典型です。 右手ハ短調の和音による序奏のあと、そのまま右手は和音を 弾きながら、左手がオクターブで重々しい旋律を鳴らします。 この悲壮感漂う絶望的な旋律は、その 情緒を悲しみに姿を変えて、右手の高音部にその旋律を受け渡します。 主部の中ほどでは、爆発的な 和音と、3度や4度の和音を含んだせき込むような右手のパッセージが交錯しますが、その後現れるト長調の旋律には一抹の はかなさと郷愁を感じるのは僕だけではないと思います。 中間部トリオは、変イ長調で始まり、 静謐でひたすら優美です。 暗い暗いポロネーズの中にあってほっと一息つける憩いと安らぎの旋律です。 主部の再現部は、大幅に省略され、代わりに右手の高音部に音が追加され、これだけきくと、どの部分が旋律か 判断しにくくなっています。 高音部はショパンの悲痛な叫び声を象徴しているようです。 作曲年代をみてもまさに、ジョルジュ・サンドとマジョルカ島へ渡った年であり、石造りの古い僧院 の中で絶望に打ちひしがれながら和音を叩き続けるショパンの姿が目に浮かぶようです。 もはや、このポロネーズは 祖国を賛美する謳歌ではなく、ショパンの泣き叫ぶ生の声なのだと僕は思います。 このように作品40の2つのポロネーズは第3番「軍隊」とこの第4番は著しい対照をなしており、 第3番「軍隊」は祖国ポーランドの繁栄・栄光を、第4番は祖国の悲運・衰退を表現したものだと 言っているピアニストもいたほどです。 ポロネーズ第5番嬰ヘ短調Op. 44 作曲年:1840-41年 出版年:1841年 ポロネーズ主要7曲の中では「英雄」、「幻想」と並ぶ最高傑作です。 作品の規模は第7番「幻想」に継ぐ大規模なもので演奏時間 は10分以上で場合によっては11分以上もの長大な大曲です。 ショパン国際ピアノコンクールでは、毎回ポロネーズ演奏が課題になりますが、 その際、選曲対象となるのは、第5番、第6番「英雄」、第7番「幻想」、アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズの4曲です。 前出のポロネーズ第1番から第4番まではコーダがなくいずれも女性終止(弱音終止)でしたが、 この作品からはポロネーズで初めてコーダが設けられていて、力強いオクターブで終始する方式に発展を遂げています。 この作品には比較的長い序奏があり、両手ユニゾンで重苦しく不気味な楽想が途切れながら出現し、 次第に音の数が増えて最後はオクターブ連続でクレッシェンドしながら最高潮に達し、主部に突入します。 主部の第1主題は嬰ヘ短調で、単音で始まり この部分は、変ロ短調および変イ長調のオクターブの音階の部分を 挟んで繰り返されますが、繰り返される度にその激しさと複雑さを増して行き、やがて左手の伴奏も 音階になって、その大音響の迫力は凄まじいものがあります。 凄まじい和音連打あり、怒涛の音階あり、急速なオクターブ 上昇あり、目にも止まらぬ華麗な跳躍あり、ともうこれはピアノ技術の粋を完全に網羅した演奏技巧の 集大成とまでいえるでしょう。 この曲にも中間部がありますが、そのまえに中間部のための序奏とでも 言うべき、ユニゾン部があり、左右の32分音符はポロネーズリズムだけを刻んで行きます。 僕は中学生当時、この曲をルービンシュタインの 演奏を何回も繰り返し聞いて、ここの部分にさしかかる度に目頭が熱くなったのを覚えています。 主部の再現は、同じような序奏の後、嬰へ短調の最も単純な第1回目の部分が省略され、いきなり和音を 叩きつけるところから始まります。 コーダは比較的短いですが、この作品の悲劇的な内容を 象徴しているようです。 ポロネーズ第6番変イ長調Op. 53「英雄」 作曲年:1842年 出版年:1843年 この曲は、「英雄ポロネーズ」として、ショパンの名曲の中でも最高傑作として皆に知られている名曲で、 「ショパン名曲アルバム」のCDの中には、この英雄ポロネーズは必ずと言っていいほど収録されていますし、 ショパンの憧れの名曲としては、幻想即興曲、革命のエチュードとともに筆頭に挙げられることの多い曲です。 これをお読みの皆さんの中では、この曲を知らない方の方が少ないのではないかと思うほどです。 「知らない方の方が少ない」などというのは控えめすぎる言い方ではないかというご意見もあると思いますが、、 僕が最近(2015年〜2016年にかけて)、人前で数回この曲を演奏する機会があり、皆がこの曲を知っていることを前提にプログラミングしたところ、 この曲を知っている人は皆無だったという悲しい現実に直面したからです。 いや、これは僕自身の演奏がひどすぎて、英雄ポロネーズに聴こえなかったからでしょうか?いや、そんなことはないはずですが・・・(笑) 余談はさておき、この曲ほどショパンの名曲の中で名実ともに「名曲」の誉れ高い作品は少ないのではないかと思います。 演奏効果も抜群で、20世紀の大ピアニストたちの多くはこの曲を十八番にしているほどです。 変イ長調の第1主題は「英雄」の名に相応しく堂々としたものですし、中間部に登場する左手のオクターブの連続する部分は 非常に印象的でこの曲の難所としても有名です。 難易度も高く、内容も知名度も最高に近く、まさに「ピアノ曲の王様」と言ってもよい存在です。 この曲は序奏とコーダを含んだやや複雑な3部形式で書かれています。 構成としては、以下の通りです。 第1主題は数回、「使いまわし」されますし、中間部の左手のオクターブ連続部は同じものが2回繰り返されるだけですので、 曲自体のパーツとしては新たに練習すべきなのは序奏とコーダ、ところどころに挟まる経過句だけです。 従って、この曲に必要な技巧が身についている方であれば、一通り弾けるようになるのに、それほど多くの時間は要しないはずです。 有名な第1主題が登場するまでの30秒間ほどの序奏が意外に難しく、弾く人の前に立ちはだかる高い壁という印象があるようですが、 その次の第1主題(まずは簡易版で登場)は結構弾きやすいですので、まずここから弾いてみることをおすすめします。 序奏は右手4度和音の半音階(一部全音)上昇進行が4回登場しますが、1回目と3回目(特に3回目)が結構な難所です。 (このようなことは弾く人にとっては分かり切っていることだと思いますが、弾かない人には分からないことだと思います 詳しいことは当サイトでも英雄ポロネーズを弾くための講座のコーナーを立ち上げて詳しく説明する予定です)。 第1主題は最初は変イ長調、4つの分散和音を挟んで変ロ短調、そしてオクターブでリズミカルに駆け下りてくる部分、 右手のトリルの部分、それをさらに発展させてオクターブ上でプラルトリラーを弾く部分、両手のユニゾンの急速な上昇スケールなど、様々な要素から成り立っています。 第1主題は最初は簡易版で提示されますが、2回目以降は1オクターブ高いところで和音の構成音が増えて難易度が高くなります。 左手も目まぐるしく跳躍するので、最初は戸惑うこともあるかと思いますが、弾きなれてコツをつかんでしまえば弾きやすい部分ではないかと思います。 主部の間に挟まる経過句の前半はリズミカルで嫌な動きをします。 ルービンシュタインのようにごまかして弾く人もいますが、 最近の若いピアニストたちはここを正確に弾いています。 このパッセージの後半部分にはこの曲で唯一、はっきりしたポロネーズリズムが登場します。 「ポロネーズ」でありながら、ここまでポロネーズリズムがあまり登場しない作品は少ないです。 ホ長調の中間部は左手のオクターブ連続でこの曲を弾く際の難所として最も高い壁となります。 オクターブの運指は白鍵のオクターブは1-5指で、黒鍵のオクターブは1-4指で、というのが基本と教わると思いますが、 これは肉体的条件、つまり手の大きさ・指の長さ次第だと思います。 手の大きい人の場合には、1-5指で弾くのも1-4指で弾くのも同じようなものですが、 手の小さい人、4指の短い人の場合は、1-5指で弾く場合と1-4指で弾く場合に手の角度を変えなければならず、 その角度を調節することに神経を使うと、必要な速度が得られず、また疲労も大きくなるのではないかと思います。 従って、手の小さいの人の場合は全てのオクターブを1-5指で弾いてしまう方が楽なのではないかと思います。 このオクターブ連続部はホ長調で始まり、最初は左手の動きは反時計回りですが、 途中で半音下がって嬰ニ長調に転調すると、左手の動きは逆回転、つまり時計回りになります。 ここは演奏者の手の動きを見ていると面白いのではないかと思います。 この部分を遅いテンポで弾くと、「この人はここを速く弾けないのではないか」と疑われてしまうと危惧してのことなのか、 ピアニストたちはピアノ演奏を何かスポーツ競技のようにこぞって速いテンポで弾き飛ばずのが現在の常識になってしまい、 僕たちアマチュアもそれに影響されて1秒でも速く弾こうとしますが、 実はショパン自身はこの部分をそれほど早く弾くことを意図していなかったようです(文献でも示されています)。 中間部後半の経過句の後半はト長調、ト短調の右手のゆっくりした16分音符の連続部がありますが、 その最後の方で、C音にのみ謎のアクセントが付けられています。 アクセントと言っても、これは他の音よりもわずかに強調する程度で十分です。 最後は第1主題が華やかに繰り返されて、変イ長調の華麗なコーダで締めくくられます。 この曲は僕自身、小学生の頃に初めて聴いて衝撃を受けて、この曲が弾けるようになるまで絶対にピアノをやめないと誓った思い出の憧れの名曲です。 僕自身のこの曲に対する思い、エピソードについて詳しく知りたい方は下記をご覧になって下さい。 ポロネーズ第7番変イ長調Op. 61「幻想」 作曲年:1845-46年 出版年:1846年 ショパンがその短い生涯で書き続けてきたポロネーズの最後の創作となったのが、このポロネーズ第7番です。 この作品は「幻想ポロネーズ」というタイトルで知られる、真の名曲と呼ぶに相応しい傑作の1つです。 皆さんもご存知、「英雄ポロネーズ」がポロネーズ第6番、その次の曲がこの曲です。 英雄ポロネーズの難易度を例の「全音ピアノピース」で確かめると、一覧表で「難易度F(上級上)」であることを確認できますが、 一覧表ではその次に続くのがこの「幻想ポロネーズ」で、同じく「難易度F(上級上)」となっているのを見て、 気になった方もいらっしゃるのではないかと思います。 しかしこの曲が「難易度F」というのは異論がないとしても、英雄ポロネーズの場合の難易度Fとは意味合いが随分違うことに 皆さんはお気づきでしょうか。 英雄ポロネーズの場合は楽譜通りに音を出すことができれば、ある程度の音楽になってくれますが、 この「幻想ポロネーズ」の場合は楽譜に書いてある音を出すだけでは、全く音楽にならないという難しさがあります。 単なる音の羅列に終わってしまっては、この曲が曲としての最低限の体を成さないというわけです。 その難しさは同時にこの曲の魅力と表裏一体の関係にあります。 それだけ奥が深い真の名作というわけです。 この曲が作曲されたのは1845年から1846年にかけて、つまりショパンが35歳から36歳の頃とされていますが、 この頃、ショパンは恋人のジョルジュ・サンドとの関係も悪化し決裂寸前の危機に陥っていて、また彼の体は肺結核に蝕まれて 体力的にも衰えてきており、そのような精神的・肉体的な不調がこの作品に暗い影を落としています。 皆さんはこの曲を初めて聴いたとき、1回で理解できたでしょうか。 おそらく、つかみどころがない印象を持たれた方が多いと思います。 僕自身も初めて聴いた中学校2年生の頃、「訳が分からない曲だなあ」と思ったものでした。 しかし数回、数十回と聴き込んでいくと、不思議と引き込まれていく、そういう類の曲です。 この曲を何回聴いても全く覚えられないという人もいるようです。 この曲を初めて聴いたフランツ・リストは「ショパンもとうとう気が狂ってしまったか」と本気で心配したそうです。 それほどの難解な「幻想ポロネーズ」・・・確かに従来のショパンの作品とは傾向が異なっていて、ショパンらしさとはかけ離れているようですが、 これは、いわばショパンの「新境地」となるはずの作品だったように思えてならないです。 「なるはずの作品だった」と過去形で書いたのは、この後、ショパンの体力が衰え、それに伴い気力も衰えて、 その後、数曲作曲しただけでこの世を去ってしまったからです。 もしショパンがその後、数年でも長生きしてくれたら、ここから新境地を切り開いて、さらに数曲の素晴らしい名曲を残してくれたに違いないと思うにつけ、 ショパンが39歳という若さでこの世を去ったことが我々人類にとってこの上ない大きな損失のように思えて残念で仕方ありません。 ところで、この「幻想ポロネーズ」は、Polonaise-Fantasieとなっていて、直訳すれば「ポロネーズ風幻想曲」です。 ショパンもこの作品はポロネーズというよりも幻想曲第2番(「第1番」は当然、幻想曲ヘ短調Op. 49を想定しています)に カテゴライズすべき作品と認識していた可能性が高いのではないかと思います。 この曲は演奏時間が12分〜14分を要する大曲で、非常に自由な構成の作品ですが、ポロネーズリズムを持つ変イ長調の主題を第1主題とすると、 長大な序奏とコーダを持つ変則的な3部形式ととらえることができます。 序奏: 変イ短調-変ハ長調(平均律ではロ長調と等価)という和音の後、アルペジオ風に上昇していく音型、 この単位が調性を変えて4回登場します。 2回目は嬰ヘ長調-イ長調+上昇アルペジオ、 3回目は変ホ短調-嬰ヘ長調+上昇アルペジオ、 4回目は変ニ長調-ホ長調+上昇アルペジオ、 印象派の手法を先取りしたかのような音楽です。 変ホ音のオクターブでポロネーズリズムが示されて、その流れで変イ長調の第1主題が提示されます。 主部: ポロネーズリズムに乗って変イ長調〜変ロ短調の第1主題が提示されます。 その後、調性が目まぐるしく変化しながら8分音符の和音が続きます。 この部分も言葉で形容するのが非常に難しい、 いわば「つかみどころのない」音楽ですが、このような抽象音楽は音楽を言葉や絵画、イメージで表現するのは難しく、 純粋に「音」としての理解が求められる部分です(実際ショパンの作品の多くはそのような要素が大きいのですが)。 変イ長調の第1主題が戻ってきますが、左手のバスがコード進行によらず常に変ホ音を執拗にならし続けるところが印象的で、 プレリュード第17番の最後の部分と似た手法です。 その後、右手に3度和音の連続が登場します。 エチュードOp. 25-6に比べるとはるかに易しいとはいえ、3度和音のスケールに慣れていないと戸惑うかもしれません。 その後の右手のオクターブの旋律も何か急き立てられるような焦燥感があり、調性も不明でとらえどころのない音楽という印象です。 その後、8分音符の和音が細切れに登場し、最終的には変イ長調に落ち着きます。 アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ変ホ長調Op. 22 曲目 名曲度 最高5 体感難易度 最高10 一般的認知度 最高5 ポロネーズ第1番嬰ハ短調Op.

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