ガイアックスソーシャルメディアラボ読者のみなさん、初めまして。 を運営している田嶋と申します。 今回はラボにお邪魔させてもらうことになりました。 さて、みなさんは家事や勉強を面倒だと感じたことはありませんか?その理由はたった一つ、 面白くないからです。 一方で、子どもが長時間活き活きゲームをしていられるのは、 ゲームが面白いからでしょう。 ツマラナイと感じるタスクや仕事を、ゲームのように「面白く」「楽しい」もの変えるためのカンタンなアイディアが実はあります。 それが、あらゆるコンテンツにゲーム的要素を加える 「ゲーミフィケーション」という手法です。 聞いたことはあってもよくわからなかったり、「ゲームにする」と聞くとなんとなく難しそうに思えるゲーミフィケーションですが、実はお金をかけずとも、コンテンツにちょっとした要素を付け加えるだけでユーザーがつい続けたくなるゲームのようになります。 今回は、その 本当は難しくないゲーミフィケーションのポイントを、事例と併せてご紹介します。 ゲーミフィケーションとは、マーケティングの手法の一種で、ゲームが本来の目的ではないサービスに ゲーム的要素を組み込むことで、ユーザーのモチベーションやロイヤリティを高めることである。 上記の定義を見ると、どうやらキーワードは 「ゲーム的要素」のようです。 更に簡略化して言ってしまうと、 ゲーミフィケーションとは、ゲーム的要素のないものにゲーム的要素を加えることです。 非常にシンプルですね。 ゲーミフィケーションの利点は「ゲーム的要素」を盛り込むことで、 面白くないものを 面白いもの化することできる点です。 そして実は、少し見渡すだけで私たちの身の回りにはゲーミフィケーションが溢れています。 ゲーミフィケーションで欠かせないゲーム的要素とは? 繰り返しますが、ゲーミフィケーションとは、ゲーム的要素のないものにゲーム的要素を加えることなので、当然「ゲーム的要素」が核となります。 さて、ゲーム的要素とはどうようなものでしょうか。 もしかすると、壮大なゲームをイメージされたかもしれません。 しかし、「ゲーミフィケーション」という名前の割に、その「ゲーム的要素」は仰々しいものではありません。 例えば、「ソーシャルゲームのログインボーナス」から「夏休みのラジオ体操に参加すればもらえるスタンプ」もゲーミフィケーションと言えます。 それでは、実際にどのようにゲーミフィケーションが活用されているのかを事例とともに見てみましょう。 事例から見るゲーミフィケーションの有用性 身近なものからちょっと舌を巻くものまで5つの事例をご紹介します。 Retty 先日10億円の資金調達を発表し、拡大の一途を辿るの紹介です。 Rettyはグルメサービスとして、「人気の店」ではなく「自分の好みのお店」を知ることを目指しています。 そのため、レストランをポイントなどで数値化し順位づけすることはしていません。 その代わりに自分の信頼できる友達や嗜好に合う人の紹介するクチコミを紹介することに重点を置いています。 このRettyでクチコミを投稿してもらうために用いている「ゲーム的要素」は、 「いいね」や「行きたい」という意思表示を受けられ、高評価を獲得しているユーザーを「この地域で〇番のユーザー」として紹介しているところです。 投稿者は「賛同」や「称号」欲しさに投稿してしまいます。 この気持ちは、読者のみなさんのFacebookやInstagramでの投稿の際にも胸の中によぎるのではと思います。 フォートラベル クチコミ旅行サービスで高名な にもゲーミフィケーションは取入れらています。 同じ運営会社のカカクコムが運営する『食べログ』と同様に、フォートラベルもユーザーが作るクチコミコミュニティサイトです。 ユーザーは他のユーザーが書いた旅行記やクチコミを参考に、旅行に出かけ、旅中にはその様子をアップしたり、旅行後には思い出を旅行記を書き記すというサービスです。 ランキングで上位にランクインしたいという承認欲求を刺激することで、ユーザーにアウトプットを促しています。 他のユーザーと競争心を煽ることのできるランキングなどのゲーミフィケーション要素は、近年浸透してきたソーシャルメディアとの相性もバツグンです。 Mailbox Dropboxが2013年に買収したにも、つい手が動いてしまう要素が盛り込まれています。 MailboxはGmailに特化したメールアプリです。 操作性に優れており、またメールを「後で読む」機能も搭載している。 そして、普通のメールアプリとの違いであり最大の特徴は、このアプリの使用の目的は「受信トレイを空にする」ことです。 スワイプ動作によって、メールをアーカイブしたりごみ箱に移動し、受信トレイに溜まったメールをゼロにしていきます。 そのための「ゲーム的要素」は、 受信トレイが空になった時にだけ「ある画面」が表示されることです。 この画面が表示されることで達成感が得られるため、常にこの画面を表示するためにメール処理を行いたくなります。 ちなみに上の画像は「ある画面」ではありませんので、爽快感ある画面は実際に全てのメールを処理して味わってみてください。 Khan Academy 楽しく学びたいなら、2006年にSalman Khan氏によって設立されたを使ってみてください。 Khan Academyは算数に始まり、金融、化学、歴史、美術などの多岐に渡る分野をオンラインで学習できるサービスです。 ネットに繋がってさえいれば、誰でも無料で利用することができます。 元々はSalman Khanが自分の親戚にYoutubeを使って数学を教えていただけのものでしたが、今では3000本以上のビデオ教材と練習問題が提供されており、世界の知が誰にでも触れられる未来への大きな礎となるサービスへと成長しました。 これは 特定の知識を得ることで、初めて次の知識を得ることができるというものです。 具体的に言うと、「足し算」の知識があって初めて「掛け算」を学ぶことができますよね。 このようにどんどん学習を進めていくことができます。 ChoreWars 雑務を「冒険」に変えてしまいたいならです。 家庭やオフィスでの雑務やルーティンワークに、楽しさを見出すのはなかなか難しいものです。 しかし、ChoreWarsを使えば、そのようなタスクをRPG感覚でこなすことができます。 予めタスクを入力し経験値を振っておくことで、それらを達成した際に自己申告すると、その経験値を得ることができます。 ChoreWars内の自分のキャラクターが成長していきます。 また、家族や同僚などとチームプレイを楽しむことも可能です。 ここでの「ゲーム的要素」は 、タスクを完了することで経験値を得て成長することに加え、チームプレイによって連帯感を持ちながらタスクを行える点です。 つまらないことこそ、仲間と楽しくできたら最高ですよね。 ゲーミフィケーションが取り入れられるようになった背景 最後に、ゲーミフィケーションについてより知りたい方に向けて、ゲーミフィケーションがなぜネット界隈で声高に叫ばれるようになったのかについて少しだけ触れておきます。 大きく二つの要因があると思っています。 Gamification was a term that was first coined in 2003 by Nick Pelling, but did not gain popularity until 2010. The term gamification began to gather interest and a following in 2010 when companies such as Badgeville started using it to describe their behavior platforms. 上記にあるように、単語自体は2003年に生まれ、2010年に市民権を得ました。 しかし、概念としては2003年より以前から存在しています。 事例に関しては前述の通りですが、インターネットなどのオンラインだけでなく、オフラインのリアルなものにも応用されてきました。 一つ目は、いわゆる ラベル貼りされたこと。 2010年以前も、「ゲーム的要素のないものにゲーム的要素を加える」ことはなされてきましたが、それらに「ゲーミフィケーション」という名前(ラベル)が与えられることによって、初めて意識が向けられるようになったと考えれます。 もう一つは、 ソーシャルネットワークの発達です。 ラボ読者のみなさんは、ことはご存じの通りだと思います。 インターネット上で他者と関わる機会が増えることで、ゲーム性を持たせることが容易になったことが背景です。 最後に ここまで5つの事例をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。 「ゲーミフィケーションはやはり何だか難しい」と思われているでしょうか。 では、上記事例の事例のポイントをまとめます。 むしろ、その要素を「どうサービスに組み込むか」が肝になってくるので、当記事では5つの事例を用いてアイディアをご紹介した次第です。 ソーシャル上で他人とどんどん繋がっていくこの時代、ゲーミフィケーションはより自然に組み込まれるようになっていくでしょう。 読者のみなさんが、自身のサービスや日常の中に「ゲーム的要素」を持ち込むことで、これまでと一味違った楽しい時間を賞味して頂けますと幸いです。 以上、『ユーザーを掴んで離さない『コンテンツのゲーム化』!もう知らないでは済まされないゲーミフィケーション活用事例集』でした!.
次のGamification(ゲーミフィケーション)とは何か? 「あなたはいつもゲームばかりして」 ファミリーコンピューターが普及して、テレビゲームが一般化して以来、こうしたお小言をどの家庭でも聞くようになってきました。 もちろんテレビゲームが普及する前でも、「野球ばっかりして」「テレビばっかり見て」というお小言を子どもは聞いていたのかもしれませんが、テレビゲームほど子供の心を掴んだものは無いように思います。 放送時間が決められているテレビ番組や友達の予定に影響される野球などと違い、一人でも遊ぶことができるテレビゲームはゲームばかりすることができます。 この 他を忘れて没頭できるゲームの面白さ・楽しさを仕事などのゲームではないものにも応用していこうというのが ゲーミフィケーションです。 広義のゲーミフィケーションと狭義のゲーミフィケーション ゲーミフィケーションはまだまだ新しい研究分野であるため、明確な定義というものはないように思われます。 最も広い意味を持つゲーミフィケーションの中身は 「どのようにしてゲームにするか」というものと 「ゲームで学ぼう」というアイデアで構成されています。 「どのようにしてゲームにするか」というのは、例えば会社の仕事のように、 「テレビゲームではないものをゲームのように面白くできないか」を考えるものです。 他方 「ゲームで学ぼう」というのは、一昔前にはやった任天堂DSの「えいご漬け」のように、 「ゲームのインターフェース(画面)で学んでいこう」というものです。 この両方ともにゲーミフィケーションだと捉えるのが 広義のゲーミフィケーションで、 「どのようにゲームにするか」だけを取り出したのが狭義のゲーミフィケーションです。 以下、このページではゲーミフィケーションの内容をご紹介していきますが、狭義のゲーミフィケーションを取り扱い、「どのようにゲームにするか」ということを中心に考えていきます。 ゲーミフィケーションの構成要素 ゲーミフィケーションはゲームの面白さを用いて、プレイヤーのモチベーションを高めることが目的です。 ここからはゲームの面白さを採り入れたゲーミフィケーションの構成要素をみていきましょう。 上の図はゲーミフィケーションの構成要素の働きをまとめたものです。 もともと人間には 「目標を成し遂げたい」「もっと上達したい」という気持ちを持っています。 こうした人間のモチベーションをゲームは燃料としていきます。 そしてその人間の気持ちをさらに熱くさせるエンジンの役割を果たすのが 「競争」や 「チャレンジ」など、ゲームのメカニズムです。 さらに、このゲームのメカニズムを楽しいものにするのが、競争を加速させる 「ポイント」であったり、目標到達の称号である 「バッジ」などのゲームのパーツです。 人の気持ちという 「燃料」、ゲームメカニズムという 「エンジン」、ゲームを盛り上げる 「パーツ」の3つがそろってようやくゲームの楽しさが再現され、ゲーミフィケーションの仕組みができます。 以下、これらゲーミフィケーションの構成要素をさらに詳しく見ていきましょう。 燃料:気持ち 自動車のガソリンに当たる、ゲーミフィケーションの燃料となるのは人の気持ちです。 先ほども述べた通り、人間には 「目標に近づきたい」「もっと自分のスキルを高めたい」という自発的な気持ちが備わっています。 これを 内発的動機づけといいますが、こうした気持ちがゲーミフィケーションの燃料となります。 とくにゲーミフィケーションが刺激を与える人の気持ちとして 「目的・目標に向かう気持ち」「熟達したい気持ち」「関係性を強めたいという気持ち」、以上3つを挙げることができます。 以下これら3つの気持ちについて見ていきましょう。 1.目的・目標に向かう気持ち 目的や目標は人の行動に強い影響を与えるものです。 「次のコンクールで優勝したい」「次のテストで高い点数をとりたい」という衝動は多くの人が経験したことがあるはずです。 こうした気持ちは何よりのモチベーションとなります。 目的と目標の関係については、『ソーシャルゲームはなぜハマるのか』に記されている定義がわかりやすいでしょう。 同書によれば、 目的と目標は親子関係にあり、目的が最終的なゴールであれば、目標はプレイヤーの熟達の度合いによって変化する短期・中期的なものだとしています。 つまり、最終的なゴール(目的)に至るまでのステップとして目標があると考えればよいでしょう。 目的・目標の効果を高めるために、欠くことができない2つの要素があります。 それは 「物語」と 「制約(ルール)」です。 ゲームではこの「物語」と「制約(ルール)」が巧みに目的・目標に織り込まれ、プレイヤーを楽しませています。 ここで「物語」「制約(ルール)」についても見ていきましょう。 物語 物語、それも壮大な物語の中にいると感じられる目的・目標は、それだけ動機づけの効果を高めることができます。 これはゲームで考えるとよりクリアに理解できます。 ただ単調にモンスターを倒してレベルを100まであげるという目的よりも、 「魔王から世界を救う」という壮大な目的のほうが人の心を動かすゲームになります。 制約(ルール) 1の目標・目的の補助機能として挙げられるのが、「制約(ルール)」です。 目先の目標達成だけを見てしまうと、 倫理に反する行為につながってしまう恐れもあります。 そこで、制約やルールを設けることが必要になってきます。 制約やルールは単にプレイヤーの行動を制限するだけではありません。 むしろゲームとしての輪郭を際立たせ、ゲームとしての面白さを引き立てることができます。 例えば、サッカーではキーパーやスローイングの時でない限り、手を使うことは許されていません。 反対に、バスケットボールでは足を使うことができません。 この「手を使ってはいけない」「足を使ってはいけない」というルールはプレイヤーにとっては不自由を与えますが、それでプレイヤーは落胆するわけでなく、むしろサッカーやバスケットボールというゲームによりのめり込むきっかけとなります。 ルールの存在により、足でボールを扱う訓練にプレイヤーは励むようになり、さらにサッカーというゲームをよりいっそう面白いものにします。 このように、 ポリシーにも似た制約やルールがプレイヤーのモチベーションをかきたてるのです。 2.熟達 熟達とは成長や上達を望む衝動のことです。 誰に言われることなくサッカーの練習に取り組む人もいれば、プログラミングの勉強にまい進する人もいます。 自分の得意とする能力を高めたいという気持ちが「熟達」であると言えましょう。 3.関係性 関係性は 「他者の役に立ちたい」「チームに貢献したい」という気持ちです。 例えば、他者の役に立ちたいという気持ちも関係性に関するものです。 これは現実社会ではボランティアとして、バーチャルのゲーム世界ではサポートキャラクターの役割を担うことで実際に行動に現れます。 エンジン:ゲームの仕組み ゲームのエンジンとは、人の気持ちを上手く燃焼させ、動力に変えているエンジンが競争やチャレンジなどのゲームの仕組みです。 成績を競わせたり、新しい問題にチャレンジさせることによって、人の気持ちを刺激し、新たな行動を促します。 ここでは『ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義』の記述を参考に、ゲームのメカニズムを見ていきましょう。 1.チャレンジ 世の中には失敗を繰り返しながら少しずつ対策を覚えていく「死にゲー」というものがあります。 これらの「死にゲー」は一見面白くなさそうに見えるのですが、多くのプレイヤーを魅了することも多くあります。 試行錯誤を繰り返し、ようやくクリアした時にプレイヤーは興奮と感動を覚えます。 とはいえただ難しいだけで面白いゲームになるわけでないため、ゲームバランスを整え、プレイヤーの「チャレンジしたい!」という気持ちを呼び出すことが大切です。 2.チャンス ここでいうチャンスとはゲームのランダム要素のことです。 「運」の要素と言い換えてもいいかもしれません。 ゲームにおける「運」の程度はゲームによって異なります。 例えば、囲碁・チェス・将棋はあまり「運」の要素がありません。 2016年3月にGoogle傘下のDeepMind社 が開発したアルファ碁(AlphaGo)が韓国の囲碁棋士・イ・セドル九段を破ったことが話題となりましたが、「運」のない世界では論理が全てを支配するため、昨日囲碁を始めた子どもがこのアルファ碁に勝つことはまずありえません。 一方で、すごろくやトランプゲームは「運」が大きく勝敗に影響するため、ついさっきルールを覚えた子どもがその道10年の大人に勝利することも多々あります。 この「運」の要素を上手く調整することで、初心者でも楽しめるゲームにすることで、ゲームへの関与を大きくすることができます。 3.協力 クトゥルフ神話TRPGから「World of Warcraft」などのオンラインRPGまで、多くのゲームはプレイヤー同士の協力がゲームクリアのかぎとなっています。 人は人から期待され、頼られた時、さらにその期待に応えられた時、無上の喜びを感じます。 こうした人の持つ献身の心をくすぐるメカニズムがゲームの中には搭載されています。 4.フィードバック モンスターを倒した時、ミッションをクリアした時、すぐにその成績が知らされる。 ゲームで見られる 素早いフィードバックはプレイヤーのモチベーションになります。 5.リワード RPGにおいて敵を倒した時に得られる経験値やゴールドなどの報酬(リワード)はゲームの大きな要素です。 多くの場合、プレイヤーはこの報酬により装備を整え、さらに強い敵にチャレンジしていていきます。 このリワードの与え方にによってもゲームの面白さは変化していきます。 フィードバックと組み合わせて、 リワードをいかにプレイヤーに素早く、大々的に与えられるかもゲームデザインのポイントの1つです。 6.リソースの獲得 報酬だけでなく、ゲームに出てくるアイテムの収集に夢中になるプレイヤーもいます。 この収集癖をうまくコントロールすることで、プレイヤーをゲームにのめるこませることができます。 7.トレード(交換・取引) トレーディングカードゲームやポケモンのように、よりゲームに強くなるために、プレイヤー同士でリソースのトレードをすることがあります。 また、「カタンの開拓者」や「ディプロマシー」のように、トレード自体がゲームの中心になることもあります。 この トレードを通じて競争力やリソースの獲得が促進され、ゲームの面白みが増していきます。 8.競争と勝利 何よりゲームで大切なことは勝利することです。 そして勝利するために他のプレイヤーに勝ちたいという競争の精神はプレイヤーを突き動かす最も重要なゲームの仕組みとなっています。 パーツ:ゲームのパーツ 自動車を自動車たらしめているのは、自動車を形作るフレームやシャシなどのパーツによっていると言えましょう。 パーツが違うことによって、同じような燃料やエンジンでも、自動車からバイク、工作機械まで様々なものに変わります。 ゲーミフィケーションも同じで、 ゲーミフィケーションの特徴となっているのは、バッチやリーダーボードなどのユニークなパーツであると言えましょう。 ゲームのように、面白い仕組みを作るには燃料となる「気持ち」、エンジンとなる「ゲームの仕組み」、そして「ゲームのパーツ」が必要であることを見てきました。 今回は『ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義』の記述を参考に、 ゲームを構成する主なゲームのパーツを「目標のための部品」「交流のための部品」「競争のための部品」に分けて見ていきましょう。 目標のための部品 ポイント ポイントはあらゆるゲームで導入されています。 得点だけでなく、能力を数値化することもあり、レベルアップやアイテムでその数値が増減します。 バッジ ゲームでいうバッジは巷で売られているような缶バッジではなく、勲章のようなものです。 これは物的なものでなく、バーチャルなものも存在します。 アチーブメント(目標) アチーブメントはゲームで最もよく見られる部品です。 最近では「トロフィー」や「実績解除」の仕組みを導入しているゲームも多くなってきました。 「モンスターを10体倒そう」「20回アイテムを練成しよう」というようなものです。 こうしたアチーブメントの達成に連動して、コンテンツのアンロックを行うこともあります。 例えば、「釣りに3回成功したら新しい釣り場に行ける」などです。 クエスト クエストはあらかじめ設定されたチャレンジです。 多くの場合は目標と報酬が明示されています。 最近ではメインストーリーとは別に、よりゲームを楽しむための要素として導入されることも増えてきました。 バーチャル商品 ゲーム内の商品のことです。 原則ゲーム中の貨幣で購入するものですが、最近では現実のお金で購入する課金アイテムなども存在します。 こうしたアイテムを収集しようとする気持ちも、目標や報酬に似た動機づけです。 交流のための部品 チーム チームを組むことも、ゲームを面白くさせる部品の1つです。 そのまま「チーム」という言葉を使うこともあれば、「ギルド」など、そのゲームのイメージにあった名称を使ったりすることもあります。 gamecity. html より ゲーム内でのソーシャルネットワークを示すものです。 上記の三国志13の相関図がいい例でしょう。 アバター アバターとは自身のゲーム中での分身のことです。 任天堂のMiiが代表的なアバターと言えます。 また、自身のステータス画面もアバターの一種といえましょう。 ギフティング ギフティングとは自分の持っているアイテム・リソースを他のプレイヤーと共有したり、贈ったりすることです。 モノの受け渡しの機会も、ゲームの部品の1つと言えます。 競争のための部品 コンバット コンバットとは定められた戦いを意味します。 イベント戦とでもいうべきものでしょう。 ボス戦 ゲームにつきものなのがボス戦です。 次のステージにあがるための戦いと言い換えることもできます。 ビジネスでいえば、少し背伸びした難しいプロジェクトへのチャレンジと言ったところでしょう。 「パーツの」まとめ ここまではゲームを構成する部品について見てきました。 ゲーミフィケーションではPBLという言葉があるほどポイント、バッジ、リーダーボード(Point,Badge,Leaderboad)を現実のビジネス・会社の制度に取り入れることが多いのですが、どんな部品を使用するかは状況に応じて考えていかなければなりません。 今回「目標のための部品」「交流のための部品」「競争のための部品」というカテゴリー分けをしましたが、これらのカテゴリー分けはバートルテストの考え方に則っています。 アチーバーには「目標のための部品」を、ソーシャライザーには「交流のための部品」、キラーには「競争のための部品」が大きな影響を与えます。 スタッフの特性や、現在の組織の課題などを考慮して、これらの部品を組み合わせ、ゲームの仕組みを作っていくことが大切だと言えます。 ゲーミフィケーションの構成要素が欠けてしまったら 以上、ゲーミフィケーションの構成要素を見てきました。 これらの構成要素が1つでも欠けてしまうと、ゲーミフィケーションとしては成り立たなくなってしまいます。 気持ちとゲームの仕組みはある状態 人のモチベーションの気持ちをくすぐるゲームの仕組みはあるけれども、ゲームとしてのパーツがない状態はどうでしょうか。 これはよく見受けられる状況です。 例えば学校でもテストの成績を貼り出して、競争させるということがありますが、同様の状況といえましょう。 ゲームの仕組みの競争を使うだけでも、人の気持ちを発奮させることは可能です。 ではゲームとしてのパーツはいらないかというとそうではありません。 ガソリンとエンジンだけではそこから得られた動力がどこに向かうのかわからないように、 気持ちとゲームの仕組みだけでは上手く参加者を導くことができません。 例えば上記の学校の成績開示でいうと、数学は成績上位に入っているものの、英語の成績は今一つという学生がいたとします。 何の施策もしないままでは、その学生の英語の成績の向上は期待することができません。 そこで、成績上位者に配られるバッチを科目ごとに用意し、「今回は数学バッチを貰えたから、今度は英語バッチを狙うようにしよう」という風に、 次の課題を示さねばいけません。 あるいは、成績が悪い人のため、 「平均点に到達したバッチ」など、初心者向けの目標設定をすることも大切です。 ゲームのパーツというのは、人の気持ちへの作用を大きくし、また次の目標への道しるべとなります。 バッチ、リーダーボード、アチーブメントなどで指針を明示しながら、モチベートしていくのがゲーミフィケーションの真骨頂といえるでしょう。 気持ちとパーツはある状態 人の気持ちをくすぐるゲームのパーツは用意しているが、ゲームとしての仕組みにかけている状態。 これも頻繁に見受けられます。 例えば、宿題を提出すると学校の先生にスタンプを押してノートを返された方は多いのではないでしょうか。 スタンプも立派なゲーム要素と言えますが、これだけで「次も宿題を頑張ろう」とはなかなかなりません。 もらえたスタンプの数を競わせてみたり、「これができたら特別スタンプがもらえる」などの 次のチャレンジを促す仕組みがなければ学生の次の行動の後押しをすることは難しいでしょう。 このように、ゲームのパーツだけはある状況は 「チョコティフィケーション」と揶揄される現象に近いのかもしれません。 ゲームの仕組みとパーツはある状態 ゲームの仕組みとパーツはあるけれども、人の気持ちを刺激することができない。 これはただの娯楽としてのゲームか、もしくは人の気持ちを考えないゲーミフィケーションの名前をかたったつまらない施策であるといえましょう。 これはゲーミフィケーションでできないことでも扱った、ゲーミフィケーションで従業員に本業外の仕事をさせることができるかどうかという話にもつながっています。 どんな良いゲームの仕組みをつくっても、それが参加者となる従業員の目標に合致しなかったり、熟達を目指そうという気持ちにさせないものであれば、ゲーミフィケーションとしては失敗に終わってしまいます。 注 1 深田浩嗣『ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足』SBクリエイティブ、2011年、69頁。 2 ダニエル・ピンク『モチベーション3. 0 持続する「やる気! 3 ケビン・ワーバック 、ダン・ハンター『ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義』CCCメディアハウス 、2013年、146~147頁。
次の一方、そもそもはという会社を2000年に創業し、そちらで事業を営んでいる立場でもあります。 ゆめみはエンジニアが7割を占める技術の会社ですので、ゲーミフィケーションという概念も「どうやって実際に使いものにするのか、あるいは使いものになるのか」というスタンスでずっと捉えてきました。 これまでもインターネットの業界においては、様々なバズワードが表れては消えて行きました。 本当に消えてなくなってしまったものも多くありますが、一方で当たり前のものとなることで消える言葉もありました。 数年前に聞かれた「Web2. 0」という言葉は今さら誰も使いませんが、これは当たり前になったためと言えるでしょう。 おそらく、今から数年後には、「ソーシャル」という言葉も、当然のことであって今さら言うまでもないということになるのではないでしょうか。 私は「ゲーミフィケーション」という言葉もそういった言葉の1つになる、気がつけばそれが当たり前のことになっている未来を描いています。 とは言っても、現時点ではまだまだその言葉すら浸透しておらず、実際に活用される段階には至っていない状況であることも確かです。 連載の目的と想定読者 本連載は、ゲーミフィケーションについての正しい理解を広めること、そしてその有用性を認識してもらうことを目的としています。 特に読んでいただきたいのは、企業でマーケティングを担当されている方、中でもお客様とのリレーションを考えることが業務であるような方です。 ゲーミフィケーションは顧客を活性化するためのサービスデザイン手法として捉えることもできます。 特にWebと相性がいいので、Webサイトの活性化にも有用です。 連載の構成 連載の第1、2回でゲーミフィケーションの基本的な概念を説明し、その本質的な意味について理解を深めていただきます。 第3回では、この概念を実際のサービスに適用するための「ゲーミフィケーション・フレームワーク」を説明します。 第4回ではFAQを通じてゲーミフィケーションに関するよくある誤解を解消します。 第5回で実際の適用事例についていくつか取り上げます。 最終第6回では今後の展望について説明します。 なお、急速に変化している領域ですので、本連載期間中にもなるべく最新の情報を提供できるようにしていくつもりです。 それでは早速本文に入って行きましょう。 ゲーミフィケーションとは何か まず、「ゲーミフィケーションとは何か」という所から入っていきましょう。 言葉の定義としては、 ゲームが持つプレイヤーを活性化させるノウハウを、ゲーム以外の領域に使うこと が最も簡潔なものとなります。 一体、何のことでしょうか? よく考えるとこのような試みは、ゲーミフィケーションともったいぶって言わなくとも様々なところで行われています。 「くら寿司」を例にとって考えてみましょう。 くら寿司から見る「ゲーミフィケーション」 皆さんは、くら寿司に行ったことはありますでしょうか? 回転寿司チェーン大手の1社で、いつ行っても非常に混雑しています。 同社が提供するテーブルには「ビッくらポン!!」と呼ばれる仕掛けが設置されています。 食べ終わった寿司のお皿を各テーブルにある皿回収ポケットに入れていき、5枚入れるたびに、注文用タッチパネルの画面でルーレットやゲームがスタートします。 「アタリ」が出ると、設置されているガチャガチャから、オリジナルグッズのカプセルが出てくるというのが、この仕掛けです。 この仕掛けがあることで、つい「あと2枚食べてもう1度スロットにチャレンジするか!」となってしまいます。 特にファミリー層が主要な顧客層であると思いますので、お父さんは子供から「もっと食べて!」とせがまれる姿が容易に想像できます。 一皿100円ですから「まあ2枚位いいか」と追加注文することで、お客さんもハッピー、企業側もハッピーという結果となります。 このように、利用者が楽しくなるような仕掛けを通じて活性化を図るということは、リアルな店舗でも見られます。 ゲーミフィケーションでは、このような仕掛けを汎用的に様々なサービスに施していくことを狙います。 「なぜ今注目を集めているのか?」という問いに対しては第2回で答えを用意していますが、それには「ソーシャルWeb」ということが大いに関係しています。 そのため、ここでいうゲームとは、あえて狭く捉えて「主にソーシャルゲームのことを指す」と考えてください。 広く捉えれば、「遊び全般」とも言えますし、その中間として「デジタルゲーム全般」と捉えてもいいのですが、ソーシャルとゲーミフィケーションは太い関係があることと、話を分かりやすくするために、本連載ではそのように考えます。 プレイヤーを活性化させるためのノウハウ「ゲームメカニクス」 また、もう1つ「 ゲームメカニクス」という言葉もここで紹介しておきます。 これは上で説明した「 ゲームが持つプレイヤーを活性化させるためのノウハウ」のことを指す言葉です。 さらに、ソーシャル性が加わることでより強力にプレイヤーをモチベートする仕組みとして機能させることができます。 つまり、ソーシャルゲームはゲームメカニクスとソーシャル性の活用事例、双方のノウハウがたくさん詰まっていると見ることができるのです。 ゲーミフィケーションは、このような目線でソーシャルゲームを眺めた結果、ゲーム以外の領域にそのノウハウを使うことを実現しようという発想で生まれたコンセプトです。
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