ジョーカー 町山。 映画『ジョーカー』の疑問を考察!ラストシーンの意味は?(ネタバレ解説)

【ネタバレ考察】『ジョーカー/JOKER』世界なんか壊れてしまえばよい! その願望をピエロの涙が叶えてくれる。チェ・ブンブンのティーマ

ジョーカー 町山

TBSの町山さんがお勧めというんで見に行ったんだけど、非常に深い政治的意図が仕掛けられている作品。 アメリカのレーティングでも潜伏された意図まで含めてこの作品を考えると放映禁止となっても全くおかしくない DCの中でバッドマンが結構な位置に存在してるのは、アメコミの歴史の中で重要な指標を提示できた、という過去があるからだ。 かつてアメコミは政府の弾圧の元でかなりシンプルな作品しか作れなかった時代がある。 「悪者がいる」「やっつけろ」「バーン(解決)」だけの勧善懲悪なお話しかないような。 それが日本の漫画が発展していくのにつれ、アメコミも弾圧がなくなって後に変化し、大人が読んでも耐えられるだけの深みを描けるようになっていった。 その代表作こそが「ダークナイト・リターンズ」である。 そこでは年を取り、政治的意図に振り回され、戦う相手は政府の敵だったりするヒーローが描かれている。 無敵でなくなったヒーローが現代の社会の問題と向き合うようになったのである そして、それが映画化された作品が「ダークナイト」である。 そこではバットマンのライバルのジョーカーが狂気の元に社会に恐怖を与えていく。 それを演じた役者が役の狂気に飲み込まれ自殺し、アカデミー助演男優賞を受ける事になるという狂気との狭間にある傑作である この2つの大作がバッドマンの礎となっている。 今回の「ジョーカー」はまさにその直系のサイドストーリーであり、狂気の源となったジョーカーの内面に潜り込む作品である。 悪役が主役なのだから、バッドエンドが定まってる。 救われる道はない そう、このバッドマンに連なる話というのは、かなりの部分で社会的問題を含んだ話になっている。 そして今回のジョーカーで語られてる問題は、マイノリティへの無理解、弾圧、政治の無謬である。 その無理解や政治を金持ちが操ろうとしてる様に対して怒りを生み出す作品となっている。 そこに解決の為の道は無い。 これはジョーカーの話だから、その怒りはただ破壊へ向かうだけである。 ジョーカーの話はアメリカ人にとっては他人事ではない。 彼らのほとんどは安い賃金で働き、政治の無謬により政府機関が閉鎖され、何時職を失うかという恐怖にさらされながら、金持ちが演じる政治ショーを傍観する立場にある。 しかし、この作品に共感し、感応すれば、皆テロリストになってしまう。 そういう危険な作品なのだ つい最近、サウスパークというブラックパロディな長期アニメ作品が中国の最近の香港弾圧、ウイグルの民族浄化、ハリウッドが中国に操られてる問題をパロったら、中国でサウスパークが見れなくなる、という問題が起きた。 NBAの一部の人が香港デモを応援したら中国からNBAへ謝罪を求められる事になり、スポンサーから降り、中国放映が危ぶまれる事態となっている。 米国のショービジネスは今や中国に大きく舵取りをされている状況となっている その背景を踏まえた上でこの作品が米国の大統領選挙で大事な時期に公開された、という意味は非常に大きい。 民主党、そしてハリウッドはリベラルであり、弱者やマイノリティの意見を代表している。 しかし、最近ではそれらのマイノリティの意見表明は非常に敵対的になっている。 ソーシャルジャスティスウォーリアーと揶揄されている。 彼らは協調ではなく敵を打ち倒す事に力を入れ、彼らを批難する言葉に対しては弱者への弾圧であると(日本ではヘイトという表現で)批難し、その発言を社会的に封じようとする。 これは何か?民主主義を対立によって立ち行かなくさせる活動であり、表現の自由を弾圧によって奪う活動だ 民主党はヒラリーが中国から大きな支援を得ている。 ハリウッドには中国の資金が入って中国からの指示を断れない状況にある。 ヴェノナ文書という公文書がある。 共産党がいかに長年ずっと敵対国家を内部から破壊しようとしてきたかという事を米軍情報部らが明かした公文書だ。 ぜひYoutubeでその衝撃の中身を知ってほしい。 ジョーカーで実現しようとしている世界とは、民主主義を壊し、表現の自由を奪う活動と繋がっている。 そしてその先に中国の影がちらついて見えるのは自分の視座から見えるだけの事ではないと確信してる これだけの意図を持って作られた作品にも関わらず、米国で上映できたのは、米国が表現の自由を何よりも優先しているからである。 たとえその作品の意図が民主主義の破壊、表現の自由の弾圧に繋がっててもだ。 それはこういう作品から得られるモノが人によっては意図以上の考えにまで至る道を用意してくれるからだ。 このレビューがその一助になるとうれしい この作品は良く出来ている。 そしてそれが示すモノとは何を示しているのか ジョーカーは誰によって生み出された?それこそがこの作品の価値かもしれない.

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町山智浩が「ジョーカー」とチャップリン作品の共通点分析「主人公は社会の被害者」

ジョーカー 町山

(町山智浩)はい。 いまの曲はクリームというエリック・クラプトンがいたバンドの『White Room』という歌なんですけども。 これがこの『ジョーカー』の中で超かっこよく流れますから、お楽しみにということで。 それで、ジョーカーというのは『バットマン』シリーズの最悪の悪役なんですよ。 ジョーカーっていうのはジョークを言う人ですから道化師、ピエロの格好をしてるんですけども。 まあ、これがなぜ最悪かっていうと、普通は敵ってなんか武器を持っていたり、超能力を持っているじゃないですか。 こういう漫画の敵って。 だから強い。 だけども、ジョーカーって何の能力もないんですよ。 この人はただの人なんです。 スーパーパワーとか、ものすごい力とか超能力とか一切持っていないんです。 この人がなぜ強いのか? 全く目的がないからなんですよ。 (赤江珠緒)そうか。 動機がよくわからないっていうね。 最悪の悪役・ジョーカー (町山智浩)動機がないんですよ、ジョーカーって。 いろんな人をたくさん殺したり、テロを起こしたりするんですけど、その目的がゼロなんですよ、彼の場合は。 だからまず、先に察知することができない。 行動の予測がつかない。 自分の利益にならないものだから、追跡できないんですよ。 お金とかを得ないから。 ただただ大量の人を殺して、世の中を惨事に陥れて人々の良心とかを試していくというだけのことをするのがジョーカーなんですね。 (山里亮太)良心を試すんだ。 (町山智浩)だから『ダークナイト』の中で出てくるじゃないですか。 2つの船に爆弾を仕掛けて。 ひとつの船には善良な市民、ひとつの船には死刑囚が乗っていて。 それで互いの船に爆弾があって、爆弾のスイッチを互いの人たちに持たせる。 自分が生き残るために、善良な人たちがスイッチを押すのかどうか。 それは、善良な人たちをさせるという……もしそれで彼らが自分の命を救うためにその人を殺したならば、彼らみんな罪人になってしまうわけですよ。 それを強制させるという。 それに目的はないんですよ。 ただ、嫌がらせ。 恐ろしい敵なんですよ。 で、彼自身は自分が死ぬのを全然怖がっていないから。 (山里亮太)はー。 いちばん怖いですね。 (町山智浩)いちばん怖い。 ジョーカーっていうのは究極のテロリストなんですね。 で、ジョーカーはジョークを言う人で、「それは全部ジョークなんだよ」って言うんですよ。 「そんなこと、なんのためにやっているんだ!」って言うと、「ジョークさ」って言うんですよ。 (赤江珠緒)うわあ、タチが悪いよー! (町山智浩)そう。 「面白いでしょ?」って言うんですよ。 だからすっごい凶悪な敵がジョーカーなんで、いままで『バットマン』シリーズの中では最高の敵としてですね、特に『ダークナイト』ではこのジョーカーを演じたヒース・レジャーという俳優さんがですね、その完全にモラルのないジョーカーを演じることによって、まあ精神を病んで、死に至ったと言われてるんですよ。 (赤江珠緒)そうですよね。 (町山智浩)で、死後、アカデミー助演男優賞を受賞しましたね。 命を削るような、完全にやっていくうちに狂気の中に入っていくような恐ろしいキャラクターなんですけども。 そのジョーカーがどうしてジョーカーになったのかという物語が今回の新作『ジョーカー』なんですね。 で、これが、出てくるジョーカーはこの話の中ではアーサーというのが本名で。 彼は心優しい男なんですよね。 そこからスタートなんです。 ホアキン・フェニックスというリバー・フェニックスの弟さんが演じてるんですけれども。 本当に心優しい男で「みんなを笑わせたい、みんな楽しませたい。 スタンダップコメディアンになりたい」って思っているんですよ。 でもね、あまり売れないんですよ。 スタンダップコメディアンって意地悪なところがないと……。 (山里亮太)そうか。 皮肉を言ったり。 (町山智浩)そう。 差別的なことを言ったりとか、人をバカにしないとウケないんで。 でも、優しいからそれができないんですよ。 (赤江珠緒)ちょっと毒を持っていないとダメなんだ。 (町山智浩)そう。 彼には毒がないんですよ。 優しい男だから。 で、彼自身はピエロをやって子供たちを楽しませているんですよ。 で、それはうまくいっている。 優しい男だから。 で、家に帰ると貧乏なんだけども、病気のお母さんを1人で面倒を見ている。 そういう、いいやつなんですよ。 ところが、いいやつだから周りにどんどんどんどんいじめられて、どんどん追い込まれていくんですよ。 (山里亮太)悲しい……。 (町山智浩)悲しいんですよ。 で、彼自身はちょっと障害があって。 「トゥレット症候群」というのをご存知ですか? (赤江珠緒)ごめんなさい。 わからないです。 (町山智浩)ドラマとかにもよく出てくるんですけども。 たとえばそのトゥレット症候群の中に「汚言症」という症状があります。 言っちゃいけないことに限って言ってしまう病気なんですね。 (赤江珠緒)ああ、はい。 そうですね。 言葉とかもね。 (町山智浩)だからお葬式に行くと思わず笑い出してしまうとか。 身体に特徴のある人とかを見るとその人の悪いことを思わず言ってしまっていう。 で、それは悪意があるんじゃなくて、「言っちゃいけない」って思うと言ってしまうという。 (赤江珠緒)そういう病気があるということは聞きました。 (町山智浩)アーサーはそういう症候群らしくて、おかしくない時とか笑っちゃいけない時に笑っちゃうという病気なんですよ。 それでよく「なに笑ってんだ、コノヤロー!」ってボコボコにされるわけ。 ただ、薬があるんで、その薬をいつも飲んでるんですよ。 それで症状を抑えてるんですけども……だんだんとその貧しさの中で追い込まれて、母親も病気になって。 その医療費であるとか、彼自身の薬代とかが払えなくなってくるんですよ。 で、またその時に政治家がいまして。 その政治家が金持ち優遇の政治をして。 それで貧乏な人たちの保険でカバーできる医療品とかが少なくなってくるんですよ。 それで彼が薬を飲めなくなったら、どんどん笑っていくし。 母親はどんどん体も悪くなっていくし。 その貧しさの中で追い詰められていくんですね。 という……これ、どう考えても同情をする話なんですよ。 (山里亮太)そうですよね。 ジョーカーに同情して引き込まれる (町山智浩)ジョーカーに同情するなんて……(笑)。 だから見ているうちに観客はみんな、ジョーカーの中に入っていくんですよ。 一体化していくっていう、非常に危険な映画ですよね。 (赤江珠緒)うわあ、本当だ……。 (山里亮太)だってそこからジョーカー、悪いことをするわけだから。 ダークの中でもかなりトップクラスに悪いことをやりますもんね。 (町山智浩)いままではジョーカーっていうのは「全く理解ができない人」って言われていたんですよ。 全く理解不能な悪、純粋悪とか悪魔のようなものだっていう風に言われていたんですね。 人間の良心とか善悪を揺さぶるために来たサタンだという風に言われていたんですけども。 今回は彼の中にみんな、観客が入っていくんですよ。 (山里亮太)たしかに、いまの入口だったらそうだな。 「仕方ないじゃん」ってなっちゃう。 (町山智浩)で、その彼のことをいじめる政治家がいまして。 非常に悪い金持ち優遇の政策で。 その政治家はもともとお金持ちなんですよ。 お金持ちの大富豪が政治家になりましたっていう。 誰でしょう? (赤江珠緒)ああ、トランプさん? (町山智浩)いまの大統領かと思ったら、その人の名前、下の名字が「ウェイン」っていうんですよ。 まあいいです。 そんな感じで(笑)。 これ以上は言いません。 だから、究極のジョーカーの敵はそのウェインっていう政治家なんです。 貧困層の人々を苦しめている。 で、とにかくこのホアキン・フェニックスが最初、真面目な男がどんどんどんどんと追い詰められて、少しずつ精神に崩壊していくという演技がすごすぎるんで。 アカデミー主演男優賞を取るだろうと言われています。 ただね、命がけの演技ですよね。 (赤江珠緒)ホアキンさんは大丈夫なんですか? (町山智浩)ホアキンさん、たぶん大丈夫だと思います。 この人、最近こういう役ばっかりなんですよ(笑)。 最近、いつも変なんで。 これ、いつもの仕事(笑)。 (山里亮太)通常営業? (町山智浩)通常営業なんですよ。 ただね、面白いのはこの人自身が一種のジョーカーなんですよ。 あのね、ホアキン・フェニックスは俳優として非常に評価されていたんですけども、2009年に突然「俳優を辞める」って言ったんですよ。 「俳優を辞めてラッパーになる」って突然、言い出したんですよ。 で、本当に仕事全部、断っちゃったんですよ。 1年ぐらい。 で、もう何もしないでですね……本当にあった仕事を全部断ったんですよ。 で、テレビの深夜のトークショーに呼び出されて出たんですよ。 で、そのトークショーの司会者はデヴィッド・レターマンっていう人なんですけども。 「引退してラッパーになるっていうけど、どうしたの?」って心配をして聞いたんですね。 そしたら「わかんない……」って答えたんですよ。 「えっ、どうして俳優を辞めるのか、わからないの?」「わかんない……」って。 (赤江珠緒)ええっ? 大丈夫? (町山智浩)それでそれ、生放送みたいな感じなんですよ。 だからみんな「本当にヤベえ! ホアキン、ヤベえ!」っていう感じになったんですよ。 その後も完全に異常な行動ばっかりで。 ベン・スティラーっていう俳優さんがいるんですけど、友達なんですね。 それでものすごく心配をして、わざわざホアキンの家に行って「どうしたんだ? 俺、心配だよ」って言っても「「知らねえ……」みたいな感じで。 (山里亮太)ちょっと、なんかいろんな心配が増えてきましたよ。 (町山智浩)それで次々と暴力事件とかを起こして。 それでラッパーとしてステージに上がったんですけども、ラップがものすごく下手なんですよ。 で、客がヤジったらその客と殴り合いしたり。 めちゃくちゃになったんです。 で、「たぶんホアキンは何かがあって壊れちゃったんだ」って。 みんな、すごく心配をしたんですよ。 というのは、お兄さんのリバー・フェニックスがドラッグのオーバードーズで亡くなってるんですよ。 で、フェニックス兄弟っていうのはもともとカルトの……お父さんとお母さんが新興宗教団体にいて、普通とは違う育てられ方をしたので、トラウマを負っていると言われているんですよ。 (赤江珠緒)へー! (町山智浩)だから、まあそういったこと、お兄さんのこととかもあるし。 だからみんな、ホアキンのことを心配したんですよ。 芸能界中というか、世界中が心配をしたんですよ。 「あんなに素晴らしい役者なのに……どうしたんだ?」って言っていたら、そのおかしくなった全部を撮った『容疑者ホアキン・フェニックス』っていうドキュメンタリー映画が公開されたんですよ。 (赤江珠緒)えっ? (町山智浩)実は、それは壮大なドッキリだったんです。 (赤江珠緒)ええええーっ! (町山智浩)ホアキン・フェニックスはおかしくなったふりをして。 で、その監督がケイシー・アフレックという友人なんですけど。 その2人だけが「おかしくない」っていうことを知ってたんです。 (赤江珠緒)その心配してきた友達とかもみんな巻き込んで? (町山智浩)巻き込んで、それをビデオに撮って。 テレビに出たり、ファンとかが心配してたり、ファンと殴り合ったりするのを全部ビデオに撮って『容疑者ホアキン・フェニックス』というドキュメンタリー映画にして公開して。 それは壮大なドッキリだったんです。 (山里亮太)へー! ふざけるねえ! (町山智浩)「ふざけるな! ジョークとしてもひどすぎるだろ!」って。 みんな心配したのに。 それで「ジョークだよ!」って言ったけども、それはバッドジョークだろ?っていう。 だから、この人はジョーカーなんですよ! (赤江珠緒)ジョーカーの部分、ありますね(笑)。 (町山智浩)本当のジョーカーなんですよ。 悪質なジョーカーなんですよ。 でもね、それがすごく評判が悪くて。 みんな怒って。 デヴィッド・レターマンなんて本当に怒って。 「私の番組をジョークに利用したのか!」って本当に怒ったんですよ。 賠償請求をしようか? みたいな話にもなって。 それで非常にひんしゅくを買ったんですけども、その後にホアキン・フェニックスは次々と『ザ・マスター』とか『ゴールデン・リバー』とか、へんてこな、頭がどうかしちゃいました系の、頭がどこか遠くに行ってしまいました系の演技を連発するんですよ。 で、「すげえ、すげえ!」って。 「ホアキン、やっぱりおかしいな」って思っていたら、『ジョーカー』なんですよ。 (赤江珠緒)はー! (町山智浩)ものすごく長い振り(笑)。 (赤江珠緒)長い役作りみたいな?(笑)。 (町山智浩)ものすごく長い役作り(笑)。 全てが伏線だったのか?っていうね。 ものすごいことをやっているなって思いましたね。 (山里亮太)集大成だ、本当に。 (町山智浩)集大成ですよ。 だから、この映画がすごいのは、このジョーカーがトークショーに出るんですよ。 (赤江珠緒)ジョーカーが? (町山智浩)この『ジョーカー』という映画の中でジョーカーはトークショーに出るんですよ。 それまでが前振りだった。 ホアキンがトークショーでやらかしたのも前振りだったんですよ。 だからどっちが先なのか、わからないけども(笑)。 で、そのトークショーの司会者がロバート・デ・ニーロなんですね。 で、ロバート・デ・ニーロは昔、トークショーの司会者に……トークショーの司会者っていうのはコメディアンがやるんですけども。 その司会者に憧れたスタンダップコメディアンがトークショーの司会者を誘拐して「テレビに出させろ!」って言うという映画がありまして。 『キング・オブ・コメディ』っていう映画なんですけども。 (町山智浩)キングオブコメディっていうお笑いのグループがいたじゃないですか。 それはそこから取っているんですね。 キング・オブ・コメディになりたい男がいちばんのトークショーの司会者……だからタモリさんみたいな人を誘拐して「俺をテレビに出させろ!」っていう『キング・オブ・コメディ』っていう映画があったんですよ。 それの「出させろ!」っていう売れないコメディアンの役をやっていたのがロバート・デ・ニーロで。 それが今回の『ジョーカー』ではトークショーの司会者の超売れっ子コメディアン。 (赤江珠緒)アハハハハハハッ! ああ、そうなんだ。 へー! (町山智浩)で、そいつに向かって「俺はコメディアンになりたいんだ!」って言っているのがジョーカーという……ものすごく複雑なことをやっていて。 自分でも言っているうちになにがなんだかわからなくなるぐらい複雑なことをやっていて。 この『ジョーカー』っていう物語自体が非常に悪質なジョークのような映画になっているんですよ。 (山里亮太)へー! (町山智浩)それもすごいと思いますよ。 で、とにかく悲惨なんですね。 このホアキン扮するジョーカーの半生というのは。 で、その中でもみんなを笑わせようと思っていたんですけども、突然もう限界に達して彼はキレルンですよ。 「これは限界だ!」っていうところで。 それで、ジョーカーとして生まれ変わるんですよ。 もう全てをお笑いのめす。 その時に彼が言うセリフというのが「俺は俺の人生をずっと悲劇だと思っていたよ。 でもいま、気がついたんだ。 これは傍から見れば喜劇なんだよな」って言うんですね。 (赤江珠緒)切ない言葉ですね……。 近くから見れば悲劇でも、遠くから見れば喜劇になる (町山智浩)切ない言葉なんだけども、このセリフはあの喜劇王チャップリンの言葉が元になっているんですよ。 チャップリンは昔、言ったんですよ。 同じことでも、クローズアップでその人の顔を撮ると、それは悲劇になるんだって。 たとえば、バナナの皮で滑って転ぶというのは、その本人の顔を撮影すると痛そうで泣いてて惨めで……それは、悲劇でしょう? 自分でも失敗すると本当に悲しいじゃないですか。 本当に泣きたくなる時があるじゃないですか。 でも、それを遠くから撮影するとお笑いなんですよ。 その人の心はわからないから。 「ああ、滑って転んでやがる。 バカでー!」ってなる。 チャップリンは「同じ人生をクローズアップで撮れば……近くでその人の心がわかるように撮れば悲劇だし、遠くから笑いものすれば喜劇なんだ」って言ったんですよ。 (赤江珠緒)はー! それはその通りだ。 (町山智浩)それはね、チャップリンの『モダン・タイムス』っていう映画があるんですよ。 で、いま流れている音楽がこれ、マイケル・ジャクソンの『Smile』っていう歌なんですけども。 これは『モダン・タイムス』っていうチャップリンの映画で彼が作曲した曲に歌詞を載せてるんですね。 (町山智浩)それは「辛い時こそ笑おうよ、スマイルしようよ」っていう歌なんですけども。 その『モダン・タイムス』っていう映画はタイトルは「近代社会」っていう意味なんですけども。 もう貧困層の労働者であるチャップリンがいろんな仕事をするんですよ。 工場で働いたり、もういろんな仕事をするんですけど、何をやってもうまくいかないんですよ。 で、全ての仕事が最低賃金の仕事だから、とにかく機械のように働かされさせられて、クリエイティビティも何もない。 ただただ黙々と働く、もう本当にどん底の仕事をやっていく中で、それでどんどんどんどんうまくいかなくて追い詰められていって。 それでチャップリンは精神が壊れちゃうっていう話なんですよ。 それを聞くと、完全な悲劇じゃないですか。 いまの格差社会にも通じる。 ところがチャップリンはそれをコメディとして描いているんですよ。 (山里亮太)引で見ると……。 (町山智浩)そう! チャップリンのすごさはものすごく恐ろしくて悲しい話を喜劇にしたっていうことなんですよ。 で、それがこの『ジョーカー』という映画の元になっているんですよ。 (赤江珠緒)ええーっ! (町山智浩)それを喜劇ではなく、悲劇として見ている。 (赤江珠緒)今度は悲劇として。 これ、でも見ている人としてはね、ジョーカーっていう最悪の犯罪者の心理をそこまで、中まで入り込んじゃった場合、どうしたらいいんだ?っていう……。 (町山智浩)ジョーカーに一体化するんですよ! (赤江珠緒)へーっ! (町山智浩)顔にメイクをして……。 (赤江珠緒)しているのは町山さんですけども(笑)。 「この世はジョークだ!」って。 (山里亮太)でも、こういう上映会、ありそう。 ジョーカーメイクの。 (町山智浩)そういう怖い話なんですよ。 あまりにも世の中がひどいから、もう怒っている場合じゃない。 もう笑うしかないよ。 この世の中はみんなひどいじゃないか。 金持ちが威張っていて、貧乏人は消費税を払わされて。 企業の法人税は安くて。 こんなの、笑い事でしょう? そういう人たち、政治家をみんなが選んで、消費税を払って……こんなの、笑い事ですよ。 「アハハハハハハッ!」って笑うしかないんだよっていうね。 (赤江珠緒)うわーっ、この心理たるや……。 (町山智浩)だからまさにこの10月の消費税増税に突入する時にこそぴったりの映画ですよ。 『ジョーカー』は。 この世の中は笑い事ですよ! お笑いですよ! もう世界中で起こっている格差社会のことですよ。 (赤江珠緒)ああ、そうか。 喜劇と悲劇。 世界中のね。 表裏一体というところも。 (町山智浩)そう。 「もうみんな仕事なんか辞めてね、メイクをして爆弾とか持ってジョーカーになった方がいいよ!」っていう映画ですから。 だから危険な映画なんですよ、これは! (赤江珠緒)そうですか。 (山里亮太)ジョーカーに感情移入するとは思わなかった。 (町山智浩)ものすごい危険な映画なんですよ。 だからアカデミー賞を取るかどうかわからない。 危険すぎて。 「みんな、ジョーカーになろうぜ!」っていう映画だから。 超ヤバい映画。 (赤江珠緒)10月4日公開です。 どういうことになりますかね。

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『ジョーカー』主演のアカデミー賞ノミネートは確実!町山智浩が予想

ジョーカー 町山

ジョーカーの白塗りメイクで登場し、会場を沸かせた町山は「トッド・フィリップス監督は70年代のアメリカ映画が好きで、そういう映画を作りたかったんですが、それだとなかなかお金が出ない。 だから、お金が出る『ジョーカー』を利用したとインタビューで言っていました」と説明する。 本作には名作映画のオマージュ・パロディーがふんだんに盛り込まれており、町山は『』『』『』『』といった1970~80年代の作品、さらに『笑う男』『モダン・タイムス』といったサイレント映画を挙げ、『ジョーカー』の劇中シーンと照らし合わせて解説。 観客も熱心に耳を傾けていた。 『』シリーズなど、コメディー畑出身として知られるフィリップス監督が、シリアスな本作を手がけたことについて、町山はの名言「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」を引用しながら解説してみせる。 さらに、映画史的引用のみならず、聖書や暗黒舞踏、ホアキンの俳優引退&ラッパー転向騒動といった実人生なども虚実入り交じる形で織り込んでみせた本作について、「本当にすごい映画ですよ」と舌を巻く。 [PR] それらを踏まえた上で、「ホアキン・フェニックスは今回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされると思いますよ」と断言する町山。 「この映画はまだアメリカでも公開されていないんですけど、非常に危険な映画として賛否両論を呼んでいるんです。 映画を観ているとジョーカーという無差別テロリストに感情移入してしまうから。 本当に危険な映画ですね」と笑いながらも、「アカデミー賞主演男優賞のノミネートは確実で、おそらく『ロケットマン』のタロン・エジャトンと一騎打ちになるんじゃないでしょうか。 あちらもすごいですからね。 アカデミー賞の前哨戦はこの段階でもう始まっているんですよ」と本年度の賞レースを予想した。 (取材・文:壬生智裕).

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