「強力粉」「中力粉」「薄力粉」の違い 【強力粉】• 主に「 硬質小麦」が用いられる• グルテンとなる成分が多く、弾力が強くなる• 用途はパン、ピザ生地、中華麺など 【中力粉】• 主に「 中間質小麦」「 軟質小麦」が用いられる• 強力粉と薄力粉の中間くらいの性質• 用途はうどん、そうめんなど 【薄力粉】• 主に「 軟質小麦」が用いられる• グルテンとなる成分が少なく、弾力が弱くなる• 用途はケーキ、お菓子など 小麦粉 小麦を挽いて粉にしたもの 日本には小麦粉の明確な定義や規格はない 俗称として、 「うどん粉」「メリケン粉」とも呼ばれる 小麦粉の成分• 「炭水化物」…70~80%• 「たんぱく質」…10%前後• その他 (水分、脂質、灰分、ビタミン、ミネラルなど) グルテン 小麦のたんぱく質の約85%は、 グルテニン、グリアジンという小麦特有の成分 小麦粉に水を加えてこねると、 グルテニン、グリアジンが絡み合って 「 グルテン」となり、粘りと弾力性が生まれる 「 グルテン」が多いと粘り、弾力が強く、 少ないと粘り、弾力が弱くなる 小麦粉の種類 主にたんぱく質の含有量で分類すると、 「 強力粉」「 中力粉」「 薄力粉」 強力粉と中力粉の間を 「準強力粉」とする場合もある 粒の大きさ 小麦粉の粒の大きさは、 主に原料である小麦の「硬さ」に準ずる• 「 強力粉」…粗い(主に硬質小麦)• 「 中力粉」…やや細かい(主に中間質や軟質小麦)• 「 薄力粉」…細かい(主に軟質小麦) ただし、単純に薄力粉だから全て細かく、 強力粉だから全て粗いというわけではない (その大きさの粒の割合が多い) 強力粉 (きょうりきこ)• 粒度が粗く、サラサラしている• 主に「 硬質小麦」を原料とする (アメリカ産、カナダ産など) 特徴 グルテンによる弾力性、粘りが強い (コシがあり、もっちりした触感になる) 用例• パン、中華麺、パスタ• ピザ生地、中華まんの皮、餃子の皮 など 中力粉 (ちゅうりきこ)• 主に「 中間質小麦」「 軟質小麦」を原料とする (オーストラリア産、国内産など)• 代表的なものは「うどん」 (中力粉は「うどん粉」と呼ばれることもある) 特徴 粘性や弾力性においても 「強力粉」と「薄力粉」の中間ほど 用例• うどん、そうめん、冷や麦• お好み焼き、たこ焼き、餃子の皮• フランスパンなどのハード系のパン など 薄力粉 (はくりきこ)• たんぱく質の割合が8. 粒度が細かく、しっとりしている• 主に「 軟質小麦」を原料とする (アメリカ産など) 特徴 水と合わせたときに適度にやわらかく、 グルテンによる弾力性、粘りが少ない 用例 サクっとした軽い食感や ふんわりとした柔らかいものに適す• クッキー、ケーキなどの菓子類• 天ぷらや唐揚げの衣(調理用粉)•
次の昔の製粉方法は、小麦を挽いて、ふるいにかけるだけでしたが、現在は、1粒の小麦を40種類以上に取り分けます。 これを段階式製粉方法といいます。 現代の製粉方法 昔の小麦製粉は至って簡単でした。 小麦を石臼で挽いて、篩(ふるい)にかけ、網の目を通り抜けたものが小麦粉になりました。 ただこの方式は簡単ですが、皮の部分が小麦粉に混ざってしまい、パンがごわごわして、食感もよくないという欠点がありました。 表皮が混じると食物繊維やビタミン群などが摂取でき、健康に良いのは確かですが、充分すぎるほど食物繊維をとっていた先人達は、それよりももっと白くてふんわりとしたパンを食べたいと思うようになりました。 では「白くてふんわりしたパンを焼くにはどうすればいいか?」。 これは表皮が混入することなく、小麦の胚乳部分だけを、いかに取り出すことができるかにかかっています。 ところが石臼でいきなり小麦を小さく挽いてしまうと、胚乳も表皮も小さくなり取り分けが不可能になります。 そこで先人達は知恵を絞り次のような方法を考案しました。 つまり最初はできるだけ小麦を大きく割り、表皮を傷つけることなく、胚乳の塊だけをとりだします。 そして次にこの胚乳の塊についている表皮の破片を取り除いてきれいにし、この胚乳の塊をだんだんと小さくして、最終的に小麦粉の大きさにまでしてやります。 こうすることによって、表皮の混入を飛躍的に軽減することができました。 このように現在の小麦製粉は、小麦を少しずつ小さくし、段階的に小麦粉を作っていくので、「段階式製粉方法」とよばれています。 この段階式製粉方法は、16~17世紀のフランスで始まったと言われています。 この段階式製粉方法を実践しようとすると、その工程はかなり複雑になり、多くの機械装置が必要になります。 現代の製粉工場が大規模化しているのはそのためです。 以下はその現代の製粉方法の概略を説明いたします。 製粉工程図 製粉工程全体をイラストにした製粉工程図を掲載します。 こちらも併せてご覧になると製粉工程全体の流れが理解し易くなりますので、是非ご参照ください。 製粉工程図 (クリックすると大きな画像で確認できます) 主な製粉工程 下記のタイトルをクリックすると詳しい説明へ移動します。 港のサイロに保管されている「輸入された小麦」を山工場である弊社まで搬送・受け入れする場面を紹介します。 小麦が小麦粉になるためには、いきなり製粉するのではなく、様々な下準備を経た上で進んでいきます。 精選されて綺麗になった小麦は、加水して寝かされる事でより加工しやすくする工程へと進みます。 小麦を大きく割る破砕、細かく粉にする粉砕の二つの工程(挽砕)を経てストックと呼ばれる状態になります。 現代製粉のロール機とそれまでに利用されていた石臼との違い。 どういった違いがあるのかご説明します。 前工程でできたストックは篩い機ことロール機によって、一度に様々な種類の粒度別に篩い分けていきます。 小さな表皮の破片である「ふすま片」をより確実に無くすためにピュリファイアーと呼ばれる機械を利用します。 ここまでくると最終的には40種類近い上がり粉に採り分けられて、さらにブレンドされていくことになります。 こうして貯蔵されると思いきや、実はさらに篩いにかけられます(再篩工程)。 そうして貯蔵サイロへ移動します。 昔は国産小麦だけでしたが、現在は品質が良くて価格の安い外国の小麦が主流になっています。 アメリカ、カナダ、オーストラリア併せて500万トンが毎年輸入され、その内うどんに最適なASWはオーストラリア西部で耕作されていて、日本に年間100万トン輸入されています。 一方、国産小麦の生産量はおよそ80~100万トンで、その半数以上は北海道で耕作され、次に九州と続きます。 また香川県にも「さぬきの夢」という地場の小麦があり、年間5000トン生産されていて、地場の製粉会社を中心としてさぬきうどん用に製粉されています。 日本は狭小な地形が多く、小麦に限らず農産物はどうしても生産コストが高くつきます。 そのため小麦を自由化してしまうと、競争力の乏しい国産小麦は自立できなくなります。 そのため現在は、輸入小麦に一定の金額を上乗せし、その売却益を国産小麦の補助金の原資にあてて、国産小麦を保護しています。 輸入された小麦は港のサイロに保管されています。 よって小麦製粉の第一歩は、サイロへ小麦を取りにいくことです。 現在は輸入小麦が主流を占めているので、製粉工場の立地条件としてはできるだけサイロに近いところが、小麦の搬入コストを軽減でき有利です。 実際、新しく建設されている大手製粉工場は、全て港に立地しています。 しかも、小麦サイロに隣接しているので、トラックで運ぶ必要がなく、機械で直接工場に搬入でき、このような工場のことを「海工場」とよんでいます。 一方、従来の内陸部に立地している工場は「山工場」といいます。 また港に近くても、小麦サイロからトラックで運ぶところは、やはり山工場と呼ばれています。 坂出市にはいくつか小麦サイロがありますが、当社が一番よく利用するのは工場から車で5分位のところにある林田サイロです。 つまり当社は海に近いところに位置していますが、トラックで原料を運んでいるので山工場ということになります。 工場まで運び込まれた小麦は、このようにして工場内に受け入れされます。 きれいな小麦粉になるためには、これから色々な下準備が必要です。 野菜でも買ってきてそのまま食べるわけではありません。 傷んでいる部分は取り除き、洗ってきれいにします。 小麦も同じでサイロからやってきた小麦は、小麦以外の様々な不純物(これを夾雑物(きょうざつぶつ)といいます)が含まれています。 これら夾雑物をきれいに取り除く工程を「精選工程」といいます。 夾雑物には様々なものがあります。 典型的なものとして、石ころ、麦わら、他の穀物(とうもろこし、大豆など)があり、また小麦であっても身の細ったものからは、良質の小麦粉はとれないので、精選工程で除去します。 もしこの精選工程が不十分であっても、夾雑物も小麦と一緒に製粉され、文字通り粉々になってしまい、見た目にはその違いはあまりわかりません。 でも料理同様、本来必要でないものが入ると雑味が増え、うどんにしたときの色、味、風味などの品質は当然劣化します。 「ちゃんとした精選」、これが良い小麦粉をつくるための最初のステップです。 精選工程で使用する機械装置を細かく説明しても、あまり面白くはありませんが、簡単に説明しておきます。 まず搬入された小麦は、グレーン・セパレータで予備精選をおこないます。 つまり小麦と極端に大きさが異なる、砂や麦わらなどは予めここで選別します。 次に小麦と大きさがよく似ている小石は、ドライストナーで比重の違いを利用して選別します。 小石はそんなに多く含まれている訳ではありませんが、たとえ僅かでもここを素通りすると、後で小麦を挽砕するロール機を傷める原因になり、また当然品質の劣化につながるので注意が必要です。 雑草の種子や身の細った小麦は、コンセントレーターでやはり比重の違いを利用して選別します。 最近は、ドライストナーとコンセントレーターの両方の機能を兼ね備えたコンビネーターというコンパクトな選別機もよく利用されています。 様々な選別機を利用して、小麦だけを取り分けても精選工程はまだ終了したわけではありません。 小麦自体にまだ塵埃(じんあい、ちりやほこりのことです)がついています。 そこで精選の最終段階として、小麦をきれいに磨いてやります。 ここでは小麦をスカラーという回転している円柱状の金網の中を通過させ、小麦同士、または小麦と金網との摩擦で、小麦についている汚れをとってやります。 そして最後に、アスピレーターという機械の中で、小麦を強い空気の流れにさらし、表面の汚れを吹き飛ばしてやります。 このようにして、工場に搬入された小麦は最終的に、粒の揃ったきれいな小麦だけが残ります。 精選することにより、このような夾雑物が取り分けられます。 もちろん、どれも同じ割合で含まれているわけではなく(そんなに入っているとえらい事です)、取り分けたものを集めたものです。 その前に調質工程(ちょうしつ)が待っています。 調質とは、小麦に水を加え、寝かしてやることを言います。 通常小麦には9~13%の水分が含まれていて、これに加水することによって、15~16%程度にまで上げ、この状態で24~36時間置いてやります。 この調質工程は、製粉工場の中で唯一小麦の物理的また化学的性質を変えることのできる工程です。 調質の重要性は次のように考えるとよく理解できます。 少し大げさに表現しますが、何も加工していない小麦を、金づちで叩くとどうなるか想像してみてください。 小麦は乾燥して硬いので、小麦の破片があたりに飛び散ります。 つまりこのままの状態で、ロールを通過すると表皮も胚乳も細切れになってしまい、その後の工程で両者の分離が難しくなります。 一方、小麦に水を加えて放置しておくと、水分がだんだんと中心部分に浸透し、全体がしっとりとしてきます。 その結果、胚乳部は柔らかくなって粉砕されやすくなり、また逆に表皮は引き締まって強くなります。 今度は同じように金づちで叩いても「ぐにゃ」っとなって、細かく飛び散ることはありません。 つまり表皮が混入せずに、胚乳部だけが取り出しやすくなるわけです。 このように調質の目的は、表皮を壊さずに中の胚乳部分だけを取り出しやすいように、小麦の状態を調整することです。 昔は石臼で挽いていましたが、現在は製粉史上最大の発明といわれるロール製粉機(以下ロール機)が主役です。 話が細かくなりますが、この挽砕工程では小麦を大きく割るだけの作業を「破砕(はさい)」、また粉にまで細かくしてしまうことを「粉砕(ふんさい)」といって区別し、両方併せて挽砕といいます。 そして小麦が最終的に小麦粉になるまでの、途中の段階の状態を「半製品」または「ストック」とよびます。 小麦粉の一歩手前の状態である胚乳の塊はセモリナといいます。 セモリナといえば、パスタ原料であるデュラム小麦の小麦粉を思い浮かべる方もいますが、一般の小麦製粉では胚乳の塊のことをセモリナといいます。 簡単にいうと小麦粉より大きいのがセモリナです。 セモリナは粒が大きいので、手にとってみると砂のようにざらざらしています。 そして最終的に小麦粉になったものは「上がり粉」とよんでいます。 現代の小麦製粉は、一言でいうといかに多くの上質の上がり粉がとれるか、つまりそのためにはいかに多くのセモリナを採れるかが、ポイントとなります。 ロール機は図のように、鉄でできた一対の円柱状のロールのかみ合い部分に、小麦またはストックを通過させることにより、挽砕する機械のことです。 普通は、前後に独立した2組が対称に並び、一度に2種類のストックを別々に処理できるような構造になっています。 小麦は最初1Bロール機で大きく割られます。 割るとはBreak ブレーク 、つまり最初に割るので1Bロールとよばれています。 1Bロール機を通過した小麦は、5つのストックに篩分けられ、これを大きい順に並べたのが、次の図です。 一番粗いストックは、一見皮だけのように見えますが、胚乳がまだたくさんくっついているので、2Bロール機に運ばれ、もう一段階小さく割られ、更に篩分けられます。 2、3、4番目のストックも別の工程で更に処理されます。 一番右端のストックは充分に小さく、これは「上がり粉」つまりこの時点で既に小麦粉になっています。 ただし1Bでとれる上がり粉は、品質的には最高のものではありません。 理由は、小麦の粒溝(溝の部分)についているほこりや表皮の破片が混入しやすいからです。 1Bの目的はあくまで、小麦を大きく割り、その後の工程でできるだけ多くのセモリナを採れるようにすることです。 この後の工程を全て説明しても、あまり意味がありませんので省略しますが、注目してほしいのは、「一粒の小麦は最終的に40~50種類の上がり粉に採り分けられる」という事実です。 このような面倒な方法をとる理由はただ一つ、表皮の混入を避けるためです。 人の好みはそれぞれですが、一般には、うどんはつるつるのど越しの良い、淡黄色で食欲をそそるもの、またパンは白くてふわふわしているものが、万人向けするようです。 そしてそのためには、できるだけ表皮の混入を避けるのが最善の方法です。 このような面倒くさい製粉方法は「段階式製粉方法」とよばれ、実用化には時間がかかりましたが、そのアイデアは少なくとも16世紀のフランスで既に始まっていたと言われています。 ロール機が石臼に取って代わった理由はいくつもありますが、まず何と言っても処理能力の違いは歴然です。 小さな石臼では1時間で数㎏しか挽けないのに対し、ロール機では何トンも処理できます。 またロール機ではロール間隙の正確な調整が可能なので、ストックの粒度管理が容易におこなえます。 その他にも違いはいくつもありますが、特に注目してほしいのは、両者の挽砕方法の違いです。 図1にあるように、石臼には上臼と下臼があります。 下臼は固定しておき、上臼は上から見て左回転するので、そこに「挽く」という動作が発生し、中に落ちた小麦は引き裂かれます。 これによって中の胚乳部が露出するので、それを篩って小麦粉にします。 一方、ロール機は図2のように内側に回転してる一対の円柱状のロールに、小麦が落ちて挽かれます。 ここでのポイントは、このロールは速差ロール、つまり手前側が早く、後方が遅く回転していることです。 例えば手前が450rpm(rpmは1分あたりの回転数)、後方が200rpmだとすると、これは見方を変えると、後方のロールは静止していて、手前が二つの速度差250rpmで回転しているのと同じことです。 よってここでも「挽く」という動作が発生します。 そしてどちらも回転しているので、一度に多量の小麦がロールを通過し、挽くことができるようになります。 もし両方の回転数が同じであれば、そこを通過した小麦はスルメみたいに薄くなるだけで、中の胚乳はうまくでてきません。 ですから2つの回転速度が違う速差ロールを使用するところがポイントで、見かけは違っても、結局のところ石臼とロール機は同じ仕事を処理していることになります。 ただ両者には決定的な違いが一つあります。 それは、挽かれた後の状態です。 石臼では中心近くに落ちた小麦は、落ちた直後に挽かれた後も、両方の臼に挟まれたままなので、最終的に外に押しだされるまで、ずっと挽かれ続けます。 この結果どうなるかといえば、表皮は著しく挽きちぎられ細かくなってしまい、その一部は篩の網の目を通り抜け、小麦粉に入ってしまいます。 石臼で挽いた小麦粉が、少しくすんで見えるのはこれが主たる理由です。 一方ロール機の方はといえば、小麦がロールと触れ合うのは、ロールのかみ合い部分の一瞬だけです。 小麦はロール機で挟まれ、挽かれた次の瞬間には下に落ち、そのままの状態で篩にかかります。 よって表皮の混入を最小限にとどめ、胚乳部分だけを取り出すのに都合の良い構造になっています。 言い換えると、小麦は石臼とは「面」で接し続けるのに対し、ロールとは「点」で接するだけです。 「表皮が少し混ざった方が、風味が増していいじゃないか」という意見も確かにあります。 しかし先人達は黒くて硬く、ごわごわしたパンよりも、白いふわふわのパンを求めました。 また現在では、ぼそぼそとした食感のくすんだうどんよりも、淡黄色の鮮やかな、つるつるとしてのど越しの良いうどんが主流になりました。 実際、両方のうどんを予備知識なしで試食してもらうと、大抵の人は白いうどんの方を選択します。 人の好みは千差万別なので一概にこうだ、と決めることはできませんが、一般的な傾向としてはロール式の方が支持されているのが現状です。 もちろん石臼にも利点はあります。 蕎麦屋さんの中には、今でも自前でそばを石臼製粉しているところが多くありますが、これには理由があります。 「蕎麦は挽きだち」といわれるように挽きたてがもっとも風味が強いので、打つ前に挽くのは筋が通っています。 ただ小麦と違い、蕎麦の殻は非常に硬く、また皮離れがよいので、石臼でも充分に胚乳部分を効率的に取り出すことができます。 よって小麦のように段階式に製粉する必要もなく一発勝負で充分です。 以上のような理由で、設備も小麦製粉のように大規模にする必要がなく、石臼と篩だけで自家製粉できます。 つまり蕎麦は小麦とは構造が全然違うので、手軽な石臼による製粉が可能になっています。 このとき使用されるのがシフターと呼ばれる篩い機(ふるいき)です。 よく料理で小麦粉を使う前に篩にかけますが、シフターの原理もこれと同じです。 ただ規模が大きいのと、一度に何種類にも篩い分ける点が違います。 シフターは大きな箱の中に網が入っていて、それを水平方向に回転させることによって、上から落ちてきたストックを、粒度別に篩い分けます。 箱の中には何十枚もの網が、目の粗い順に上から並んでいて、ストックを4~6種類に篩分けます。 つまり入口は1つで、出口が4~6つあります。 例えば当社では、1Bロールを通過した小麦は、最初5つに篩分けます。 また工程中は篩うストックの数が多く、一つひとつのストックを別々に篩っていたのでは効率が悪いので、普通は6つもしくは8つのストックをまとめて篩うようになっていて、それぞれ6室シフター、8室シフターとよばれています。 次の画像では6室シフターが2つ並んでいます。 それぞれ片側しか見えませんが、反対側にも同じように3室あり、上から落ちてきた6種類のストックを同時に篩分けます。 製粉工場では稼働中は絶えず振動していますが、これはシフターの回転が主な原因です。 シフターには篩の効率を上げるためにおもりがついていて、これが高速で回転するので横揺れがおきます。 特に当社のような木造製粉工場では、窓の桟はいつも「キュッキュッ」と軋んでいますが、これは工場が正常運転している証で、これが止むとどこかが故障して操業がストップしたということがわかります。 シフターを通過したストックの行き先は次の4通りがあります。 1 上がり粉として処理されるもの。 つまりこの時点で小麦粉になります。 2 別の挽砕工程、つまり他のロール機で更に挽砕されます。 例えば、1Bロールを通過したストックで一番粗いものは、2Bロールにいきそこで再度破砕されます。 3 ストックの量が多いと、一度に篩いきれないことがあります。 そのときは更に別のシフターに送られ、そこで再度篩分けられます。 例えば1Bを通過した4番目のストックは、1Gシフターに送られそこで再度篩われます。 4 セモリナ(胚乳の粒)を中心としたストックは、次に説明する純化工程にすすみます。 例えば1Bを通過したストックのうち、2番目、3番目はセモリナが中心なので純化工程へ進みます。 しかしふすま片(小さな表皮の破片)は、一旦小麦粉の中に入ってしまうと分けることができなくなります。 ふすま片の混ざったものは、うどんにしたときに、色がくすんだり、べとついたり、見た目や食感に影響するのでできるだけとり除くことが必要です。 そこでそうなる前に、セモリナとふすま片とを分けるのが、ピュリファイアーです。 ストックを純化 purify する機械なのでピュリファイアー purifier と呼ばれています。 ピュリファイアーの構造は次のようになっています。 セモリナとふすま片が混ざったストックが上から落ちてきて、振動しているゆるやかな斜面を流れていきます。 斜面には網が目の細い順に並んでいるので、小さなセモリナから順番に下に落ちていきます。 一方、上からは吸引しているので軽いふるま片は吸い上げられます。 もしストックが小麦粉とふすま片なら両方とも吸い上げられてしまいますが、胚乳の塊であるセモリナは重く、吸い上げられることはありません。 つまりストックはピュリファイアーを通過することによって、ふすま片を取り除き、大中小のきれいなセモリナにしてやることです。 具体的には、1Bロール通過後のストックのうち、2番目は大きなセモリナが中心、3番目は普通のセモリナが中心で、どちらも違うピュリファイアーで純化されます。 このピュリファイアーできれいになったセモリナは、サイジングロールへと送られ、そこで更に細かく粉砕され、その多くは品質的にはもっとも上等な小麦粉になります。 いってみれば、このあたりのストックが上級粉のポイントゲッターになります。 また細かい話になりますが、純化される前の大きなセモリナについては、リダクション・ロール(Reduction roll)でもう一段小さくし、セモリナの大きさをある程度均一にしてからピュリファイアーに送る方法もあり、これを「前処理」ということがあります。 それに対し最初説明したように、セモリナ中心のストックはすべてピュリファイアーで純化して、その大きさに応じて、次のロール機に送る方法を「後処理」といいます。 言い換えると、予めセモリナの大きさを揃えてから純化するのが「前処理」、また全てのセモリナを純化しておいてからロール機に送るのが「後処理」です。 うどんとかケーキ用途には、どちらかと言えば軟らかい中間質小麦、または軟質小麦を使用するので、こういった場合は小麦が壊れやすく、そしてふすま片が混入しやすくなるので、「後処理」方式が優れているかもしれません。 ピュリファイアーの発明は1807年、発明者はオーストリア人のパウア Ignaz Paur と言われています。 但し当時のピュリファイアーは現在のものとは似ても似つかぬ唐箕(とうみ)のようなものでした。 その後、改良を重ねたピュリファイアーはふすま片をきれに分離することができるようになり、製粉業界に革命をもたらしました。 ロール製粉機は製粉史上最大の発明ですが、ピュリファイアーはそれに次ぐものと言われています。 ピュリファイアーを使うと、それまで黒くてごわごわしたパンがびっくりするような白いパンに変わりました。 うどんも同様で、ピュリファイアーなしだと、くすんでぼそぼそしたうどんになりますが、ふすま片をとり除いてやると淡黄色のなめらかな、のど越しのよいうどんができます。 アメリカでは当時ピュリファイアーを使用した小麦粉は、それ以外の粉との差が歴然としていたので、パテント粉といわれ優れた小麦粉の代名詞になりました。 また少々品質の劣る小麦であっても、ピュリファイアーにより上級粉を取り出すことが可能になり、その投資に充分見合うものだったという記録も残っています。 つまり現代の製粉方法では、一粒の小麦は少なくとも40種類の上がり粉に採り分けられます。 上がり粉の数に幅があるのは、それぞれの製粉工場独自の製粉工程によるためですが、多ければ多いほど良いというものでもありません。 この後は、これら上がり粉のブレンド具合によって、様々に違う小麦粉を作ることができます。 では40種類あれば、単純にその組合せだけを数え上げると(現実的ではありませんが)、1兆種類以上できることになります。 またシフターの網の目、ロールの締め具合などにもより、ストックの流れは違ってくるので、このように考えると、一応理屈としてはほぼ無限に多くの種類の小麦粉が作れることになります。 お米なら精米することによって、表面の米糠が削りとられ白米に変わります。 搗き具合によって差はあるものの、基本的にはどこで精米しようが、搗いたお米は同じになります。 しかし小麦製粉については、精選、調質、挽砕、純化、篩などの工程があり、これらの加減によってもできる小麦粉は異なります。 だから同じ小麦を製粉しても、それぞれの工場の製粉の仕方によって、違う小麦粉ができあがり、それが各製粉工場の特徴になります。 さて話は戻りますが、実際の上がり粉から商品を作る場合は、でたらめに混ぜ合わせるわけではありません。 普通はこれらをきれいな順番(灰分の少ない順)に並べ、上位グループを一等粉、その次のグループを二等粉といった具合に、上がり粉をグループ別にして小麦粉を配合していきます。 灰分は少ないほど小麦粉の色調が鮮やかで、多くなるにつれてだんだんとくすんできます。 稀に例外がありますが、普通は灰分が少ないほど、小麦粉の色は白くて鮮やかだと思って間違いありません。 一等粉グループに入れるメンバーを多くすれば、採れる量(歩留まり)は多くなりますが、欲張りすぎると全体の質が落ちます。 逆に厳選し過ぎると、色鮮やかな素晴らしい小麦粉ができますが、今度は歩留まりが少なくなるので、このあたりはバランスが必要です。 一般に特等粉といわれるものは、上位グループの歩留まりが40~45%になるように、また一等粉は60~65%になるようにグループ分けします。 また一等粉だけを良くすればいいというものでもありません。 同時に発生する二等粉、三等粉などの用途も考慮しながら、全体のバランスが必要になってきます。 小麦粉の価格で言えば、特等粉は一等粉よりも高くなります。 そしてうどんにしたときも、特等粉の方が色が鮮やかで艶もあり、のど越しもなめらかです。 しかし肝心の味については、評価は微妙に分かれます。 特等粉の方が良いという意見もあれば、一等粉の方が小麦の風味が感じられて旨いと感じる方もいます。 つまり味については、小麦の中心部分だけよりも、少し周辺部分の胚乳が混ざった方が美味しいと感じる方もいて、味の評価はそう簡単ではありません。 この工程を再篩工程といいます。 再篩の最大の目的は異物混入の防止です。 いくら完璧だと思っても、世の中に絶対はなかなかありません。 ここが製粉工程での最後の関所なので、もし工程中のどこかで異物が入ったとしても、ここで捕獲できるようになっています。 また各シフターの網が破れていないかどうかチェックすることです。 もしここで常にオーバー(篩を通過しなかったもの)が発生しているようであれば、それは小麦粉よりも大きなストックが混じっていることになります。 つまりどこかの上がり粉の網が破れていて、ふすま片が落ちてきていることになります。 ただ小麦粉はいくつかの上がり粉のグループからできているので、それがどこの網であるかを特定するのは簡単ではありません。 何十年と経験を積めば、ストックの流れの多い少ないで、「この辺りが怪しい」と当たりとつけることも可能ですが、それでもなかなか特定できません。 そういうときは、面倒でもそれぞれの上がり粉を、別々に篩ってみます。 そしてオーバーがでているのをみて、初めてどこが破れているのかがわかります。 ところで一般的かどうかは知りませんが、ここの1等粉再篩シフターには「1FD」という名前がついています。 Dressには「仕上げる」という意味があり、昔の西洋の製粉工場では最終工程、つまり仕上げの意味で使っていました。 昔は製粉設備もそんなに良くなかったので、途中でふすま片なんかが混入することも珍しくなく、それを取り除くという意味で、「仕上げ工程」になり、日本ではそれが転じて最終篩、つまり再篩になったと推測します。 そして貯蔵サイロに保管されている小麦粉が、実際にパッキング(袋詰め)されるときには、もう一度更に別の「再篩」を通過します。 これは一見無駄なように思えますが、小麦粉を移動させるときは、移動途中に異物が混入する可能性があるので、必ず最終出口の手前で篩うのが鉄則です。 ですから工場内では2度、異なる再篩を通過した後、パッキングされるので、小麦粉の袋の中には小麦粉以外のものは原則として入らないようになっています(あくまでも原則です)。 最終篩を通過した小麦粉は直ちにパッキングされ、25kgの業務用袋なら約15秒で自動充填されます。 そしてこれが50袋ひとまとまりとしてパレットに積まれ、倉庫で出荷を待ちます。 現在の製粉工場は、段階的製粉方法を採用しているためやたら機械類が多く、そのために製粉産業は装置産業となっています。 機械化が進んだため、単純作業からは解放されましたが、それぞれの機械の調整はやはり人の手によります。 最新鋭の製粉工場では、たった一人でモニター画面を見ながら集中管理できるそうです。 ただ余りに自動化され、ボタン1つで何でもできてしまうと、その内に何をやっているのかわからなくなるんじゃないか、と思ったりもします。 だから差し支えない程度の手動操作はあった方がいいんじゃないかと考えたりもします。
次のスポンサードリンク 皆さんは小麦粉やココアがダマになってしまった経験ってありますか? 確かに適当に溶かすとダマになってしまうのですが、丁寧に作業してもダマになることがあって、少しイライラしてしまいますよね。 ダマになる原因はなんなのでしょうか、またどのような工夫をすれば回避されるのでしょうか。 小麦粉がだまになりやすい理由 小麦粉をダマにしてしまった経験、皆さんにもあるのではないでしょうか? どんなに丁寧にふるいにかけても、水や卵、牛乳などと混ぜると、 多少のダマができてしまうことってありますよね。 これは グルテンというが大きく関係しています。 小麦粉を水で混ぜると タンパク質が変質して「グルテン」という物質になります。 粘性と弾力性を両方持ち合わせており、パンやケーキ作りには欠かせません。 グルテン同士が結合すると強固な網目状の膜を形成し、その膜が発酵ガスを外に逃がさないため、パンやケーキがふっくらと膨らむのです。 ですが、 小麦粉のたんぱく質は少しの湿気でグルテンに変化してしまいます。 そもそも 袋の中にある時からダマができていることも多いです。 そんな小麦粉を水に溶かそうとしても、 グルテンがさらに結合してしまい、余計にダマになってしまいます。 そのため、ふるいにかけて小麦粉をさらに細かい状態にして、少しずつ水になじませていくのです。 もし溶かす最中にダマになってしまった時は、裏ごしなどをしてとにかく粉を細かい状態にすると良いでしょう。 スポンサードリンク 小麦粉以外もダマになりやすい! 小麦粉の他にも ココアや 粉末の緑茶なんかもすごくダマになりやすいですよね。 実は湿気以外にもダマになりやすい条件がありまして、それは「 粒の大きさが均一でない」ということです。 粒の大きさがバラバラだと、それだけ 隙間が多くなってしまい、 その隙間に小さい粉が入り込むことによって 固まりやすい状態ができてしまうのです。 小麦粉もそうですし、ココアや粉末の緑茶にも、そういった特徴があります。 「ダマにならない小麦粉」として発売されている商品では、 小麦粉の大きさが均一になっているため、ダマになりにくいといいます。 ふるいをかけるのにも、粉の大きさも均一にそろえるという目的があったのですね。 スポンサードリンク 粉によってはお湯で溶かせない それでも、ココアや緑茶の場合は お湯で溶かせばいいだけの話です。 お湯は水よりも分子の動きが激しくなっているため、固まっていた粉も崩れやすくなります。 ですが粉によってはお湯で溶かせないことも多く… 例えば小麦粉をお湯で溶かしてしまうと、 ものすごくベチャベチャになってしまいます。 これは小麦粉に含まれる でんぷんが糊のようになってしまうためですね。 そのままこね続けると餃子の皮のようなモチモチとした食感の生地ができあがります。 お菓子やパンを作る場合は、 水 あるいは牛乳や卵 の温度は人肌程度にとどめておきましょう。 他にも緑茶ではなく 抹茶をお湯で溶かそうとしてもうまくいかないことが多いです。 抹茶は水と混ざると粘土状になってしまう性質があるため、粉の中でも非常にダマになりやすいのです。 茶こしで抹茶を丁寧にふるってから、茶筅でしっかりと混ぜなければ、 いくらお湯で溶いてもダマになってしまいます。 実は抹茶を上手に点てるってすごく難しいことだったんですね。 茶道が文化として発展する理由がよくわかります。
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