何者の主要登場人物 二宮拓人 にのみやたくと 社会学部の5年生。 学生サークルで演劇の脚本を元大学生のギンジと作っていた。 Twitterの裏アカウントで誰にも言えないことを日々呟いている。 神谷光太郎(かみやこうたろう) 拓人の友人でルームシェアをしている。 社会学部の5年生。 就活開始前までバンド活動していた。 性格は明るく、コミニケーション能力が高い。 田名部瑞月(たなべみづき) 光太郎の元恋人で拓人の片思いの相手。 社会学部の5年生。 米国でインターンシップを経験しており、留学生交流会で理香と出会う。 小早川理香(こばやかわりか) 拓人達の部屋の上の階に恋人の隆良と住んでいる。 外国語学部国際教育学科の5年生就職活動に対する意識が高い。 宮本隆良(みやもとたかよし) 理香の彼氏。 就活対策本部に参加するものの、就職活動に批判的であった。 何者 の簡単なあらすじ たまたま知り合った、学生5人の就活物語です。 しかし、ただ就活をしていることを描いているのではなく、イマドキの若者ならではの就活の仕方や、今の私たちになくてはならないSNSを通して変化していく人間関係を描いています。 大学生5年目の5人は各々の就活情報を交換し、切磋琢磨しながら共に就活を乗り越えようと「就活対策本部」をつくるところから物語は始まります。 偶然にも理香は、拓人達の上の階に住んでいました。 同じ大学5年生で就活生と言うこともあり、自分の部屋を「就活対策本部」として定期的に集まろうと提案をしました。 理香の部屋にはパソコンやコピー機もあるので、エントリーシートなど必要な書類をプリントアウトするにはとても便利だったので、よく皆で集まり就活状況の報告をしていました。 どのようにエントリーシートを書いているか、模擬面接の対策、OB訪問等、有益となる情報を交換し互いに就活に対する意識を高めていました。 しかし。 みんなで協力して就活を乗り越えていこうと話をしていると、理香と同棲している恋人の隆良は、就活をする彼らを理解できないと言うかのように「みんなで同じ方向に歩いていくなんてしたくない。 就活、就職をしなくても生きていけるようになりたい」と持論を言うのでした。 希望していた職種とは少し違いますが、大手の企業でした。 理香の部屋でいつものメンバーで内定祝いをしました。 そこで、「意識高い系」の理香はその程度の職場では満足しないと言うような発言をしていました。 次に内定が出たのが光太郎でした。 光太郎も、希望していた企業ではありませんでしたが、就きたかった出版系の会社です。 拓人は祝福しました。 しかし、仲間内から内定者が出てしまうと、内定が決まっていない者は焦りを感じます。 ある企業の面接で拓人と理香は同じグループディスカッションを受けました。 理香は米国留学や海外ボランティアの経験を元に発言をしますが、他の面接者が話しているのを遮ってしまっていました。 グループディスカッションを行う上で、良い行動とはいえません。 周りが内定を決めていき、焦っているようでした。 また、理香も瑞月の内定先の評判をパソコンで検索していました。 そして、ある日、互いに、友人の内定先の評判を検索している事を知られます。 そこで、理香は「拓人くんが内定出ない理由が分かる」というのです。 理香は拓人の裏アカウントの存在を知っていました。 Twitterのアカウントはメールアドレスで検索することができるのです。 拓人はその裏アカウントで誰にも話せない本音をつぶやいていました。 そして、理香は続けて「みんな、そんな拓人くんのこと『痛い』って思っているよ。 カッコ悪い姿を見せたくないって観察者ぶってる人なんか、どの会社だって欲しいと思うわけないじゃん。 」 と告げます。 拓人は理香に図星をつかれてしまいました。 光太郎は単位が足らず留年しており大学5年生、瑞月と理香は留学をしており大学5年生、隆良は1年間休学をしているので大学5年生なので、他の人は初めての就活ですが、拓人だけが1年目で内定をもらえず2年目だったのです。 拓人は自分のことは棚に上げて、いつも他人を観察し悪態をついてました。 時には仲間の裏アカウントを特定し、その内容をチェックしていました。 その行動は「自分が何者でもない」という不安を隠す為のものなのです。 「何者にもなれない」自分からは目を逸らし、他人の評価ばかり気にしています。 そして拓人の裏アカウントにはこのようなつぶやきもあります。 「今年も内定が出ない。 理由が分からない。 」 しかし、物語の最後、拓人は理香に言われた言葉で成長をしたのか、面接官の問に「短所はカッコ悪いところです。 」 「長所は、自分はカッコ悪いということを、認めることができたところです。 」 と答えていました。 何者 を読んだ読書感想 この物語を就職活動中に読んでいたら病んでいたかもしれないな、と思いました。 この小説は「」のつぶやきが、物語の重要な要素になっている新しいタイプの小説でした。 物語の途中に「アカウント名」で登場人物たちのつぶやきが書かれていました。 特につぶやきが多かったのは、拓人と理香でした。 この人が内定をもらったところまでは描かれていませんでした。 就職活動に焦るのと比例して、つぶやきが増えたのでしょうか。 実際に私も、理香のように「面接行ってきた」「エントリーシート書いた」など、よくつぶやいていたかもしれません。 私たちの生活に溶け込んでいるなどは、今ではなくてはならないものかもしれませんが、人間関係に一番影響してくるものなのだなと感じました。
次のこんにちは起業家ブロガーのぶんたです。 先日公開した話題の映画「何者」観てきました。 見る前は「米津玄師と中田ヤスタカコラボの主題歌」と「朝井リョウの原作小説」という2つの要素によりぼくの期待値は最高潮になっていました。 最近のツイートなんか何者が見たすぎる気持ちが出過ぎて何者パレードです。 」も「新海誠作品」というだけでアゲアゲ状態で挑みまして、見事感動して帰ってきたぼく。 相乗効果か「何者」もきっと最高の作品になるんだろうぜ!っていう期待を抱いていました。 率直な感想を書きますが一言で 「見たくなかった」です。 ただただ気持ち悪い。 一瞬先を見るのが気持ち悪い。 なんだよこの気持ち悪すぎる映画はよぉ..。 心の底から見なきゃよかった。 ぶっちゃけ何者見た人達は同じ感想だと思うんです。 もちろん素晴らしい作品でしたよ?だからこそもう見たくないでしょう? さあ、それでは事細かく書いていきます。 一体、映画「何者」でぼくは何を感じたのか。 以下ネタバレ含むので嫌いな人はブラウザバックで。 ぼくは映画「桐島、部活やめるってよ」で彼を知りうおおおってなりました。 その後に小説も読んでうおおおお。 この作品、タイトルに出てくる桐島は一切ストーリーには出ず、彼が産んだ波紋からのスクールカーストドラマを描いたものなんです。 高1の頃は端的に言えばウェイウェイやってたぼくですが、高2から一気にスクールカースト底辺まっしぐらな体験をしたので、「桐島」には心底共感しました。 心抉られましたね。 こんなヤバいモノを世に生み出した朝井リョウさんですからきっと今回もパネエだろう!と、めちゃくちゃ半端ない期待をしながら見た「何者」。 今回は 「桐島」の時のような 「人物」を中心とした物語ではなく、 「就活」という 「流れ」をテーマにした作品です。 きっと桐島同様エグいくらいリアルに 「うっわ。 これわかるわ。 やばい」と思わせてくれるような作品になっていることでしょう。 で、実際期待通りではあったんですが。 いや、期待以上だったのですが。 もうぼくは見たくない。 見たくありません。 そう思ってしまうほどの「ヤバさ」でした。 それでは実際に感じたことをネタバレ込みのレビューで解説していきます。 ネタバレNGな方へこの先はネタバレを含みます。 「まだ見てない!」という方は先へ進む前にに無料登録して「何者」を見ましょう。 31日間 無料!懐かしのあの作品や 話題の最新作も 強制的に共感させられる本音と気持ち 就活を中心とした葛藤や想いを描いた作品「何者」。 ぼくがもう見たくないなと思った理由は簡単に言えば「最悪の共感性」です。 普通、ひとつの作品を好きになると感想やレビューで「あー!ここわかる!ここがわかるから好き!!」ってなりますよね。 だからこそ共感性が高かったりするものはシェアされ拡散され 1つのトレンドを生み出すことが出来ます。 もちろん「何者」もそうなんですが、そうなんですが … この映画は共感性が高すぎる。 しかもその共感性がシェアしたくなるような良い部分ならいいのですが、さすが朝井リョウ一筋縄ではいきません。 ぶっちゃけ誰にもシェアしたくないような共感を産んでくれました。 メインの登場人物全員が抱える闇こそがこの作品の最大にして最凶の共感性です。 強制的に人間の嫌な部分を 120分に渡り共感させられたのですが、ぼくらはそんな試練を乗り越えて何者になれるんでしょうねぇ。 嫌でも共感してしまう 6人の闇 「何者」の凄いところは登場人物全員にそれぞれ違う闇があることです。 しかも質の悪い事に再現性の高い闇。 この瞬間でも闇に塗れている人がいる。 もちろんそれは自分かもしれない。 そう思わせるような凄まじい描写が心をざわつかせました。 心霊映画とかよりよっぽど怖いです。 人間の闇の本質を「何者」は浮き彫りにしてくれました。 彼らそれぞれの闇に名前はありませんが、分けて説明しておく必要はあるでしょう。 この闇を明確にしておかなければぼくらは恐らくしっかりとした自己分析も、増してや就活で勝ち抜くことも、人生を豊かにすることも出来ません。 サワ先輩の闇 一番闇がないなと思ったのはサワ先輩。 立ち位置がズルいでしょう。 何でもは知らないよ。 知ってることだけ感が凄まじい。 指摘という自己満足 人に指摘をするということ。 それはその理由を理解できていなければ無闇に出来るものではありません。 と、同時に自分はわかってるぞという謎の価値観と達観視点をひけらかすことになります。 彼は劇中二度、主人公の拓人へ助言とも指摘とも似つかぬ言動をしますね。 最初の 「もっと想像力あるやつだと思っていたよ」なんて裏を返せば 「お前が考えることなんて全部お見通しなんだよ」っていう宣言ともとれますよね。 こういう言動普段の生活で口にしていませんか?「俺はわかってるぜ?」みたいな。 自己満足が他人を侵食する瞬間。 あの瞬間って一瞬ものすごい全能感を得られて気持ちいいくらい悦に入りますよね。 劇中では出番の少ないサワ先輩ですが、きっと映ってないところでニヒルに唇をクイッと釣り上げながら笑っていることでしょう。 光太郎の闇 天真爛漫で明るいキャラクターの光太郎。 個人的にはこうありたいと思ったりしますが、この人はこの人なりの闇があってそれを客観的に見ているようで自分を振り返って自己嫌悪に陥りました。 無自覚という思考停止 明るくって人懐っこいバカっぽさ丸出しの彼は「無自覚」という質の悪い闇を抱えています。 ありませんか?たまに自慢でも何でもなく言ったことや、やってしまったことが周りの誰かを傷つけてしまうということ。 彼はその行為の塊みたいな人間ですよね。 無自覚というのは余りにも強く、そして誰にでも可能性のある闇だと思います。 考えることを止めることがこの無自覚に繋がります。 「なんで拓人が就活受からないのかわからねえんだ」なんて、 わからないという思考停止に甘えて、わかれなくなってるだけなんですよ。 瑞月の闇 控えめで安定思考な瑞月。 彼女なんか闇なんて無いように思えるキャラですが …。 「うわ、この人これからこじらせるなあ」という印象。 「ドラマの主人公になれないドラマ」という悲劇 サッと思いついたのがメンヘラ。 真面目で清楚な彼女は好きな人に頼りすぎ、知りすぎ、求めすぎてしまいます。 ドラマの主人公にはなれないと言っていましたが、最早その悲劇のヒロインっぷりが既にドラマです。 って突っ込んじゃいますけど、これ実際現実でもよく見ますよね。 「だから私って可哀想」そう思わないようにしても、 無自覚であればあるほどやってしまう自分を支えるための悲劇。 自分しか見えなくなってしまうその行動が周りをざわつかせるのです。 隆良の闇 我の強い隆良。 この人見てる時がぼくは一番共感したかもしれません。 個を貫く彼の動向は増えてきたフリーランス志向の現れでした。 自分という仮初めの正義 自分の中に確固たる正義を持ち、他人に対して容赦なく振りかざす。 そんな風に棘を出しながらも就活をしている姿は、正に考えてることとやっていることが乖離している状態。 自分に嘘をつけばつくほど、どれが本当の自分なのかわからなくなっていく。 隆良にとっての自分はどれなのかを考える度、ぼくは 彼が映るシーンをわくわくしつつも、どこか見たくないという気持ちでいっぱいになりました。 この葛藤わかる。 しかしまだありますよ、隆良の闇。 やりもしない否定と自己肯定 劇中、烏丸とのコラボがなくなった時にする彼の言い訳。 どんどん出てくる彼の自己肯定論は彼とは対を成す瑞月の逆鱗に触れ論破されてしまいます。 全ての物事に自分を納得させるための理由を付け、他人なんて知らないとここぞとばかりに個を確立しようとするその姿。 強がりでもあり見栄でもあり、同時に誰かに理解してほしいという気持ちの現われだとぼくは思いました。 わかる、わかるよー。 かっこいい理由付けて自分を肯定する感じ。 個でありながらも、大きな枠から抜け出せない。 果たしてそれを個性と言えるのか? 理香の闇 闇深すぎだろこの人!!!! クライマックスの方とかガチヒステリックでめっちゃビビりましたけど、言ってることすごいわかるからもうどうしようもないくらい気持ち悪いし見たくなかった。 リアルで「うわぁ …」とか声出ちゃいましたよ。 頑張ってる自分がカッコよくて酔う 終始頑張ってます、努力してますアピールの半端ない人で完全に自分しか見えてない。 こういう人めっちゃいますよねー、ぼくもそういう時あります。 この共感は SNSが跋扈する現代では特にあるんじゃないですか。 中身のない称賛が彼女を作り、支え、それを得るためにまた周りから頑張ってると思われることをする。 本質はそこじゃないのに。 彼女の 「そんなことないよ~」は 「そう思われるためにやってんだよ当たり前じゃん」にしか聞こえません。 そんな自分が大好きなんですよね。 エグぅ … 拓人どころではない分析と執着心 ぼくは分析分析言われている主人公の拓人なんかよりよっぽど分析力があるのではと思いました。 自慢げに放していたアドレスから SNSを辿る手法も彼女なりに「どうすれば接触できるか」に焦点を当てて分析した結果でしょう。 その行いの良し悪しは別ですが、これは理香の武器ではあると思います。 しかしそれ故に、知りたい、周りより上に立ちたいという欲求が全面に出てしまい… 「全日通信エリア職ブラック」とかもう、うっっわあ!って感じで背筋ゾッとしました。 でもさあ、こういう経験あるでしょみんな?スマホ叩けばすぐに情報の出る時代で、自分よりも結果出してる人を徹底的に調べちゃうやつ。 的確に現代社会の闇を描写していて、見たくなかったですよ。 気持ち悪いもん。 あとこれ朝井リョウ作品の好きなところなんですが、彼の作品って別に誰かが救われるワケじゃないんですよね。 あくまで 問題を提起してあとは自分で考えろスタイル。 理香の行動なんかどうするんすか。 「何者」見てこの行動をやめる人が出て来るとは思えませんし、どちらかと言うと 「もしかしてあいつも俺のこと …」なんていう疑心暗鬼を作り出すことにもなりかねません。 本当凄い作品ですわ。 要は考えろってことなんでしょうね。 拓人の闇 主人公拓人。 「何者」は彼の視点で描かれるストーリーですが、こいつの SNS依存度は本当やばい。 Twitter 裏垢でのはけ口 ぼくも学生の頃やってましたけど、今となってはなんであんなことやってたんだろとか思いましたが「何者」見て「ああ、そういえばそうだった」って思い出しました。 どこか斜めに構えて、現状を傍観してそのコミュニティの中では一番自分が凄いんだよってことを自分に言い聞かせるために。 で、たぶん本人それが良くないことだってわかってたから理香に指摘された時に大いに動揺したんですよね。 そうなんですよ、これって ただの人の悪口に乗せた自己の存在証明で誰だってよくないことだって自覚してるはずなんです。 それでも続けなければ自分を保てないくらい摩耗した心は、言葉や外見だけでは判断が付かなくなるくらい人の裏を見て本質を見抜かなければやっていけなくなってたんでしょう。 ギンジと隆良へ放った言葉の特大ブーメラン 「頭の中にある内はいつだって何だって傑作なんだよ」ってセリフ。 思いっきり自分に返ってきてる … 拓人の頭の中は Twitterの裏垢「何者」に投影されて世界へと解き放たれます。 こうして頭の中の傑作はただの気持ち悪い自己肯定に変わります。 きっと140字を考えてる時は本当に傑作だったのでしょう。 しかし外に出すことで理香に否定され、彼の傑作は変わってしまいました。 烏丸ギンジへの LINEの回想シーン。 あの憤りは見ていてわかってしまったからこそ、ぼくは理解したくありませんでした。 結局拓人の正義を他人に押し付けたかっただけ。 人は相容れなければ相容れないほど自分が正しいと躍起になりますよね。 余裕の無い自分の現れ。 それが「何者」なんでしょう。 何者は就活の話ではなかった と、こんな 6人それぞれの闇が共感性を産んだ「何者」ですが、人のドス黒い部分 自分か を常に投影されているようで心底怖い映画でした。 そもそも論かもしれませんが、ぼくには就活の葛藤がイマイチわかりません。 ぼくはこれから一生就活で悩むことも無いでしょうし、そもそも就活は絶対にしないと思います。 だったら自分で仕事を作る。 そういう人間です。 「就活ヤバい」とか言っている同級生は夜になれば居酒屋で酒を飲み、暇さえあれば友人と会ってくだらなすぎる愚痴をこぼし、ちょっと気分が悪くなれば死にたいと SNSに一言つぶやき、こうして1日を終える。 そんな生活を送っています。 こういう無駄の中での人間関係を描いた映画だと思っていました。 しかしこの予想は大きく外れ、人の闇をただただ淡々と描写した映画でした。 たまたま中心に「就活」があっただけで、「何者」で描かれている人の心の闇は場所を変えても蔓延っているとぼくは思います。 何者おもしろそうと思ったあなたへ今ならU-NEXTに登録すると 31日間の無料期間があるので「タダ」で何者を見ることができますよ! 31日間 無料!懐かしのあの作品や 話題の最新作も 桐島は好きだけど何者はもう見たくない 冒頭で書いたとおりぼくは「桐島、部活やめるってよ」は好きです。 あの作品は何度も見返したくなります。 ただ「何者」は本当気持ち悪いと感じてしまいもう見たくありません。 同じ朝井リョウ作品でもこの違いはなんなんでしょうか。 ぼくの好きな「桐島」のセリフにこんなものがあります。 「結局できるやつは何でもできるし、できないやつは何もできないっていうだけの話だろ」 才能はあって基本的に何でもできる、しかし何をするわけでもない努力無駄主義の宏樹が口にする言葉です。 現実的で批評的なこの言葉にぼくは本当にやられました。 これが真理ってわけではないけれど、ぼくはたぶんこっちよりの人間です。 高校生の話ですら出てきたこの刺さるワード。 こんなことばっか言ってると、周りの人間は賛同するものだけになっていきます。 「桐島」にあったハッキリとした自己実現テリトリーの形成が「何者」には無いんです。 「何者」にあるのは馴れ合いの裏にある蹴落としです。 人を蹴落として自分を確立するための就活対策本部。 馴れ合いの中でもどこか周りとは違う自分を形成するために馴れ合いをしている。 そんな感覚です。 言ってみれば「桐島」は自分はこういう人間!というスタイルを作るそれぞれのストーリーなのに対し、 「何者」は馴れ合いの中で影で罵倒し蔑み、如何にして自分をのし上げるかという陰湿で暗い騙し合いのストーリーです。 こんな作品見たいわけないでしょう。 まとめ と、そんなわけでぼくはもう見たくないと思ってしまった映画「何者」。 120分間の拷問に耐えたみなさんはどう感じましたか?それとも全く共感できないと言い切れるような人はいますか?これだけ様々な闇をかけ合わせた作品でそんなこと言えるとは思いませんけどね。 先程も書いたようにこの作品は問題提起です。 こうであるべきだからこうしろという押し付けは一切ありません。 「何者」を見て荒んだ心を浮き彫りにされたあなたはそれを感じてどうするのでしょうか。 ひとつぼく個人がおすすめするのは 自分をしっかりと見つめ直すということです。 きっと目を背けていた部分があるからこういった気持ちになるんだろうなと思うんですよね。 自己分析を通してあなたはもう一度原点に立ち返るべきかもしれません。 答えはありませんけど、良い意味で消化不良な作品だったことは確かです。 また、何者を見てしっかりと自分を見つめ直すことは本当に大事だなと思いました。 自分の中で目を背けていた部分に気づいたあなたはこちらの無料診断で自己分析することをおすすめします。 合わせて読みたい 映画「何者」を無料で見る方法! さて、今回紹介した映画「何者」ですが、実は動画配信サービスで無料で見れちゃいます! 登録から31日間は無料なので、ぜひこの機会に登録して見てみてください! スマホからも見れますよ〜! ちなみに昨年話題になったの旧作、ドラマ、アニメも全て見れるのでこちらを見る方もは登録の価値アリです!!! 31日間 無料!懐かしのあの作品や 話題の最新作も.
次の第148回直木賞受賞、映画化もされている小説 「何者」。 ある日この本の存在を知り、2012年に話題となったらしいこの作品のamazonレビューを確認して面白そうなのでポチった。 しばらく本棚に放置していたのだが、昨日時間を持て余して久々に手に取った。 就活生が自分が何者なのかに葛藤するという内容らしきこの本に、どこか惹かれたタイミングだったのかもしれない。 読んで見た結果、4人の男の登場人物たちに自分を重ねて考えさせらることが多かったので、読み終わったこのタイミングでここにまとめようと思った。 特に男の登場人物に対して向けられた女の登場人物の物語終盤の二つのセリフ(後述)が俺には響いた。 主人公視点の思考、登場人物の会話、登場人物のSNS投稿、という3つの要素で現代日本の就活生を描き出すこの斬新な小説で作者「朝井リョウ」は何を表現し、何を伝えたかったのだろうか。 (ネタバレあり) 目次• 概要 登場人物は主に5人の同じ大学に通う就活生。 拓人 演劇サークルに所属。 人に対して観察と分析ばかりしている。 本当に思っていることはほとんど口にしない(できない)。 光太郎 軽音サークルでバンドを組んでいた。 大人数の飲み会などでは場を盛り上げるピエロになれるような明るい面を持ちつつも、余計なことは口にしないクールな面もある。 拓人とルームシェアしている。 瑞月 光太郎の元カノ。 拓人は密かに瑞月に思いを寄せている。 素直に人を「すごい」と思える純粋な眼の持ち主。 その場にいらない言葉を、自分を守るためにわざわざ言ったりはしない。 理香 拓人と光太郎の部屋の一階上に住んでいる。 隆良 理香と同棲している彼氏。 就活はしない。 (実はひっそりしていたりもする)。 そして、もう一人実際には登場しないがギンジという重要な人物がいる。 ギンジ 拓人の元演劇の相方。 拓人と一緒に劇団を作ろうとしていたが、考え方の違いから仲違いすることになる。 大学を辞めて劇団を立ち上げ毎月自ら公演を打っている。 その演劇は2ちゃんねるで叩かれていたりする。 冒頭の登場人物紹介ページはこのようなTwitterプロフィール形式になっている。 物語は、主人公拓人の言葉として発しなかった思考(「」がない部分)と、実際に登場人物たちによって言葉にされたセリフ(「」がある部分)と、各登場人物のTwitterへの投稿という3種類の文章で構成されている。 就活開始時期の11月頃から翌年の4月頃までの5人の就活を中心とした生活のストーリー。 それぞれの人物の台詞や仕草や行動や結果などがあまりにもリアリティを持って描かれているため、シーンや感情がものすごく想像できる小説。 隆良は人を見下すことで自分を守り現実から目を背けて逃げているだけだった 就活生たちが使うワードをあえて、自分なりの違った言い回しにして(それもそういう人種がよく使うような言い回しなんだけど)個性を主張するような隆良。 「何者」の中のセリフは基本的に短くポンポン会話が進んでいくのだが、2つだけ長いセリフがあり、そのどちらもがこの小説の核心だと俺は思っている。 そのうちの一つが、この普段は素直で人を全く不快にさせないような瑞月が、ギンジと企画していた個展が「なくなった」という隆良に向けて言う、この言葉だ。 隆良くんのその考え方は、たくさんたくさん考え抜いたうえで生まれたものなんだよね? そうだったら、いい。 だけどもし、そうじゃないんだったら聞いてほしい 私ね、わかったことがあるの 最近わかったんだ。 人生が線路のようなものだとしたら、 自分と全く同じ高さで、同じ角度で、その線路を見つめてくれる人はもういないんだって 生きていくことって、きっと、自分の線路を一緒に見てくれる人数が変わっていくことだと思うの 今までは一緒に暮らす家族がいて、同じ学校に進む友達がいて、学校には先生がいて。 常に、自分以外に、自分の人生を一緒に考えてくれる人がいた。 学校を卒業するって言っても、家族や先生がその先の進路を一緒に考えてくれた。 いつだって、自分と全く同じ高さ、角度で、この先の人生の線路を見てくれる人がいたよね これからは、自分を育ててくれた家族を出て、自分で新しい家族を築いていく。 そうすれば、一生を共にする人ができて、子どもができて、また、自分の線路を一緒に見てくれる人が現れる そういうことだと思うんだ。 自分以外の人と一緒に見てきた自分の線路を、自分ひとりで見つめるようになって、やがてまた誰かと一緒に見るめる日が来る。 そしてそのときには、その大切な誰かの線路を一緒に見つめてるんだよね だからこれまでは、結果よりも過程が大事とか、そういうことを言われてきてたんだと思う。 それは、ずっと自分の線路を見てくれてる人がすぐそばにいたから。 そりゃあ大人は、結果は残念だったけど過程がよかったからそれでいいんだよって、子どもに対して言ってあげたくなるよね。 ずっとその過程を一緒に見てきたんだから。 だけど もうね、そう言ってくれる人はいないんだよ 私たちはもう、たったひとり、自分だけで、自分の人生を見つめなきゃいけない。 一緒に線路の先を見てくれる人はもう、いなくなったんだよ。 進路を考えてくれる学校の先生だっていないし、私たちはもう、私たちを産んでくれたときの両親に近い年齢になってる。 もう、育ててもらうなんていう考え方ではいられない 私たちはもう、そういう場所まで来た ギンジくんとの企画の話がなくなった、っていう言い方ひとつとってもそう。 まるで自分とは全く関係のないところで話が消え失せたみたいな言い方したよね。 何それ、そんなの、地球温暖化で南極の氷がなくなった、っていうニュースと同じじゃない。 自分は何もしてないけど、何かの現象がきっかけでなくなった、って、そう言いたいの?したこともないくせに、自分に会社勤めは合ってない、なんて、自分を何だと思ってるの?会社勤めをしている世の中の人々全員よりも、自分の方が感覚が鋭くて、繊細で、感受性が豊かで、こんな現代では生きていき辛いなんて、どうせそんなふうに思ってるんでしょ? そんな言い方ひとつで自分を守ったって、そんなあなたのことをあなたと同じように見てくれる人なんてもういないんだよ。 あなたが歩んでいる過程なんて誰も理解してくれないし、重んじてない、誰も追ってないんだよ、もう バイトのことを『仕事』って言ってみたり、あなたの努力が足りなくて実現しなかった企画を『なくなった』って言ってみたり、本当はなりたくてなりたくて仕方がないはずなのに『周りからアーティストや編集者に向いているって言われてる』とか言ってみたり、そんな小さなひとつひとつの言い方で自分のプライドを守り続けたって、そんな姿、誰も知らないの。 誰も追ってくれていないの 隆良くんは、ずーっと、自分が今やっていることの過程を、みんなに知ってもらおうとしてるよね。 そういうことをいつも言ってる。 誰かと知り合った、誰かの話を聞いた、こういうことを企画している、今こういう本を読んでいる、こういうことを考察している、周りを自分にこういうことを期待してる 十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。 自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。 これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。 自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。 何度も言うよ。 そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。 百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって 地方から父親に浮気されたと思い込み娘のところに逃げてきたメンタルの弱い母親と暮らすことになり、大企業のエリア職(母親のために転勤が少ない選択を取った)に内定した瑞月が、初めて感情的になったこのセリフ。 仲違いしたギンジと重ねて隆良を軽蔑していた拓人も続けて言う。 頭の中にあるうちは、いつだって、なんだって傑作なんだよな お前はずっと、その中から出られないんだよ しかし、実は拓人も自分の間違いに気がついていなかった。 拓人も自分を守って逃げているだけだった 拓人は、昔仲違いしたギンジを見下していた。 でかい夢を掲げ、ブログで努力の過程をアピールし、2ちゃんねるで叩かれる公演を毎月打っているギンジを痛いと思っていた。 そして、隆良もギンジと同じようなものだと思っていたし、その彼女の理香のことも意識高い系のイタいやつだと思っていた。 「何者」は拓人の視点で描かれているため、拓人への人からの視点というのは物語全体を通して表現されることは少ない しかし物語終盤、スマホで光太郎の内定先やギンジの公演が叩かれている2ちゃんねるを閲覧していることがバレたことがきっかけで、見下していたはずの理香に拓人はこう言われる ……私、拓人くんに内定が出ない理由、わかるよ ずっとわかってたよ、そんなこと 拓人くんはさ、自分のこと、観察者だと思ってるんだよ。 そうしてればいつか、今の自分じゃない何かになれるって思ってんでしょ? そんなんだから就活二年目になっても内定ゼロなんだよ みんなやさしいから、あんまり触れてこなかったけど、心のどこかではそう思ってるんじゃないかな。 観測者ぶってる拓人くんのこと痛いって こんなことばっかり検索してるんだね。 総文書院、ブラック、アマチュア劇団掲示板、これあれでしょ、ギンジくんだっけ?友達がやってる劇団が叩かれてる掲示板でしょ? 本当は、誰のことも応援してないんだよ。 誰がうまくいってもつまらないんでしょ。 拓人くんは、みんな、自分より不幸であってほしいって思ってる。 その上で自分は観測者でありたいって思ってる 私はあんたと一緒じゃない だってあんた、ほんとは私のこと笑ってるんでしょ? そこが違う。 私は拓人くんのことを笑ってはいない。 かわいそうだとは思ってるけどね でも、性格が悪いところは同じかもね 私、ずっと読んでたよ、あんたのもうひとつのツイッターのアカウント メールアドレスで検索したら、すぐ出てきたよ 知ってるよ、私。 あんたもきっと知ってるように、隆良がもうひとつのアカウントを持ってることだって知ってるし、あんたがもうひとつのアカウントで好き勝手いろんなこと書いてるのだって知ってる 私、あんたはもうひとつのアカウントにロックかけたりツイートを消去したりなんかしないってわかってたよ だってあんた、自分のツイート大好きだもんね。 自分の観察と分析はサイコーに鋭いって思ってるもんね。 どうせ、たまに読み返したりしてるんでしょ?精神安定剤、手放せるわけないもんね たまーに見知らぬ人がリツイートしてくれたりお気に入り登録してくれたりするのが気持ちよくて仕方がないかったんでしょ?誰か他人から見られないようにロックもしなかったんだよね ずっと前には、書いてたよね。 想像力がない人は苦手、だったっけ? それって、自分のことじゃん。 まさかこれが私に読まれてるなんて、全然想像してなかったんでしょ? 私はね、誰かのことを観察して、ひそかに笑って、それで自分が別の次元に立っているなんて錯覚したりしない。 絶対しない。 あんたと私は全然違う あんたずっと、私のこと笑ってたんでしょ? 言ってあげようか?いつだったかな、知り合ってすぐ、みんなでES書いたりした日、あんたが何て書いてたか 【宅飲みなのに、きれいな食器しか出てこない。 どうして割り箸や紙皿が出てこないのか。 あのふたりはきっと、お互いに格好つけたまま一緒に暮らしてしまっている。 男の方は部屋着のくせにチノパンにきれいなシャツ。 格好悪いところをお互いに見せることができていない。 一緒に暮らすって、そういうことじゃないと思う】だっけ? 何度も何度も読んだからさ、もう覚えちゃった 初めて会ってアドレス交換したとき、もしかして、って思って検索したよ。 あんたみたいなやつは、アカウントをもう一つ持ってることが多いから。 言葉ひとつひとつが、自分は冷静な観測者ですって言ってたもんね。 何だっけ、就活はトランプでいうダウトみたいなもの、だっけ?そんなこと偉そうに語ってたよね。 就活一年目で盛り上がる君たちを俯瞰する観測者の俺、って感じ、すごく出してたもんね 私と瑞月がキャリアセンターにせっせと通ってる時も、自分だけそんなに夢中じゃない振りしてたよね。 隆良が瑞月のESにコメントしてるときだって、ニヤニヤしてさ 本当は瑞月のことも光太郎のことも隆良のことも、笑ってるんでしょ? 留学のことだって、インターンのことだってボランティアのことだって名刺のことだって、本好きでもない光太郎くんが出版社目指してることだって隆良が分厚くて難しそうな本をずっと読み終わらないことだって、何もかも丸ごと笑ってたんでしょ? あんたは、誰かを観察して分析することで、自分じゃない何者かになったつもりになってるんだよ。 そんなの何の意味のないのに 拓人くんは、いつか誰かに生まれ変われると思ってる あきらめるふりして、あきらめきれてない。 今年だって、周りにはもうあきらめたって言いながら、実は演劇を取り扱ってる企業をこっそり受けたりしてる。 この鋭い、自分だけの観察力と分析力で、いつか、昔あこがれたような何者かになれるって、今でも思ってる いい加減気づこうよ。 私たちは、何者かになんてなれない 自分は自分にしかなれない。 痛くてもカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。 みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ。 カッコ悪い姿のままあがくんだよ。 だから私だって、カッコ悪い自分のままインターンしたり、海外ボランティアしたり、名刺作ったりするんだよ 今の自分がいかにダサくてカッコ悪いかなんて知ってる。 海外ボランティをバカにする大学生や大人が多いことも、学生のくせに名刺なんか持って、って今まであった大人たちが心の中できっと笑ってることも、わかってる 笑われてることだってわかってるくせに、そんなことしてるのはなんでだと思う? それ以外に、私に残された道なんてないからだよ ダサくてもカッコ悪い自分を理想の自分に近づけるようとすることしか、もう私にできることはないんだよ ダサくてカッコ悪い今の自分の姿で、これでもかってくらいに悪あがきするしかないんだよ、もう 自分は自分にしかなれないんだよ。 だって、留学したってインターンしたってボランティアしたって、私は全然変わらなかったんだもん。 憧れの、理想の誰にもなれなかった。 貧しい国の子どもと触れあったり、知らない土地に学校を建てたりした手でそのまま、人のアドレスからツイッターのアカウント探したり、人の内定先をネットで検索したりしてる。 それがブラック企業って噂されてるようなところだったら、ちょっと、慰められたりしてる。 今でも、ダサくて、カッコ悪くて、醜い自分のまま。 何したってね、何も変わらなかった だけどこの姿であがくしかないじゃん だから私は誰にどれだけ笑われたってインターンも海外ボランテイアもアピールするし、キャリアセンターにだって通うし自分の名刺だって配る。 カッコ悪い姿のまま、がむしゃらにあがく。 その方法から逃げてしまったらもう、他に選択肢なんてないんだから 拓人くんはそれをわかってない わかってない 全然、わかってない いつか何かのきっかけで自分は変われると思ってる。 未練たらたらで演劇系の企業を受けてたのだって、どっかで『君は他の子と違って面白い考え方をしてるね』なんて評価されることを期待してたんじゃないの?そんなエピソードはね、誰のところにだって降ってこないんだよ 拓人くんはいつも、少し距離を置いたところで私たちの戦いを眺めてる。 自分はあんなカッコ悪いことをしなくたっていいはずだって、心のどこかで思ってる だから、ギンジくんの定期公演だって観に行けないんでしょう?カッコ悪い姿のまま本当にあがくことができている人を見るのが怖いから。 本当は自分にもその方法しか残っていないってことを、思い知るのが怖いから。 距離をとって、アマチュア演劇掲示板なんていう遠く離れたところからギンジくんのこと観察してる。 またお得意の観察だよね 誰に何を言われても、一ヶ月に一度公演をし続けてるなんて、最高にカッコ悪くて最高に正しい姿じゃない。 あんたが観測者のまま臨んで失敗した就活に費やしたこの一年間、ギンジくんは十二回も公演をしてたってことだもんね。 いくらつまらないって叩かれても、他人に点数をつけてもらうことを絶対にやめなかった。 あんたができなかったことを、ギンジくんはずっと実行し続けてる。 その真摯さに立ち向かえないあんたを唯一許してくれる場所なんだよね、あの掲示板 痛くて、カッコ悪い姿であがき続けるっていうことを、私たちに残された最後の方法を、ギンジくんは実行し続けてる 私と隆良の同棲だって、否定しないと気が済まなかったんだよね。 きれいな食器しか使えない、部屋の中でもきれいな服しか着られない私たちは、観測者の視点から見たらさぞカッコ悪かっただろうね。 彼女は海外ボランティアとかインターン、彼氏はただの学生のくせに現代アートのコラムの執筆。 めちゃくちゃカッコ悪い私たちが、それを乗り越えて仲良く暮らし続けるなんてそんなこと、許せなかったんだよね ギンジくんがネットで叩かれながらも毎月絶対に公演をしている姿も、私がダサい自己アピールをしながらも就活を頑張ってることも、笑ってないともうまっすぐ立っていられないんだよね、拓人くんは 私のことだって散々書いてたね。 肩書きばかりの名刺、よくこんなもの配って歩けるなって。 だけど本当は、そんなカッコ悪いことすらできない自分に向き合いたくないだけなんでしょう? 距離をとって観測していないと、頭がおかしくなっちゃいそうになるんだもんね。 でもね、そんな遠く離れた場所にひとりいたって、何も変わらないよ。 そんな誰もいない場所でこってりと練り上げた考察は、分析は、毒にも薬にも何にもならない。 それは、誰のことも支えないし、いつかあんたを助けたりするものにも、絶対ならない 観察者ぶってても、何にもならないんだよ 隆良の【備忘録】も、確かに結構痛いけどさ 拓人くんのもうひとつのアカウント名、私、悲しくなっちゃったよ 思ったことを残したいなら、ノートにでも書けばいいのに、それじゃ足りないんだよね。 自分の名前じゃ、自分の文字じゃ、ダメなんだよね。 自分じゃない誰かになれる場所がないと、もうどこにも立っていられないんだよね 心の中で思ってることって、知らず知らずのうちに、相手に伝わってるもんだよ。 どれだけちゃんとスーツ着てても、どれだけもうひとつのアカウントを隠しても、あんたの心の内側は、相手に覗かれてる カッコ悪い姿のままあがく事ができないあんたの本当の姿は、誰にだって伝わってるよ。 そんな人、どの会社だって欲しいと思うわけないじゃん そうやってずっと逃げてれば?カッコ悪い自分と距離を置いた場所で、いつまでも観測者でいれば?いつまでもその痛々しいアカウント名通り【何者】かになった振りでもして、誰かのことを笑ってなよ。 就活三年目、四年目になっても、ずっと ……でも、私だって、同じようなものなのかもね 私だって、ツイッターで自分の努力を実況中継していないと、立っていられない もう、立っていられないんだよね これまでは誰にも突っ込まれることなく、「観測者」としての自分の思考の中だけで完結していた拓人であったが、このシーンでようやくそんな自分に対しての他者からの見方を突きつけられる。 そして、物語の最後に理香にこのセリフを叩きつけられ、拓人に「観測者」からの変化の兆しが見える。 グループ面接のラストシーン、拓人は短所を聞かれて、こう答える。 短所は、カッコ悪いところです そして、長所を聞かれて、このセリフ。 長所は、自分はカッコ悪いということを、認めることができたところです ここで物語は終わる。 拓人は就活を通してちっぽけな「観測者」から卒業したのだ。 「何者」が伝えるメッセージ それまでのそれぞれの人物の描写とこの二つのセリフに「何者」の伝えたいメッセージが詰まっていると感じた。 自分のちっぽけなプライドを守るために人を見下し、笑い、批判するのではなく、 カッコ悪いところを曝け出しながら、今よりちょっと理想的な自分になろうと努力するしか道は残されていない。 では、何に対してもがき、努力を重ねていけばいいのだろう。 それは、自分で決めるしかない。 絵描きの友人が言っていた言葉を思い出した。 「やりたいからやってるだけじゃなくて、やると決めたからやっている」 やりたいからやる、だけじゃダメだ。 やると決めて、こう生きると決めて、頭と感情だけで完結せずに行動に移していくしかないのだ。
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