今回もとても面白かった! 敵側の動きが活発化し、物語が不穏に動き出しています。 おかげでストーリーに読み応えが生まれ、私の心は高揚感でいっぱいです。 「刺繍」と「魔術」と「旧き森の民」によって織りなす世界観は今まで以上に美しく、イチャラブ夫婦の新婚旅行回としても最高でした。 延々と砂を吐き続けるような糖度の高さ。 甘さだけではなく夫婦の絆を感じる展開もあり、それもまた良し。 続きもとても楽しみです。 そんなある日、王太子妃リブライエルの故郷に『森の祝福』と呼ばれる珍しい刺繍があることを知る。 未知なる刺繍にときめきを隠せないアウローラは、フェリクスにおねだりをして、新婚旅行へ出かけることに! ところが、旅先では不穏な出来事が待ち受けていて……!? 以下、ネタバレありの感想です。 「旧き森の民」の末裔が受け継いできた「森の祝福」と呼ばれる図案。 というわけで、アウローラとフェリクスの新婚旅行回。 このシリーズは刺繍オタクのアウローラのおかげで服飾関係の描写が豊かで華やかなのだけど、今回は旅先でのお話ということもあり、いつも以上に衣装替えが多く、そのレパートリーも豊富だったように感じました。 旅先にあった珍しい刺繍のモチーフとか、動きやすそうで可憐な村娘仕様のアウローラとか、エルフっぽい民族衣装を身にまとうフェリクスとか。 旅の空気に浮かれつつ趣味を満喫するアウローラにつられ、読んでる私まで楽しくて仕方なかったです。 観光旅行の感じが出ていて、すごく良かった! 今回の舞台となる「隠れ里」も素敵でした。 観光事業に力を入れ始めた辺境の里っていう設定、とても秀逸なのでは? まだ観光地として熟れた感じはないのに、観光客を歓迎するムードに満ちたアットホームな温かさがあるというか。 要するに私も行ってみたい。 刺繍工房見学とか絶対おもしろいし、古いアイテムが揃ってるお土産屋さんとかで買いあさりたい。 それはさておき、この新婚旅行、なんと 上司同伴です。 なぜ!?エーリク様、なぜついてきたの!?!?笑 むしろエーリク様のために新婚旅行が組まれたようなものなんだけど、 それはそれとして新婚ムーブをかますクラヴィス夫妻はハートが強い。 フェリクスが周囲の目をガン無視するのは前からだけど、アウローラもだいぶ毒されてきたような・・・・・・まさか「口づけくらい良いじゃないの」とか言い出すとは。 羞恥心を取り戻して主人公!笑 そんな羞恥心が死んでるクラヴィス夫妻の前に立ちはだかるのは、徐々に存在感を増しつつある 「魔術を廃し、魔法を正しい状態に戻そう」とする一派。 その首領らしき古の魔女 カーヌスの登場により、甘くて浮かれた物語に一気に緊張感が走るのです。 ここの緩急の付け方が最高でした。 カーヌスが目指すのは 「魔法を使う者たちの楽園」らしいけれど、今回の一連の騒動をみるに、目的のためなら手段を一切選ばない様子。 今回だってフェリクスたちが気づかなければ相当数の人が苦しんでいた・・・どころか人死にが出ていたのでは? 恐ろしい敵が出てきたものです。 純粋な目的のためにひた走る狂気の人って感じがして怖い。 こんな相手にアウローラは身柄を狙われているんだよなぁ・・・・・・ 敵側についた可愛い幼女にほっこりしたけれど、今回一番恐ろしいことをしでかしたのはこの幼女なので、彼女が今後どんな動きをするのか目が離せません。 保護してほしい気もするけれど、「あにじゃーあねじゃーおしさまー」って言うウィリデは可愛いんだよなぁ。 やっぱりほっこりしちゃう。 ともあれ、カーヌス一派との戦いは、新設された 「特別小隊」の仕事として、今後もフェリクスとアウローラは関わらざるを得ないのでしょう。 期待ですね。 あとは、今回しれっと恩を売れた新王家派閥との繋がりがどういう形で影響するのかも気になります。 面倒くさいことが起こりそう。 楽しみです。 2019年10月 月 火 水 木 金 土 日 最新の投稿• 2020年6月13日• 2020年6月12日• 2020年6月11日• 2020年6月10日• 2020年6月9日• 2020年6月8日• 2020年6月7日• 2020年6月6日• 2020年6月5日• 2020年6月4日 カテゴリー• 134• 149• 101• 110• 201• 131• 138• 138• 106• 174• 3 管理人:みかこ 九州在住のラノベ好き。 谷瑞恵、あざの耕平、十文字青、糸森環、小椋春歌作品の信者です。 基本的には少女小説クラスタで、少年向けライトノベルについても新作を追いつつ過去作を掘り起こしたりしてます。 評価基準や趣味嗜好についてはとをご覧下さい。 Twitter復帰しました。 最近のコメント• に みかこ より• に ばなな豆乳 より• に みかこ より• に ずぅ より• に みかこ より• に ずぅ より• に みかこ より• に スズナリンゴ より• に みかこ より• に y2 より ラノベ感想記事収集サイト• リンク集•
次の張り詰めた、けれどどこか祭りのような熱狂が、場には満ちていた。 荒事とは無縁の人生を歩んできたアウローラは、目を見張って息を呑んでいる。 剣戟の音を聞いたことがないわけではない。 だが、まるで乱世のように、あちらこちらから間断なく響いてくるというのは、未経験のものだ。 上がる怒号や、裂帛の気合、踏み鳴らされる大地は、まるで大気が震えているのではと錯覚するほどだ。 傷つくことさえ厭わないように見える騎士たちの姿は、騎士というより戦士のように見えた。 鍛錬場には、王族用の観覧席がある。 屋根があるのはそこだけということで、恐れ多くもアウローラは、その片隅に腰を下ろして、土煙の上がる広場を眺めていた。 隣には、護衛を兼ねたインゲルス小隊長が酷く楽しげに腰をおろしている。 そして、アウローラの真正面では今まさに、フェリクスが銀の刀身を閃かせていた。 婚約者が見ているんだから良いところを見せろと、ほとんど無理矢理にインゲルス小隊長がフェリクスを放り込んだのである。 「フェリクスがどんぐらい強いか、お嬢さんは知ってるか」 「十指には入るか、とクラヴィス様はおっしゃいました」 模擬戦、というのは第一小隊の毎週の恒例行事で、その日、任務についていない小隊長以下全員による、勝ち抜き戦なのだという。 魔法の使用は不可で、使用されるのは刃を潰した模造刀。 あくまで鍛錬が目的のため褒章は出ないが、定期的に上位に名を連ねれば、小隊長以上の面々からの覚えがめでたくなる、つまり出世が見込めるというものらしい。 「十指ねぇ。 随分謙遜したもんだ」 「そうなのですか?」 「五指には入ると俺ァ思うんだがね。 力だけなら俺より強ェし」 「まあ」 カン! と高い金属音が響く。 フェリクスが飛びかかるのが見えた。 既に敗者となった隊員と、見習いの厚い輪に囲まれた、細身の青年の身のこなしは速度があり鮮やかである。 インゲルス小隊長の声に相槌を打ちながら、アウローラは呆然となって、揺れる銀の髪と藍色の背を眺めた。 小型の猛禽類が翻るようだ。 ——そうだわ、青で縫いとった鷹に、銀糸で紋を入れたらどうかしら。 素敵じゃないかしら! 服に刺繍するには派手だけれど、額装にするとか、クッションに……は、雄々しすぎるわよねえ。 「あんなほそっこくて若いくせにもう班長だからな」 舞うようなフェリクスの姿を眺めながら刺繍へと心を飛ばしていたアウローラは、インゲルス小隊長の声に我に返った。 「では、第四班というのは」 「フェリクスの班だ」 「ああ、それで、『名前を出せば分かる』と仰ったのかしら」 「班長じゃねえ頃から目立ってたけどなー」 キン! とより甲高い音が鳴って、ドッと歓声が上がった。 模造刀が跳ね、地に落ちたのだ。 陽光に剣をきらめかせ、フェリクスが刃を鞘にしまい込む様が見える。 剣を落としたのは相手なのだ。 フェリクスはこれにて3連勝である。 手加減して負けるなんて器用なことのできようはずもなく、1戦で終えるはずのフェリクスは、ついつい試合を重ねていた。 「……本当にお強いのだわ」 汗ひとつかいていないように見えるフェリクスの姿を、アウローラは瞠目して見つめた。 顔よし、家柄よし、性格は堅物だが悪人ではなし、と3つ揃ったところに、更にもう一つの才能である。 仮とはいえ、本当にとんでもない人が婚約者になったものだと、アウローラは今更ながら呆れた。 「驚いたろ。 馬上試合だともっとすげえぞ」 「はい、驚きました。 侍女たちの口ぶりはどうにも絵画的で、実戦向けの評判ではなかったので」 「オンナってのは吟遊詩人みてェな表現が大好きだかんなー」 わははと笑うインゲルス小隊長の向こうから、吟遊詩人的表現そのものの風情のフェリクスが姿を見せる。 遠目には汗ひとつかいていないように見えた姿も、近くで見ればそれなりに疲労の色が見えた。 薄く浮かんだ汗に張り付く銀糸の髪と、こもる熱を逃すべく、わずかにくつろげられた喉元、ほんのり血色の良くなった頬。 日頃禁欲的なまでに乱れのない装束をまとう人間の、わずかに崩された姿の破壊力とはこれほどのものなのか。 垂れ流される色気に当てられて、アウローラは目を眇めた。 女として負けているとか、そういう次元の話ではない。 人間という同種の生き物であることが信じられない、というレベルだ。 この人は本当に人間なのだろうか。 「お疲れ様です。 クラヴィス様、本当にお強いのですね」 「ああ」 遠のきかけた意識を引き戻し、一戦毎にここへ戻ってくる彼の律儀さに感服しながら、アウローラは 頭 こうべ を垂れた。 インゲルス小隊長とアウローラの間に腰を下ろしたフェリクスに、インゲルス小隊長が水を注いでやる。 「ありがとうございます、頂きます」 「おう」 男らしく一気に飲み干される水、その手元に汗が滴る。 アウローラが、手にした扇で思わず扇ぐと、ぎょっとしたようにフェリクスは目を見開いた。 「そのような、」 「お暑いのでしょう?」 「……汗ならすぐに引きます」 次の試合もそろそろです、とフェリクスは前を向く。 勝ち抜き戦なので、後半になればなるほど、試合と試合の間隔が短くなるのだ。 アウローラが口を引き結ぶと、彼はちらりとフェリクスに目をやった。 つられて視線を追えば、フェリクスはじっと真正面を睨んでいる。 氷点下の機嫌が更に引き下がっている風情である。 「……あの?」 「ユールはフェリクスと仲悪ィんだわ」 「まあ」 苦笑交じりの言葉にフェリクスを見れば、彼は不機嫌さを隠そうともせず、固く目を閉じている。 アウローラにつられるように部下を眺めたインゲルス小隊長は、少しだけ声を落とした。 苦味は薄れ、わずかに面白がるような色がにじむ。 「ユールは、第一班の優良物件でな」 「はい?」 「お綺麗で、イイトコのお坊ちゃんなわけよ」 「はあ」 「ピカピカした金髪とギラギラした青い目でさ」 「ふむ」 「お嬢さんたちにゃァきゃあきゃあ言われてて」 「まあ、クラヴィス様みたい」 「……ま、そのせいでちょいとお高く止まっててな」 「あら、そこは違いますのね」 「小隊長」 不機嫌ここに極まれりの低音が耳の至近で鳴って、アウローラはぎょっとして飛び退いた。 初夏だというのに、今のフェリクスの瞳は雪でも降らせそうな冷たさである。 「行って参りますので、ポルタ嬢をよろしくお願い致します」 「おう、任されてやる。 虫除けもしといてやる。 存分に暴れてこいよォ」 ヒラヒラと手を振るインゲルス小隊長に、フェリクスが深く頷く。 アウローラも扇を畳み、居住まいを正した。 「ご武運をお祈りしておりますわ」 「……敗けません」 やたらと強い決意を秘めた目でぼそりと答え、立ち上がったフェリクスのすっと伸びた背を、アウローラはじっと見送る。 白銀と呼ばれるのに、鋼のような人だ。 小さくなる背の向こうに、太陽にきらきらと輝く金色の男が見えた。 遠目にも、際立って整った容貌であることが知れる。 おそらくは、対極、なのだろう。 妙な胸騒ぎがして、アウローラはひっそりと溜息をこぼした。
次のDate : 2019-09-07 Categories : Comment : こんにちは、茉雪ゆえです。 新刊のお知らせです。 2019年10月2日に、『指輪の選んだ婚約者』の6巻を出して頂くことになりました。 今回の正式タイトルは『指輪の選んだ婚約者6 新婚旅行と騎士の祝福』。 歴代サブタイトルの中では短い方ですね……。 そして、文字から分かる通り、「新婚旅行編」となります! ……今更? って? そうなんです。 結婚後すでに2巻目、今更ですが、ふたりは新婚旅行に出かけます! * というわけで、6巻は新婚旅行編。 春先の騒動もひと段落し、仲良し新婚生活を満喫するアウローラとフェリクス。 そんなある日、王太子妃の茶会に招かれたアウローラは、王太子妃の実家の領地に、変わった刺繍を作る村があると言う話を耳にした。 聞けば聞くほどみてみたくてたまらなくなったアウローラは、フェリクスの夏期休暇にあわせての旅行をおねだりしてみることに。 ……という。 「観光旅行」らしく、街を歩いてお店を覗いたり、美味しいものを食べたり。 浮かれるフェリクスと、アウローラのお着替えたっぷりなお話になりました。 しかし、新婚旅行編だと言うのに、あの人もあの人もあの人も出てきます。 頑張れフェリクス。 * 今回も完全書き下ろし、挿絵は鳥飼やすゆき先生です。 表紙の「ドレスじゃない」アウローラも素晴らしくキュートで、「騎士服じゃない」フェリクスもめちゃくちゃ色っぽくてかっこいいのですが、裏表紙(ピンナップ)もまた、すごく素敵なんですよ……! 滲む甘さと、かわいい衣装と、夫婦らしい親密さ。 さいこうか。 あと新キャラのイラストもあります! これまたとても素敵です。 * 6巻の発売日は2019年10月2日予定(いつもどおりなら、電子書籍は10日後くらいかと)。 ひと月切っておりますので、書店やネット書店では、すでに予約もできるようです。 なお、リアル書店でお見せすると楽になるかもしれない、書籍情報はこちら。 タイトル:「指輪の選んだ婚約者6 新婚旅行と騎士の祝福」• 発売日:2019年10月2日予定• 出版社:一迅社• レーベル:アイリスNEO• ISBN-13: 9784758092128 書影は見本紙を頂いてから掲載いたしますが(いつもどおりなら発売前月の20日頃です)、 一迅社さんのアイリス文庫のページにて、背景ナシの表紙イラストを見ることができますよ。 今回もどうぞ、よろしくお願いいたします。
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