新型コロナウイルスを収束させるため、外出自粛をしなくてはいけないのに…緊急事態宣言下、平日でも東京・吉祥寺は大混雑。 週末には東京などから神奈川・湘南などに多くの人が車で出かけ大渋滞し、海も混雑で、21日に神奈川県の黒岩祐治知事が「湘南の海には来ないでください」と語ったほど。 一方、コロナ禍で憂鬱(ゆううつ)な気分が続いたりするといった鬱病の症状を訴える人が増えているという。 精神科医が分析した。 なぜ、緊急事態宣言が発令されたにもかかわらず自粛をしない人が多いのか。 東京・豊島区にあるライフサポートクリニックの山下悠毅院長はこう分析する。 「心理学的に分析すると彼らは『躁(そう)的防衛』の状態にあると言えます。 山下氏は「躁的防衛を構成する感情は『軽蔑』『支配』『征服』の3つが代表的です。 今回、国の自主規制に従わない方たちは、意識では様々な思いがあるのでしょうが、無意識では躁的防衛が働き、行政の指示に背くことで鬱を自己治療している側面もあると思います」と説明する。 もちろん、躁的防衛の状態にあるのは、してはいけない外出をしている人たちだけではない。 「躁的防衛とは要するに脳内を一時的な『お祭り騒ぎ』にすることで、不快な現実から目をそらしているにすぎないからです。 やるべき時にやるべく策を講じておかなければ、『お祭り』の後に待ち構えているものは今以上に過酷な現実かもしれないのです。 また、人は躁的防衛の状態が長らく続くと、ついにはエネルギー切れを起こして鬱病を発症したり、アルコールの量も増え依存症になりやすいことが統計的に分かっています」(同) では、こうしたストレスの中、私たちが取るべき治療法は何があるのか。 そこで、この緊急事態宣言下、山下氏は4つのことを心掛けるべきだと提唱する。 (1)屋内でもできる運動をしよう。 「現在はユーチューブなどで、誰もが無料で様々なトレーニングをすることができます。 家族やオンラインで友人などと一緒に、心拍数が上がるトレーニングをしてください。 私は極真会館のベイノア選手の動画で筋トレをしています」 (2)天気のいい日は散歩に出かけよう。 「日光はセロトニンの分泌を高めるだけでなく、体内時計を調整するメラトニンの調整にも関わります。 休日は、スニーカーに履き替えて積極的に遠出をしてみましょう」 (3)アルコールが好きな方はおいしいお酒をほどほどに。 「人は強い不安がかかると誰でも不眠症になります。 そして、不眠が続くと思考力が低下し、ますます事態は悪化してしまうのです。 昨今では依存性のない安全な睡眠薬も発売されています。 眠れないときは専門医のいる医療機関へ相談に行きましょう」 してはいけない外出やネットで誰かを誹謗中傷することで一時的にスッキリするのではなく、運動や適度な飲酒で、緊急事態宣言をやり過ごそう。
次の我々はそんな危険にもさらされているが、克服する道はあるという。 *** 実際、ロックダウンされている欧米各国の都市を中心にDV被害が急増しているといい、4月5日には国連のグテレス事務総長が各国に向けて、新型コロナウイルス対策に「女性の保護」を盛り込むように訴えたほどである。 だが、日本にとってもすでに対岸の火事ではない。 同じく5日には都内で59歳の夫が、「稼ぎが少ない」と責める妻を平手打ちし、死なせてしまうという痛ましい事件が起きている。 「これがエスカレートしてDVに発展する危険性は大いにあります。 そうなる場合、一番大きな原因は怒りです。 政府にぶつけられない怒りを、身近な弱い人にぶつけてしまうのです」 新型コロナウイルスに感染するのも、DVの加害者や被害者になるのも、どちらも悲劇であるのは言うまでもない。 大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏は、 「在宅勤務になると、定年で家にいるのと同じ状況になるから、熟年離婚の原因となる状況が前倒しでやってくることがある。 家族が一緒にいることがストレスになる家庭の場合、DVや虐待にも発展します」 と憂慮する。 その場合、 「奥さんが家事や育児の負担が大きいなら、旦那さんが食事を作るとか、積極的に相手の負担を減らすこと。 大事なのは相手に依存したり、負担をかけたりしないことです」 というのが石蔵氏のアドバイスだ。 また、精神科医の和田秀樹氏によると、こんな懸念もあるという。 「DVは家に閉じこもった状態が解ければ、ある程度収まるでしょうが、それ以上に問題なのはアルコール依存症です。 不安感が強く鬱々としているので、酒でも飲まないとやっていられない。 在宅だと安価で飲めたり、人目がないので歯止めがきかず飲めたりするため、外でみんなで飲むよりアルコール依存症になりやすく、一度なると治りにくいのです」 片田氏によると、コロナ鬱も増えているという。 「私のところに来る患者さんは、もともと鬱病や不安障害を抱えている方が多く、いまテレビやネットを観て不安になり、症状が悪化しています。 これまで症状がなかった人でも、コロナへの不安から鬱になる方が多いようで、その大きな原因は喪失不安。 つまり、自分の命や家族の命、健康、そして収入や職といった大切なものを失うのではないか、という不安です。 多くの死者が出ているのが発展途上国ではなく、最高峰の医療技術をもったアメリカやイタリアだということも、不安を増長させています」 その症状は、 「人それぞれですが、まず不眠になることが多い。 さらに、常に怒りっぽくなったり、なにをするにもやる気が出なくなったり、すべてを悲観的に見てしまったりするようになります」 休業を強いられた人が鬱になったら、命が守られたことになるのだろうか。 あわせて読みたい関連本•
次の特に、基礎疾患を抱えている人や、仕事を休めない人などは敏感にならざるを得ないようである。 (舟木彩乃) 相談はさらに、「こんなに不安になっている自分はおかしいのだろうか」と続く。 これに対し、今の不安は自然災害に遭ったときに不安になるのと同じで、「あくまで自然反応で、あなただけが不安になっているわけではない」ということを伝える。 えたいの知れない新型コロナ相手に自粛を強いられる日々では、健康面に加え経済面での不安から、心身の不調に悩まされる人が多くいる。 では、自然反応の不安と不健全の不安の境はどこにあるのだろうか。 東京都内にあるAさん(男性、30代)の会社は、緊急事態宣言以降、在宅勤務が中心になった。 彼はもともと心配性で、国内で感染者が増加し始めた頃から、感染したらどうしようという思いにとらわれた。 新型コロナの情報を求めて、インターネットから目が離せない状態となり、夜は眠れなくなり、気力は低下し、本来やるべきタスクができなくなって仕事に支障をきたすようになった。 不健全の不安は、ネットサーフィンなどで本来やるべき仕事やタスクに支障がでる状態が目安となる。 ネットで忙しくて時間がなくなってしまう場合だけでなく、情報で不安になり仕事や家事が手に着かなくなる場合も含む。 Aさんは、四六時中感染症のことを考えるようになり、少しでも体調が悪くなると「新型コロナの初期症状だ。 これから重症化するに違いない」と思い悩むようになった。 体調が良くなってからも「まだウイルスが身体に残っていて再発するかもしれない」という考えが頭から離れず、かかりつけ医に何度も相談した。 レントゲンや血液検査で問題がなくて一旦安心しても、またすぐに不安になったそうだ。 Aさんのような状態は、妄想を伴う鬱病が疑われる。 鬱病は、食欲や睡眠欲などが低下して抑鬱状態が続くのだが、妄想を伴う鬱病は、客観的事実とかけ離れた悲観的な妄想をいだくのが特徴だ。 妄想には、「心気妄想」(大きな病気を患っているに違いないと考える)、「罪業妄想」(些細(ささい)なことにとらわれ、取り返しがつかないことをしたという罪の意識を負う)、「貧困妄想」(お金に困っていないのに破産の心配をする)-など3種類があり、「鬱病の3大妄想」と呼ばれている。 Aさんの場合は、自分は新型コロナに罹患(りかん)していて重症化するに違いないという思いにとらわれており、「心気妄想」が考えられる。 心配性な性格に加えて、過度な情報収集で疲弊し、得た情報を全て悲観的に受け取ってしまっていた可能性がある。 Aさんは、かかりつけ医から心療内科を紹介され鬱病と診断された。 妄想を伴う鬱病は、重度の鬱病の場合がある。 現在は、服薬しながら、自分にとって恐怖となる情報番組を見ないことや、ネットサーフィンをしないことを助言され、それを守りながら少しずつ回復に向かっている。 今は誰でも多少なりとも不安があって当然だが、もし自分の不安が不健全の領域に入っていると思ったときには、ためらわず心療内科などに相談すべきだと思う。 【プロフィル】舟木彩乃 ふなき・あやの ヒューマン・ケア科学博士。 メンタルシンクタンク副社長。 筑波大大学院博士課程修了。 著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館)がある。 千葉県出身。
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