「幸甚に存じます」の意味と読み方 読み方 「幸甚に存じます」は <こうじんにぞんじます>と読みます。 「幸甚」について 「幸」は音読みだと「コウ」、訓読みだと「さいわい」「しあわせ」と読みます。 「幸」は「運が良いこと」「かわいがる」「思いがけないさいわい」を意味しています。 「甚」は音読みだと「ジン」、訓読みだと「はなはだ」と読みます。 「甚」は「ふつうの程度を超えているさま」「たいへん」「非常に」という意味になります。 「幸甚」の意味は、 ・何よりの幸せ ・この上ない幸せ ・最上級の幸福 ・幸せの極み ・大変ありがたい思う となります。 「存じます」について 「存じます」は 「思う」「知る」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」で成り立っています。 「幸甚に存じます」の使い方と例文 「幸甚に存じます」は目上の相手に対して使うことのできる表現です。 「幸甚に存じます」は元々は手紙で多く使われていましたが、最近ではビジネスメールでもよく使われます。 ビジネスシーンでの「幸甚に存じます」は、依頼する際に使うことが多いです。 「幸甚に存じます」は少々堅い表現のため、基本的に目上の人に使います。 親しい間柄の相手に使ってしまうと、仰々しい印象を与えてしまいます。 この場合は「〜してくれて大変ありがたく思います」という意味を表します。 例文 ・先日はお忙しい中をわざわざお越しいただき、誠にありがとうございました。 またのお越しの際に楽しんでいただけたら幸甚に存じます。 ・おかげさまで当店も開店10年を迎えることができました。 これまで当社を支えてくださったお客様、関係者の方々に御礼を申し上げたいと思います。 また、今後とも変わらぬご愛顧賜れば幸甚に存じます。 ・本日はこのような素晴らしい会にお招きいただき、幸甚に存じます。 ・遠いところからご足労いただき、またご教示いただけたことは幸甚に存じます。 この場合は相手に何かを期待するのではなく、単に自分の願望を伝えるということになります。 ・次回のセミナーのゲストとしてご出席いただければ幸甚に存じます。 ・ささやかではございますが、祝賀会を催すこととなりました。 ご来臨くだされば幸甚に存じます。 ・何かお心当たりの方がいらっしゃいましたら、当方までご一報いただければ幸甚に存じます。 ここでの「幸甚に存じます」は、自分が行ったことに対して「 相手が 喜んでくれたら満足に思います」といった意味になります。 単純に自分が嬉しいという意味ではなく、あくまでも相手の好意的な反応を期待して「幸甚に存じます」を用います。 例文 ・先日は誠にありがとうございました。 心ばかりの御礼といたしまして当地の名産品をお送りしました。 気に入ってもらえたら幸甚に存じます。 ・お菓子の詰め合わせをクール便で送りました。 気に入ってもらえたら幸甚に存じます。 ・いつも大変お世話になり、ありがとうございます。 以前、お好きだとお聞きしたスイートピーのお花をお送りしました。 気に入っていただけましたら、幸甚に存じます ・お祝いのしるしまでに別送の品をお届けしますので、ご笑納いただければ幸甚に存じます。 ・日頃、お世話になっているお礼としてギフト券を同封いたしました。 受け取ってくださると幸甚に存じます。 「幸甚に存じます」の類語・言い換え 「幸甚に存じます」はとても堅い表現なので、使う相手やシチェーションによって使い分けが必要です。 幸福、幸せ ・運が良いこと・都合が良いこと ・そうしていただければ幸せだと人に頼む気持ちを表す になります。 「幸い」は、「こうしてくれると嬉しい・ありがたいこと」を表す言葉です。 「幸いです」は 「自分にとって嬉しいことです」「〜であれば幸せになります」を意味します。 「幸いです」の使用場面としては、「何かをお願い・依頼する場合」・「贈り物をする場合、利益や便宜を提供する場合」になり、ビジネスメールで相手に何かを依頼するときに用いることが多いです。 「幸いです」を依頼をするときに使う場合は、「〜してくれるとありがたい」という意味になります。 「〜してください」と頼むよりも「〜していただけると幸いです」といった方が、柔らかい印象になります。 また「幸いに存じます」という言い方もできます。 「幸いに存じます」は「幸いです」と同じ意味ですが、「存じます」は「思う」の謙譲語のため「幸いです」よりも丁寧な表現になります。 他に「幸いと存じます」という言い方もありますが、「幸いに存じます」の方が一般的によく使われます。 「幸い」と「幸甚」では、「幸甚」の方がワングレード上の表現になります。 例文 ・ご都合の良いときに、ご確認いただけると幸いです。 ・心ばかりの品ではございますが、ご笑納いただければ幸いです。 ・お中元のご挨拶代わりに、お菓子の詰め合わせを送らせていただきました。 お口に合えば幸いです。 ですので、「ありがたい」は、相手からの好意に感謝する際に使います。 「ありがたい」は形容詞のため、「ありがたい+お言葉」「ありがたい+お気持ち」「ありがたい+お気遣い」といったように「ありがたい」の後に名詞を付けます。 さらにこの後に「感謝いたします」といった言葉を加えると気持ちをより強く伝えることができます。 ただ、「ありがたい」は少々相手を敬う気持ちが足りないので、相手によっては不快な・失礼な印象を与えてしまう可能性があります。 「ありがたい」を使うときは必ず「感謝しています」などと感謝を表す表現を一言添えましょう。 また「ありがたく存じます」という言い方もあります。 「ありがたく存じます」は「嬉しいです」「助かります」といった意味で、感謝や喜びを表す言葉です。 そのため、相手に何かしてもらったときの感謝を伝える際の丁寧な表現として使います。 「ありがたい」は、「幸甚」と「幸い」よりもやや丁寧さに欠ける表現です。 例文 ・ありがたいお言葉をいただき、誠に感謝申し上げます。 ・私の案を採用いただき、ありがたい感謝の気持ちで一杯です。 ・お土産ありがたく頂戴いたします。 「光栄」は感謝や嬉しく思う気持ちを伝えるときに多く使われます。 「光栄」の「栄」には、「輝く」「繁栄する」「活気がある」といった意味があります。 つまり「光栄です」は、自身の嬉しいことやありがたいことに対して使います。 また自身の行動や業績を褒められたときにも使う表現です。 「光栄です」は目上や目下、立場に関係なく名誉に思う気持ちを伝えるときに使うことができますが、目上の相手に使うことがほとんどで、目下の相手に使うことは少ないです。 例えば「お会いできて光栄です」という言い方がよく使われますが、これは相手と場合によっては間違った表現になります。 例として「総理にお会いすることができ光栄です」は「総理にお会いできたことは名誉に思う」という意味になるので適切な表現ですが、「君に会えて光栄です」だと少々大袈裟な表現になってしまいます。 このように「お会いできて光栄です」は会ったことを誇りに思うような人物に使い、単に会って嬉しい人物には使用しません。 他にも「光栄でございます」「光栄に存じます」と言うことができます。 「光栄です」は「幸甚です」に比べると、やや丁寧さに欠ける表現です。 例文 ・このような伝統のある舞台に出演できて大変光栄です。 ・このような素晴らしい賞を頂くことができとても光栄です。 ・お褒めに預かり、光栄に存じます。 助かります 「助かります」は 「相手の助力に対してありがたい・嬉しい」という意味になります。 「助かります」は、「何かをしてくれると助かる」という意味で依頼する時と、「何かしてくれて助かった」という意味でお礼する時に使う言葉で、「幸いです」よりもカジュアルな表現になります。 「助かります」を目上の相手に対して使うのは不適切になります。 理由としては「助ける」は「他人を補佐して,事がうまく運ぶようにすること」です。 つまり「相手が自分を助ける」という場合、自分が主で相手が補佐をいうことを表していることになるからです。 「助かります」は同等や目下の相手に対して使うのが適切になります。 例文 ・手伝っていただけると助かります。 ・明日までにお返事をいただけると助かります。 ・急な日程調整を快く引き受けてくださり、助かりました。 幸甚です 「幸甚です」は丁寧な表現で一般的にもよく使われます。 「幸甚です」と言うこともできますが、「幸甚であります」「幸甚でございます」と言うこともできます。 幸甚の至りです 「至り」の意味は 「ある物事が最高の状態に達していること」「極み」です。 「〜の至り」とした場合は「それが最高の状態であること」意味するので、 「幸甚の至り」は「幸せの極み」「幸せが最高の状態であること」を表します。 ビジネスシーンでは感謝の気持ちを表すときに使用することが多いです。 また、「幸甚の至りに存じます」という言い方もできます。 「幸甚です」や「幸甚に存じます」よりも、幸せであることを強調しています。 「幸甚に存じます」の英語 「幸甚に存じます」の英語表現を考えていきます。 していただけると幸甚に存じます」は、 ・It would be grateful if you would... ・I would appreciate it if you could... ・It would be much appreciated if you would... と表現します。 仮定法を使っています。 「もし... できたなら」「もし... していただけるなら」のように「if」の後に「would」「could」を使い現実可能を低く言うことで謙虚の表現になります。 かなり細かいですが、「would」より「could」の方がほんの少しだけ丁寧になります。
次のお褒めの言葉を頂いた際、「お役に立てて何よりです」と返したくなるような事はありませんでしたでしょうか。 褒めて頂いた際に「いえいえ」だけではなんとなく素っ気ない。 そんな時も丁寧に率直な言葉を敬語として返したいところです。 お友達同士であれば言葉遣いには丁寧に伝えられるように意識するのみで変に解釈されることはないでしょうが、目上の方から褒めて頂いた際は誠意をもって相手にしっかりとした敬語表現で伝えていきたいものです。 今回はそんな「お役に立てて何よりです」という言葉を敬語表現として伝えることができるのか、失礼に当たらない敬語なのかを細かく考えていきます。 文章を分けて考える 「お役に立てて何よりです」の敬語表現について考える際、「お役に立てて」と「何よりです」と言うように言葉を区切って考えていくことが大切となってきます。 この言葉のフレーズだけで考えては言い方を変える際もどのように変えるかの視野が限られてきてしまいます。 この言葉の場合は「お役に立てて」という部分が丁寧語かつ謙譲語でも通用する言い方でもあります。 「何よりです」という言葉は意味として「この上なく良かったまたは嬉しい気持ちを表す慣用語句」とされていて、安堵の気持ちや相手に最高に良かった事を伝えられる言葉になります。 「お役に立てて何よりです」の敬語での使い方 では実際に「お役に立てて何よりです」を敬語表現として使う方法について考えていきます。 丁寧語且つ謙譲語も兼ねているこちらのフレーズですが、どのように使う事ができるのかを適した場面等考えながら適した形に変えて相手に伝える必要があります。 相手に褒めて頂いた嬉しさや喜びを伝えるからには、しっかりと敬語として相手に伝わって欲しいものです。 そのためには敬語とは何なのかから考えながら最適な表現に文章を構築し直すことも大切となってきます。 敬語の種類からどのように変化することができるのかを考えていきましょう。 敬語の種類 敬語表現について考えている方であれば敬語の種類については既にご理解頂いている事でしょう。 ここではおさらいとして敬語には3種類あるという事から紹介して話を進めていきます。 敬語には3種類ある訳ですが、「丁寧語・尊敬語・謙譲語」と分かれています。 丁寧語は単語の初めに「お・ご」が付いたり語尾には「ですます」を付けたりして丁寧な言葉遣いで相手を尊重した言い方をする敬語を指します。 尊敬語と謙譲語は主語が誰に当たるのかで使い分けることができ、主語が相手の場合は尊敬語を使って相手を持ち上げた言葉遣いを使う事ができます。 対して謙譲語はこちら側が主語の場合に主語であるこちら側を謙遜させて下げることで実質相手の立場が上がる事で相手に尊敬を示すことができる言葉遣いになります。 使い方 では実際に「お役に立てて何よりです」を用いてどのように相手に伝えることができるかを例文として考えて場面別にも使えるようにしていきましょう。 お褒めの言葉を頂いたり評価を買っていただいた際は素直に「お役に立てて何よりです」と口頭で伝える分、特に失礼には当たらないのでそのままの敬語表現として使用することができます。 口頭であればそれだけでも失礼には当たりませんが、始めに相手をさりげなく上げる方法として「いえいえ」という言葉を用いた後に「お役に立てて何よりです」と謙遜して伝えることもできます。 嬉しく思います 「お役に立てて何よりです」というフレーズを少し変えて同じような言葉として相手に伝えられるものは他にもあります。 そこまで文章の形式を変えずに「お役に立てて」と「何よりです」と分けて考えることで「何よりです」と同じような意味を持つ言葉で言いかえる事もできます。 良い例がこの「嬉しく思います」という言葉です。 この言葉を使う事で素直に嬉しいという気持ちを「お役に立てて嬉しく思います」と言い表すことができ、意味として「お役に立てて何よりです」と同じ意味合いで相手に伝えることができます。 光栄です 「何よりです」という言葉が先ほども申し上げた通り「この上なく嬉しく思う事」という意味を持っていますので「光栄です」という言葉でも「とても嬉しいさま」を表すことができるので言い換えて表すこともできます。 「何よりです」は自分の心が嬉しいさまを相手に伝える際に用いられる言葉ですが、「光栄」の場合は「評価してくれたことに対してもったいないお言葉をありがとうございます」というような謙遜の意を込めた言い方としても相手に伝えることができます。 伝える際は「お役に立てて光栄です」でそのまま繋げる形で変にはなりません。 良かったです では単純に「良かったです」ではどうなのでしょうか。 「お役に立てて何よりです」の「何よりです」という部分を「良かったです」にすると印象はどう変わりますでしょうか。 「何よりです」は「この上なく良かった、又は嬉しい気持ちを表す慣用語句」です。 「良かったです」を用いて言い表すとするならば「この上なく良かったです」というものが直訳になります。 要は「お役に立てて何よりです」とは違い「お役に立てて良かったです」の場合は少し嬉しい気持ちが薄く感じられるほどの感情表現となってしまう事になってしまいます。 ここまで褒めてもらった際や評価してもらった時の謝意に対する返答を「お役に立てて何よりです」を用いて相手にどのように言い伝えることができるのかを考えてきました。 ここで「お役に立てて何よりです」という言い方ではなく同じような意味合いを持ちながら違った言い方で相手に伝えられるような言葉について紹介していきます。 言葉のレパートリーを広く知る事で適した言葉の表現を見つけやすくなり必然的にコミュニケーション力が高まっていきます。 「お役に立てて何よりです」以外にはどのような言葉の表現があるのか、一緒に考えていきましょう。 「お力になれて」 先程少し触れていきましたが光栄という言葉を用いて、「多少なりともお力になれて光栄です」と言うように言いかえる事もできます。 「お役に立てて」を言い換えて「多少なりともお力になれて」と言い換えています。 どういう風に役に立てたのかを「力」として表現することで「お力添えできて」という言い方もできます。 その場合も「お力添えできて光栄です」と一緒に協力できて嬉しいと言うニュアンスも濃く含めて相手に謝意への返答をすることができます。 「お役に立てて何よりです」と少し違う所では同じ作業をしたというようなニュアンスを「お力になれて」という表現には濃く含まれているという事です。 嬉しいの敬語 「お役に立てて何よりです」は敬語表現として失礼には当たりませんが、「嬉しいです」は丁寧語でありますが尊敬語でも謙譲語でもないので実は敬語としては不十分な言葉として相手に受け取られてしまいます。 ではどのようにして「嬉しい」という気持ちを敬語で表すのか、それは「喜ばしい」という言葉になります。 但し、喜ばしいのは相手から受けた行為に感謝している様で動詞という事になります。 「限り」という言葉を「喜ばしい」には使えなくなってしまうので注意が必要です。 「お役に立てて何よりです」を相手にしっかり伝える.
次の「役に立つ」とは、使って効果がある、有用である、という意味です。 物が何かの役に立つことのほかにも、言動など形のないものも誰かの助けになれば「役に立った」と表現することができます。 単純に丁寧な言い方をするなら、「お役に立つ」という敬語が一般的ですが、「何(誰)」が「何(誰)」に「役に立った」のかによって敬語の用い方が大きく変わることご存知でしょうか。 敬語の種類とは? 敬語には、相手を立てて表現する尊敬語、自分がへりくだる謙譲語、ものごとを丁寧に表す丁寧語があります。 「お役に立つ」は丁寧語です。 相手が目上の人の場合、状況によって尊敬語と謙譲語を使い分ける必要がありますが、このとき主語が相手なら尊敬語、主語が自分なら謙譲語を用いるのが一般的です。 「役に立つ」を敬語表現する場合も、主語が何なのか、つまり「何が役に立つのか」を考えることで正しい敬語表現を理解しやすくなります。 「役に立つ」と「役立てる」の違いは? 役に立つのが自分の場合 春、新入社員として自己紹介をするときは、意気込みや決意を同僚や上司に伝えられる絶好の機会です。 その時の気持ちこそ「役に立ちたい」ですから、敬語を使って上手に伝えたいところです。 「一日も早くお役に立てるよう誠心誠意努力いたす所存です」や、もう少しくだけた言い方で「皆さんのお役に立てるよう精いっぱい頑張ります」という言い方もよいでしょう。 また、実際に自分が役に立ったと感じた場合は、「お役に立てれば幸いです」と表現するとよいでしょう。 このとき「お役に立ててよかったです」としてしまうと、役に立ったかどうかの判断を先に自分がしていることになるので失礼にあたる可能性があります。 自分が主語になるときは、有用であったかどうかの判断は相手に委ね、「役に立つとうれしい」という気持ちを伝えるようにしましょう。 役に立つのが物の場合 役立つものを主語にして表現する場合は、自動詞「役に立つ」「役立つ」を使います。 たとえば先方に贈り物をした時に「(贈ったものが)何かのお役に立てばと思いまして」、「お役に立てれば幸いです」と表現します。 役に立つものを使う相手を主語にする場合は少々複雑ですが、他動詞「役立てる」を使います。 「役立たせていただく」は正しいか? ここまでで、主語が何かによって「役に立つ」と「役立てる」を使い分けることがわかってきました。 では、「お寄せいただいたご意見を今後の活動に役立たせていただきます」という表現は正しいでしょうか。 この文では、役に立つものは「意見」でありそれを役立つようさせているのが主語に当たる人物です。 この場合は他動詞を使いますから「役立てる」が適切な動詞です。 「役立たせていただく」の「~させていただく」は一見、敬語表現のように思えますが、ここでは「意見を役に立つようにさせる」ということなので「~させる」は使役です。 「役立てる」の使役は「役立てさせる」ですから、この場合「ご意見を役立てさせていただきます」が適切な敬語表現です。 書き言葉としての「役に立つ」は? 「役に立つ」の反対語である「役に立たない」をビジネスシーンで使う場合について考えてみましょう。 言葉の意味で考えると「役立たず」「能がない」「無用の」ということですから、これらを目上の人に対して使うことはほとんどありません。 使うとすれば自分の力が足りず役に立てなかったとき、そのことで相手に迷惑をかけたり落胆させてしまった場面が考えられます。 「お役に立てず申し訳ありません」という言葉はよく耳にします。 期待に応えられないことを謝罪すると同時に、応えたかったができなかったと残念に思う気持ちが伝わるよい表現です。 ただし、相手の要望が見当違いであったり、もともと期待に応えることができない内容の要望をお断りするときにも使われる表現です。 自分のミスが原因で相手に迷惑をかけたことが明らかな場合は不適切ですので注意しましょう。 「役に立つ」を目上の人に使ってよいか? たとえ上司や取引先の相手の言葉や行いが自分の役に立ったとしても、目上の相手に「役に立った」とストレートに伝えるのは好ましくありません。 目上の人の言動をこちらが評価するような印象を与えてしまい失礼と捉えられかねません。 「先輩に教えてもらった情報が役に立った」と伝えたいなら、「アドバイスをしてくださったおかげでとても助かりました」など、役に立ったという言葉を使わずに表現するとよいでしょう。 逆に後輩から助けてもらって感謝したい時であっても、「役に立ったよ」という言葉の代わりに「力を貸してくれてありがとう」や「勉強になったよ」と伝えると、上下関係を感じさせることなく気持ちが伝わります。 また、さきほど触れた「お役に立てば幸いです」という表現は、相手が目上の人であっても自分の貢献を謙虚に伝えられて便利です。 あくまでも役に立ったかどうかは目上の人の判断に任せましょう。 「役に立つ」の敬語表現を使いこなしましょう 「役に立つ」ということを伝えたいシチュエーションにおいて、気持ちを伝えるために他の表現を使うこともできます。 自分の努力や仕事が役に立ったという場合や、逆に誰かの言動が自分の役に立った場合に使うことのできる表現を、それぞれ紹介します。 自分の努力は「尽力」でアピール 尽力とは、あることを成し遂げるため力を尽くして努力することを指す言葉です。 これはまさに誰かの役に立ちたいという気持ちに即した言葉ですから、「役に立つ」を言い換える言葉として最適ですので使い方をマスターしておきたいところです。 努力します、という表現の努力を尽力に置き換えるだけで、努力以上の全身全霊をこめた頑張りを相手に伝えることができます。 「今後さらに尽力して参る所存です」という表現には、単に「努力します」と言うよりも相手の役に立ちたいという気持ちがより籠められています。 「尽力」の「尽」にはすでに尽くすという意味が備わっていますので、「尽力を尽くす」という言い方は誤りなので注意しましょう・ 「ご尽力」とすれば敬語になる また、尽力という単語に「ご」とつけて丁寧語にすれば敬語表現となり、目上の人にも使えるようになります。 相手がしてくれる努力を「ご尽力」と表現することにより、「役に立つ」を使えない場合でも感謝の気持ちを伝えられます。 「この度は多大なご尽力を賜り心から感謝申し上げます」と言うことで、「あなたのしてくれたことが役に立って助かった」ということを失礼なく伝えることができます。 「役に立つ」がストレートに目上の人には使えないことは前述しましたが、この言い方であれば何の問題もありません。 相手の努力は「お力添え」で感謝 相手のしてくれたことがこちらの役に立った場合は「お力添え」という言葉を使いましょう。 力添えとは、「助け」「支援」を敬語にした言葉です。 相手にしてもらった恩義に感謝するときに適した言葉です。 また、「お力添え」は相手に手助けを求めたいときにも使えます。 「あなたに役立ってもらいたい」とは到底言えませんが、「お力添えをいただければ幸いです」と表現すれば、手助けを乞いたい気持ちを目上の人にも伝えることが可能です。 役立ってほしいときに使える「お力添え」 目上の人に、その経験と見識を頼って助けてもらいたいときもあるでしょう。 助けを求めたいときにも使えるのが「お力添え」です。 「ぜひお力添えいただきたくお願い申し上げます」など、目上の人に依頼するかたちでも用いることができる言葉ですので、積極的に使っていきたいところです。 「力添え」は自分の言動には使わない ただし、自分のした努力を「力添え」としてはいけません。 力添えはあくまで他人がしてくれた努力に対し尊敬の気持ちを含ませる表現です。 「微力ながらお力添えさせていただきます」とは言わずに「微力ながら尽力させていただきます」と言いましょう。 自分の努力は「尽力」です。 誰かの「役に立ちたい」気持ちを大切に ここまで「役に立つ」という言葉をビジネスシーンで敬語として表現する方法やシチュエーションを考えてきました。 「役に立つ」ということがコミュニケーションにおいては「努力すること」や「助けになること」であることがわかってきました。 人は誰しも誰かの役に立てれば嬉しく思い、何かが役に立てば助かったと感謝します。 その気持ちをふさわしい場面でふさわしい言葉で表現できれば、気持ちよく過ごすことができます。 言葉は正しく用いなれば時に誤解を生むこともありますが、たとえ正しくても気持ちがこもらなければ空虚なものになってしまいます。 誰かのために尽力し、いただいたお力添えに感謝しながら、ここで紹介したフレーズがお役に立てば幸いに存じます。
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