オープン イノベーション 税制。 「オープン・イノベーション促進税制」創設・税優遇 社外の力で革新 企業の成長後押し

オープンイノベーション促進税制について②

オープン イノベーション 税制

経済活動の高度化、グローバル化にともなう急速な環境の変化、製品サイクルの短命化等により、企業に求められる技術革新および新製品やサービスの開発は、その企業財政の大きな負担となっています。 とりわけ我が国の企業は、諸外国のそれらに比べ、自社単独で研究開発を行うことが多く、スタートアップ企業との連携も欧米諸国に比べ活用されていないのが現状です。 今後は、外部の企業や教育機関と協力し、研究開発を行うオープンイノベーションを効果的に行っていくことが求められています。 このような状況を踏まえ、企業が積極的にスタートアップ企業等との共同開発を進めることを容易にするため、2020(令和2)年度税制改正により、オープンイノベーション税制が新設されました。 新たに制度化される5G投資税制とともに、日本の技術力、競争力強化を狙った2020年度税制改正における目玉の改正となっています。 2 税制の対象となる法人 対象となる法人(投資する側)は、特定事業活動を行う青色申告法人となります。 なお、「特定事業活動」とは、自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行うこと、および新たな事業の開拓を行うことをいいます。 また、対象となる一定のベンチャー法人等(投資対象)とは、「特別新事業開拓事業者」と定義され、産業競争力強化法の新事業開拓者のうち特定事業活動に資する事業を行う非上場法人で、対象法人や他の企業グループに属していない法人をいいます。 ただし、既に事業を開始しており、設立10年未満のものに限定されます。 3 対象となる株式 その特別新事業開拓事業者の株式(図表2)としての要件を満たし、経済産業大臣の証明を受けたものがオープンイノベーション税制の対象株式(以下「特定株式」といいます)となり、出資額を限度に25%まで損金に算入することができます。 オープンイノベーション税制の最大の魅力は、事業会社で研究開発を行っている企業が、他社との研究開発および協業をスムーズ行うことができることにあります(図表4)。 具体的には、ベンチャー企業等資金力が十分でない企業は、技術力をもとに投資を呼び込みやすくなり、より効果的な研究開発を行うことができるようになります。 資金力が豊富な大企業とタッグを組めば、研究開発のスピードを上げることもできます。 そして、いち早く製品化に成功すれば大きな成果を得ることができ、それがさらなる製品開発、企業発展につながります。 また、投資する側の対象法人にとっても、将来どの程度費用が膨大化するかわからない研究開発について、出資額を限度に、間接的にはなりますが、研究開発を行うことができることになります。 出資を行う事業会社等には中小企業も含まれます。 中小企業の場合、新製品開発に必要な技術・ノウハウや人材に関して、大企業に比べると弱い会社もあるでしょう。 その点、このオープンイノベーション税制を活用してベンチャー企業に出資をすれば、自社の弱点を補完することができます。 中小企業にとっても、革新的な技術を有するベンチャー企業とのオープンイノベーションは、将来の企業発展の面から非常に重要といえます。 出資を行う対象法人、出資されるベンチャー企業等の両社にとって、5年間の継続投資、継続研究が今後の展開における判断の目途になるのではないかと思われます。 対象法人にとっては、5年間継続投資を行わない場合は損金算入した金額について益金に算入する必要があるため、5年間はサポートする姿勢が求められることになるでしょう。

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オープンイノベーション促進税制について①

オープン イノベーション 税制

2020年与党税制改正大綱に新たに創設された「オープンイノベーション促進税制(以下OI促進税制)」のガイドラインが5月25日、経済産業省のホームページにて公開されました。 前回の記事ではOI促進税制の概要をお伝えしましたが、本記事では実際にどのような企業が要件に該当するのか、どのように手続きすればよいか、といったディテールをガイドラインからピックアップして紹介します。 それほど複雑な内容ではありませんので、OI促進税制に関心があるならばチェックしておいて損はありません。 関連記事: 【おさらい】オープンイノベーション促進税制の概要 はじめにOI促進税制とはなんなのか、おさらいしておきます。 まず、OI促進税制はいくつかの課題を解決するために創設されています。 ひとつは「大企業がため込んだお金をキャッシュアウトを促す狙い」です。 大企業は収益を拡大していても賃上げや投資にキャッシュがまわっておらず溜め込んでしまっています。 2018年度の内部留保(利益剰余金)は金融業・保険業を除いて463兆円と、7年連続で過去最大にのぼっていることからも、大企業の溜め込んだお金をキャッシュアウトさせること重要になることがわかります。 次に、「国内企業の自前主義」の課題があります。 経済産業省が公開したデータでは、「オープンイノベーションの実施率」が欧米企業が78%なのに対して、日本企業は47%にとどまっています。 出典: 経産省はOI促進税制によってオープンイノベーションの実施率を欧米並みに引き上げたい狙いがあるのです。 最後に「中小企業のベンチャー出資の効果を最大化」することもOI促進税制の目的となっています。 中小企業のベンチャー投資は中央値675万円と低く、イノベーションを起こすには金額不足です。 そこを活性化させることもイノベーションの土壌を整備するためには必要なのです。 以上がザックリとしたOI促進税制の概要となります。 ガイドラインで記されているのは要件と手続きの方法です。 投資事業有限責任組合(LPS)のうち a. 対象法人の国内完全子会社が無限責任組合員(GP)であるもの b. 対象法人が単独の有限責任組合員(LP)であるもの 2. ひとことでCVCと言っても、「対象法人の国内完全子会社が無限責任組合員(GP)であるもの」なのか「対象法人が単独の有限責任組合員(LP)であるもの」なのか「民法上の組合」なのかでOI促進税制の対象となる要件が変化します。 自社がどこに当てはまるのか、ガイドラインとしっかり照らし合わせておきましょう。 なお、「中小企業の定義」についても、この章で言及されています。 租税特別措置法で規定される「中小企業者」「中小連結法人」がOI促進税制においても中小企業の定義となります。 株式会社 2. 既に事業を開始している 5. 対象法人とのオープンイノベーションを行っている又は行う予定 6. 一つの法人グループが株式の過半数を有していない 7. 法人以外の者(LPS、民法上の組合、個人等)が3分の1超の株式を有している 8. なお、経済産業省が個別にスタートアップ企業を認定することはありません。 特に注意が必要なのは6と7です。 OI促進税制や、多くの出資を受けていないスタートアップを支援する狙いがありますから、すでに多くの出資を受けている場合、対象外となるケースがあります。 出資要件は以下の通りです。 資本金の増加を伴う現金による出資であること 2. オープンイノベーションに向けた取組の一環で行われる出資であること 4. 取得株式の5年以上の保有を予定していること 5. 純出資等を目的とする出資ではないこと なお、1件あたりの上限額は25億円、かつ一事業年度内あたり125億円までとなっています。 ただし、すでに株式保有50%を超えている場合の追加出資は対象外です。 出典: また、出資要件の章では「オープンイノベーション要件」も定められています。 出資することで、ちゃんとオープンイノベーションを目指しているかどうかも審査されます。 オープンイノベーション要件は以下の通りです。 対象法人が、高い生産性が見込まれる事業または新たな事業の開拓を目指した事業活動を行うこと 2. 1の事業活動において活用するスタートアップ企業の経営資源が、対象法人にとって不足するもの、かつ革新的なものであること 3. 1の事業活動の実施にあたり、対象法人からスタートアップ企業にも必要な協力を行い、その協力がスタートアップ企業の成長に貢献するものであること これらのオープンイノベーション要件、かなりフワっとした印象だと感じるかもしれません。 そのため、ガイドラインにも具体例がいくつも列挙されています。 読んでみると何が対象で何が対象外なのかイメージが湧いてくるはずです。 要するに、出資しても「いままでの事業の延長」だったり「出資と事業が関係ない」といった場合ではOI促進税制の対象として認められないのです。 対象法人要件 2. スタートアップ企業要件 3. 出資要件 を満たした、対象法人によるスタートアップ企業への出資については、その取得したスタートアップ企業の株式の取得価額の25%を、出資を行った年度の所得から控除(損金算入)することができます。 税制の適用を受けるための手続きフローは以下のチャートが完結にまとめています。 出典: 提出書類については、原則として経済産業大臣の定める様式以上の書類は必要ありません。 また所得控除を受けるために特別勘定を設ける方法により経理する必要があります。 詳しい経理方法はガイドラインの32pで確認できます。 その他の注意事項としては、様々な事情から出資先でオープンイノベーションの継続が確認できなくなる場合には、速やかに経済産業省に連絡しなくてはなりません。 例えば一部売却後に特別勘定の取崩しが行われる場合、一部売却後に特別勘定の取崩しが行われない場合などが該当します。 【編集後記】OI促進税制の経営者層への認知拡大が重要 出資をする側も出資を受ける側も、そもそもこのOI促進税制を知らなければ控除を受けることができません。 そのため、制度自体が広く認知される必要がありますが、やはりキモになるのは経営者層がこの制度を理解するかどうかです。 大企業で1億円以上、中小企業で1000万円以上というハードルがあるため、どうしても現場の社員の一存では決めきれないことが多くなるでしょう。 まずは現場の社員がOI促進税制を理解したうえで、OI実施に向けて経営者を説得できるかがキーと言えます。 (eiicon編集部) チェックコメント.

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「オープンイノベーション促進税制」のガイドライン公開!対象法人など要点を解説|eiiconlab 事業を活性化するメディア

オープン イノベーション 税制

2020年与党税制改正大綱に新たに創設された「オープンイノベーション促進税制(以下OI促進税制)」のガイドラインが5月25日、経済産業省のホームページにて公開されました。 前回の記事ではOI促進税制の概要をお伝えしましたが、本記事では実際にどのような企業が要件に該当するのか、どのように手続きすればよいか、といったディテールをガイドラインからピックアップして紹介します。 それほど複雑な内容ではありませんので、OI促進税制に関心があるならばチェックしておいて損はありません。 関連記事: 【おさらい】オープンイノベーション促進税制の概要 はじめにOI促進税制とはなんなのか、おさらいしておきます。 まず、OI促進税制はいくつかの課題を解決するために創設されています。 ひとつは「大企業がため込んだお金をキャッシュアウトを促す狙い」です。 大企業は収益を拡大していても賃上げや投資にキャッシュがまわっておらず溜め込んでしまっています。 2018年度の内部留保(利益剰余金)は金融業・保険業を除いて463兆円と、7年連続で過去最大にのぼっていることからも、大企業の溜め込んだお金をキャッシュアウトさせること重要になることがわかります。 次に、「国内企業の自前主義」の課題があります。 経済産業省が公開したデータでは、「オープンイノベーションの実施率」が欧米企業が78%なのに対して、日本企業は47%にとどまっています。 出典: 経産省はOI促進税制によってオープンイノベーションの実施率を欧米並みに引き上げたい狙いがあるのです。 最後に「中小企業のベンチャー出資の効果を最大化」することもOI促進税制の目的となっています。 中小企業のベンチャー投資は中央値675万円と低く、イノベーションを起こすには金額不足です。 そこを活性化させることもイノベーションの土壌を整備するためには必要なのです。 以上がザックリとしたOI促進税制の概要となります。 ガイドラインで記されているのは要件と手続きの方法です。 投資事業有限責任組合(LPS)のうち a. 対象法人の国内完全子会社が無限責任組合員(GP)であるもの b. 対象法人が単独の有限責任組合員(LP)であるもの 2. ひとことでCVCと言っても、「対象法人の国内完全子会社が無限責任組合員(GP)であるもの」なのか「対象法人が単独の有限責任組合員(LP)であるもの」なのか「民法上の組合」なのかでOI促進税制の対象となる要件が変化します。 自社がどこに当てはまるのか、ガイドラインとしっかり照らし合わせておきましょう。 なお、「中小企業の定義」についても、この章で言及されています。 租税特別措置法で規定される「中小企業者」「中小連結法人」がOI促進税制においても中小企業の定義となります。 株式会社 2. 既に事業を開始している 5. 対象法人とのオープンイノベーションを行っている又は行う予定 6. 一つの法人グループが株式の過半数を有していない 7. 法人以外の者(LPS、民法上の組合、個人等)が3分の1超の株式を有している 8. なお、経済産業省が個別にスタートアップ企業を認定することはありません。 特に注意が必要なのは6と7です。 OI促進税制や、多くの出資を受けていないスタートアップを支援する狙いがありますから、すでに多くの出資を受けている場合、対象外となるケースがあります。 出資要件は以下の通りです。 資本金の増加を伴う現金による出資であること 2. オープンイノベーションに向けた取組の一環で行われる出資であること 4. 取得株式の5年以上の保有を予定していること 5. 純出資等を目的とする出資ではないこと なお、1件あたりの上限額は25億円、かつ一事業年度内あたり125億円までとなっています。 ただし、すでに株式保有50%を超えている場合の追加出資は対象外です。 出典: また、出資要件の章では「オープンイノベーション要件」も定められています。 出資することで、ちゃんとオープンイノベーションを目指しているかどうかも審査されます。 オープンイノベーション要件は以下の通りです。 対象法人が、高い生産性が見込まれる事業または新たな事業の開拓を目指した事業活動を行うこと 2. 1の事業活動において活用するスタートアップ企業の経営資源が、対象法人にとって不足するもの、かつ革新的なものであること 3. 1の事業活動の実施にあたり、対象法人からスタートアップ企業にも必要な協力を行い、その協力がスタートアップ企業の成長に貢献するものであること これらのオープンイノベーション要件、かなりフワっとした印象だと感じるかもしれません。 そのため、ガイドラインにも具体例がいくつも列挙されています。 読んでみると何が対象で何が対象外なのかイメージが湧いてくるはずです。 要するに、出資しても「いままでの事業の延長」だったり「出資と事業が関係ない」といった場合ではOI促進税制の対象として認められないのです。 対象法人要件 2. スタートアップ企業要件 3. 出資要件 を満たした、対象法人によるスタートアップ企業への出資については、その取得したスタートアップ企業の株式の取得価額の25%を、出資を行った年度の所得から控除(損金算入)することができます。 税制の適用を受けるための手続きフローは以下のチャートが完結にまとめています。 出典: 提出書類については、原則として経済産業大臣の定める様式以上の書類は必要ありません。 また所得控除を受けるために特別勘定を設ける方法により経理する必要があります。 詳しい経理方法はガイドラインの32pで確認できます。 その他の注意事項としては、様々な事情から出資先でオープンイノベーションの継続が確認できなくなる場合には、速やかに経済産業省に連絡しなくてはなりません。 例えば一部売却後に特別勘定の取崩しが行われる場合、一部売却後に特別勘定の取崩しが行われない場合などが該当します。 【編集後記】OI促進税制の経営者層への認知拡大が重要 出資をする側も出資を受ける側も、そもそもこのOI促進税制を知らなければ控除を受けることができません。 そのため、制度自体が広く認知される必要がありますが、やはりキモになるのは経営者層がこの制度を理解するかどうかです。 大企業で1億円以上、中小企業で1000万円以上というハードルがあるため、どうしても現場の社員の一存では決めきれないことが多くなるでしょう。 まずは現場の社員がOI促進税制を理解したうえで、OI実施に向けて経営者を説得できるかがキーと言えます。 (eiicon編集部) チェックコメント.

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