「お忙しいところ」の使用する場面 《1》お願いをするとき 最も多く「お忙しいところ」が使われる場面としては、お願いをするときになります。 「お忙しいところ」の使い方としては、 ・お忙しいところ申し訳ございませんが ・お忙しいところ恐縮ですが、恐縮でございますが ・お忙しいところとは存じますが ・お忙しいところお手数おかけいたしますが といったようになります。 「お忙しいところ」は クッション言葉です。 相手に手間をかけ、時間を費やしてくれたことに対して申し訳なく思う気持ち・謙虚な気持ちを「お忙しいところ」を使うことによって表すことができます。 ビジネスメールで「お忙しいところ」を使う場合は、「相手に質問の返答を頼む・相手の負荷になることをお願いするとき」です。 例えば、添付した資料の確認を求めるときには、「お忙しいところ恐縮ではありますが、添付させていただいた資料のご確認のほどよろしくお願いいたします」と言います。 ビジネスメールの多くは、相手に何らかの要求をする内容になります。 なので自然と「お忙しいところ大変申し訳ございませんが」というフレーズを多用することになります。 《2》お礼をするとき 「お忙しいところ」は感謝の意を伝えるときにも使うことができます。 使い方としては、 ・お忙しいところご足労頂き恐れ入ります。 ・お忙しいところにも関わらず、御配慮いただきありがとうございます。 ・お忙しいところ、お手数おかけして申し訳ありませんでした。 ・お忙しいところありがとうございます。 といったようになります。 「お忙しいにも関わらず〜してくれてありがとうございます」といった意味で、忙しい中自分のために時間を費やしてくれたことに対しての感謝を表しています。 「お忙しいところ」の例文 「お忙しいところ」の例文を紹介します。 <お願いをするとき> ・お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認のうえ、折り返しご連絡をお願いいたします。 ・お忙しいところ大変恐縮ではございますが、何卒よろしくお願いいたします。 ・お忙しいところとは存じますが、ご確認のほどよろしくお願い申し上げます。 ・お忙しいところ恐れ入ります。 少々お時間の方、よろしいでしょうか? ・お忙しいところ申し訳ございませんが、お返事頂ければ幸いです。 ・お忙しいとは存じますが、ぜひお越しくださいますようお願い申し上げます。 ・お忙しいところ恐れ入りますが、アンケートの返信をよろしくお願いいたします。 <お礼をするとき> ・皆さま本日はお忙しいところ、お集まりいただいて、誠にありがとうございます。 ・先ほどはお忙しいところ、お付き合い頂きありがとうございました。 ・お忙しいところ、ご丁寧にお答えいただき誠にありがとうございます。 ・お忙しいところ手を貸していただけて本当に助かりました。 ・お忙しいところ丁寧にご教授下さって、誠にお礼申し上げます。 「お忙しいところ」の類語 クッション言葉はいくつか覚えておくと、ビジネスシーンでも使えます。 「お忙しいところ」の類語として覚えておきたいのは「ご多忙」と「ご多用」の二つです。 二つとも忙しさを表す敬語表現であり、「お忙しいところ」と置き換えて使うことができます。 「ご多用」 まず「多用」の意味は、 「用事の多いこと・忙しいこと」です。 それに尊敬を表す接頭語「ご」をつけて「ご多用」となります。 「ご多用」は 「目上の人が用事が多くて忙しくされていること」を表しています。 「ご多用は」の使い方としては、 ・要望を出したり依頼をするとき ・感謝の意を伝えるとき になります。 「ご多用中恐れ入りますが〜」といったように、誰かにお願い事をするときに使います。 「用事が多くて忙しいときに悪いですが」という謙虚さを伝えた後に、本題に入るための言葉です。 「ご多用にも関わらず〜」といった形だと、相手に感謝の気持ちを強く述べることができます。 ・ご多用の折ですが、何卒ご参加くださいますようお願い申し上げます。 「ご多忙」 まず「多忙」の意味は、 「事が多くて忙しいこと」です。 それに尊敬を表す接頭語「ご」をつけて、「ご多忙」になります。 「ご多忙」は 「目上の人が何かと忙しくしている様子」を表しています。 「ご多忙」も「ご多用」とほぼ同じ意味で、使われる場面も一緒ですが、「ご多忙」は結婚式や葬儀の場での挨拶には相応しくありません。 理由としては、「ご多忙」の「忙」という文字が、「りっしんべん」+「亡」で構成されていて、「忙しくて心を失う」という意味になり縁起が悪いとされているからです。 こういった理由で「ご多忙」が使われないことが多いですが、ビジネスシーンでは頻繁に使われる言葉になります。 ・先日はご多忙中にもかかわらずご親切にご案内くださいまして、誠にありがとうございました。 「お忙しいところ」を使う際の注意点 「お忙しいところ」を使う際には注意しなければならない点があります。 そのようなことにならないためにも、同意義の言葉をいくつか知っておき、表現を変えて使うことが良いでしょう。 つまり「お忙しいところ〜」は本来の意味と違い、 相手が暇そうな場合でも使える言葉です。 この人は今、暇そうだから「お忙しいところ~」は使えない。 あの人は今は忙しそうだから「お忙しいところ~」を絶対に使うべき。 とか、そういった使い分けは必要ありません。 相手が誰であろうと「お忙しいところ~」は使うことができます。 しかし、どう見ても相手が時間に余裕があることが明らかな場合に、「お忙しいところ」を使うとかえって嫌味に聞こえてしまいます。 そのような場面ではなるべく使用するのは控えましょう。 ですので、その後に時間を要するようなお願いごとを要求をするのは失礼にあたるため、避けた方が無難です。 例えば、ビジネスメールで「お忙しいところとは存じますが、お早めのご返信をいただければ幸いです」と伝えたり、具体的な返信期日を伝えるのは失礼に当たります。 自分の都合に合わせるように指図することは望ましくありません。 なるべく相手に合わせるようにしましょう。 また「このメールへの返信は必要ありません」という書き方も、相手の行動を制限していることになるのでし避けた方が良いでしょう。
次の「ご足労いただき」はビジネスメールで使っても大丈夫? 「ご足労いただき」は口頭だけではなく メールでも使用可能です。 取引先と会う約束をするときや会ってくれたことに対して、メールでお礼を述べる際に使うことができます。 「ご足労いただき」を使った例文 ここからは「ご足労いただき」をビジネスシーンで使う場合の例文をご紹介します。 相手との関係や来てくれた日の天候など、 相手を迎えたときの状況に合わせた使い方を確認しましょう。 「ご足労いただき」の基本の形として、口頭でもメールでも使用可能です。 訪問したシチュエーションに合わせて前後の言葉を変えて表現できます。 」 天気が悪い日の訪問に「お足元の悪い中~」という表現もありますが、【足の状態が悪い人に対しての差別表現】と受け取られる恐れがあります。 こういう場合は言い換え表現として「ご足労」を使用しましょう。 相手に出向いてもらうことを前もってお詫びするときに使用します。 」 「ご足労いただき申し訳ございません」はあまり使われない表現 「ご足労いただき」は訪問してもらったことを丁寧に表現した言葉ですが、あまり一般的な言葉ではありません。 来てもらったことに対してお詫びを強調するのであれば、 「ご足労いただき」よりも「ご足労おかけして」とするのが適切です。 相手が遠いところからきた場合や雨や雪の日などの天候が悪い日など、出向くのに一苦労するときにこそ、来てくれた相手に使用するのが適切です。 ・Thank you for your struggle the other day. ・Despite being far away, I am deeply grateful for your struggle. ・I am sorry to have made struggle, but thank you for your consideration. ・I am sorry to disturb you while busy, but I sincerely hope for your hard work.
次の「 ご多用」とは? 「やるべきことが多くて忙しい状態」の尊敬語 「ご多用」は、尊敬語「ご」と用事がたくさんあるという意味の名詞「多用」から構成される敬語です。 上司や目上の人、取引先の「しなくてはならないことが多くて忙しい状態」を敬って使う言葉です。 「ご多用のところ恐縮ですが・・・」のあとに要件を記載して使います。 「ご多用のところ」、「ご多用の中」などのあとに、更に丁寧な前置きの言葉「恐縮」、「おそれいります」などを使って要件を伝える正しい敬語表現です。 しかも「ご多用」の次に続く要件には、頼み事や依頼ばかりではなく、お礼・感謝を申し添えたり、場合によってはお詫びなどにも使うことができます。 「ご多用のところ恐れ入りますが」は簡単にいうと「お忙しいところ恐れ入りますが」の意味で、上司や目上の方を敬ったメールやビジネス文書などで敬語表現として使います。 「ご多用」は相手の忙しい事情や心情をくみ取って、「お忙しいのに申し訳ない」という気持ちを表しつつ、何か「頼み事」をするときに良く使われる便利な敬語表現です。 また、相手の行為や言動に対し、実際に忙しいかどうかは別にして、儀礼的に「ご多用中にもかかわらず、ご支援いただき、ありがとうございます」などとお礼を述べるときにも使います。 なお、「ご多用」は文書や手紙・メールなどで用いられますが、会話で使う事は殆どありません。 「ご多用」の趣旨を声で伝えるとしたら意味の違いのない「お忙しいところ」、「お忙しい中」を使って話すのが一般的です。 「依頼・お願い」、あるいは「お礼・感謝」を目的として「ご多用」を使うとき、後に続く言葉には様々な言い方があります。 効果的な「ご多用」の使い方と、その後に続く言葉の事例を次に示します。 「ご多用」の類語は「ご多忙」で、両方の言葉の意味については大きな違いはありません。 「用」はなすべきことを意味し、「忙」は平静な心を失ってあわただしい、いそがしいことを意味します。 「(ご)多用」は私用、公用の区別がなく用事がたくさんあって忙しいことを指します。 一方、「(ご)多忙」はこの言葉を使う相手が医者であれば診療や手術で忙しい、学生であれば勉強で忙しいと考えることできます。 このことからビジネス上で「ご多忙」を使うときには基本的には「仕事」でとても忙しいと解釈できるのです。 なお、「多忙」の「忙」には、「亡くす、失う」の意味があり、慶弔にかかわる事柄に「ご多忙」を使うのを嫌う方がおられますので気を付けましょう。 「ご多用」と「ご多忙」の同じような文章の敬語表現例文を次に示します。 前述の通り大きな意味の違いはありません。 例文はビジネス文書、メールでも使うことができます。 【例文】お願い・依頼 ・ ご多用の折(ご多忙の折)、大変恐れ入りますが、ご検討のほど何卒よろしくお願いいたします。 【例文】お礼・感謝 ・ ご多用中(ご多忙中)にも関わらず、講演会にご出席いただき誠にありがとうございました。 「ご多用」も「ご多忙」も使い方に違いはありませんが、「忙」を嫌う方がいらっしゃいますので、結婚式等で「お忙しい中」とは使わないように注意しましょう。 「ご多忙の折」と「ご多忙中」の意味に違いはなく、次に続く言葉で意図が「依頼」か「感謝」なのかが違うだけです。 また、「ご多用の折」と「ご多用中」も同じです。 ・比較的対等な立場での取引先への催促 【例文】ご多用中とは存じますが、先般、電話にてご連絡申し上げました〇〇代金請求書を今週末〇月〇日までにご郵送くださいますようお願いいたします。 ・お詫びを言いつつお願い・依頼 【例文】(依頼事項記載)~の件、ご多用のところ、大変申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。 ・よく使う一般的なお願い 【例文】ご多用のところ恐縮です。 折り返しお電話をいただきたくお願い申し上げます。 ・取引先等への展示会ご案内事例 【例文】メールにて失礼いたします。 ご多用のところ大変恐縮ですが、来る〇月〇日「国際〇〇会場」にて開催予定の弊社展示会にお越しいただきたくご案内申し上げます。 「ご多用」を使って、上司や目上の方に対し敬語表現をする場合には次の二点に留意しなければなりません。 ・ よく知っている上司や目上の方 ・ 上司や目上でも親密度が薄い幹部など 親密度や接触の程度が異なった上司や目上の方を、同一に扱うことはビジネス上得策ではありません。 日常的に頻繁に接触し指示を仰ぐ上司や目上の人に対し、格式の高い敬語表現を用いると円滑なコミュニケーションに齟齬(そご)をきたすときもあります。 一方、親密度が薄い幹部に対しては、それなりに礼を尽くした敬語表現が必要となります。 格式のある敬語として「ご多用」を使わなければならない場合と、指示・回答のスピードが重要視される場合との違いを把握し上手に使い分けることが大切です。 ビジネスではスピードと合理性が優先されます。 このため格調高い敬語表現よりも物事の必要性や緊急度、重要性などを上司や目上の方に 手短に素早く報告・連絡することが大切です。 最小限の礼節を守り上司や目上の方に「 報告・連絡・相談」を心がけましょう。 以下にメールでの「ご多用」、「お忙しいところ」などを使った上司・目上の方に対する例文を示します。 【例文】 ・ ご多用のところメールにて失礼します。 先週ご指示のありました技術開発関係の書類を、別添ファイルの通り取りまとめましたのでご検討ください。 ・ ご多用中のところ恐縮ですが、添付資料のとおり次年度部内予算書(案)を作成しましたので至急お目通しください。 ・ お忙しいところ恐れ入りますが、来週の出張日程のご提出を至急お願いいたします。
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