私たちの身体が、正常に機能するためには、栄養素が欠かせません。 炭水化物やタンパク質、脂肪、鉄分、ビタミン、ミネラルなど、それぞれの栄養素が満たされた状態で初めて、健康的な身体を作ることができるのです。 鉄分が欠乏すれば貧血に、タンパク質が不足すれば、筋力低下や肌あれを起こすように、何らかの栄養素が著しく欠乏することによって、身体に思わぬ不調が現れることがあります。 そのうちの一つとして挙げられるのが、「テタニー」という症状です。 テタニーは、血中のカルシウム濃度が低下することによって起きる症状です。 しかし、食事からのカルシウム摂取不足というよりも、何らかの病気が原因で、血中のカルシウム濃度が低下し、テタニーを引き起こすケースの方が多く見られるようです。 そこで、ここでは、テタニーとはどのような症状なのか、原因となる病気や、治療法について、ご紹介いたします。 この記事の目次• テタニーが起こるメカニズム テタニーという言葉を初めて聞くという方も少なくないことでしょう。 テタニーとは、何らかの原因で、血中のカルシウム濃度が低下(低カルシウム状態になる)することで起こる、痙攣や感覚異常などの症状を示します。 まずは、なぜ、このような症状が起こるのかを、見ていきましょう。 筋肉を動かすスイッチ「カルシウムイオン」 「カルシウム」と聞くと、骨を生成しているものというイメージを強く抱くかもしれませんが、カルシウムは、筋肉の収縮にも大きく関係しています。 私たちが運動するとき、すなわち筋肉を動かすとき、タンパク質の一種である「ミオシン」と「アクチン」、そして、アデノシン3リン酸が、モーターのような役割をしています。 しかし、これらのモーターはスイッチがなければ動かすことができません。 そのスイッチをONにするのが「カルシウムイオン」なのです。 筋肉を動かす際、神経からの命令を受けると、筋小胞体と呼ばれる、カルシウムを貯蔵している場所が刺激されます。 すると、カルシウムイオンが細胞内へ放出され、そこで初めて筋肉を動かすスイッチがONになります。 しかし、カルシウムが低下することによって、このスイッチが駆動しなくなると、筋肉の硬直や痙攣などが起こりやすくなり、テタニーを引き起こしてしまいます。 カルシウムイオンと末梢神経の関係 テタニーを引き起こすのは、筋肉を動かすスイッチが駆動しないことのみが関係しているわけではありません。 筋肉を動かすためには、末梢神経の働きも大きく影響しています。 これには、イオンを透過させる「Naチャンネルの開口率」と、「Naチャンネルの透過性」の2つが関係してきます。 カルシウムイオンが低下すると、Naチャンネルの開口率は上がり、さらに透過性も亢進します。 すると、細胞の内外に生じる電位差が少し動いただけで、Naチャンネルから、細胞内へNaイオンが送り込まれてしまいます。 この状態が末梢神経を刺激し、興奮状態になるため、筋肉の収縮を繰り返すのです。 このように、テタニーの症状は「筋肉単体」で起きているのではなく、神経が密接に関係しています。 テタニーの兆候 テタニーは、症状が明確に現れる前に、兆候が見られます。 症状は、すでに血中のカルシウム濃度が大幅に低下しているために起こりますが、症状が起きていない健康な人でも、テタニーの兆候が見られた場合、低カルシウムの傾向にあると考えられます。 現在、何の異常もないと思っている人も、以下のような兆候がある場合には、病院を受診しておくと安心です。 それでは、テタニーの兆候について、早速見ていきましょう。 クボステック兆候 低カルシウムの状態にある場合、口を僅かに開けたまま、顔面の神経が通っている頬骨弓下(外耳道の直前)あたりを軽く叩くと、まぶたや口角に攣縮反射が見られます。 これは、健康な人でも、約10%という高い確率で見られるようです。 自分は大丈夫と思っている人も気をつけなければなりません。 トルソー兆候 もう一つの兆候としてあげられるのが、「トルソー兆候」です。 まず、血圧計のマンシェットを上腕部に巻きつけ、圧力が20mmHgを超えるまで加圧し、その状態で3分ほど経過を見ます。 このとき、「助産師手位」と呼ばれる手首や手指の屈曲が見られることを、トルソー兆候と言います。 トルソー兆候が見られた場合、低カルシウムの状態であると判断されます。 テタニーの症状 上項目であげた兆候を見逃し、低カルシウム状態が悪化すると、症状が現れます。 ひどい場合には、発作によって死に至ることもあるので、このような症状が出た場合には、早めに対処する必要があります。 しびれ、痙攣発作 まず、テタニーの症状が現れ始めると、手や唇を中心にしびれが出始めます。 それが顔面や手足、全身にまで出始め、徐々に手足の筋肉が強ばってきます。 さらに悪化すると、両手や両足の筋肉が硬直し、まるでてんかん発作のように、全身にまで痙攣が及びます。 このような筋肉の痙攣は痛みも伴うため、あまりの痛さにショックで意識を失う人もいるようです。 また、これらの痙攣が、呼吸筋や咽頭筋に及ぶと、気管支内の幅が狭くなり、呼吸をするたびに、ゼーゼー・ヒューヒューといった音が出ることがあります。 さらに、咽頭の平滑筋が痙攣すると、物を飲み込めなくなる嚥下障害などが起こり、これらの症状がひどい場合には、気道を塞ぎ、窒息死を招くこともあるのです。 情緒不安定 末梢神経に比べると、中枢神経は「血液脳関門」の存在によって、低カルシウムの影響を受けにくいと言われていますが、なかには、末梢神経と同様に、中枢神経まで興奮状態になってしまうこともあるようです。 すると、不安と興奮状態を繰り返すといった情緒不安定、集中力の低下などの、様々な精神症状も見られるようになります。 感覚異常 テタニーの症状としてもう一つあげられるのが、感覚異常です。 これは、「蟻走感」と呼ばれる感覚異常で、文字通り、唇の周りや手足などの身体の表面に、蟻が走っているように感じるという、神経障害の一種です。 テタニーの原因は? 血中のカルシウム濃度が低下する原因には、様々な病気が原因となっていることがあります。 具体的に、どのような病気が原因でテタニーを引き起こすのか、見ていきましょう。 過換気症候群 過換気症候群は、「過呼吸」という名前でご存知の方が多いかもしれません。 これは、何らかの原因で、脳内の呼吸中枢が刺激され、必要以上に酸素を取り込もうと、過剰に呼吸をしようとする症状を示します。 実際に、過換気症候群を体験した人ならばわかるかもしれませんが、過換気状態を引き起こすと、呼吸が苦しくなるだけではなく、手の指先や唇がしびれたり、目の前がチカチカしてくることがあります。 一見、過換気症候群と、カルシウム濃度には何の関係もないように見えますが、これには、過換気症候群が引き起こす「アルカローシス」という状態が密接に関係しています。 アルカローシスとは、体液が過剰にアルカリ性に偏った状態を示すもので、過換気状態が継続することで、血中の二酸化炭素の量が減少し、phバランスが崩れることによって起こると言われています。 アルカローシスになると、テタニー症状を引き起こすだけではなく、ひどい場合にはショックや昏睡状態を招くこともあるので、早急に対処しなければなりません。 副甲状腺機能低下症 副甲状腺機能低下症の症状の一つとして、PTH分泌障害があげられます。 PTHとは、骨からカルシウムを吸収して血液に供給したり、小腸でのカルシウム吸収、あるいは腎臓からのカルシウム排出を抑えるために、血中のカルシウム濃度を上げるよう作用するホルモンです。 副甲状腺の機能が低下することによって、PTHが正常に分泌されなくなると、低カルシウムの状態を引き起こします。 この病気は、遺伝子の異常、頸部手術、免疫異常など、いろいろなことが原因となるようです。 また、テタニー以外の症状としては、白内障や抑うつ、不整脈など、様々な症状が現れます。 くる病 あまり聞きなれない病名かもしれませんが、小さなお子さんがいらっしゃる方ならば、「くる病」という病名を耳にしたことがあるかもしれません。 現代、くる病になる子供が増えていることが問題にもなっているようですが、これはビタミンDの欠乏が原因となって、カルシウムが吸収されず、成長障害や、骨格・軟骨の変形といった症状が現れる病気です。 最近はとくに、母乳での子育てが良いとされています。 しかし、確かに母乳で育てることのメリットは多々あるものの、母乳にはビタミンDがあまり含まれていません。 すなわちこれは、子供のビタミンD摂取量も減少するということにつながります。 さらに、紫外線による皮膚へのダメージを気にするあまりに、子供たちが日光を浴びることが少なくなっているとも言われています。 ビタミンDは、食事のほかに、太陽を浴びることで作られているため、日光浴が不足すると、結果的に血中のカルシウム濃度も低下していくというわけです。 バーター症候群 バーター症候群とは、異常性を持つ劣勢遺伝子や電解質、ホルモンなどの異常が原因となって、腎機能障害を起こした状態を示します。 バーター症候群によって腎機能障害が起こると、カルシウムやマグネシウムを過剰に排出させてしまいます。 さらに、それに加えて、体内の塩化物が、過剰に排出されることによって脱水症状を起こし、血中のレニンやアルドステロンといった物質濃度が上昇します。 すると、血液がアルカリ性に傾いた状態になるため、テタニーを引き起こしてしまいます。 原発性免疫不全症候群 私たちの身体には、病原菌などを体内に侵入させないために、免疫機構が備わっています。 しかし、タンパク遺伝子の異常が見られると、先天的に免疫に欠如した部分が現れ、これを原発性免疫不全症候群と呼んでいます。 原発性免疫不全症候群は、いくつかの種類に分類されるのですが、このうち、テタニーの症状を引き起こすものが、「ディジョージ症候群」に類します。 このケースでは、テタニー以外にも、血管系または食道の奇形や、口蓋裂が合併して現れることがあるようです。 テタニーの治療 テタニーの治療は、原因となる病気を改善することが根本的な治療になります。 ここでは、上記にあげた原因疾患に沿って、治療方法についてご紹介いたします。 過換気症候群の治療 過換気症候群は、主に不安やストレス、緊張といった精神的なものが原因となって、症状が現れることが多いと言われています。 根本的な治療としては、やはり、このような精神的要因を解決するということに限ります。 症状が出たとき、どのような精神状態のことが多いのかを客観的に分析し、例えば不安を感じたときに症状が出やすいのであれば、そこからさらに、深堀りしていくのです。 「なぜ不安に感じるのか?」「不安になると、どのようなことを考えてしまうのか?」などを落ち着いているときに考え、「不安に思うことはない」あるいは「不安になっても仕方ない」と自身を納得させることが大切です。 必ず、精神的な要因には、うやむやになっている感情やトラウマなどが隠れているものです。 専門のカウンセラーなどと一緒に、根本的な改善を行いましょう。 また、過呼吸になったときに、ペーパーバッグを口にあてる人がいますが、この対処法は窒息を招くため、非常に危険です。 まずは、ゆっくりと小さく呼吸をすること、そして、誰かがそばにいる場合は、手や背中を撫でてもらい、「安心できる」環境をつくることが大切です。 しかし、テタニーの症状が出た場合には、転倒などの事故に繋がる恐れがありますので、救急車を呼んでもらいましょう。 副甲状腺機能低下症の治療 副甲状腺機能低下症の治療では、薬物療法が一般的だとされています。 主に使用されるのは、活性型ビタミンD製剤という薬です。 これは、腸管からのカルシウム吸収を促進させ、血中のカルシウム濃度を正常に保つよう作用する薬です。 また、テタニーの症状がある場合には、グルコン酸カルシウムを静脈に点滴、あるいは注射するという対処法が行われるようです。 しかし、活性型ビタミンD製剤を投与している場合には、次は「高カルシウム血症」を招くリスクが高くなるため、定期的な検査が必要になります。 くる病の治療 くる病の治療では、不足しているビタミンDの内服が主な治療法になります。 しかし、くる病の場合、そのほかにも、リンやカルシウムも不足していることがあるので、その場合には、リン、カルシウム、それぞれを合わせて内服することになります。 また、骨の変形を起こしている場合には、手術が必要になることもあります。 こうなってしまうと、治療期間も長期に渡るので、早期発見・早期治療を努めることが大切です。 バーター症候群の治療 バーター症候群の治療においても、基本的な治療は薬物療法になります。 カリウム保持性の利尿薬や、カルシウムやマグネシウムを補うサプリメント、場合によってはカリウムを経口投与で内服するといった治療法が行われます。 しかし、新生児期の場合においては、薬物療法だけでは、電解質のコントロールを改善できないことが多く、難聴や末期の腎不全を招くこともあります。 このような場合は、人工透析、あるいは腹膜透析といった、大変な治療が必要になることもあるようです。 原発性免疫不全症候群の治療 この場合、テタニーなどの筋肉痙攣を防ぐために、カルシウムやビタミンDといったサプリメントを内服しますが、根本的な治療はもう少し複雑になります。 その人のT細胞、B細胞の数や、T細胞と副甲状腺の機能、胸腺の大きさなどを詳しく検査し、症状に応じて治療法を決めるようです。 治療を行わなくても、免疫機能が十分に機能することもあると言われていますが、感染症などになった場合には、早急に治療が必要になります。 また、T細胞が全くない場合においては、胸腺組織を移植しなければ、予後は困難であると考えられています。 テタニーになったときの対処法 では、最後に、テタニーの症状が出た場合の、対処法について、見ておきましょう。 症状が起きた場合、本人が対処するのは困難ですので、周りにいる人が、慌てずに対応することが大切です。 症状がひどい場合には、すぐに救急車を呼び、その間、以下のような点に気をつけて処置を行ってください。 舌を巻かないようにする 舌の筋肉が硬直・痙攣を起こすと、呼吸困難を招く恐れがあります。 まずは、舌を巻かないようにさせるために、舌圧子などにガーゼを巻き、それで舌を抑えます。 身体を横にして休ませる 気道閉塞を防ぐため、体も顔も横に向けた状態(側臥位)にして身体を休ませます。 この際、誤って何かを飲み込んだりしないよう、気をつけておきましょう。 転落や、転落による事故を防ぐ 痙攣によってベッドから転落しないように、時々身体を支えながらサポートします。 この際、万が一転落したときに備え、危険物が周りにないことを確かめておきましょう。
次の低カルシウム血症の症状 カルシウムは、からだの中で細胞の機能を調節したり、筋肉の収縮、血液凝固や骨の形成など様々な役割を担っています。 カルシウムが不足することで、これらの働きに影響が現れ、さまざまな症状が現れます。 1-1. 軽度の場合 軽度の低カルシウム血症の場合、 症状が出ないことが非常に多いです。 一部の人で背中や足の筋肉のけいれんが見られることもあります。 特に病気があるわけでも体調が悪いわけでもないのに、検査などで指摘された方は軽度の低カルシウム血症であることが多いです。 この場合は、カルシウムを食事で積極的に摂取したり、カルシウムのサプリメントを利用することで改善します。 そのため、特に怖がる必要はないでしょう。 1-2. 代表的な重症低カルシウム血症の症状 筋肉系• テタニー• 筋肉のけいれん• 腱反射亢進• クボステック徴候• トルソー徴候 精神・神経系• 抑うつ傾向• 不随意運動 心臓系• 心収縮力低下• 心電図変化(QT延長) 消化器系• 腸管けいれん その他• 白内障• 歯や爪の異常 (参考:year note 2016) テタニーとは テタニーとは 手足におきるしびれのことで、軽症では くちびるや舌、手指や足の感覚異常、重症になると手足のけいれんや、全身の筋肉痛、顔面筋のけいれんなどが特徴です。 テタニーの治療 グルコン酸カルシウム10~20mlをゆっくり静脈注射することで改善します。 クボステック徴候やトルソー徴候 テタニーではこのように症状がはっきり表れることもあれば、潜在性の場合もあります。 潜在性テタニーを確認する方法として、クボステック徴候やトルソー徴候というものがあります。 クボステック徴候 クボステック徴候とは、外耳道の直前で顔面神経を軽く叩くと、鼻の左右両端(鼻翼)やまぶた、口角などで筋肉が収縮する反射のことを言います。 トルソー徴候 トルソー徴候とは、上腕を止血帯やマンシェットで圧をかけたときに、手が 助産師手位を示す現象のことを言います。 助産師手位とは以下の画像のような状態です。 1-3. 低カルシウム血症の検査 低カルシウム血症は血液検査で、 血漿補正カルシウム濃度が8. 不安な場合は、 一般的な内科で血液検査してもらうのが良いでしょう。 どうしても何科か選ぶとしたら、副甲状腺機能の低下などを考える必要があるため、内分泌科が最善です。 低カルシウム血症の原因 低カルシウム血症になる原因としては、副甲状腺の病気や腎臓の病気、薬やビタミンDの欠乏、カルシウムの摂取不足などが挙げられます。 副甲状腺機能低下症• 偽性副甲状腺機能低下症• 腎不全• 低マグネシウム血症• Vit. D依存性くる病• 偽性Vit. D欠乏性くる病• 尿細管障害• アルカローシス• 急性膵炎 薬• 抗けいれん薬(フェニトイン、フェノバルビタール)• リファンピン その他• 食事からの不足(ビタミンD、マグネシウム、カルシウム)• 腸管吸収障害 2-1. 副甲状腺機能低下症 副甲状腺機能低下症により、 副甲状腺ホルモンが低下し、それにより低カルシウム血症となることがしばしばみられます。 低カルシウム血症になるメカニズム 副甲状腺ホルモン(PTH)は体の中で、腎臓でのビタミンDの活性化を担っています。 活性化したビタミンDは腸管でカルシウムを吸収したり、腎臓でのカルシウム再吸収を促進するといった、血液中のカルシウム濃度を上昇させる作用があります。 そのため、副甲状腺ホルモンが不足すると、活性型ビタミンDが不足し、カルシウム濃度の上昇を抑え低カルシウム血症になってしまうのです。 また、PTHは腎尿細管でのカルシウムの再吸収の作用もあります。 PTHが低下することでカルシウムの再吸収を抑え、さらに低カルシウム状態となると考えられています。 副甲状腺機能低下症の原因 甲状腺摘出手術や副甲状腺摘出手術の後に低カルシウム血症が見られることがあります。 多くは手術後1~2日後に見られますが、人によっては数か月や数年先に見られることもあります。 また、特発性副甲状腺機能低下症という子供で起こる遺伝病では、副甲状腺が無かったり、小さかったりするため低カルシウム血症をきたすことがあります。 2-2. 偽性副甲状腺機能低下症 偽性副甲状腺機能低下症では副甲状腺ホルモンは正常であるものの、臓器で副甲状腺ホルモンに対して抵抗性があることにより、副甲状腺ホルモンが正しく働かず低カルシウム血症になってしまいます。 非常に珍しい病気ですので、一般の方は気にする必要はないでしょう。 2-3. ビタミンDが欠乏することによっておこる低カルシウム血症 ビタミンDは血液中のカルシウム濃度と深くかかわっているため、不足すると低カルシウム血症になることがあります。 ビタミンDの働き ビタミンDは血液中のカルシウム濃度を上げる働きがあります。 腸管でのカルシウム吸収促進• 腎臓でのカルシウム再吸収促進• 骨からのカルシウム放出を促進 これらのメカニズムを通して、カルシウム濃度を上昇させます。 ビタミンDが欠乏する原因• 食事からの摂取不足• 日光にほとんど当たっていない• 肝臓・胆道の病気• 腸管での吸収不良• 薬(抗けいれん薬(フェニトイン、フェノバルビタール)、リファンピン)• 腎不全• Vit. D依存性くる病• 偽性Vit. D欠乏性くる病 などが挙げられます。 病気に関してはどうしようもありませんが、食事からの不足や日光に当たっていないなどは予防することができます。 カルシウム不足になりがちで病気がない場合はしっかりと予防するのが重要でしょう。 ビタミンDは鮭やシラスなど魚に多く含まれます。 また、薬については該当する薬を使用している場合は、医師と相談して別の薬に変えてもらうことを検討しましょう。 低カルシウム血症の治療 低カルシウム血症になるとどういった治療を受けることになるのか、解説していこうと思います。 原因に応じてカルシウムやビタミンDの補充が行われます。 低カルシウム血症は適切に治療を受ければ、手術などもないため、比較的改善しやすいです。 予後も良好ですので、低カルシウム血症になっても安心して治療を受けるとよいかと思います。 軽度の低カルシウム血症で病気がない場合 カルシウムのサプリメントや食事の見直しで改善することが多いです。 病院に行くと、カルシウム製剤を処方され、経口摂取する事が多いです。 (ビタミンDはカルシウムを十分に摂取できている場合に有効です。 ただし、数時間しか効果が続かないため、グルコン酸カルシウム20〜30mLを5%ブドウ糖液1Lに溶かし、半日から1日かけて追加注入します。 カリウム、カルシウムに一時的に反応することもあるりますが、マグネシウム製剤での補充が改善のための近道です。 甲状腺や副甲状腺の摘出術後 カルシウムを経口摂取すれば十分なケースが多いです。 ただし、腎不全の患者の場合は重症の状態が長引く可能性があるため、手術後に静脈注射によりカルシウムを補充します。 腎不全 合成カルシトリオールを投与することが多いです。 腎臓での代謝変換が必要ないためです。 副甲状腺機能低下症 0. 偽性副甲状腺機能低下症 カルシウムの経口摂取のみで改善するケースが多いです。 日光に当たっていない場合 日光に当たることや紫外線ランプが唯一の治療です。 それ以外の治療は根本的な解決にならないことが多いでしょう。 まとめ 低カルシウム血症について症状や原因、治療法などを解説していきました。 検査などで指摘され、医師に問題ないと言われている場合は特別怖がる必要はないでしょう。 ただし、重症の場合は危険ですので、重症にならないようにしたいところです。 特に、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、日光、薬といったものが原因の場合、しっかりと生活を見直せば低カルシウム血症になることを予防できます。 これらはしっかりと予防するようにしましょう。 低カルシウム血症について深く正しく知り、不安を解消していただけると幸いです。 スポンサードリンク•
次の腫瘍による凝固亢進によって血栓化は至るところで可能性があると思うので、心臓で出来て頭に飛んでも、脳の微小血管に直接出来ても、下肢静脈に出来てPFO(卵円孔開存)介して頭に飛んでもいいと思います。 なので 心臓とか下肢の血栓の発見にはエコーが有用と思います。 実感としてはあんまりこれらの部位にはっきりした血栓がないことが多いような気がします。 画像的には• 脳血管の支配域と異なる MCA皮質枝梗塞やLSA、傍正中などの代表的ラクナ梗塞の領域とは異なります。 前方循環と後方循環両方• 両側性 です。 消化器内科として経験から やはり 進行癌 特に腺癌 のある患者で比較的小さな梗塞が両側に多発していたら Trousseau症候群 トルーソーしょうこうぐんかなと思います。 他の脳梗塞と梗塞像の違いが比較的明確なことや 進行癌患者に限定されることから臨床的にあまり診断に困るケースはないように思います。 なので診断基準がないのでしょうか? 一連の病態で脳梗塞が初発症状だとすぐに診断がつきづらいと思いますが、進行癌の中でも かなり進行したケースに起きることが多く、癌の診断がすでについている患者に発症することがほとんどだと思います。 既述の通り病態が進行癌に伴う凝固能亢進なので 全身の血栓スクリーニングを行います。 採血異常については、他の血栓症と同様にDダイマーを診断や治療効果判定の参考にしますが、他の凝固異常については一定の見解はないと認識しており DICが併発していないか確認する程度のものと考えてます。 ちなみに 治療はヘパリンと原病の治療ですが 予後はかなり悪いです。 ただ実臨床では内服に切り替えることも多く、その場合Dダイマーの推移を見ながら慎重に切り替えます。 担癌患者での血液凝固障害 — Trousseau症候群 トルーソーしょうこうぐん — 皆さんはTrousseau症候群について聞いたことがあるでしょうか? 時々、症例検討会をしていて高血圧症や糖尿病、 心房細動などの 脳梗塞発症リスクを持たない患者さんに急性期脳梗塞を認めることがあります。 しかしその症例が 担癌患者であった場合、誰かがふと「トルーソーでは?」とつぶやく光景を目にします。 簡単に言うと「 癌によってもたらされた凝固障害」となりますがもう少し詳しくおさらいしてみましょう。 Trousseau症候群 トルーソーしょうこうぐんの国際的な定義として定まったものはないようですが 悪性腫瘍に関連する血液凝固障害、あるいはそれに起因する動静脈血栓症全般を指すことが多いようです。 一方、本邦では悪性腫瘍に脳卒中を合併する病態がTrousseau 症候群の疾患概念として提唱されており、その 特徴として 多発梗塞であること、DIC を合併することが挙げられています。 凝固能亢進に伴う血栓・塞栓症という点では、国際的に認識されている Trousseau 症候群と本質的には同様の病態と言えます。 担癌患者の死因第2位 ある報告では癌患者の死亡原因として、 Trousseau症候群は癌そのものによる死亡の次に多い原因としてあげられる程であり癌患者の予後を左右する病態とも言えます。 膵癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、乳癌に多い Trousseau症候群 トルーソーしょうこうぐんの原因となる 癌はとりわけ 膵癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、乳癌などムチン産生腫瘍が原因となることが多いと言われています。 <図1>Trousseau症候群の原因になったと考えられる乳癌(mucious carcinoma)[] なぜムチン産生が凝固障害をもたらすかと言えば、血中のムチンが白血球に発現するL-セレクチン、 血小板に発現するP-セレクチンという接着分子に作用してトロンビン産生を介さずに血小板凝集をもたらすことがメカニズムの一つとして考えられています。 つまり Trousseau症候群 トルーソーしょうこうぐんは癌の発生臓器、病理型に関連することに注意が必要で、 逆に言えば 原因不明の脳塞栓症を見たら上述した臓器などの癌の存在を疑う必要があります。 診断は難しいが手がかりはDダイマー Trousseau症候群の診断はしばしば難しいものですが、 原因となる進行癌に発症する潜在性の脳梗塞は Dダイマー活性が上昇することが多く診断の参考になることがあります。 ただ、 担癌患者では 30~90%に Dダイマーの上昇を認めることも事実であり脳梗塞の原因と結びつけることに異論もあります。 Trousseau症候群 トルーソーしょうこうぐんの 脳梗塞の病型としては非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)による 心原性脳塞栓症が最多とされています。 心臓超音波検査、特に 経食道心臓超音波検査で心原性脳梗塞や 心内膜炎、卵円孔開存症に伴う奇異性脳梗塞などを、更には血液検査などで膠原病や凝固異常をきたす疾患の合併を鑑別することが重要です。 画像検査では MRIで皮質性梗塞や穿通枝梗塞が混在すること、通常の脳梗塞では起りにくい小脳や大脳の分水嶺にもみられる多発性の脳梗塞となることが多いという特徴があります。 <図2>図1の患者に発症した脳梗塞。 図2以外にも多発性に急性期脳梗塞を認めた。 [] DICの治療に似ている Trousseau症候群 トルーソーしょうこうぐんの治療 Trousseau症候群の治療は原因となる癌の根治的な治療が大切であることは 言うまでもありません。 その意味ではDICの治療において原因となる疾患の治療が優先されることと似ています。 しかし 根治的治療が難しい進行癌から発症したTrousseau症候群もしばしばみかけますし、むしろそのほうが多いのではないでしょうか。 薬剤による治療として抗凝固療法の適応があり、 ヘパリンが第一選択 となるが 長期化する場合には低分子ヘパリン やヘパリノイドの皮下注も有用とされています。 他の抗凝固薬としてワルファリン、直接経口抗凝固薬がTrousseau症候群を抑制しうるか否かはまだ十分なエビデンスがあるとは言えません。 Trousseau症候群 トルーソーしょうこうぐんの代表である NBTE に対してヘパリン投与の中止,ワルファリンへの切り替えで再発し、 致死的状態になる例はこれまで多数報告されておりヘパリンの有する強力な薬理学的作用が存在することを証明しているとも言えます。 記事で疑問は解決できたでしょうか? AntaaQAは医師専用のオンライン相談アプリです。 現場で患者さんの診断治療に困った場合は、AntaaQAで他の医師に相談してみませんか。 みんなで一緒に患者さんの診断治療に取り組みましょう。 また、現場により良い知識が届くように、記事を改善しつづけていきたいと考えています。 最新論文の追加や加筆修正により、より質を高められる点がありましたら、ぜひまでご一報ください。 参考文献• 現場の判断を助ける医師同士の質問解決プラットフォーム「AntaaQA」 「外来で、専門外の症状の診断に不安がある。 経過観察をしようか迷う」 「当直で、レントゲンで骨折を疑ったが、読影に不安がある。 他に人を呼ぶべきか判断に迷う」 そんな時、AntaaQAでいつでも即相談することができます。 第一線を走る医師たち・同じ悩みをもつ医師に質問ができ、判断に迷ってたあなたの悩みを解決に導く、医師同士の質問解決プラットフォームです。
次の