当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転する意思を表示し、相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。 売買契約は諾成契約とされている。 つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。 また、売買契約は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。 さらに、売買契約は財産権を移転する契約であるが、その対価として交付されるのは金銭でなければならない(金銭以外の物を対価として交付すると「交換契約」となってしまう)。 当事者の双方の意思の合致により売買契約が成立したとき、には「財産権移転義務」が発生し、買主には「代金支払義務」が発生する。 両方の義務の履行は「同時履行の関係」に立つとされる。 予約とは、将来において契約を締結するということを、事前に当事者同士で合意することを指す。 予約においては、当事者の一方が予約完結権を持つのが一般的である。 例えば、将来においてを締結するという予約(という)において、買主が予約完結権を持ったものとする。 そうすると将来、買主がに対して「この物を購入するという予約完結権を行使する」という意思を表示すれば、売主の承諾を待つまでもなく、売買契約が自動的に成立することになる。 このように予約という仕組みを使えば、予約完結権を持っている者が任意に売買契約を締結する権利を持つことになるので、予約完結権者に強い権利があるということができる。 なお、予約完結権を持つ者を「予約完結権者」または「予約権者」と呼び、その反対に予約完結権の行使を受ける者を「予約義務者」と呼ぶことがある。 上記では、当事者の一方が予約完結権を持つ場合を述べたが、このような予約は「一方の予約」と呼ばれる。 このほかに、当事者の両方が予約完結権を持つ場合も考えることができる(当事者のどちらでも意思を表示すれば自動的に契約が成立するという予約)。 このような予約は「双方の予約」である。 また、将来において締結される契約のことを「本契約」と呼ぶことが多い。 売買一方の予約とは、将来においてを締結することを事前に合意しておくことを指す(民法第556条)。 「予約」とは、将来において契約を締結するということを、事前に当事者同士で合意することを指す。 「予約」においては、当事者の一方が予約完結権を持つのが一般的である。 「売買一方の予約」もこのような「予約」の一つである。 (詳しくはへ) 「売買一方の予約」では、通常、将来の売買契約で買主となる者が予約完結権を持つ。 「売買一方の予約」は、社会的には(金銭貸借)を担保する機能を営んでいる。 例えば、AがBに1,000万円を融資したとする。 この融資実行の際に、AとBの間で「AとBは、B所有の土地をAが購入するという売買契約を将来締結することを合意する。 予約完結権を行使するのはAである。 Aは、融資を返済すべき時期に融資が返済されないときは、その予約完結権を行使することができる」という予約を結んだとしよう。 そうすると、仮にBが融資を返済しなかったならば、Aは予約完結権を行使することにより自動的にB所有土地を取得することができる。 このように「売買一方の予約」を結んでおけば、融資が返ってこなくても、債権が保全されるということになるのである。 なお、「売買一方の予約」における予約完結権はをすることができる。 法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利をいう。 物を全面的に、排他的に支配する権利であって、により消滅することはない。 その円満な行使が妨げられたときには、返還、妨害排除、妨害予防などの請求をすることができる。 近代市民社会の成立を支える経済的な基盤の一つは、「所有権の絶対性」であるといわれている。 だが逆に、「所有権は義務を負う」とも考えられており、その絶対性は理念的なものに過ぎない。 土地所有権は、法令の制限内においてその上下に及ぶとされている。 その一方で、隣接する土地との関係により権利が制限・拡張されることがあり、また、などの公共の必要による制限を受ける。 さらには、私有財産は、正当な補償の下に公共のために用いることが認められており(はその例である)、これも所有権に対する制約の一つである。
次の不動産売買契約書の印紙税の軽減措置 【照会要旨】 不動産売買契約書について印紙税が軽減されていると聞きましたが、具体的な取扱いについて説明してください。 【回答要旨】 租税特別措置法により、不動産の譲渡に関する契約書について、印紙税の軽減措置が講じられ、税率が引き下げられています。 その概要等は次のとおりです(建設工事の請負に伴って作成される請負契約書についても軽減されております。 1 軽減措置の内容 軽減措置の対象となる契約書は、不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成されるものになります。 なお、これらの契約書に該当するものであれば、土地・建物の売買の当初に作成される契約書のほか、売買金額の変更等の際に作成される変更契約書や補充契約書等についても軽減措置の対象となります。 2 軽減後の税率 軽減措置の対象となる契約書に係る印紙税の税率は、課税物件表の規定にかかわらず、次表のとおりとなります。 契約金額 本則税率 軽減税率 10万円を超え 50万円以下のもの 400円 200円 50万円を超え 100万円以下のもの 1千円 500円 100万円を超え 500万円以下のもの 2千円 1千円 500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円 1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円 5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円 1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 6万円 5億円を超え 10億円以下のもの 20万円 16万円 10億円を超え 50億円以下のもの 40万円 32万円 50億円を超えるもの 60万円 48万円 (注) 不動産の譲渡に関する契約書のうち、その契約書に記載された契約金額が10万円以下のものは、軽減措置の対象となりません(税率200円)。 また、契約書に記載された契約金額が1万円未満のものは非課税となります。 3 軽減措置の対象となる不動産の譲渡に関する契約書の範囲 軽減措置の対象となる「不動産の譲渡に関する契約書」とは、課税物件表第1号文書の物件名欄1に掲げる「不動産の譲渡に関する契約書」をいいますが、一の文書が、不動産の譲渡に関する契約書と同号に掲げる他の契約書とに該当するものも軽減措置の対象になります。 参考 平成9年4月1日から平成26年3月31日までの間に作成された不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が1千万円を超えるものは、課税物件表の規定にかかわらず、次表のとおりとなります。 契約金額 本則税率 軽減税率 1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万5千円 5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 4万5千円 1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 8万円 5億円を超え 10億円以下のもの 20万円 18万円 10億円を超え 50億円以下のもの 40万円 36万円 50億円を超えるもの 60万円 54万円 【関係法令通達】 租税特別措置法第91条 注記 令和2年4月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
次の不動産売買契約書の特約条項|記載内容について 不動産売買契約書の特約条項やその記載内容についてご紹介します。 不動産売買契約書の特約条項とは 不動産売買契約書の特約条項とは、標準的な雛形に記載される基本的な項目とは違い、「 通常の条項以外の特別な約束事」です。 つまり、売主と買主間の取引条件に沿って明記される特別なもので、場合によっては他の条項を一部打ち消すこともあります。 ただし、特約条項はどのような場合でも効力を持つわけではなく、 対象となる不動産取引の公平性が欠如するようなものは、認められていません。 不動産売買契約書に記載できる特約条項の内容 不動産売買契約書に明記される特約条項の内容については、土地や建物に関することだけでなく、敷地や隣地関係、さらに周辺環境に至るまで様々な事項が考えられます。 例えば、当該不動産の近隣に刑務所や工場などがある場合、買主が近隣環境を承知する旨や、それに伴い発生する損害などを売主は保証できない旨などです。 不動産売買契約書の特約条項に特段の制限はないので 強行法規に反しない限り、様々な事柄を定めることができます。 特約条項に記載できない内容について 上記のとおり特約条項への制限は「 強行法規に反しないこと」です。 例えば、契約違反の場合の違約金1兆円というような、明らかに非常識な条項は公序良俗(民法90条)に違反するものとして無効です。 不動産売買契約書の特約条項の記載例 ここでは、不動産売買契約書における特約条項の記載例を詳しくご紹介します。 不動産取引の内容と照らし合わせて、ぜひ参考にしてください。 引き渡し前の地質調査 売主は引渡し前に、買主の指定する地盤調査会社の地質調査を行うことを承諾するものとする。 費用は買主が負担する。 買替特約(買主先行購入) 売主、及び買主は、下記条項を承諾しました。 (2)前項により本契約が解除されたとき、売主は、買主に対して、すみやかに受領済みの金員を無利息にて返還するものとする。 家屋の解体の特約 本物件の引渡しが、現況有姿で行われることに伴い、買主の責任と負担において本物件上に存する家屋の解体工事を行うものとします。 また、建物解体、擁壁補修、地盤改良工事については買主と負担と行うものとする。 また、買主に引き渡す際に各設備に故障や不具合があったとしても、その修理の義務を負わないものとし、物件状況等報告書については土地のみについて記載します。 未登記部分の特約 買主は、本物件取引後、自らの責任と負担において、本物件建物においては取壊しを行うために、本物件に増築未登記部分があった場合その部分については表示、保存登記を行わず引き渡されることを了承するものとする。 増築未登記建物の特約 売主は、所有権移転登記の時期までに、その責任と負担において、本物件の増築未登記部分の表題変更登記を完了します。 なお、表示変更登記に伴い、今後建物の固定資産税が増額される場合があることを買主は了承の上、本物件を買い受けるものとします。 中古住宅取得に係る税制の特約 買主は、本物件の取得にあたり、中古住宅の取得に係わる税制上の特例を受けることができないことを予め了承するものとする。 融資金額の売買代金超過の特約 買主の融資利用金額は売買代金を超過しておりますが、買主が本物件を購入する為の建物代金を含めた金額であることを売主・買主は了承するものとします。 諸費用ローン特約 売主、買主は、買主が本物件を買い受けるにあたり、売買代金の一部に併せて、本物件購入にかかる諸費用についても融資利用するため、第16条(融資利用の特約)の規定を当該融資に準用すること、及び融資金額の合計が売買代金の額を超えて金〇〇万円になることを確認しました。 まとめ 不動産売買契約書には、特約事項を記載する項目がありますが、標準雛形ではそれぞれの取引内容には該当できません。 ぜひ、当事者の取引に合わせた特約事項を明記してください。 また、どのような特約を盛り込むのかについては弁護士にご相談ください。 契約後に損をしたり、トラブル発生を抑えたりするためにも、不動産売買契約書の作成は弁護士に依頼することおすすめします。
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