ピーター パン ナナ。 ブロードウェイミュージカル ピーターパンのチケット情報

ミュージカル『ピーターパン』全キャストが発表 ウェンディ役に美山加恋、ダーリング夫人役は比企理恵に決定

ピーター パン ナナ

ママが悲鳴をあげると、ベルが鳴らされたかのようにドアが開いて、ナナが入ってきました。 ナナが低くうなり、その男の子に飛びかかると、男の子は身軽に窓から飛び降りました。 再びママが悲鳴を、今度は男の子の身を案じてです。 ママは、男の子が死んでしまったと思いました。 ママは、男の子を探しに、通りまでかけ下りましたけれど、何も見つかりません。 ママが上を見上げても、暗闇の中に、流れ星としか思えないようなものしか見つけられませんでした。 ママは子供部屋に帰ってきて、ナナが口になにかをくわえているのを見つけました。 それは、あの男の子の影でした。 男の子が窓から飛び降りる時、ナナはすかさず近寄って、捕まえることこそできなかったものの、影を逃がしはしなかったのです。 窓をぴしゃりとしめ、影はポキンと折れたのでした。 あなたが思うように、ママはその影を注意深く調べました。 でもまったくなんの変哲もない、普通の影でした。 ナナにはもちろんこの影をどうすればいいか、わかっていました。 影を窓の外にぶら下げておけば、それを取り戻すために男の子は必ずもどってきます。 コドモ達には害がなく、男の子が簡単に取り戻せるところに、その影をおいときましょうということです。 ただ不幸にも、ママは窓に影をぶらさげたままにはしておけませんでした。 それではまるで洗濯物みたいで、家の格を下げることになってしまうからです。 ママはパパに影を見せようかと思いましたが、パパは頭を冷やすために冷たいタオルを巻きつけ、ジョンとマイケルの冬のりっぱなコートの出費の計算をしていたので、わずらわすのは申し訳ないような気がしました。 その上、パパが「イヌを乳母なんかにするから、こんなことになるんだ」なんて言うのが、ありありと目に浮かぶようでした。 ママは影をたたんで、パパに相談できるいい機会がくるまで、たんすの中にていねいにしまいこみました。 あらまあ。 機会は、一週間後に訪れました。 あの決して忘れることのできない金曜日に、もちろん金曜日にです。 「わたしが金曜日には、特別注意するべきだったんだわ」後になって、ママはパパによくそういいました。 そういってるときに、おそらくナナはパパの反対側のママの手をにぎっていたことでしょう。 「いやいや」パパはいつもこういうのでした。 「わしに全責任がある、わしジョージ・ダーリングがやるべきだったんだ」そしてラテン語で「わしがわるいんだ、わしがな」といいました。 パパはラテン語の素養もあったのです。 それからかれらは座り込んで、来る夜も来る夜もあの運命の金曜日のことを思い出していたので、しまいにはどんな細かいことまでも頭の中に刻み込まれ、頭の反対側までも突き抜けそうでした。 それはまるで、できの悪いコインに刻まれた顔が、反対側まで突き抜けてしまっているかのようでした。 「わたしが、27丁目の家での夕食のお誘いを承知さえしなければ」ママはいいました。 「わしが、ナナのおわんにわしが飲む薬を入れたりしなかったら」とパパもいいました。 「わたくしが、お薬が好きなフリさえしておけば」ナナのうるんだ瞳が、そういいたいようでした。 「わたしのパーティー好きが、あなた」 「わしのユーモアのセンスのなさがだ、おまえ」 「わたくしが些細なことへこだわったりするからなんです、ご主人様」 それからひとり、ふたりと一緒に泣き崩れるのでした。 ナナは「そうだ、そうだ、イヌを乳母なんかにするべきじゃなかったんだ」と考えて、パパはナナの目に何回もハンカチをあてなければなりませんでした。 「あの悪魔め、」パパは叫んだものでした。 ナナのほえる声がそれを繰り返しました。 ただママは、ピーターを決して責めません。 彼女のくちもとの右はしにあるなにかが、ピーターの名前を口にだすことをためらわせるのでした。 みんなはがらんとしたコドモ部屋に座り込んで、あの恐ろしい夜のどんな細かいことでさえ、愛情をこめて思いだそうとするのです。 はじまりは、いつもと全くかわらない平凡な、本当に他の幾夜と全く同じで、ナナはマイケルのお風呂のために水をいれ、マイケルを背中に乗せてお風呂までつれていくところでした。 「まだ、ねむたくない」マイケルは、いうことはそれだけしかないと固く信じているといった具合に大声をだしました。 「やだよ、やだ。 ナナ、まだ6時じゃない。 おねがいだから、おねがい。 もうキライになるから。 ナナ、おフロには入りたくないっていってるの、やだやだ」 そこへ、夕食会のための白い夜会服をきたママが来ました。 ママはウェンディが夜会服を着た姿をみるのをとてもよろこぶので、おおいそぎで着替えてきたのです。 ママはパパから貰ったネックレスをつけ、前もって貸してくれるように頼んでいたウェンディのブレスレットをはめていました。 ウェンディはママにブレスレットを貸してあげるのが、大好きだったのです。 ママは年上の2人が、ウェンディが生まれた時のママとパパのフリをして、遊んでいるのをみました。 ジョンがこういいます。 「おまえにこういえることを、幸せに思うよ、おまえ、おまえはいまや母親なんだよ」まるでパパが、まさにその時に使ったであろう口調で言うのでした。 ウェンディは、よろこびのあまり踊りだしました、まさに本当のママがしたに違いないように。 それからジョンが生まれ、パパは男の子が生まれたひときわの感慨を抱き、そしてマイケルがおフロからでてきて、僕も生まれた? とたずねました。 ただジョンは、そっけなく、パパとママにはもうコドモはいらないよと言ったのでした。 マイケルはほとんど泣きそうになって「ぼくなんて、だれにも必要とされてないんだ」といいだし、白い夜会服をきたママはその状況に黙っていられません。 「ママは欲しいわよ」と口をはさみました。 「ママは、とっても三番目のコドモがほしいわ」 「男の子、女の子?」マイケルは、あまりキタイはしていないようにたずねました。 「もちろん、男の子よ」 すぐにマイケルは、ママの腕の中に飛び込みました。 そんなささいなことさえ、いまやパパとママとナナには思いだされるのです。 ただ、もしそれがマイケルのコドモ部屋での最後の夜になってしまうのなら、ささいなこととはいってられませんが。 回想は続きました。 「わしがたつまきのように部屋に入っていったのは、そのときじゃなかったかな?」パパは自分自身をあざけるように、そういいました。 そして実際にも、まるでたつまきのようだったのでした。 パパにもたぶん弁解の余地はあるのでしょう。 パパもパーティーにでかけるために正装していて、ネクタイを結ぶまでは、完璧にこなせていました。 債券や株のことまで分かるはずが、まともにネクタイもむすべないなんてことを、パパについて言わなければならないのは、びっくりぎょうてんです。 パパは時々争わないでマケを認めるようなことがありましたが、一家にとっては、パパがぐっとプライドを押えて、最初から結んであるネクタイを使うほうが良い場合が、ままあったものです。 今回もまさにそんな場合で、パパは手にしわくちゃのコンチクショウのネクタイをもって、コドモ部屋に駆け込んできました。 「あらどうしたの、あなた」 「全く、」パパは本気で叫びました、「このネクタイときたら、むすべないようになってるんだ」パパはひどく皮肉っぽく「首のまわりをまわりやしない、ベッドの柱なら上手くいくのに、ああ、ベッドの柱なら20回はできたぞ、どうして自分の首のまわりだとだめなんだ、おまえ、弁解を許してくれ」といいました。 パパが思うに、ママはそれほどびっくりしていないようだったので、厳しい口調でこう続けました。 「おまえ、もしもこのネクタイが結べなければ、今夜のディナーは取りやめだということをいっておくぞ。 今夜のディナーに行かなかったら、仕事にも二度といけん。 仕事に二度と行けなければ、おまんまのくいあげだ。 コドモ達も路頭にまようんだぞ」 その時でさえママは落ち着いていて、「まあ、あなたやらせてみてください」といいました。 パパがママに頼みに来たことも、まさにそのことだったのです。 そして見事な手際でパパのネクタイを結んで、そのあいだコドモ達は自分達の命運が決するのを、まわりで立ちすくんで見守っていました。 ママがそんなに簡単にネクタイを結ぶので、かえって腹をたてる男の人もいたかもしれません。 ただパパは全くそんな性格の持ち主ではありません。 ママにそっけなくお礼をいったそのとたん、すっかり怒ってたことも忘れて、つぎの瞬間にはマイケルを背中におぶって踊りまわっているのでした。 わたしたちはなんて騒々しく、ふざけたりしてたんでしょう。 ママは、思い出しながらそう言いました。 「最後のおふざけだったな」パパはうめくようにいいました。 「ジョージったら覚えてます? マイケルがわたしに突然こういったのを。 いったいどうやって僕のことをわかるようになったのって」 「覚えてるさ」 「まったく優しいコドモたちだったと思いません、ジョージ」 「それにわしらのコドモだよ、わしらの。 もういなくなってしまったけど」 おふざけはナナの登場でおさまりました。 大変不幸なことにパパとナナはぶつかって、ナナの毛がパパのズボンについたのです。 ズボンは新しいだけではなく、パパにとっては始めての組みひも付きのズボンだったので、パパは泣かないために口びるをかみしめなければなりませんでした。 もちろんママはパパのズボンにブラシをかけましたが、パパはやっぱりイヌを乳母に雇うのは間違いなんだという話をむしかえしだしました。 「ジョージ、ナナはこの家の宝だわ」 「それは認めるよ、ただ時々ナナが、コドモ達を子犬とでも思ってやしないか、不安になるんだ」 「あらいやだ、あなた、ナナはちゃんとコドモ達がたましいをもっていることを知ってますわ」 「うたがわしいもんだな」パパは思慮深くいいました。 「うたがわしいな」いい機会だとママは思ったので、あの男の子のことをパパに話してみました。 パパは最初はその話をバカにしていましたが、影をみせられると考え込み「全くしらないやつだわい」と詳しく影を調べながら、こうつづけました。 「ただ悪いやつのようだな」 「わしたちがまだ話し合ってたときだったな、覚えてるかい、ナナがマイケルの薬をもって入ってきたんだった。 もうおまえも口で薬のビンをくわえてくることもないんだなぁ、ナナ、全部わしのせいだ」 パパは強い人でしたが、薬のこととなると必ずかなりばかげた行動をとってしまうのでした。 もしパパに欠点があるとするならば、薬なんて小さい頃から平気で飲んできたなんて思いこんでいたことでしょう。 そして今マイケルが、ナナが口にくわえてさしだしたスプーンをいやがると、パパはぶつぶついいだしはじめました。 「男だろ、マイケル」 「やだやだ」マイケルはわがままにも泣き始めました。 ママは、ごほうびにマイケルにあげるチョコレートをとりに部屋をでていきました。 で、パパはママのそんな行動が厳しさに欠けてるぞと思って、「おまえ、マイケルを甘やかしちゃダメじゃないか」と呼び止め、こう続けました。 「マイケル、わしがおまえの年頃のころにはだ、ぶつぶついったりせずに薬をのんだものだ。 わしは言ったよ、やさしいおとうさん、おかあさん、元気になるための薬を飲ませてくれてどうもありがとう、ってな」 パパは、これが本当のことだったと思っているのです。 そしてウェンディもナイトガウンに着替えていたんですが、パパはそうだったにちがいないと信じていましたから、マイケルを励ますためこういったのでした。 「パパが時々飲んでる薬は、もっと嫌な味がするわよねぇ、パパ」 「もっと、もっとだ」パパは胸をはっていいました「もしわしが薬のビンさえ失してなければ、いまここでおまえの手本に飲んでやるのになぁ」 正確には、失したわけではありません。 パパは真夜中に衣装部屋の一番上まで登っていって、薬ビンを隠したのです。 ただパパは知らなかったのですが、仕事熱心なエルザが、それを見つけて洗面所に返しておいたのでした。 「どこにあるか知ってるわ、パパ」ウェンディはそう叫ぶと、役にたてることがうれしくて、「もってくるわ」とパパが止めるヒマもなく、姿を消しました。 突然パパの気分は、ドット落ち込んでしまいました。 「ジョン」パパは身震いしながら、言いました。 「あれはまったくひどいしろものだぞ、むかむかするし、べたべたするし、おまけに甘ったるかったりするんだぞ」 「すぐに飲み終わるよ、パパ」ジョンが励ますようにいうと、すぐに薬のはいったグラスを持ったウェンディが、かけこんできました。 「できるかぎり、いそい、だのよ」ウェンディは、息をきらしながら言いました。 「もちろん、おまえは、すばらしいっていっても過言じゃないほど急いでくれたよ」パパは、ウェンディに対してまさに悪意に満ちたていねいな口調で、そう言い返しました。 「まずマイケルからだ」パパはがんこに言いました。 「パパが最初だよ」マイケルはうたぐりぶかそうにいいました。 「どうもわしはき・ぶ・んがわるいなぁ」パパは脅すようにいいましたが、「さあ、パパだよ」とジョンがいいはなちます。 「ジョン、おまえはだまってたらどうなんだ」パパは厳しく言いました。 ウェンディは、全く困惑してしまいました。 「わたしは、パパがすぐにでもごくって、薬をのんじゃうと思ったのに……」 「そういう問題じゃないんだ」パパはこういい返しました。 「問題はだ、マイケルのスプーンのより、わしの方が量が多いことなんだ」パパの誇り高きプライドは、はりさけんばかりです。 「だからフェアーじゃないんだ。 たとえ死に際の最後の一言になろうとも、わしはいうぞ、フェアーじゃないとな」 「パパ、ぼくまってるよ」とマイケルが冷たくいうと 「あぁ、おまえは待ってるなんていってるがいいさ、だがわしこそが待ってるんだ」 「パパは臆病なカスタードクリームみたい」 「なに、おまえの方こそ臆病なカスタードクリームだ」 「ぼくはこわくないもん」 「よし、じゃあ、飲むんだ」 「うん、じゃあ、パパのんで」 ウェンディは、素晴らしい考えを思いつきました。 「一緒に飲めばいいわ?」 「たしかに」パパは言いました。 「マイケル、準備はいいか?」 ウェンディはひとつ、ふたつ、みっつといって、マイケルは薬をのみました。 だけどパパは自分の薬を背中にこっそりかくしたのでした。 マイケルは怒りの叫び声をあげました。 「あらパパ」ウェンディも大きな声をあげました。 「どういう意味だ、あらパパ、なんて」パパは問い詰めました。 「さわぐんじゃない、マイケル。 飲むつもりだったんだよ、だけど、ええっと、飲み損ねたんだ」 3人がパパを見る眼はなにか見てはいけないものでもみるような、まるっきりぜんぜん尊敬してないような目つきでした。 「おまえたち、そら見てごらん」ナナがバスルームへ姿をけすやいなや、パパは下手にでていいました。 「すごいジョークを思いついたんだ。 ほらわたしの薬をナナのおわんに入れて、ナナがミルクだと思ってそれをのんだら……」 薬とミルクの色は一緒でした。 でもコドモ達には、パパのユーモアのセンスは全然分かりかねました。 ただパパがナナのおわんに薬を注いでいる間、非難がましくパパを見ていました。 「おもしろいぞ」パパは自信なさそうに言って、コドモ達もママとナナが部屋に戻ってきた時に、思い切ってパパのことをばらしたりはできませんでした。 「ナナ、よしよし」パパは、ナナを軽くなでながらいいました。 「少しミルクをどうだい」 ナナはしっぽをふって、薬のところに駆け寄ると舌で飲み始めました。 そしてナナはパパをすごい目つきでにらみ、怒った目つきではありませんが、こんなに気高いイヌに大変申し訳ないことをした、と思わせるような大粒の涙をパパにみせつけて犬小屋にもぐりこみました。 パパはものすごく自分を恥じいりました。 でもマイッタともいえません。 ひどくいやなシーンとした雰囲気のあと、ママがおわんの匂いをかぐと、「ジョージったら、あなたの薬じゃないの」といいました。 「ほんのジョークのつもりだったんだ」ママがコドモ達とナナを慰めているのに、パパは大声で言うと「いいさ、」と苦々しく続けました。 「わしがすっかり道化になってやって、この家を楽しくしようとしてるのに」 ただウェンディは、まだナナをだきしめてました。 「いいだろう」パパは大声をだしました。 「ナナをせいぜい大事にしてやるんだ、だれもわしにはかまっちゃくれん。 いいんだ、わしはただの大黒柱ふぜいだよ、なぜわしを大切にしようとせん、どうしてだ?」 「ジョージ」ママは、パパに懇願するようにいいました。 「そう大声をださないでくださいな、召使たちが聞きつけるじゃありませんか」どうしてか、リザは一人きりなのに召使たちなんて呼ぶようになっていたのでした。 「いいじゃないか、」パパは、なにもかまうもんか、というふうに答えました。 「世界中にでも聞かせてやるさ。 だが、もうこんりんざい、あのイヌをコドモ部屋に置いとくのはまかりならん」 コドモ達は泣き始めました。 そしてナナはお願いするように、パパの足元にかけよりました。 ただパパは、しっしっとナナをおいやり、ふたたび偉くなったような気分を感じているのでした。 「無駄だ、無駄だ」パパは大声をだしました。 「おまえにお似合いの場所は、庭じゃないか。 いますぐ庭にむすびつけられてくるといい」 「ジョージったら、ジョージ」ママは小さな声でいいました。 「あなたにあの男の子のことを話したのを忘れたの?」 まぁなんてことでしょう。 パパは聞いていなかったのでした。 パパは、この家の主人はだれかはっきりさせようと決心していましたし、命令してもナナが犬小屋からでてこないとみると、甘い言葉でおびきだし、がしっとナナをつかむとコドモ部屋からひきずりだしました。 パパは自分を恥じていましたが、とにかくやったのです。 それというのも全部パパの優しい心のためなので、とにかくみんなに感心してもらいたかったのです。 ナナを裏庭に結びつけると、かわいそうなパパは廊下に行き、座りこむと、硬く握りしめたこぶしを目にあてていたのでした。 その間、ママは普段には考えられないような沈黙がただよう中、コドモ達を寝かしつけ、ナイトライトをつけました。 ナナがないているのがきこえます。 ジョンが、泣き声でぶつぶつ文句をいいました。 「ナナを庭に結びつけてるせいだ」ただウェンディは、もっと賢かったのでした。 「ナナは、自分が不幸だから、ないてるわけじゃないわ」ウェンディは何が起きようとしているのか、少し考え込んで言いました。 「危険な匂いをかいだ時のなきごえよ」 危険ですって。 「本当に? ウェンディ」 「もちろんよ」 ママはこわくなって、窓際にいきました。 窓はしっかり閉まっています。 ママは錠をかけ、夜は星で輝いていました。 星はこの家でなにが起こるのか、興味深そうに家の周りを取り囲んでいるみたいです。 ただママはこのことに気づきませんでしたし、小さな星の一つ二つがママにまばたきしたのさえ気づかなかったのです。 ただなんともいえない不安が、ママの心をいっぱいにして、こういわせるのでした。 「今夜のパーティーに行かなくてもいいなら、どんなにいいことかしら」 すでにうとうとしていたマイケルでさえ、ママが不安にかき乱されていることを知っていて、「なにかが、ぼくらにわるさをするの? ナイトライトがついてるのに、ねぇママ」と尋ねました。 「そんなものありませんよ、ナイトライトはコドモ達を守るために、ママが後に残していく目の代わりなんだから」 ママは、ベッドからベッドへコドモ達をうっとりさせるように歌いながら足を運び、小さなマイケルはママに腕をまわしてだきついてこういいました。 「ママ、大好き」それが長い間、ママがマイケルから聞いた最後の言葉でした。 ピーターが飛んで入ってきました 27番地はほんの少ししか離れてなかったのですが、うっすらと雪がふっていてパパとママは靴をぬらさないように器用に雪の上の道を選んで歩きました。 パパとママのほかに通りにはひと一人おらず、全ての星がパパとママを見つめています。 星は美しく輝いていましたが、なにかを進んでやろうとはしないのです。 星は永遠に見ているだけです。 それは星に課された罰で、なにが理由でそんな罰が与えられたのかは、あんまり昔のことで今やだれも知りません。 年とった星は生気のない目をして、ほとんどしゃべりもしなかったのですが(まばたきが星の言葉です)、ただ若い星は、まだあれこれと思いをめぐらしているのでした。 星たちは実のところ、ピーターのことがすごく好きというわけではありませんでした、というのもピーターったら茶目っ気たっぷりに星の後ろにこっそりまわりこんで、吹き消そうとしたりしましたから。 ただ星は、楽しいことが大好きだったので、今夜はピーターの味方なのでした。 で大人たちが片付くかどうか、固唾をのんでみまもっています。 だからパパとママが家の中に入り、27番地のドアがしまるやいなや、夜空は大騒ぎになり、天の川の一番小さな星が叫びました。 「さあ、ピーター出番だよ」.

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ミュージカル『ピーターパン』全キャストが発表 ウェンディ役に美山加恋、ダーリング夫人役は比企理恵に決定

ピーター パン ナナ

ピーター・パン ピーター・パン ジェームズ・マシュー・バリー、芹生一、偕成社、1989。 1、ピーターが姿をあらわす イギリス長屋の十四号、ダーリング氏と夫人、長女ウェンディ、次男ジョン、 三男マイクル、女中ライザ。 夫人が子供の頃、やはり子供だった多勢の紳士、大人になった途端、彼女が好 きだった事に気付いてその家に駆け出す。 ダーリング氏のみ辻馬車で駆け付けた ので、プロポーズに成功。 新婚の頃は熱心に家計簿を付けたが、やがて赤ん坊の顔を描くようになった夫 人。 空想の赤ん坊は、やがて現実に。 かつかつの生活、金がないので乳母はファウンドランド犬のナナ。 かつては誰 の犬でもなかったけど、いつも人間の子供を大事にしていたナナ。 暇さえあれば 乳母車を覗き、子供の体調の変化にも敏感。 子供が眠った後、心の引き出しを片付けるダーリング夫人。 翌朝、目を覚ます 時には、悪い考えは小さく畳んですみにしまわれ、良い考えは、いつでも着られ るように上に置いてある。 子供の心の地図には、ネヴァーランドと海賊船が描かれている。 判らないのは ピーターという名前、床に葉を撒いて帰る。 子供部屋で眠り、夜中に目を覚ましたダーリング夫人。 葉っぱで編んだ服を着 て、小さな歯の並んだピーターと対面。 2、影 夫人の悲鳴、駆け付けるナナ、飛んで逃げるピーター。 落ちた窓、ナナの口に は影が残される。 影を巻いて、引出しにしまう夫人。 運命の金曜日、二十七号からの招待。 ウェンディの眼を喜ばせる為に、早々と ドレスに着替える夫人。 ナナの勧める薬を飲まないマイクル、自分の薬も無くなっていなければ手本を 示してやれるのにとダーリング氏。 それを見つけたウェンディ、恨めしげな父。 一、二の、三で飲むと約束して、コップを背に隠す父。 じっと父を見つめる三人、 その眼はお父さんなんか尊敬するものかと言っているかのよう。 ごまかして、ナ ナのミルク皿に薬を入れる父。 帰って来たナナ、薬を舐めて、眼に涙。 皆が非難するので、自分の権限を示す為に、ナナを裏庭につなぐダーリング氏。 危険を嗅ぎつけて吠えるナナ。 気が進まないながら、招待を受ける夫妻。 星が二人を見ている。 星は美しいが、 自分から何かをする事はできない。 ただ、眺めているだけ。 それは大昔に悪い事 をした罰なのだが、あんまり昔なので、何をしたのか覚えていない。 後ろから来 て、光を吹き消すピーター。 良くは思わない星だが、面白い事は好きなので、今 夜は味方につく。 ダーリング夫妻の姿が消えると、小さな星が招く。 「もういいよお、ピーター」 3、さあ、いこう、いこう 常夜灯ひとつ残して、真っ暗な子供部屋。 だが、その千倍は明るい光が、引出 しから引出しを飛び回り、ポケットをひとつひとつ裏返している。 それは手の平 大の妖精ティンカー・ベルだ。 影はどこだと尋ねるピーター、ティンクは水差しの中でひと休み。 人間には判 らないが、鈴のような声で返事をするティンク。 引出しから影を取るピーター、 嬉しさの余りティンクを引出しに閉じ込める。 影が足に着かないので、めそめそ泣くピーター。 目を覚ますウェンディ、自己 紹介。 住所を尋ねられたピーター、二つ目の角を曲がって、朝までまっすぐの所。 針と糸で、影を足に縫い付けるウェンディ。 影が着くと、自分でそれをしたよ うに得意がるピーター。 「ぼくはほんとに、おりこうさん。 あったまいいの、こんこんちき」 機嫌を損ねるウェンディ。 ひとりの女の子は、二十人の男の子より役に立つと おだてるピーター。 キスをして上げても良いと、指ぬきを渡すウェンディ。 お返しのキスと言って、 ドングリのボタンを渡すピーター。 ウェンディ、それを首に掛ける。 大人になるのが嫌で、ケンジントン公園に逃げ出したピーター。 そこで妖精と 暮らしている。 この世に生まれた赤ん坊が始めて笑った時、その笑いが弾けて妖 精が生まれる。 大きくなった子供が、妖精なんか居るもんかと言うと、妖精がど こかでひとりずつ死ぬ。 引出しから鈴の音、ティンクの登場。 可愛いと声を上げるウェンディ、だがティ ンクは怒りん坊の顔。 「とんまのまぬけ」 ネヴァーランドには迷子の男の子がいっぱい、でも女の子がいない。 やたら機 嫌を取るピーター。 嬉しくてキスをしてやりたいが、それはさっき指ぬきと偽っ たので、これが指ぬきと言って、ピーターに口付けをするウェンディ。 ピーター も指ぬきを返すと、何者かがウェンディの髪を引っ張る。 「とんまのまぬけ」 お話目当てで連れて帰りたいが、飛べないと言うウェンディ。 風の背中にとび 乗る方法を教えてあげるとピーター。 ふたりの弟も起きるが、ジョンの合図でみ な寝たふり。 ナナとライザの登場、みんな、にせの寝息。 ナナはつながれ、ライザは台所仕 事へ。 鎖を引きちぎるナナ、二十七号へ乱入。 帰宅するダーリング夫妻。 残り十分、ピーターの飛行指導。 すてきな事を考えれば、自然と体が持ち上が る。 これは嘘で、妖精の粉をふり掛けないと飛べない。 子供部屋を見上げるダーリング夫妻、輝きわたるカーテン、小さな寝巻姿の影 がぐるぐる空中を回っている。 その数は三つ、いや四つ。 星の合図、飛び出す四人。 駆け付けたダーリング夫妻、窓には、上に向かう流 れ星。 4、空の旅 尖塔の回りを回ったり、競争をしながら飛ぶ四人。 気が付いた時には海の上。 それは二つ目の海で、もう三度目の夜。 空腹を覚えると、人間が食べられそうな物を喰わえている鳥を見つけ、追いか けてそれを引ったくる。 向こうも、引ったくり返す。 何マイルもそれを繰り返し て、最後には挨拶をして別れる。 眠ると、落ちてしまう。 落ちてゆくマイクルを助けるピーター。 しかし、次も 助けてくれる保証はない。 ネヴァーランドの近くで、風から降りる一行。 朝日、百万本の金の矢が島の位 置を示す。 みんなが夢に描いた島なので、いちいち見覚えがある。 珊瑚の入り江、 海がめ、フラミンゴの群、赤ちゃん狼、インディアンの煙。 ピーターがジョンに質問、「きみは冒険を先にする? それとも、おやつにす る?」 割り込むウェンディ、「おやつがいいわ」 真下で眠る海賊の説明。 頭目はフック、ジェームズ・フック。 黒ひげ号の水夫 上がりで、海賊バーベキューが恐れた唯一の男。 その右手は鈎爪。 起き出したティンク、ゆっくり飛べないので、みんなの回りをくるくる回る。 それはまるで後光のよう、ウェンディは気に入る。 しかし、その光は海賊の標的 になる。 ジョンの帽子に入れる。 海賊の砲撃、命中しないが、飛ばされる四人。 ウェンディ、ティンクの案内に 従う。 5、ほんものになった島 ネヴァーランドの住人。 迷子の男の子、海賊、インディアン。 男の子は六人、毛皮を着ている。 トゥートルズ、ニブズ、スライトリー、カー リー、双子。 その後を追って歩く海賊。 腕の太い脱獄囚チェッコ、入れ墨だらけのビル・ジュ ークス、人情味のあるスミー、ほかスターキー、スカイライツ、ヌドラー等々。 親玉はフック、その顔は死人のように青黒く、意外とハンサムで、眼は真っ青。 人を殺す時はそこに赤い点が浮かぶ。 貴族出身のフック、人を引き裂く時でさえ、 どこか上品。 いちばん慇懃に見える時がいちばん残酷なのだが、育ちの良さが出 ている。 後に続くのがインディアン、斧とナイフを手に、しのび足で、あたりを警戒し ながら歩く。 しんがりはタイガー・リリー、ピカニニ族きっての美女で女王。 な まめかしいかと思うと冷たく、冷たいかと思うと色っぽい、気まぐれな美女。 次に続くのが動物達、ライオン、虎、熊、最後に大ワニ。 しばらくして、また 男の子らが続く。 ニブズの頭に狙いを付ける海賊、それを止めるフック。 ここで音を立てりゃ、 こっちがインディアンにやられる。 もっと憎いのはピーター、この腕をちょん切 り、ワニにくれてやった奴だ。 フックの味を覚えたワニ、ずっと付きまとう。 しかし、呑み込んだ時計が胃袋 にあるので、カチカチする音に気付けば、先に逃げられる。 キノコの形をした煙突を見つけるフック、中から子供らの声が聞こえる。 悪だ くみを考える所へ、カチ、カチ、カチ。 震えて逃げ出すフック。 狼を追い払う為に、股のぞきをするニブズ。 空に白い鳥のようなものを見つけ る。 それはウェンディ、さきにティンクがやって来て、あれを撃ち落とせと命令。 皆が弓矢を射る。 トゥートルズの矢が、ウェンディの胸に刺さる。 6、小さな家 これは女の人、僕達の世話をする為にピーターが連れて来た人だ。 なのに、殺 してしまった。 ピーターの帰宅、皆の沈黙。 自分の仕業と名乗り出たトゥートル ズに、抜いた矢を刺そうとするが刺せないピーター。 何かが止める、その手は瀕 死のウェンディ。 首に下げたドングリのボタンに命中していた。 事情を聞き、ティンクに絶縁を申し渡すピーター。 ウェンディが執りなすので、 永久はやめて一週間に直す。 重体のウェンディ、地下にも運べないので、ここに家を建てる。 さらにジョン とマイクルの到着。 自分達はウェンディの召使いと自己紹介する迷子の子ら。 医者を呼べと命じられたスライトリー、ジョンの帽子を被っただけで引き返し、 私が医者ですと言う。 「つもり」と本物の区別の付かないピーター、それを真に 受ける。 ただし、演技が下手だと指をぶつ。 ウェンディの歌に従って、仕上げられる家。 壁は赤、屋根は緑、最後に煙突の 代わりにジョンの帽子を載せて完成。 ドアが開いて、ウェンディの登場。 みな、一斉に脱帽。 僕達はあなたの子供で すと、双子。 みな一斉に膝を着き、両手を差し出す。 「ウェンディ、僕達のお母 さんになって下さい」 優しくて、お母さんっぽければ良いと言われ、承知するウェンディ。 八人を地 下のベッドに寝かせ、自分は小さな家で眠るウェンディ。 遠くでは海賊の酒盛り、 あたりを徘徊する狼。 抜き身の剣を持ち、小屋の外で見張るピーター。 やがて眠 ると、妖精たちが四、五人、その足の上を通りすぎる。 妖精の道を塞ぐと、ひど いいたずらをされるのだが、ピーターだけは、鼻をつまむだけで勘弁して貰える。 7、地下の家 樹のうろから出入りする地下の家。 息を吸ったり吐いたりして、体を伸縮させ て昇り降りする子供達。 三日練習すると、つるべのように。 七人が並んで寝るベッド、マイクルのみ吊した籠で眠る。 ティンクは壁に穴を 穿ち、そこをカーテンで仕切って眠る。 小さいながら、凝ったその部屋。 たんす はチャーミング六世時代のもので、シャンデリアはティドリウィンクス製、でも それは体裁で、部屋を照らすのはティンク自身。 料理のメニューは、パンの実、ヤマイモ、ヤシの実、焼き豚、バナナ。 でも本 当に食べるのか、「つもり」の食事をするのかはピーターの気分次第。 一週間、洗濯、食事、繕いに追われるウェンディ。 独身の人が羨ましいと言い ながら、顔は輝いている。 両親をぼんやりとしか覚えていないジョン、ほとんど忘れているマイクル。 父 の背、母の眼、母の笑い、何を飼っていたか等、両親に関する試験問題を作るウェ ンディ。 面白いので、皆も参加する。 スライトリー峡谷でのインディアンとの戦争。 渦中、急に自分はインディアン だと宣言するピーター、皆もそれに習う。 すると、敵方のインディアンもそれに 習って、自分達が迷子になると言う。 8、人魚の入り江 眼を閉じれば、瞼の裏に水の形が見えてくる。 もっと強く眼を閉じれば、今度 は炎のように燃える。 その燃え上がる一瞬手前で眼を開くと、人魚の入り江が見 える。 置きざり岩を中心に何十もの人魚の群、子供が近付くと逃げる。 その時に水を 跳ねるのは、どうもわざとやっているよう。 雨上がりの天気の良い日には、びっくりするほどの数の人魚がいる。 虹の輪を 中心に、泡でできたボールで遊ぶ人魚たち。 何百という数。 置きざり岩の名の由来、海賊の船長がしくじった水夫をここに残す。 満潮にな ると沈むので、水夫は溺れ死ぬ。 そこで昼寝をする子供達、その横で縫い物をするウェンディ。 さざ波が走り、 日がかげり、何者かのしのび寄る気配。 眠っていても危険を嗅ぎ付けるピーター、 海賊だと叫んで、皆は海に潜る。 近付いて来たのは小舟、乗り手は海賊ふたりと、両手両足を縛られたタイガー・ リリー。 酋長の娘らしく、堂々としているリリー。 フックの声色を真似て、リリーを放せというピーター。 スミーが綱を切ると、 海に飛び込んで逃げるリリー。 もうひとつのフックの声、泳いで来たのは本物のフック。 小舟に上がり、息を 切らして言う。 「万事休すだ、小僧どもは母親を見つけおった」 小耳にはさみ、 誇りで胸が膨れる思いのウェンディ。 水に浮かぶ鳥の巣、それを守るネヴァー鳥。 おそらく樹から落ちたに違いない が、卵を見捨てず巣を守り続ける母鳥。 あれが母というものだ。 スミーの提案、小僧どもの母親をさらって、俺達の母親にしてしまおう。 それ を採用するフックの計画。 小僧どもは目隠しをして、板の上を歩かせる。 残った ウェンディは我々の母親になる。 リリーはどうしたとの問いに、命令通り逃がしたとの答え。 これは奇態な事、 亡霊にものを尋ねると、フックの声色で聞いているとの答え。 本物のフックと影 の声との押し問答、降参した海賊に対して名乗りを上げるピーター。 戦闘開始、海賊ふたりと子供達との混戦。 ひと息入れる為に岩に登ったピータ ー、反対側から来たフックと出会って決闘。 自分が高い所に居ると気付いて相手 に手を貸そうとしたピーター、そこに打ちかかるフック。 生まれて始めて卑怯な仕打ちを受けた少年のように、茫然とするピーター。 そ う、一度でも他人に卑怯な仕打ちをすると、また仲直りしたとしても、もう同じ 子供ではない。 ワニに追われて逃げるフック、子供らは小舟を奪って生還。 置きざり岩に残さ れたピーターとウェンディ。 くたくたのウェンディ、痛手のピーター、二人とも 飛ぶ事はできない。 以前マイクルが作った凧が飛ばされて来たので、ウェンディ をそれに乗せて送る。 たったひとり残るピーター、微笑する。 「死ぬということは、きっとすばらしい大冒険だぞ」 9、ネヴァー鳥 巣を小舟代わりに、羽根を櫂にして、助けに駆け付けるネヴァー鳥。 しかし、 話が通じない。 巣を残して飛び立つネヴァー鳥。 卵を二つ残したまま、ピーター がそれをどうするか、翼で顔を覆いながら、隙間から覗くネヴァー鳥。 置きざり 岩に一本の杭、そこに海賊スターキーの帽子がある。 卵を帽子に入れ、自分は巣 に乗るピーター。 杭を帆桁に、シャツを帆にする。 ピーターの帰還、包帯を配るウェンディ。 腕を吊ったり、足を引きずったりし て、寝る時間まで遊ぶ子供達。 後日談。 自分の帽子の上に鳥が座っているのを、海岸で恨めしげに眺めるスタ ーキー。 10、幸福な家族 インディアンと迷子の同盟。 ピーターを「偉大なる白人の父」と呼び、夜間は 地下の家の回りを警備するインディアン達。 いつもの食事風景。 ニブズはいけないんです、ジョンはいけないんです、と皆 がウェンディにあれこれ訴える。 ピーターが父さん、ウェンディが母さん。 でも本当はどういう気持ちなのと尋 ねると、息子が良いと言うピーター。 11、ウェンディのお話 七人の子供を相手に、ダーリング夫妻の話をするウェンディ。 子供のいない空っ ぽのベッドを想いなさい、でみな涙。 数年の後、ロンドン駅に降りる上品な婦人、 それがウェンディ。 弟二人も連れている。 めでたしめでたし。 ひとり呻き声を上げるピーター。 お母さんはそんなもんじゃない、僕が家へ帰 れば、窓は閉まり、僕の事はすっかり忘れられ、ベッドには別の小さい子供が寝 ていた。 心配になって帰ると言い出すウェンディ。 別に止めないピーター、でも内心は 複雑。 大人に仕返しする為、一秒間に五回の息をするピーター。 ネヴァーランド では、子供が一回息をする度に、大人がひとり死ぬという言い伝えがある。 これ で大人を根絶やしにする。 ピーターが外に出た間、帰らせないと子供達に詰め寄られるウェンディ。 弱虫 のトゥートルズに助けを求めると、短剣を抜き、誰だろうと容赦しないと、それ に応えるトゥートルズ。 ティンクが道案内、いよいよ出発。 残念そうな子供達の眼に、一緒に来れば良 いと提案するウェンディ。 飛び上がって喜ぶ子供達。 ひとり、行かないと言うピーター。 いつまでも小さいままで、楽しい事をして いたいんだ。 気まずい沈黙。 平然たるピーター、ティンクに出動命令を下す。 真っ先に飛び 出すティンク、しかし、続く者がいない。 その時、地上のインディアンに対して、 海賊の襲撃。 12、子どもたちがさらわれる 海賊とインディアンの戦い、今回はフックの不意打ち。 インディアンは種族の 知恵に従い、夜明けの直前、白人の勇気がいちばん衰える時刻に攻撃をかけるも の。 インディアンは文明人をびっくりさせるほど鋭い感覚の持ち主。 海賊のひとり が枯れ枝を踏んだ途端、彼らの上陸を嗅ぎつけ、あちこちでコヨーテの鳴き声が 始まった。 夜明けを待たず、しゃにむに進むフックの新戦法。 タイガー・リリーを囲む、十二人の精鋭。 勇敢な父の息子として、眉毛ひとつ 動かさず戦いに向かう。 しかし、時すでに遅く、ピカニニ族の花と言うべき精鋭 の多くが死ぬ。 リリーは落ち延びる。 輝かしい勝利の瞬間、フックは自分をどう思ったか。 得意さを顔に出さないフッ ク。 この暗い、孤独で、得体の知れない男は、部下から距離も気持ちも離れた所 に立っていた。 真の目的はピーター。 ピーターの生意気さが、フックの神経を逆撫でする。 檻 の中のライオンを、しつこくからかうスズメのよう。 樹のうろで耳を済ます海賊。 外の様子を伺う子供達、インディアンが勝てば太 鼓を鳴らす筈だと囁く。 聞いたスミー、フックの命で太鼓を二回鳴らす。 13、きみたちは妖精を信じるだろう? うろから出た子供達、海賊の手から手へまりのように運ばれる。 ウェンディだ け扱いが違う、帽子を取り、腕まで貸すフック。 子供を縛り上げる海賊、縛りにくい太っちょのスライトリーを邪険に扱う。 乱 暴はやめろと命じたフック、その体を見て、大人だって樹の中を通れる事に気付 く。 ウェンディの小屋を籠の代わりに、子供を運ぶ海賊達。 一行を見送るフック。 小屋の煙突から最後の煙が出て、フックを挑発する。 勇気を持って地下に降りるフック、安々と眠るピーター。 フックだって根っからの悪人ではない。 花を愛したり、音楽を愛したりする。 ハープシコードの演奏は、なかなかの腕前。 手を下さず帰ろうとするフックの眼 に止まったのは、ピーターの生意気な恰好。 さらにピーターの薬を見つけたフッ ク、指輪の毒をそこに数滴たらして引き上げる。 目を覚ましたピーター、部屋には誰もいない。 ティンクに事情を聞き、出かけ る前に薬を飲もうとコップを取る。 止めるのも聞かず、薬を飲もうとするピータ ー。 稲妻のように割り込んで、薬を飲み干すティンク。 とんまのまぬけと言い残 して、よろけながら部屋に引き取る。 刻一刻と弱まるティンクの光、その光の消える時が死ぬ時。 子供達が妖精を信 じてくれれば、ティンクも元気になれる。 ネヴァーランドの夢を見ている世界中 の子供達に呼び掛けるピーター。 信じるだろ? 信じるなら手を叩いてくれ。 無数の拍手と、拍手しない子と、それを制する子供。 拍手が急に止んだのは、 何事かと思ってお母さんが子供部屋を覗きに来たせい。 元気になり、ベッドから起き、再び部屋を飛び回るティンク。 拍手に礼を言う より、意地悪な子供に仕返しをする事を考えている。 剣を持って夜の森を走るピーター。 子供達は樹の皮を剥いだり、種を撒いたり しているだろう。 「こんどこそ、フックか、ぼくかだ」 14、海賊船 河口近くの海賊船ジョリー・ロジャー号、情け深いスミー、孤独なフック。 本 名を聞けば誰もが驚く、名門校出身のフック。 バーベキュー、フリントも倒した が、子供達は誰も、私を好きにならない。 人気者のスミー。 脅したり、叩いたりしても、子供がまつわりつく。 マイクル、 スミーの眼鏡を取って掛ける。 引っ立てられる八人の子供達。 うち六人は板の上を歩いて貰う、残る二人はボ ーイとして働いて貰う、という申し出。 僕が海賊になるのを母は望まないと、きっ ぱり断るトゥートルズ。 フックの甘言に乗せられるジョン、しかし、国王陛下の 臣民でいられなくなると聞いて断る。 呼び出されるウェンディ、海賊船の汚い事にはうんざり。 丸窓のガラスは汚れ 放題で、指先で「きたならしいブタ」と書けるほど。 美しい方、子供達の板歩きをご覧あれとの言葉に、イギリス紳士にふさわしい 死に方をしてくれとの、母からの言づて。 マストに縛られるウェンディ。 子供は板歩き、ウェンディにはそれを見せてやろうとするフック。 カチ、カチ、 カチ、という音。 全身の関節が外れたように崩折れるフック。 15、「こんどこそ、フックか、ぼくかだ」 島を急ぐピーター、ふとワニの横を通ると、時計の音がなくなっているのに気 付く。 代わりに自分がカチ、カチをやると、ワニが後からついて来る。 やがて船 端にまで来たピーター、子供らには黙っているよう眼で合図。 ピーター、舵手のエドを刺して海へ捨てる。 時計の音が消えて元気を取り戻すフック、板歩きの前にネコ(九条の鞭)で撫 でてやろうと子供を脅す。 船室でビルの叫び、続いて、探索を命じられたチェッコの叫び。 スターキー、見てこいと命じられて断る。 謀反かと詰め寄るフックに後ずさり して、海に落ちる。 一計を案じたフック、子供達を船室にぶち込む。 手錠を外し、外へ出てウェン ディの綱を切り、そのマントを被るピーター。 ときの声を上げる。 この船は呪わ れている、娘を海に放り込め。 あんたを助けられる者はいないと海賊、いや、ひとり居るとマントを捨てるピ ーター。 開戦、二人ひと組で海賊にかかる子供達、カンテラで敵の眼をくらます スライトリー。 海賊を殺しては、海に投げ込む、その音は十一。 残るはフックひ とり。 円を描いて子供を寄せつけぬフック、ひとりの子を鈎で引っかけ、楯の代わり に使う。 ピーターとの一騎打ち。 「ごうまん無礼な若造め、地獄行きを覚悟するがよい」 「いんけん卑劣な大人め、おまえこそ覚悟するがよい」 形勢は五分、素早いピーターと、力で勝るフック。 肋骨を突かれて剣を落とす フック、拾わせるピーター。 お前は何者だとの問いに、ぼくは若さだ、喜びだと 答える。 何度も突かれるフック、火薬庫に逃げて火を付ける。 ピーター、火の着いた砲 弾を海に捨てる。 最後にピーターが作法を破るのを見たいフック、船端で挑発す る。 望み通り、ピーターに蹴られてワニの口に落ちるフック。 生き残った海賊はふたり。 スターキーはインディアンの子守、スミーは世界を 放浪。 夜中の一時半、皆を寝かせるウェンディ。 16、家に帰る ピーターが船長となった海賊船。 皆が勇敢なならず者なのは判るが、義務は果 たして貰いたい、逆らえば容赦はしないとの訓辞。 ウェンディが仕立て直したフッ クの服を着たピーター、左手にパイプ、右手は拳を握り、人差し指で鈎を作り高 々と振り回す。 アゾレス諸島までは船、そこからは空路。 かわってダーリング邸。 自分を責めるダーリング氏、ナナが賢く、自分が間違っ ていたと後悔。 子供が帰って来るまでは、犬小屋に住むと決意。 犬小屋に入ったまま辻馬車に乗り、会社に出勤するダーリング氏。 やがて世間 の理解、歓声を上げて付いて来る群衆、サインをねだる女の子、一流新聞に記事。 社交界からの招き、その招待状、「犬小屋に入ったまま、お越し下さい」 いよいよ木曜日、あんなに快活だったダーリング夫人の寂しげな様子。 まるで そこが痛いかのように、胸の上でせわしなく動く手。 子供の夢を見る夫人、前足 を膝に乗せるナナ。 子供達より先に着くピーター、窓を閉めて、室内を物色。 ピアノを弾くダーリ ング夫人を見て、口に指ぬきがいっぱいあると観察。 ピアノを弾きながら、涙ぐ む夫人。 僕達には母さんなんてものはいらないんだと、窓を開けて引き返すピー ターとティンク。 降り立った三兄弟、ナナのいる筈の犬小屋に父を見つけてびっくり。 ベッドに 入って、寝たふりをする三人。 ピアノを終わって部屋に入る夫人、駆け寄る子供 達。 窓の外から見つめる、不思議な男の子。 多くの喜びを知るが、その喜びからは 永遠に締め出されている。 17、大人になったウェンディ 五百数えて、ダーリング邸に入る迷子の子供達。 世話を引き受ける夫人。 金の 問題より、先に自分に言ってくれと渋るダーリング氏。 おだてられて、行進する。 窓をかすめるピーター、養子になれと勧めるダーリング夫人。 学校も、会社も、 顔に髭がはえるのも嫌だと断るピーター。 その唇が震えているのを見て、ダーリ ング夫人の提案。 年に一度、一週間だけ、ウェンディを掃除に行かせる。 学校に通う子供達、飛んで行かないように、その足を紐で縛るナナ。 一年後、ピーターの迎え、葉で編んだ服を着てネヴァーランドへ行くウェンディ。 樹の上の家で生活。 フックも、ティンクの事も忘れているピーター。 二年目、迎えに来ないピーター。 三年目、迎えに来たピーター、去年の事は覚えていない。 大きくなって結婚したウェンディ、ピーターは子供時代の玩具箱に紛れ込んだ ごみのようなものでしかない。 それぞれ仕事に就いた子供達。 ウェンディの娘ジェーン、よく物を尋ねる。 空を飛ぶこと、妖精、ネヴァーラ ンドの話をして聞かせる。 ピーターの訪問、春の大掃除の迎えに来たとウェンディを誘う。 明かりを付け て、大人になったウェンディを見て泣き出すピーター。 それを慰めるジェーン。 顔を洗って戻って来たウェンディ、寝巻姿で飛ぶジェーンを見る。 許可を得て、 一週間だけ出かけるジェーン。 大人になったジェーン、マーガレットの母になる。 それを迎えに来るピーター。 いつまでも続く繰り返し。 子供というものが、朗らかで、無邪気で、無鉄砲であ る限り。 ジェームズ・マシュー・バリー略伝 1860、スコットランド東部キリミュアに生まれる。 父デヴィッドは機織り職人、母マーガレットは快活で話好き、三男七女の九番 目。 長屋住まい、二階建てで四間。 向かいに洗濯小屋あり。 大きくなったら母に何か買ってやるというのが口癖。 次男デヴィッド、スケート場で転倒死。 母親の顔から笑いが消える、ベッドの 上で逆立ちをして見せるジェームズ。 中学時代、山賊と海賊に夢中。 隠れ家を作り、航海日誌を付け、山賊バンデレ ロ上演。 22才、エディンバラ大卒業、ノッティンガムで新聞社に就職。 1888、短編集「オールド・リヒト物語」 母伝承の、故郷キリミュアの物語。 デーヴィズ夫妻の子らと、公園で妖精ごっこ。 さらに、避暑地でひと夏、海賊 ごっこ、妖精ごっこに興ずる。 1902、小説「小さな白い鳥」 1904、戯曲「ピーター・パン、大人になりたがらなかった少年」 ロンドン上 演、好評。 手を叩く場面は名物になる。 1911、小説「ピーターとウェンディ」 1922、セント・アンドルーズ大学学長に就任。 就任演説「勇気」に感銘を受け た学生、宿舎前で海賊の歌を合唱。 1930、エディンバラ大名誉総長に就任、准男爵、有功勲章を授与。 1937、77才、永眠。 「小さな白い鳥」 13-18章のエピソード。 子供はみんな小鳥、やがて巣立ちして、飛んでいって赤ん坊になる。 誕生して、 三週間目に飛ぶ事を忘れる。 ピーターのみ、生まれて七日目に古巣のケンジント ン公園に里帰り。 家に帰ると、寝ながら涙を流している母の姿。 公園の鳥に別れ の挨拶をしなかった事を思い出し、きっと帰って来ると誓って公園へ。 再び自宅 に戻ると、そこには別の赤ん坊がいて、窓は閉ざされている。 参考 寸評 アニメ「ワンピース」は細かいところ、ピーターパンからヒントを得ているようです。 作者の尾田栄一郎さんは、小学校の、年相応の頃に童話に親しんだんじゃないでしょうか。 背伸びして大人向きのものばかり読むと、ロマンスの芽みたいなものが育たないように思います。 「ワンピース」は人気も高く、雇用創出、需要創出効果もあり、日本経済への影響は計り知れません。 こういう実例を真の当たりにさせられると、子供に夢を、という言葉も迫真にせまります。 背伸びするより、年相応が一番、って事ですね。

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【あらすじ】どれくらい知っていますか?原作『ピーター・パン』の”超細かい”ストーリーと設定

ピーター パン ナナ

ピータパンに登場するナナのモデルにもなった犬、ニューファンドランド。 原産国はその名の通り、カナダのニューファンドランド島。 ニューファンドランド島はカナダの東海岸に位置し、夏でも高原には雪が残り冬は厳寒となる厳しい環境です。 ニューファンドランド島は世界屈指の漁場であり、ニューファンドランド犬は網を引くなど漁師たちの手伝いをし、また海難救助犬としても活躍しました。 陸地でも力の強さを発揮し、木材を運ぶなど作業犬として活躍しました。 ニューファンドランドが今の姿になった由来は、はっきりせず主に3つの説があります。 1つ目は、ニューファンドランドはチベットのマスティフと絶滅したアメリカのブラックウルフが交配した子孫であるという説です。 2つ目は、紀元1000年ごろカナダに渡ってきたヴァイキングが連れてきた犬とカナダに生息していたオオカミが交配して生まれたという説。 3つ目は、15世紀~16世紀頃にピレニーズ、マスティフ、ポルトガルウォータードッグの交配種として生まれたという説です。 確かなことは18世紀後半にイギリスの植物学者サー・ジョセフ・バンクスがニューファンドランドを手に入れ、1775年にジョージ・カートライトが「ニューファンドランド」と名付けました。 そして1800年代後半に、スイスのアルベルト・ハイム教授がニューファンドランドを犬種として登録しました。 ヨーロッパで愛されたニューファンドランドですが、原産国のカナダでは一時期絶滅の危機に瀕します。 カナダで飼い犬1頭1頭に税金がかけられるようになったためです。 絶滅しかけたニューファンドランドの復活に一役買った人達がいます。 貢献した一人は、動物画家として有名なイギリスのエドウィン・ランドシーア(1802-1873)でした。 ランドシーアは特に白と黒の毛をもつニューファンドランドを好んで描き、最も有名な「救助終了」の絵にも白と黒のニューファンドランドが登場します。 この白と黒の毛色はのちに「ランドシーア」と呼ばれるようになり、ニューファンドランドの存在を人々に知らしめたのです。 ニューファンドランドは氷の海でも寒さから体を守ることができる厚いダブルコートを持っているので、一見モフモフのクマさんのようにも見えるかもしれません。 トップコートは油分を含んでいるため水をはじくことができます。 耳は垂れ耳。 唇も垂れ下がっているので、よだれが出やすい傾向があります。 毛はまっすぐで長毛。 色は黒、茶色、灰色、白黒(ランドシーア)が登録されています。 ニューファンドランドの性格 ニューファンドランドはその優しい性格で知られています。 ディズニーアニメとしても有名な「ピーターパン」の中で、ウエンディ達姉弟の乳母として登場する犬のナナ。 その乳母犬ナナはニューファンドランドです。 架空のお話しではありますが、原作者のバリーがニューファンドランドのナナを乳母として描いたのには、それなりの根拠があるからでしょう。 ニューファンドランドは子供に対して深い愛情を示す犬なのです。 優しく、フレンドリーで子供たちを守ろうとすることもあるほど。 ニューファンドランドは生まれながらのベビーシッターだという人もいます。 ニューファンドランドは優しいクマさんのような外見をしていますが、性格もとても穏やかです。 賢く特に子供のことが大好きで、子供たちを楽しませることがニューファンドランドの喜びともなります。 ニューファンドランドは家族と一緒にいることに幸せを感じるので、長時間の留守番が必要なお宅や人間との触れ合う時間が少なくなる庭や犬舎での飼育は向いていません。 室内飼育をしてあげましょう。 ニューファンドランドの大きさ オスの体高は約71cm、体重は59~68㎏。 メスの体高は約68cm、体重は45~55㎏。 大人の女性くらいの体重はある大型犬です。 ニューファンドランドのしつけ 犬には幼いときからの社会化やしつけが大切ですが、大型犬であるニューファンドランドにとってはより重要です。 どんなに穏やかな性質の犬でも、社会との適切な交流やしつけなしには人間社会の中でうまく暮らしていけません。 幼年のときから様々な人々やほかの犬にふれあい、色々なものを見たり音を聞いたりする経験を積むことによって、優しく穏やかな犬に成長することができるでしょう。 ニューファンドランドは、性格的にしつけがしやすい犬種です。 人間を喜ばせることが大好きなので、できたら大いにほめてあげましょう。 ・ 人や犬がいる公園に行く …人間に対してはもちろんのこと、他の犬に対しても攻撃的な姿勢は今の社会では敬遠されてしまいますから、小さい頃からフレンドリーな犬になれるように公園などに連れだして交流を図れるようにしてください。 ・ お店などの公共の場に連れて行く …車や電車の音、街に出ると聞こえる人々の声や様々な音楽などに驚いたり怖がったりしないように慣れさせるため、犬の同伴が許可されている公共の場所に行って楽しんでみるといいですね。 ・ 犬のしつけ教室に参加する …ほかの犬にも会えますし、飼い主さんも一緒に参加することで犬との向き合い方や、その犬の個性を知ることもできます。 社会化としつけができているニューファンドランドは、子供や猫などの他の動物との生活も問題なく楽しく送ることができます。 ニューファンドランドの気を付けたい病気 ニューファンドランドは気を付けなければならない病気があります。 すべてのニューファンドランドにこれらの症状が現れるわけではありませんが、飼育する際は心に留めておくことをおすすめします。 ・股関節形成不全 大腿骨が股関節にぴったりと合わない症状で遺伝によるものが多いです。 歩き方がおかしい場合は、獣医で診断を。 痛みを伴う場合もありますが、多くは犬自身の苦痛を伴わないので獣医の指示に従って様子を見てください。 高齢になると関節炎を発症することもありますので、この症状が確認できたら定期的に獣医に状態を確認してもらいましょう。 ・膀胱結石 膀胱に結石ができてしまう症状です。 痛みを伴いますし排尿を困難にしてしまうので、最悪の場合死を招きます。 ただし、薬の服用や療養食を食べることによって回復できますので、普段から尿の状態に注意して異常に気がついたらその日のうち獣医に診てもらってください。 1日、尿が出ないと命に関わります。 ・胃捻転 大型犬に多い症状ですが、胃がガスや空気で膨張した後にねじれてしまう症状です。 膨張し捻転した胃は心臓などの他の臓器を圧迫して最悪の場合死に至りることも。 これは主に早食いや、運動後に一度に大量に飲んだりした場合に起こりがちです。 吐きたいのに吐けない、大量によだれが出る、落ち着きがない、腹部が膨らんでいるなどの症状が見られたら胃捻転の可能性が高いので即刻病院へ行ってください。 ニューファンドランドの寿命 10年~15年。 気を付けなければいけない病気などはありますが、大型犬の平均くらいの寿命です。 ニューファンドランドの飼育の仕方 運動 激しい運動は必要ありませんが、毎日合計で2時間程度の運動をさせてあげましょう。 飼い主と一緒に歩く程度の運動で構いません。 ニューファンドランドは素晴らしいスイマーですし、泳ぐことが大好きです。 たまには飼い主さんと一緒に泳げる場所に遊びに行くのも、ニューファンドランドにとってとても幸せなことでしょう。 ニューファンドランドの子犬は4〜7ヵ月の間に急速に成長するため、その時期は無理をさせると骨に異常をきたす場合があります。 そのため子犬のうちは、アスファルトの道路などの硬い地面で遊ばせないようにしてください。 2歳頃に骨や関節が完全に形成されますのでそれまでは、できるだけ芝生などの上での運動をおすすめします。 夏の暑さに注意 ニューファンドランドは元々涼しい気候の場所で生活していましたし、暑さには弱いです。 日本の湿度と気温の高い夏は屋外での飼育は難しいので室内飼育をし、夏はクーラーなどで室内温度を管理してください。 熱中症になると命を落とすこともあります。 真夏の昼間の散歩は危険ですので避けましょう。 気温の涼しい朝夕を選んで散歩をしてください。 飼育するのには広いスペースが必要です。 運動できる程度の広さがある庭があるとよりいいですね。 給餌 胃捻転を防ぐためにも食事は1日2回に分け、早食いが気になるようであれば早食い防止の皿などを活用してみてください。 犬は人間との暮らしで雑食性も持つようになりましたが、本来は肉食です。 穀物や添加物の含有量が多いフードは避けてください。 できればミール(良質のミールもありますが多くは肉以外の部分を粉にしたもの)が含まれていない、タンパク質を22〜24%、脂肪分を12〜15%を含む良質のフードを選んでください。 肥満は関節に負担になるばかりでなく、病気の原因にもなりますから食べ過ぎには注意しましょう。 被毛の手入れ ニューファンドランドは豊富なダブルコートの毛を持っていますので、週に2~3回のブラッシングが必要ですし、長い毛にはゴミや落ち葉などが付着しやすく汚れやすいので被毛をきれいに保つためには1カ月~2カ月ごとにシャンプーすることをおすすめします。 春と秋は換毛期で大量の毛が抜けるので、よくブラッシングして取り除いてあげましょう。 ニューファンドランドはかなり大型の犬種ですのでご自宅でのシャンプーはかなり大変です。 プロのトリミングを利用すると飼い主さんも楽ですし犬をきれいに保てます。 爪も伸びてきますから1ヶ月に1回程度は切ってあげてください。 爪が床に当たってカツカツと音がするようであれば爪が伸びすぎています。 ニューファンドランドの爪は大きいですし、犬の爪には血管が通っているので爪切りが難しいと感じたら獣医やトリマーに頼みましょう。 歯みがきをする 歯周病になると歯が抜けてしまったり、痛さで食事が困難になったり、菌が他の器官に感染したりします。 犬の健康と長生きのためには毎日歯みがきをしてあげてください。 毎日が難しくても週に少なくとも2,3回はみがいて、歯石や細菌が蓄積しないようにしましょう。 液体歯みがきなどを併用すると効果的です。 耳のお手入れ ニューファンドランドは垂れ耳なので、耳の中が蒸れて汚れやすい傾向があります。 週に1回は耳のチェックをし、耳用のクリーナーで優しく拭いてあげてください。 ただし、拭くのは外耳部分だけで内耳部分は触らないようにしましょう。 内耳は皮膚がとても薄く繊細なので傷つきやすいです。 赤くなったり悪臭がしたりしないかをチェックし、異常があったら獣医に相談してください。 子供たちにとっても、柔らかい毛並みとテディベアのような外見の大きな犬はとても魅力的で人気があります。 しかし、その大きさゆえに子供たちを転ばせてしまったり、または犬には危害を加える気はなくても子供を怖がらせてしまったりする場合もあると認識しておきましょう。 ニューファンドランドに限らず犬と子供が一緒に暮らす場合は、犬とのコミューケーションの仕方を子供に教え、犬と子供が遊ぶ場合は大人が見守るようにしてください。 子供はまだ道理が分からず犬がいやがることをしてしまう場合もあります。 耳や尻尾を引っ張ってはいけない、犬が食事をしているときに子供が手出しをしたり邪魔をしたりしてはいけないことも教えましょう。 また、犬が寝ているときに邪魔をすることも良くない行為です。 犬が不快になる行動を放置すると子供に対して犬はいい感情を持てなくなります。 どんなにフレンドリーな犬でも、大人の監視なく子供と犬だけで放置することは絶対にやめましょう。 ブリーダーから購入することが望ましいです。 その際は、ぜひブリーダーを訪問してみてください。 飼育などの相談に購入後も対応してくれるブリーダーであればベストですね。 残念ながら現在の日本では悪質ブリーダーが横行している状況です。 愛情をもって飼育しているブリーダーから購入するようにしましょう。 犬舎は清潔か、親犬は健康かなど自分の目で確かめてください。 犬の数が多くてもきちんと管理されている犬舎は決して悪臭はしません。 毛並みは豊かで艶があるか、爪は伸びすぎていないか、糞尿などで汚れたままにされていないかなどチェックしましょう。 また、動物愛護法により生後8週齢以下の販売・譲渡は禁止されています。 生まれてすぐに親兄弟から離されてしまうと成長や社会化に支障が出る場合があるためです。 ちゃんと親子で過ごせているか、法令を遵守しているかも大事なチェックポイントです。 犬がきちんと飼育されていない兆候があったり、法令に違反していたりする場合は保健所などの通報してください。 ニューファンドランドの飼育にかかる費用 ニューファンドランドはかなりの大型犬のため購入時、そして飼育に当たってもかなりの金額が必要です。 飼育前に準備が必要なもの ・首輪・リード 5,000円 ・食器 2,000円 ・ケージ 20,000円~40,000円 ・トイレ 10,000円 ・床のすべり止め 10,000円~30,000円 ニューファンドランドなどの大型犬は関節を痛めやすい傾向があります。 床が滑らないように対処してあげなくてはなりません。 特に幼少期は骨の発育に悪影響を及ぼすので床の対策は必要です。 年間費用 ・エサ代(1ヶ月につき) 10,000円~20,000円 ・トイレ用品(1ヶ月につき) 5,000円~10,000円 ・狂犬病ワクチン(年1回) 3,000円 ・任意ワクチン(年1回) 5,000円~8,000円 ・フィラリア予防薬(5月~11月) 10,000円~20,000円 ・トリミング代(1回) 10,000円~20,000円 犬は生きていますから病気やけがをして獣医にかかる場合もあるでしょう。 医療費は高額になることが多いですので、その点も考慮に入れておく必要があります。 手術や数日間の入院、薬代等で最低30万円ほどはかかりますので、いざというときのためにペット用の保険への加入を検討されてもいいかもしれません。 ニューファンドランドの平均寿命は10~15歳。 12歳まで生きたとすると毎年の経費の合計は750万円以上になります。 その他に獣医にかかればもっと必要になりますので、経済的にニューファンドランドを飼育できるかどうかよく考えてから判断しましょう。 マスティフと絶滅したアメリカのブラックウルフが交配した子孫である。 カナダに渡ってきたヴァイキングが連れてきた犬とオオカミが交配して生まれた。 ピレニーズ、マスティフ、ポルトガルウォータードッグの交配種として生まれた。 寿命:10年~15年 大きさ:オスの体重 59~68㎏ メスの体重 45~55㎏ 性格:賢く穏やかで子供に対してフレンドリー。 運動能力:木材をひく作業をしていたほど力が強く、海難救助犬として活躍するほど泳ぎが得意。 毛色:黒、茶色、灰色、白黒(ランドシーア) 毛の長さ:長毛 ニューファンドランドをペットにするなら知っておきたいこと:最後に.

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