非定型歯痛の症状と原因 今回紹介する 「非定型歯痛」とは、歯痛の原因が「歯」「歯髄」「歯茎」にはない歯痛の総称です。 別名、「非歯原性歯痛(ひ-しげんせいしつう)」とも呼ばれます。 なかなか原因が明らかにならないことも多く、歯医者さんでの治療が有効ではないことも多い歯痛です。 明確に痛みの原因が口内にある場合の歯の痛みを、「歯原性歯痛(しげんせいしつう)」と呼びます。 歯原性歯痛は、歯医者さんで治療を受けることによって治ることがほとんどです。 1-1. 非定型歯痛の症状 非定型歯痛の方は、以下の症状に当てはまります。 当てはまる数が多いほど、非定型歯痛の疑いが強まります。 非定型歯痛の原因 非定型歯痛になる原因は、7つの場合に分類することができます。 食べ物を噛むときに使う筋肉に、「咬筋(こうきん)」や「側頭筋(そくとうきん)」があります。 この筋肉や筋膜の痛みを、歯の痛みとして感じることがあります。 上下の奥歯の痛みとして感じることが多くあるとされています。 顔にある主要な神経に、三叉神経というものがあります。 三叉神経は、脳神経の一つで、眼の神経、上顎の神経、下顎の神経の3つに分岐することから、この名で呼ばれています。 この神経が傷ついたことによる神経痛や、帯状疱疹を発症した際の痛みを、歯痛と感じることがあります。 かつて虫歯の治療をおこない、歯の神経が傷ついた場合にも起こることがあります。 瞬間的に鋭い痛みが起こる「発作性神経痛」の前に歯がしみる症状を感じたり、強い痛みが長時間持続する「持続性神経痛」が起こっている間に強烈な歯の痛みを感じたりします。 偏頭痛や群発頭痛の症状を引き起こしたときに、三叉神経を巡り、歯の痛みとして感じることがあります。 歯の神経が炎症を起こしたときの痛みと、よく似ているとされています。 狭心症や心筋梗塞といった病気を発症した際に、歯痛を感じることがあります。 胸を刺すような強い痛みが迷走神経を通り歯の痛みとして感じられるほか、 心臓の病気を患っている人が運動をしたときに歯の痛みを感じることがあるようです。 このような病気の症状が身体にまで及ぶとき、歯痛として現れることがあります。 「特発性」とは「原因不明の」という意味になり、「特発性歯痛」であれば「原因不明の歯痛」という意味です。 この場合、原因とされる病気が特定できれば、「特発性歯痛」には該当しません。 1-3. 非定型歯痛の診断の難しさ 多くの場合、歯が痛ければ歯医者さんでの治療を希望するでしょう。 しかし、 歯科医師がいくら検査しても、非定型歯痛の場合は口内に原因を見つけることができません。 患者さんは実際に歯に痛みを感じているので、歯医者さんの診断に納得がいかなかったり、原因が見当たらなくても痛むので治療をしてくれ、と相談したりすることは少なくありません。 非定型歯痛について、十分な知識を持っている歯医者さんが少ないことも、正しい治療がおこなわれない原因の一つとして挙げられます。 仮に、正しい知識を歯科医が持っていたとしても、患者さんが非定型歯痛について理解をしないと、歯科医師の対応が不満につながる場合があります。 非定型歯痛のうち、いずれかの原因を特定するためには、多くの検査を受ける必要があります。 診断が確定するまで長い時間を要したり、医療をおこなう側の知識や技術レベルによって患者さんの負担が増えたりすることが考えられます。 非定型歯痛に思い当たる場合でも、まずは歯医者さんを受診しましょう。 口内のトラブルではないことを確認したあと、ほかの病気からくる歯痛であることを疑う必要があります。 非定型歯痛の治療方法 非定型歯痛の治療期間は、基本的に長期間になる傾向があります。 人によっては数ヶ月~数年かかる人もいます。 2-1. 薬物療法 薬によって症状を軽減できる場合があります。 薬物療法は、基本的には、以下の2パターンのうちどちらかになります。 薬物以外の治療 顔の筋肉や筋膜が原因の場合、マッサージやストレッチが有効だとされています。 ほかに、レーザー治療や電気療法を検討する場合もあります。 2-3. 心療歯科 心療歯科とは、歯や口内に発生する症状に精神的な問題が関わっていると疑われる場合に、専門的な診断や治療をおこなう科目です。 歯や口腔内の状態の診療はもちろん、精神状態やストレスといった、様々な角度から診断をおこないます。 非定型歯痛から歯科心身症へ 非定型歯痛に対する知識があり、歯医者さんの立場から治療をサポートしてくれる医院は、全国的にみても少ない状況です。 もし、非定型歯痛に対し十分な理解がない歯医者さんで治療を受けた場合、歯医者さんへの強い不信感が生まれ、歯科心身症になってしまう恐れが考えられます。 3-1. 歯科心身症とは 日本歯科医師会では、以下6つの症状が「歯科心身症」と総称されています。 歯科心身症に思い当たる方は、自分の症状にあった科目のある歯医者さんに相談しましょう。 治療方法は、心療歯科や歯科恐怖症に対応している歯医者さんに、勇気を出して相談することです。 予約する際には、自分が歯科恐怖症であることを、きちんと伝えることが大切です。 検査をしても異常がないのに、自分には強い口臭があると思い込み、周りの人に迷惑をかけていると考えている状態です。 心理療法が必要になるため、心療歯科に相談することをおすすめします。 口臭の相談は恥ずかしいことではありません。 心療歯科に相談する勇気さえ出せれば、そういった患者さんをたくさん治療してきた先生が対応してくれます。 「噛み合せが悪いと体調が悪くなる」といった情報を得ることが、発症につながるようです。 自分の身体に起こっている不調は、噛み合せの異常が原因だと思い込んでしまうことが原因です。 検査した結果、実際に噛み合わせが悪い患者さんもいますが、大きな異常がなくてもかたくなに「噛み合せが悪い」と訴える方も多くいます。 この場合は、心理的療法が必要になるため、やはり心療歯科の受診をおすすめします。 舌癌だと思い込む人も多くいるようです。 まずは、口腔外科で舌癌の検査をしてもらいましょう。 かかりつけの歯医者さんに一度相談してみるのも良いでしょう。 相談した結果、症状が改善しなければ、心療歯科の受診をおすすめします。 強いストレスを受けた場合、日中や睡眠中に食いしばりや歯軋りをすることがあります。 そのせいで、顎の間接や顎を動かす筋肉に悪影響を及ぼし、顎関節症を発症します。 顎関節症の治療は、口腔外科に相談することをおすすめします。 ストレスの影響が強い場合は、心療歯科を受診しましょう。 顎関節症は、ストレス以外にも発症要因があります。 詳細は「」を確認してください。 精神的ストレスと身体の感覚障害が合わさり、発症すると考えられています。 しかし、この異常感は、歯周病の進行が原因の場合があります。 そのため、まずは歯医者さんに歯周病の検査をしてもらうことをおすすめします。 口腔内に異常を感じるのに歯周病ではないという診断が下った場合、心療歯科の受診をおすすめします。 歯周病の詳しい症状については、「」を確認してください。 まとめ 過去に歯医者さんで治療を受けたが満足した結果を得られなかった、もしくは、原因不明の歯痛で悩んでいるのであれば、非定型歯痛を疑うべきケースかもしれません。 自己判断をせず、必ず信頼できる歯医者さんを受診しましょう。 患者さんに寄り添ってくれる歯医者さんなら、きっと患者さんの不安や悩みに親身になってくれるはずです。
次の虫歯の症状と治療方法【進行度別】 虫歯は大きく分けて4つの段階に分かれます。 それぞれの段階によって、症状や治療法が違ってきます。 LCO(最初期の虫歯)の症状 虫歯の初期段階で、歯の表面のみが脱灰している状態です。 健康な歯と違い、表面の色がまだらに白色っぽく透明感がなくなります。 脱灰が進むと、黄色や茶色っぽく歯の色が変化していきます。 まだ歯に穴ができていない状態で、再石灰化で元の健康な歯に戻ることができます。 治療方法 歯の表面のプラークを取り除き、高濃度のフッ素を歯面に塗布する。 フッ素を塗ることで、歯の再石灰化を促進させます。 LC1(初期の虫歯)の症状 歯の表層のエナメル質に虫歯菌が侵入し、歯に穴を作り出している状況です。 エナメル質までの虫歯だと症状は出にくく、気が付きにくいことが特徴です。 歯の溝が茶色くなったりします。 小さな穴に汚れが付着しやすくなり、虫歯が進行しやすくなります。 治療方法 初期の段階であれば、フッ素治療で進行を防ぐことができ、削らずに経過観察をすることもあります。 穴になっている場合には、虫歯の部分を染め出して調べ、虫歯を除去します。 穴をプラスチックの材料などで詰めて治療完了となります。 LC2(中程度の虫歯)の症状 虫歯菌がエナメル質から象牙質にまで進行した状態をいいます。 象牙質はエナメル質より柔らかいので、硬いエナメル質よりも早く虫歯が進行し、歯の中がスカスカの柔らかい状態になっていきます。 歯の中が透けて黒く見えたり、大きな穴になります。 冷たいものや甘いものでしみたり、穴の中に食べ物が詰まると痛みを感じます。 固いものを噛むと虫歯の穴に当たり、激痛で噛めなくなることもあります。 虫歯が進行すればするほど、しみたり痛みやすくなります。 虫歯の穴に汚れがたまるので、口臭の原因にもなります。 治療方法 虫歯部分を染め出して、虫歯になってしまっている部分をすべて取り除きます。 神経に近い象牙質まで虫歯になっている場合は、水や削る刺激がしみるので、治療には麻酔が必要になります。 残る歯質の量によってプラスチックの材料で詰めるだけであったり、型採りをおこなって被せ物をしたりします。 LC3(後期の虫歯)の症状 虫歯が象牙質から歯の神経がある歯髄にまで、さらに進行してしまった状態をいいます。 歯髄の中が虫歯菌に感染すると、歯髄炎を起こし冷たいものを飲むだけで何数秒強い痛みが続きます。 自発痛と言い、何もしていなくてもズキズキと眠れないような痛みがでてきます。 歯髄炎を起こすと、歯の神経は死んでしまい歯髄の中は腐敗していきます。 治療方法 虫歯菌に感染してしまった歯髄は腐敗していくので、神経をきれいに取り除かなければいけません。 麻酔をし、虫歯菌に感染した神経をすべて取り除きます。 根管治療に当たる、根の中の消毒治療が必要になります。 神経を抜くと痛みはすぐにおさまりますがC1、C2の虫歯とは違い、治療回数がかかります。 根管治療は、虫歯をとって1回で終わるという治療ではありません。 さらに、根管治療が終わったあとも治療は続きます。 残っている歯の量が少ないので、歯の根に土台を立て、土台を覆うような被せ物(つまり、差し歯)の状態にしないといけなくなります。 保険治療だと奥歯は銀歯になってしまうので、目立ちにくい白い歯にしたいのであれば費用がかなりかかります。 LC4(重度の虫歯)の症状 虫歯が進行しすぎて、歯の形が崩壊してしまっている状態です。 歯の根だけがかろうじて残っており、食事をしても食材を噛み切ることができません。 神経が死んでしまっているので、冷たいものでしみたり痛んだりしなくなります。 噛み合っていた歯が延出(伸びてしまうこと)したりと、歯並びや噛み合わせも変わってしまいます。 歯や歯茎から膿が出てくることもあります。 治療方法 歯の根まで虫歯になっていると、残っている歯が少なすぎて土台を立てたり被せ物ができなくなります。 したがって、歯を保存(残す治療をすること)できないこともあります。 抜歯してインプラントを入れたり、入れ歯にしたり、隣の歯を削ってブリッジにするなど、抜いた部分を補うための補綴(ほてつ)治療を行います。 補綴治療:なくなった歯の代わりとなる人工物を入れ、歯の働きを補うための治療 2. 虫歯は早期発見・治療が肝心です 初期の虫歯は痛みがありません。 痛みが出てからの治療だと、歯を削らないといけなくなってしまいます。 逆に放置しすぎて歯の神経が死んでしまうと、痛みすらなくなってしまいます。 死んでしまった歯を放置していると、根先性歯周炎(根の先に膿の袋ができる病気)になってしまいます。 「まだ痛みがないから…」「痛みがおさまったから!」といって放置していては危険です。 虫歯は感染症 生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、虫歯菌はいません。 実は、虫歯は感染症です。 虫歯菌がうつると、一生口の中に住み着くことになります。 ここでは、どうして虫歯になってしまうかをお伝えします。 虫歯が出来るメカニズム 虫歯ができるメカニズムには、3ステップあります。 ・虫歯ができるには口の中に虫歯菌がいること ・虫歯菌の餌となる食べかす(糖)が口の中に残っていること ・餌のお皿代わりとなる歯があること この3つがそろうと虫歯になります。 虫歯菌は食べかすを餌として、ベタベタのプラークとなり歯の表面に付着して酸をだします。 この酸が歯を溶かします。 これを脱灰(だっかい)と言います。 脱灰が進むと虫歯の穴ができます。 虫歯が出来やすい人とは? 虫歯菌に感染しないようにするのは、中々難しいことです。 そうなると、虫歯菌に感染しても虫歯にならないようにする方法を実践しなければいけません。 虫歯の餌となる糖(つまり食べかす)を、なるべく口の中に停滞させないことが大切です。 歯磨きの回数が少ない人、磨き残しが多い人は虫歯のリスクが高くなります。 とくに甘い糖の入ったもの、酸性の強いものは歯を溶かしやすく、虫歯を進行させやすい食品です。 常に飴やグミを食べたり、炭酸飲料やカフェオレなど飲んだり、間食が多い人も虫歯リスクが高いと言えます。 唾液が少ない人も口の中の自浄作用が弱く、口内が酸性に傾きやすいので、虫歯リスクが高いと考えられています。 実は虫歯じゃない歯痛とは 虫歯以外でも歯が痛む場合があります。 虫歯に似た症状があるものをいくつかご紹介します。 歯周病 歯茎が炎症を起こすと、歯がズキズキと痛むように感じます。 噛んだり、たたいたりすると歯周病になっている歯が痛みます。 歯周病で下がった歯茎はしみやすくなります。 歯髄炎 虫歯が進行すると、歯髄炎(歯の神経と血管が通っている歯髄が炎症を起こすこと)になります。 歯髄炎は、転んで歯を強くぶつけてしまったり、割れたりしても起こします。 鎮痛剤が必要なほどのズキズキとした痛みが出ることもあります。 親知らず 親知らずには歯ブラシがあたりにくく、磨き残しやすい歯です。 親知らずを清潔にできていないと、周辺が腫れて智歯周囲炎になります。 歯ブラシで当てると痛かったり、何もしていなくても腫れて痛みがでたりします。 知覚過敏 冷たいものや甘いものでしみます。 虫歯と違い一過性のもので、慣れると痛みがなくなります。 歯ブラシで当てたりしてもズキッと痛むことがあります。 咬合性外傷(こうごうせいがいしょう ) 噛み合わせが悪かったり、歯ぎしりや食いしばりが強かったりすると、負担のかかっている歯を噛んだ時に痛みを生じます。 咬耗(強く噛むことによって歯がすりへっていくこと)してしまった部分は、知覚過敏と同様、冷たいものでしみたり、固いものを噛むと痛みを感じます。 まとめ 初期の虫歯を見つけるのは、自分ではなかなか難しいものです。 早期に虫歯を見つけられれば、削らずに済むこともあります。 また、虫歯にならないようにするには正しい歯磨きをすること、間食をだらだらしないこと、定期的にフッ素を塗って歯を強くすることです! 歯医者さんに定期検査をおこなうことで、虫歯予防、早期の虫歯発見ができます。 症状が出てからではなく、出る前に検診に行きましょう。 執筆医 菊地 由利佳先生 菊地先生からのコメント 歯は健康に欠くことのできないものです。 美味しいものを食べる、会話をする、美しい表情を保つ、これらは健康な歯があってからこそできること。 記事をご一読いただき、ぜひ歯の正しい知識を知って、より健康な毎日をお過ごしください。
次の市販の鎮痛剤を服用する 歯の痛みに効果がある鎮痛剤とはどういったものなのでしょうか。 普段から頭痛や生理痛に悩んでいて、鎮痛剤を常備しているという方も多いと思います。 鎮痛剤のパッケージには、頭痛や生理痛の他、歯痛にも効果があると記載されているはずです。 この鎮痛剤を服用することで、歯痛を抑えることができます。 しかし、効果があるのは痛みが軽いうち。 歯医者さんに行くまでの応急処置として服用するようにしましょう。 あまりにも酷い痛みの場合は、薬が効かないこともあります。 鎮痛剤や風邪薬は、薬事法によって、薬剤師や登録販売者がいる所でしか購入できない決まりになっています。 夜遅くに歯が痛くなっても、普通のコンビニなどでは売っていないので注意しましょう。 自宅に鎮痛剤を常備しておくか、24時間営業のドラッグストアを探しておく必要があります。 歯が痛むときにしてはいけないこと 入浴・・・体を温めると血行が促進されて神経が敏感になるため、歯痛が酷くなります。 歯が痛むときは浴槽に浸かるような入浴を控え、軽いシャワー程度で済ませるようにしましょう。 喫煙 ・・・痛みでイライラするからと煙草を吸ってはいけません。 タバコの煙は歯を刺激してしまうので、余計に歯の痛みが増してしまいます。 飲酒・・・飲酒もNGです。 アルコールを飲むと、一時的に痛みが和らぐように感じるかもしれません。 しかし、それは痛みを感じる中枢神経がアルコールで麻痺しているだけです。 アルコールは血行を良くするので、後から激しい痛みに襲われます。 このほかにも、刺激の強い炭酸飲料や甘いジュース類の摂取、激しい運動などは避けましょう。 眠れないくらいに歯が痛い夜ほど、長く感じる時間はありません。 今回ご紹介した方法で痛みが緩和したとしても、これはあくまでも応急処置です。 痛みが発生する原因が解決されるわけではないので、必ず翌日には歯医者さんで診察してもらうようにしましょう。 また、応急処置を試みても耐えられない痛みの場合は、歯科診療を行っている夜間・休日救急センターを利用することもできます。 ただし、夜間・休日救急センターでは継続的な通院治療は行っていないので、後日別の歯医者さんを受診する必要があります。 まずは、痛みを取るための応急処置を試してみてくださいね。
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