女性のお腹は、男性と比べて複雑で、トラブルを引き起こしやすくできています。 女性は、男性の3~6倍も罹患しやすいといわれています。 上腹部には胃、下腹部には腸。 胃と腸を消化器と呼びますが、食べものの消化の手伝いをする膵臓や肝臓なども、腹部にあります。 また、尿をつくり、溜める腎臓や膀胱(泌尿器)、子宮と卵巣(生殖器)も同じ場所に収まっています。 臓器の数だけ、トラブルや病気があるので、「お腹が痛い」といっても、いろいろな可能性があります。 病気だけでなく、女性は、妊娠の可能性も考えなければなりません。 また、多くの臓器が近くにあるので、多少、お腹が圧迫されただけでも、臓器と臓器がぶつかって痛みを感じることもあります。 腹痛、便秘、下痢から、ガスによる膨満感、おならなど、お腹の不調は、さまざまあります。 下痢や便秘を繰り返したり、腹痛とガスが同時に起こったりする場合は、3~6か月前と比べて、変化しているかどうかがポイントです。 徐々に痛みが強くなる、つらさが増すようなら、病気の可能性があります。 便秘の場合、排便が3日以上なかったら、便秘症と考えます。 下痢の場合は、3週間以上続いたら、慢性下痢と診断されます。 同じような症状を繰り返していたら、一度は内科でみてもらいましょう。 不調の位置は、おへそより上なら、胃や膵臓、胆嚢に問題がある可能性が。 おへそより下なら、腸や子宮、膀胱の可能性があります。 症状が起こるきっかけや前兆も、原因を探るための大事な判断材料になります。
次のどんな人でもおなかが痛くなることがあります。 ただ、多くの場合には病院へ行かなくても痛みがおさまることが多いでしょう。 しかしながら、「こんな時には病院に行くべきだ」というケースもあります。 今回は特に女性の腹痛について、注意すべきおなかの痛み、そして「腹痛と一緒にこのような症状が出たら要注意」という話を、救急医の視点から解説します。 30代女性を突然襲った激しい腹痛 30歳の女性、加藤さんは午前の会議を終えて自分の机に戻った際、突然左下腹部に痛みを感じました。 痛みは非常に強く、だんだんと下腹部全体が痛くなってきました。 トイレに行ったものの痛みはよくなりません。 あまりにも痛そうな様子に、心配した同僚が救急車を呼んでくれ、救急外来へ運ばれました。 加藤さんのようなケースは、救急医からすると「心配な女性の腹痛」です。 どのあたりが「心配」なのか? 症状のポイントから考えてみましょう。 救急医が腹痛を考える際の4つのカテゴリー 女性の患者さんが腹痛を訴えたとき、痛みの原因として主に次の4つのカテゴリーに分けて考えることが多いです。 内科系の病気 、消化性潰瘍(、)など 外科系の病気 、消化管穿孔、絞扼性(こうやくせいちょうへいそく)などの手術が必要な病気 泌尿器系の病気 、、 婦人科系の病気 、、(子宮外妊娠)、(、、卵管留膿症、ダグラス窩膿瘍<かのうよう>)などです。 このカテゴリーを念頭に、「嘔吐(おうと)下痢などが中心で胃腸炎なのか?」「みぞおちの痛みがあって黒い便が出ているから十二指腸潰瘍など疑うか?」「おなかの右下の痛みを訴えるから虫垂炎を疑うか?」などと考えながら、患者さんのお話を聞いて診察をしていきます。 このリストから加藤さんのケースを考えると、• 若い女性• 急激で強い痛み• 痛みがよくならないところ が気になるポイントです。 そのため、今回は婦人科系と泌尿器系を中心に検討します。 婦人科系の病気 異所性妊娠 「私、身に覚えがありません」「今、生理中です」「数日前に生理が終わったばかりです」「産婦人科医院で中絶(人工妊娠中絶)の手術をしたばかりです」これらは、すべて異所性妊娠だった患者さんの一言です。 女性の腹痛の中で最も緊急性が高く、救急車を呼ぶなどして一刻も早く病院へ行って手術する必要があります。 異所性妊娠は、主に卵管などの子宮以外の場所に受精卵が着床し成長してしまう(=妊娠してしまう)ことによって起こります。 子宮以外の場所にある胎嚢(たいのう)が大きくなっていくと、最終的にその場所で着床した組織とともに破裂するか、自然消失します。 破裂すると大量の出血が起こることがあります。 その場合、突然の腹痛、低血圧や失神、冷や汗が出る、脈が速くなるなどの症状が現れます。 ただ、前述のように患者さんが否定していても実際には妊娠していることもあり、妊娠検査をしないかぎりは診断がなかなかすすみません。 卵巣茎捻転 次に卵巣茎捻転が重要です。 卵巣の茎の部分がねじれてしまうことによって起こる病気です。 この病気は将来の妊娠の可能性にもかかわるため、迅速な判断を心がけています。 主な原因は、腫瘍(卵巣膿腫)などによって卵巣が大きくなってしまうことです。 一般的には卵巣の大きさが4〜6cmを超えると卵巣茎捻転を起こしやすいといわれています。 捻転しているかの最終診断は、超音波検査、CT、手術(腹腔鏡の場合もあります)などで行います。 卵巣出血 排卵や外的な刺激などによって起こる卵巣からの出血です。 量が多いと、出血が「腹膜」というおなかの中の膜を刺激して、かなりの痛みが広い範囲に出ます。 基本的には痛みを抑えながら経過をみることが多いのですが、痛みがとても強い場合には入院となることもあります。 また、出血の量が非常に多い場合には血圧が下がって危険な状態に陥ることもあります。 このような場合には輸血や手術となることもあります。 骨盤内炎症性疾患 こちらはあまり聞かない病気かもしれません。 これは感染症の一種で、女性の上部生殖器(子宮、卵管および卵巣)に起こるものです。 どこに炎症が生じているかによって「子宮付属器炎」「骨盤腹膜炎」など名前が細かく分かれます。 一般的には、パートナーがクラミジアや淋菌(りんきん)などの菌に感染している状態で性交することによって感染します。 他に、何らかの病気による免疫力低下や子宮内避妊器具の使用によっても起こる可能性があります。 典型的な症状として、下腹部痛、おりもの、不正出血が生じます。 また、発熱や強い腹痛が出ることもあります。 膀胱炎は女性に多い病気で、もともと尿道と肛門が近い構造であることや、男性と比べて尿道が短く細菌が膀胱に達しやすいことも女性に多い理由と考えられます。 症状としては、頻尿、排尿時の痛み、残尿感、尿の濁りや血尿などの症状があります。 尿検査を行うことによって診断され、合併症がなければ通常3日間、抗菌薬を使用することで治療できます。 女性の膀胱炎を予防する方法として、水分を多くとる、排尿を我慢しない、性交後に早めに排尿するなどの方法があります。 膀胱炎の症状に加えて、発熱、側腹部痛、嘔気嘔吐、わき腹や片側の背中をたたいた時に強い痛みがある場合には、腎盂腎炎が考えられます。 これは膀胱に感染していた細菌が腎臓まで到達してしまい腎臓が感染してしまった状態です。 腎盂腎炎の場合は症状も強く、長く続くため、場合によって入院にて治療をすることもあります。 尿路結石 腎臓にできた石が移動して尿路の途中で詰まってしまう病気です。 突然の脇腹や背中の痛みが特徴的です。 非常に強い痛みが突然起こるため、救急車で運ばれる患者さんもしばしばいます。 診断は、尿検査、超音波検査、CT検査で行います。 通常は痛み止めを飲んで石が通りすぎるのを待ちます。 ただ、石によって尿の流れが悪くなって感染が起こり、発熱している場合には緊急の手術が必要なこともあります。 また、もともと腎臓の機能が悪い人の場合もしくは片方の腎臓しか機能していない人の場合も、入院や手術が必要です。 石のサイズが10mmを超えると自然に排出される可能性が小さいため、衝撃波で石を砕いたり外科手術で取り除いたりするなどの処置が必要となります。 加藤さんの腹痛の正体は? 冒頭の加藤さんの場合妊娠反応は陰性でした。 強い腹痛があるため超音波検査で卵巣が大きくなっていないかを調べましたが、それもありませんでした。 卵巣出血や虫垂炎などの検索のために造影CT検査が行われ、卵巣出血であることが判明。 痛みが強かったため、婦人科に入院して3日後に無事退院となりました。 いかがでしょうか?「様子をみていたら自然によくなる」「トイレに行ったらよくなる」など心配のいらないおなかの痛みが多いものですが、中には上に述べたような怖い病気につながるものもあります。 こうした腹痛は、病院で診察や検査をしてみないと結論が出ないこともあります。 今回は女性の腹痛の中でも特に怖い痛みを取り上げてご説明しました。 こういった病気もあることを知り、危険と思われる症状があったら受診のタイミングをご検討いただけたらと思います。
次のでは1つ1つ見て行きましょう。 痔 痔の血便の色は 鮮紅色、つまり鮮やかな赤です。 ペーパーに血が付く場合もありますが便器が真っ赤に染まってしまうことも。 びっくりしますよね・・・。 スマホや雑誌など持ち込んでトイレで長居していませんか? 下痢や 便秘は痔の症状ではありませんが、いきみが強かったりトイレで同じ姿勢で居座ることが要因となるので無関係ではありません。 痔は 出来る場所によって症状が違ってきます。 直腸にできる 「内痔核」(いぼ痔)は痛みはなく 排便時に出血し、肛門から痔が飛び出してくる違和感があります。 よく指で押しこむというものですね。 「外痔核」は肛門の外側に血豆が出来た状態で、腫れて痛みますが 出血は少ないのが特徴です。 「裂肛」(切れ痔)は肛門の皮膚が切れた状態です。 排便時に肛門に激しい痛みと 出血があります。 排便後もヒリヒリとしばらく痛みが残る場合も。 急な下痢や 腹痛、 吐き気や おう吐が現れたら感染性腸炎を疑うことは容易でしょう。 細菌やウイルスによって症状が違い、血便がみられるものとそうでないものがあります。 血便がみられる代表的なものは 「O-157」と 「赤痢」です。 感染するため、流行すると話題になるので一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 「O-157」は腹痛や下痢に続き血便がみられることがあります。 血便は 鮮やかな赤で便に混じるというよりは血が出るといった様子であることが多いです。 「赤痢」の特徴は軟便や水様便から 膿粘血便となることです。 膿粘血便とは膿や粘液、血液が混じった便です。 血便はよくみられる症状です。 大腸は2メートルと長く、どの部分にどの程度の腫瘍があるかによっても症状は違います。 がん化しやすい 「結腸」と 「直腸」をみてみましょう。 「結腸」は小腸に近いところにあり、結腸にできたがんの初期段階では下痢や便秘は起きにくいでしょう。 結腸では便と血が混じりやすいので 赤黒い血便になります。 肛門に近い「直腸」でのがんは 下痢がおこり、何度排便してもすっきりしません。 直腸まできた便は水分が少なく、血とは混じりにくいので便に 血の塊が付着 したような 血便となります。 血の塊は痔よりも少し黒ずんでいます。 見ておわかり頂けるように、この症状ならこの病気とはっきり断定できるものではありません。 炎症の場所や、病気の進行具合でも違ってきます。 身近な 「痔」だと思い込んで 重大な疾患を見逃してしまうことが少なくありません。 もちろん「痔」も進行すれば手術 が必要となることがあります。 大切なことは、自己判断せず しっかり受診することです。 血が赤いから「痔」かな、などと素人判断で放っておくのは 危険です。 腹痛に下痢に血便、これだけ体から 異変のサインがでているのです。 体のサインに答えて 検査を怠らず早めの治療で 健康を維持したいものですね。
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